不安定性とバブルのマクロ経済理論

不安定性とバブルのマクロ経済理論
― 標準理論から一歩踏み出す試み ―(下)
小 島 祥 一
目次
4. 3 世代、T世代重複世代モデルへの拡張とラムゼー・モデルの再現
5. 連続時間モデルによる分析
おわりに
付録
参考文献
(以上、本号(下)
)
(以下、前号(上)目次)
はじめに
1. 標準バブルと信用バブルのマクロ経済計算
2. ラムゼー・モデルにおける不安定性とバブルの分析
3. 重複世代モデルにおける不安定性とバブルの分析
4.3 世 代、T 世 代 重 複 世 代 モ デ ル へ
の拡張とラムゼー・モデルの再現
の 1 人当たり金融資産が 1 人当たり資本の関数
として表わされる。そのマクロ経済的な集計量
として、マクロの 1 人当たり金融資産が、マク
前節で若年期、老年期とも働く 2 世代重複世
ロの 1 人当たり資本の関数として表わされる。
代モデルを1時点効用関数 u (ct ) = log ct の場合
このやり方は、3 世代モデルから T 世代モデ
に分析した。この節では、その自然な拡張とし
ルにただちに一般化出来る。解が複数均衡にな
て、生まれて若年期、中年期に働き、老年期に
る様子は、前節の 2 世代モデルと同じである。
は働かず貯蓄を取り崩して消費し死ぬ、3 世代
安定性の分析は、3 世代モデルでは前節と同様
重複世代モデルを分析する。
に出来るが、T 世代モデルでは複雑になり難し
1 時点効用関数が u (ct ) = log ct の場合には、
い。しかし T が大きい場合には、1 人の消費者
各世代の 1 人の消費者の消費が、生涯所得に各
について成り立つオイラー方程式と予算制約式
世代の消費性向をかけたものになる。生涯所得
を直接マクロ的に集計し、マクロの集計量とし
は賃金率と金利の関数であり、これらは 1 人当
ての消費、金融資産の満たすべき関係式を導き、
たり資本の関数なので、1 人の消費者の消費は、
分析することが出来る。これによれば、T が大
1 人当たり資本の関数として表わされる。
きいときは、ラムゼー・モデルで近似されるこ
よって、予算制約式から、各世代の各時点で
とが分かる。
- 101 -
- 102 -
- 103 -
産が、貯蓄残高マイナス借り入れ残高で、ネッ
とおき、生産の限界条件
f ( k t ) f c( k t ) k t
f c( k t ) r ( k t )
wt
rt
w ( k t ),
トでプラスになることを表わしている。当然の
ようだが、証明は微妙なものがある。
を使うと、 k t についての定差方程式を得る。
(4-13)
kt
定常状態を k t
k
E 1 f cc(k ) E 3 f cc(k )
(1 f c(k )) 2
0
よって、前節の図 3-1-1,2 と同様に、図 4-1-1,2,3
vt
nL
を得る。CES 型生産関数で、U ! 0 の場合には、
w( kt )
E1 (1 r (kt 1 )) w(kt 2 ) E 2 w(kt 1 ) E 3
1 r ( kt )
k
B c(k )
k t 1
k t 2
w(k ){E 1 (1 r (k )) E 2 定常状態が複数均衡の可能性がある。
(b) バブルなしの場合の定常状態の安定性
k とすると、
E3
1 r (k )
定常状態の安定性をみるため、前節と同様に、
}
0 は定常状態である。 k ! 0 については、
(4-16)
kt E 3
lt
w(k t )
1 r (k t )
(4-14)
とおき、 l t は k t の増加関数なので、この逆関数
E3
§ f (k )
·
f c( k ) ¸E 1 (1 f c( k ) E 2 ) 1
¨
1 f c( k )
© k
¹
も増加関数であり、それを k t
すると、前節(3-32),(3-33)のように記法を簡単
ここで
化して、
f (k )
f c(k ),
k
A(k )
E1 (1 f c(k )) E 2 B (k )
つまり、
E3
これは l t についての 2 階の定差方程式である。
前節でみたように、
1
B(k )
l
関数の場合について、前節ですでに分析した。
B (k ) は
wc(l ) ! 0, r c(l ) 0
lt 1 とおくと、 l t , l t1 についての 1 階の定
差方程式になる。
(4-17)
l t11
E 1 (1 r (l t1 )) w(l t ) E 2 w(l t1 )
l t 1
l t1
差分の形に書くと、
E1 E 2 E 3
n0 J
2
(1 n) n L
(4-18)
{(n 3) E 2 (1 n) E (1 n)} ! 0
l t11 l t1
E 1 (1 r (l t1 )) w (l t ) E 2 w (l t1 ) l t1
l t 1 l t
l t1 l t
l * , l t1
定常状態を l t
この不等式(4-15)が成り立つのは、
E
1
t
f
(4-15)
B (f )
E1 (1 r (l t 1 )) w(lt ) E 2 w(lt 1 )
lt 2
1 f c(k )
となる点である。 A(k ) については、CES 生産
B(0)
E1 (1 r (lt 1 ))w(lt 2 ) E 2 w(lt 1 )
lt
とおくと、定常状態は、
A(k )
g (lt ) とおく。
l * とすると、
(4-19) E 1 (1 r (l * )) w(l * ) E 2 w(l * ) l *
1
1
,0 T 1, E 1
1T
2
0
が成り立つ。定常状態が 2 つある場合は、その
うちの 1 つとする。このまわりでテーラー展開
n 1
で、{ }内の E の 2 次関数がプラスなことによる。
不等式(4-15)は、(4-13)において、賃金率が一
定、ゼロ金利のときに、マクロの家計の金融資
すると、 'l t
'lt11 'lt1
lt l * などとおいて、
E1{rc(l * )w(l * )'lt1 (1 r (l * ))wc(l * )'lt }
(E2 wc(l * ) 1)'lt1
- 104 -
図 4-1-1 コブ・ダグラスまたは
CES生産関数で -1<ρ<0 のとき:
プラスの定常状態は1つ
図 4-1-2 CES 生産関数で ρ>0 でも、
プラスの定常状態が 1 つのとき
A(k )
A(k )
A(k)
1 / B(k )
1 / B(k )
0
0
0
k
k*
k*
1 / B( k )
A(k)
0
k
1 / B( k )
k*
k*
k
k
図 4-1-3 CES 型生産関数で ρ>0 で
プラスの定常状態が2つのとき
A(k )
A(k )
1/(E1 E2 E3)
1/(E1 E2 E3)
1 / B(k )
1 / B(k )
0
0
k ****
k
k* *
k
- 105 -
k
k
'l t 1 'l t
2 a11 a12 ! 0 の条件のもとで、 a11 ! 0 のと
きや a11 0 で a11 a12 ! 0 のときは、鞍点であ
り、 a11 0 で a11 a12 0 のときは、収束する
'l t1 'l t
これを行列形式で書くと、
§ 'lt11 · § 'lt1 ·
¸
¸ ¨
¨ 'l ¸ ¨ 'l ¸
© t 1 ¹ © t ¹
(4-20) ¨
§ a11
¨¨
© a 21
a11
E 1 r c(l * ) w(l * ) E 2 wc(l * ) 1
a12
E 1 (1 r (l * )) wc(l * ) ! 0
a 21
1, a 22
'lt , 'l
結節点である。その他の場合には発散する。
a12 ·§ 'lt1 ·
¸
¸¨
a 22 ¸¹¨© 'lt ¸¹
定常状態が 1 つの場合は、収束するケースが
あてはまり、2 つの場合は、1 つが収束するケ
ース、もう 1 つが発散するケースになると考え
られる。
1
1
t 座標、つまり
(c) バブルありの場合
3 世代重複世代モデルにバブルを入れるには、
'lt , 'lt 1 座標で定差方
程式(4-17)の位相図を描くと、図 4-2-1,2,3,4 の
(4-11)に戻り、(1-38)にならって、t 1 期首の金
ようになる。
融資産 Vt 1 は、 t 1 期首における企業の資本保
'l t 1 'lt 線は、45 度線であり、その上方で
は 'l t は増加し、その下方では減少する。
'lt11 'l t1 線は、 a11 ! 0 のときは、傾きがマ
1
イナスで、その上方では 'l t は増加し、その下
有 K t 1 のための貸し付けと、 t 期中に購入した
バブル Bt からなるとする。
(4-21)
方では減少する。もし傾きがマイナスの分枝の
V t 1 K t 1 Bt
ここで vt 1 Vt 1 / N 0,t 1 、 k t 1 K t 1 / N 1,t 1 、
bt Bt / N 0t として、両辺を N 0t で割って、1 人
傾きの絶対値が 1 未満ならば、図 4-2-1 のよう
当たり変数に変換する。前と同様に、
に、定常状態は鞍点になる。しかし傾きがマイ
N 0,t 1 / N 0t
1 n 、
N L ,t 1 / N 0t
N L ,t 1 / N 0,t 1 ˜ N 0,t 1 / N 0t
ナスの分枝の傾きの絶対値が 1 を超えるならば、
図 4-2-2 のように、鞍点とならずに発散する。
(1 n)n L
これは、離散的な動きのため、方向は原点の方
向に向かっていても、原点を行き過ぎてしまう
とおいて、
(1 n)vt 1
ためである。
a11 0 のときは、 a11 a12 ! 0 ならば、
'lt11 'l t1 線は、45 度線の上方にあり、もし傾
きがマイナスの分枝の傾きの絶対値が 1 未満な
らば、図 4-2-3 のように、定常状態は鞍点にな
る。
(1 n)n L k t 1 bt
よって、
(4-22)
1
1
vt 1 bt
nL
n L (1 n)
k t 1
(4-13)、(4-14)と同様にして、
E 1 (1 r (k t )) w(k t 1 ) E 2 w(k t )
k t 1
a11 0 かつ a11 a12 0 ならば、
'lt11 'l t1 線は 45 度線の下方にくるため、も
し 2 a11 a12 ! 0 の条件が成り立ち、傾きがマ
(4-23)
イナスの分枝の傾きの絶対値が 1 未満ならば、
(4-24)
図 4-2-4 のように、定常状態は結節点になる。
両辺を N 0t で割って、1 人当たりバブルの式は、
E3
w( k t 1 )
1
bt
1 r ( k t 1 ) n L (1 n)
バブルの定差方程式は、
(付録 6.参照)
Bt 1
(1 n)bt 1
以上から、3 世代複合世代モデルによるバブ
*
*
ルなしの場合の定常状態 l ないし k は、 l t , l t 1
座 標 な い し k t , k t 1 座 標 に お い て 、
(1 rt 1 ) Bt
(1 rt 1 )bt
よって、
(4-25)
- 106 -
bt 1
1 r (k t 1 )
bt
1 n
図 4-2-1 鞍点となるとき
a11 ! 0 ࠿ࡘ
'lt 1
'lt1
'lt 1
'lt1
1 ࡘࡢศᯞࡢഴࡁࡢ⤯
ᑐ್ࡀ 1 ᮍ‶ࡢ࡜ࡁ
a11 ! 0 ࠿ࡘ
1 ࡘࡢศᯞࡢഴࡁࡢ⤯
ᑐ್ࡀ 1 ᮍ‶ࡢ࡜ࡁ
0
0
a11 ! 0 ࠿ࡘ
'lt 1
図࡝ࡢศᯞࡢഴࡁࡶ
4-2-2 鞍点とならずに発散するとき
⤯ᑐ್ 1 ࢆ㉸࠼ࡿ࡜ࡁ
a11 ! 0 ࠿ࡘ
࡝ࡢศᯞࡢഴࡁࡶ
'lt 1
'l
'l t 1
'lt ⥺
'l t 1
'lt ⥺
45 $
'lt
45 $
'lt
1
t
'lt11
'lt1 ⥺
'lt11
'lt1 ⥺
'l t 1
'lt ⥺
'l t 1
'lt ⥺
'lt1
⤯ᑐ್ 1 ࢆ㉸࠼ࡿ࡜ࡁ
$
'lt
45 $
'lt
45
0
0
- 107 -
'lt11
'lt1 ⥺
'lt11
'lt1 ⥺
図 4-2-3 鞍点となるとき
a
a11 0 ࠊ 12 ! 1
a11
'l t 1
࠿ࡘ
'l t 1
a
0 ࠊ 12 ! 1
1a11ࡘࡢศᯞࡢഴࡁ
a11
ࡢ⤯ᑐ್ࡀ 1 ᮍ‶
࠿ࡘ
ࡢ࡜ࡁ
1 ࡘࡢศᯞࡢഴࡁ
'l t1
'lt 1
'lt ⥺
'lt 1
'lt ⥺
'l t1
45 $
0
'lt
ࡢ⤯ᑐ್ࡀ 1 ᮍ‶
ࡢ࡜ࡁ
45 $
0
a
a図114-2-4 結節点となるとき
0 ࠊ 12 1
a11
࠿ࡘ 2 ࡘࡢศᯞࡢഴࡁ
a
a11 0 ࠊ 112ᮍ‶
1
ࡢ⤯ᑐ್ࡀ
a11
ࡢ࡜ࡁ
࠿ࡘ 2 ࡘࡢศᯞࡢഴࡁ
ࡢ⤯ᑐ್ࡀ 1 ᮍ‶
'lt11
'lt1 ⥺
'lt11
'lt1 ⥺
'lt
'lt 1
'l t1
'lt 1
'l t ⥺
'lt 1
'l t1
'lt 1
'l t ⥺
0
45 $
'lt
0
45 $
'lt
ࡢ࡜ࡁ
'l t11
'l t1 ⥺
'l t11
'l t1 ⥺
- 108 -
(4-23),(4-25)は、 k t , bt についての定差方程式に
おいて、 b
なる。(4-16)と同じように、 k t の増加関数 l t を
つあることになる。
(4-26)
lt 1
w(k t 1 )
k t 1 E 3
1 r (k t 1 )
とおき、この逆関数を k t
g (lt ) とおくと、こ
れも増加関数である。前のように記法を簡略化
1
t
1
bt
n L (1 n )
lt l * などとおくと、
'l t
'lt11 'lt1 E1{rc(l* )w(l* )'lt1 (1 r(l* ))wc(l* )'lt }
'l t 1 'l t
1
程式を得る。
(4-27)
E1 (1 r (lt1 ))w(lt ) E 2 w(lt1 ) E 4 (1 r (lt1 ))bt
'bt 1 'bt
'l t1 'l t
1
r c(l * )b * 'lt1
1 n
これを行列形式で表示すると、
§ 'l t11 · § 'l t1 ·
¨
¸ ¨
¸
¨ 'l t 1 ¸ ¨ 'l t ¸
¨ 'b ¸ ¨ 'b ¸
© t 1 ¹ © t ¹
§ 'l t1 ·
¨
¸
A¨ 'l t ¸
¨ 'b ¸
© t¹
lt 1
l
1
t
(4-30)
bt 1
1 r (lt1 )
bt
1 n
ここで行列 A の要素は、 r (l )
*
これを差分の形に書くと、
(4-28)
a12
a 21
l lt1 E1(1 r(lt1))w(lt ) E2w(lt1) lt1 E4 (1 r(lt1))bt
lt11
lt1 lt
a31
r(lt1) n
bt
1 n
l t1
l 1 曲面は、同時に lt 1
lt
l 曲面で
もあり、
(4-29) E1(1 r(l1))w(l) E2w(l1) l1 E4 (1 r(l1))b 0
かつ
bt 1
l1 l
bt 曲面は、 r (l 1 )
n に注意して、
a11 E1rc(l* )w(l* ) E2wc(l* ) 1 E4rc(l* )b*
1
t 1
bt 1 bt
*
E2wc(l* )'lt1 'lt1 E4{rc(l* )b*'lt1 (1 r(l* ))'bt }
1
とおいた。
nL (1 n) 2
よって、次のように、 l t , l t , bt に関する定差方
lt 1 lt
*
のまわりで(4-28)をテーラー展開する。
E 1 (1 r (l t1 )) w(l t ) E 2 w(l t1 ) E 4 (1 r (l t1 ))bt
lt11
さらに代数的に厳密に見るため、定差方程式
*
1
E 1 (1 r (l t1 )) w(l t ) E 2 w(l t1 ) bt 1
n1 (1 n )
ここで、 E 4
4-3 のようになる。
(4-28)の定常状態を 1 つとり、l , l , b とし、そ
lt 1 とおき、 bt 1 は
(4-25)を代入すると、
l t11
3-3,3-4 と同様になると考えられる。
1
E 1 (1 r (l t )) w(l t 1 ) E 2 w(l t ) t を t 1 にすすめ、 l
l t , l t1 , b t 座標における位相図は描けないが、
b 0 平面では、図 4-2-1~4-2-4 となるはずであ
1
る。また、 l t l t 平面上の位相図は、前節図
以上の議論を l t , l t , bt 座標上で図示すると、図
すると、(4-23)は、
l t 1
l は、1 つか 2
0 としたときの l 1
E1 (1 n), a13
E 4 (1 n)
0
1, a 22 1, a 23
1
r c(l * )b* , a32 0, a33 0
1 n
行列 A の固有方程式は、固有値を O として、
a11 O a12 a13
1
M(O)
1 O 0
a31
0
O
O3 (a11 1)O2 (a11 a12 a13a31)O a13a31
n
O3
(4-29)は、バブルなしの場合の(4-19)に対応する。
(4-19)の場合は、その前に、(4-15)の形で、 k な
いし l がプラスの定常状態が 1 つか、2 つかを
調べた。従って、バブルありの場合の(4-29)に
- 109 -
{E1r c(l * )w(l * ) E2 wc(l * ) 2 E4 r c(l * )b*}O2
{E1r c(l * )w(l * ) E2 wc(l * ) 1 2E4 r c(l * )b* E1 (1 n)}O
E 4 r c(l * )b* 0
図 4-3 3 世代重複世代モデルにおけるバブルなし、バブルありの定常状態
bt
ᶆ‽ࣂࣈࣝࡢሙྜ
l t1 , bt ᖹ㠃ୖ࡛
lt
㠡Ⅼ
lt1
0
l t , lt1 ᖹ㠃ୖࡢ
ࣂࣈࣝ࡞ࡋᐃᖖ≧ែ
lt
ಙ⏝ࣂࣈࣝࡢሙྜ
l t1 , bt ᖹ㠃ୖ࡛ ≧Ⅼ
lt
ࡸ⤖⠇Ⅼ
固有値を Oi (i
を vi (i
*
信用バブルで b 0 の場合は、
1,2,3) 、対応する固有ベクトル
M (0) 0, M (1) 0
1,2,3) とすると、定差方程式(4-30)の解
であり、固有方程式の O の係数がマイナスであ
3
は、
§ 'lt1 ·
¨
¸
¨ 'lt ¸
¨ 'b ¸
© t¹
ることに注意して、3 根の積はマイナスである。
3
¦ c v (1 O )
i 1
i i
i
t
3 次曲線の形から、3 根が実根ならば、
と書ける。
O 1 O2 O3 1
O1 1 0 O2 O3
*
標準バブルで b ! 0 の場合は、
のいずれかが成り立つ。-2より大きい固有値
M (0) E 4 r c(l * )b * ! 0
M (1) E1 (1 n) 0
があれば、それに対応する分枝は収束する。他
の分枝は発散する。
なので、3 次曲線の形から、固有値は実根で、
上記以外の場合には、1 つがマイナスの実根
O1 1 O2 0 O3 となっていることが分か
る。よって、 O 2 に対応する分枝は収束する。さ
らに、 2 O1 1 の場合には、これに対応す
る分枝も収束する。O3 に対応する分枝は発散す
O1 1 、他の O2 , O3 は共役の虚根となる。O1 に
対応する分枝は収束または発散し、虚根に対応
する分枝は定常状態のまわりを回りながら収束
または発散する。
る。
- 110 -
(2) T 世代重複世代モデルの分析
(a) 各世代の各時点での金融資産の集計とマク
ws , s t
ws t , t
ws , s t
0, t
T1 1,..., T 1
3 世代重複世代モデルでは、1 人の消費者が
若年期、中年期に貯蓄して得られる金融資産を、
1 時点効用関数 u (c)
log c のときに求め、それ
らのマクロ集計量として全体の金融資産を求め、
金融資産は銀行を介してすべて企業の資本保有
のために貸し付けられるとして、財市場の均衡
を表わす資本蓄積の方程式からマクロの 1 人当
たり資本の定常状態を求めた。これは、一般の
O s , s t ! 0, t
(図 4-4 参照)
時間を t
0,1,2,... とし、各 s 0,1,2,... につき、
s 期首に生まれる人口を N s とし、人口増加率を
n とすると、 N s 1 (1 n) N s
s 期生まれの1人の消費者は、若年期の s 期、
s 1 期、…、 s T1 期に企業で働き、労働所得
を稼ぎ、消費し、貯蓄し、老年期には、s T1 1
期に退職し、 s T 1 期まで働かず、元利を含
む貯蓄を取り崩して消費し、 s T 1 期末に死
ぬ。0 期首には、0 期生まれから (T 1) 期生
まれまでの T 世代がいる。
s 0,1,2,... につき、 s 期生まれの 1 人の消費
者は、生涯の金利 rs t , t 0,1,2,..., T 1 、賃金率
ws t , t 0,1,2,..., T1 を 所 与 と し 、 生 涯 の 消 費
c s , s t , t 0,1,2,..., T 1 か ら 得 ら れ る 生 涯 効 用
U s を、各期の予算制約のもとで、 s t 期首の
金融資産 v s , s t , t 1,2,..., T 1 を調節しながら、
0,1,2,..., T 1 とすると、
(4-33)
T 1
¦E
Ls
t
log c s , s t
t 0
T 1
¦ O s , s t {w s , s t (1 rs t )v s , s t c s , s t v s , s t 1 }
t 0
1 階の条件は、
wLs
wc s , s t
T 世代重複世代モデルに一般化出来る。
Et
c s ,s t
ただし E
0, t
T 1
¦E
t 0
t
0,1,2,..., T 1
よって、
cs,st 1
cs,st
EOs,st
Os,st 1
E (1 rst 1 ), t 0,1,...,T 2
ゆえに、
(4-34)
c s , s t
t
– (1 r
s i
i 1
)
E t c s ,s , t 1,2,..., T 1
これがオイラー方程式である。
各時点の予算制約式(4-32)から、第 2 節
(2)(a)と同様にして、生涯予算制約式が求まる。
s 期生まれの 1 人の消費者にとって、 s t 期の
消費 1 単位は、 s 期の消費
1
Ots
(4-35)
t
– (1 r
i 1
c s , s t v s , s t 1
t
O s , s t
wLs
Os,st Os,st 1(1 rst 1) 0, t 0,1,...,T 2
wvs,st 1
最大化を図る。
(4-32)
とおく。
ラグランジアンを Ls 、ラグランジュ乗数を
ロの定常状態
(4-31) max U s
0,1,2,..., T1 ,
s i
単位
)
に相当する。
log c s , s t
Ots
ws , s t (1 rs t )v s , s t ,
(4-36)
0,1,2,..., T 1
1 /(1 T ) 、 0 T 1 は時間選好率、
v s , s t , t 0,1,2,..., T は s t 期 首 の 金 融 資 産 で
v s , s 0, v s , s T 0 、 s t 期 に 稼 ぐ 賃 金 率
ws , s t , t 0,1,2,..., T 1 は、
Ots1 (1 rs t 1 ), O0s
O s , s t
1 だから、
O s , s Ots
つまり、 s 期生まれの 1 人の消費者にとって、
s t 期のラグランジュ乗数は、生まれた時点の
ラグランジュ乗数 O s, s だけを決めて、後は所与
の金利 {rt }t
- 111 -
0 ,1, 2 ,... のうち、自分が生きている期
- 112 -
T ᮇ⏕ࡲࢀ
⌧ᙺᮇ
T1
㏥⫋ᮇ
㸫1
0 ᮇ⏕ࡲࢀ
⌧ᙺᮇ
T1 T
s
㏥⫋ᮇ
1
s ᮇ⏕ࡲࢀ
0
⌧ᙺᮇ
T T1
0 ṓ࠿ࡽ T1 ṓ ⱝୡ௦ ⌧ᙺᮇ ാࡁ࡞ࡀࡽᾘ㈝ࠊ㈓⵳
T 11 ṓ࠿ࡽ T ṓ ⪁ୡ௦ ㏥⫋ᮇ ㈓⵳ࢆྲྀࡾᔂࡋ࡚ᾘ㈝
0 ṓ࡛⏕ࡲࢀࠊࡍࡄാࡁࠊ T1 ṓࡲ࡛ാࡁࠊ T ṓ࡛Ṛࡠ
T 1 ᮇ⏕ࡲࢀ
T
図4-4 T世代重複世代モデルの人口構成
⌧ᙺᮇ
T1
㏥⫋ᮇ
㏥⫋ᮇ
s T1 T
s T
᫬㛫
間の分 {rt }t
s , s 1,..., s T 1 で決まる
Ots をかければ得
とおくと、
られることになる。死後のラグランジュ乗数は
O s , s T
(4-37)
0
s 期生まれの 1 人の消費者の生涯予算制約式
Jhs , s
c s,s
もちろん 0 である。
c s ,s t
(4-40)
E t Jhs , s , t
t
– (1 rs i )
は、
01,..., T 1
i 1
(4-38)
このように、 s 期生まれの1人の消費者の各
T 1
¦O
t 0
T 1
¦O
c
s , s t s , s t
t 0
Os , s ¦ Ots cs , s t
t 0
cs , s t
s i
¦
t 0
¦
t 0
)
– (1 r
s i
i 1
– (1 r
i 1
ws t
t
t
s i
)
得との差である。
T 1
¦W
hs , s は生涯労働所得であり、生涯予算制約の
t
c s , s t ws , s t
t W
– (1 r
s W i
i 0
規模を示す。
v s , s W 各世代 s の 1 人の消費者は、
生涯の金利 rs t , t
0,1,2,..., T 1 、
0,1,2,..., T1
賃金率 ws t , t
J をかけたものになる。
の金融資産は、それ以降の生涯の消費と労働所
hs , s
)
t
s 期生まれの 1 人の消費者の各期の予算制約
式(4-32)から、W 1,2,..., T 1 について、s W 期
ws , s t
T 1
– (1 r
T1
性向 E
t 0
t
i 1
決まる。生まれてから t 期目の消費の生まれた
時点における現在価値は、生涯所得 hs , s に消費
Os , s ¦ Ots ws , s t
t 0
?¦
期の消費は、現在および将来の金利と賃金率で
ws , s t
T 1
T 1
T 1
s ,s t
T 1
¦W
t
t W
t
)
– (1 r
)
T 2
v s , s t 1
s W i
i 0
v s,s t
T 1
¦W
(1 rs t )v s , s t v s , s t 1
t W 1
1
– (1 r
s W i
i 0
)
¦
t W
t W
– (1 r
i 0
s W i
)
v s , s W
を所与として、この生涯予算制約式のもとで、
よって(4-40)から、
生涯効用の最大化を図る。T , T1 d T は有限なの
で、生涯予算制約式は有限であり、ラムゼー・
モデルのような、T o f のときの収束の条件は
不要である。つまり、金利の無限系列 {rt }t
について、(4-35)の Ot をつくり、
v s , s W
¦O
t 0
s
t
s i
T 1
c s , s t ws , s t
i 1
t
– (1 r
放題なし条件は、(4-37)で満たされている。
¦E
t 0
t
c s,s
J
T 1
ここで、 E
hs , s
T 1
W
¦W E J
t
t
¦W E
t
¦E
t
t
T 1
1 E T W W
E
1 E T
t 0
とおく。 E W は、生まれて W 期目から死ぬまでの
よって、
(4-39)
)
§
·
¨ T 1
¸
T 1
w
s ,s t
¨ E t Jh ¸
r
(
1
)
¦
–
s i ¨ ¦
s,s
t
¸
t W
t W
i 1
(1 rs i ) ¸
¨
–
i 1
©
¹
する、と要求する必要がない。横断条件、借り
T 1
s i
W 1
は T o f のとき収束
(4-34)を(4-38)に代入すると、
t
i 1
0 ,1, 2 ,...
s
T 1
W 1
– (1 r )¦W
1
T 1
¦E
t
1 E
1 E T
合計の消費性向である。すると、上の金融資産
の式は、
t 0
- 113 -
- 114 -
(4-51)
とおくと、 (4-41)~(4-45)から、
(4-48)
nL kt
T1
nW v
¦
W
vt
1
T1
t W ,t
T 1
¦ nW v
W
T 11
W 1 W 1
nW E W ¦ – (1 r
¦
W
T1
T 1
¦
t W i
j 0 i j 1
1
W T1 1
1
) wt W j
j W
W 1
t W i
i
)
B (0) f 、 B c(k ) 0
については、前と同様である。
f (k t ) f c(k t )k t
f c(k t )
B (f) ! 0 は、賃金率一定、ゼロ金利のとき、
w(k t ),
r (k t )
マクロの家計の金融資産が、貯蓄残高マイナス
から、 k t についての定差方程式を得る。
借り入れ残高として、ネットでプラスになるこ
とを意味する。そうなるかどうかをみる。
(4-53)
vt
nL
1
nW E W
nL
W 1 W 1
j 0 i j 1
n E
¦ W W
W T1 1 n L
¦
W 1
T1
t W i
1
) ) w ( k t W j )
T1
¦
W 1
W 1
¦ – (1 r ( k
j 0 i j 1
nW (1 E W ) T1
¦
nL
j W
T1
¦
W
B (f )
¦ – (1 r ( k
T 1
T1
1
B (k )
て、前節ですでに分析した。 B (k ) は、
(4-49)
T1
T1
(4-52) A(k )
ここで、生産の限界条件
wt
t W i
T1
T 1
nW E W
n E
˜ W ¦ W W (T1 1)
nL
W T1 1 n L
nW (1 E W )
(T1 W 1)
nL
n
W
{E W W (1 E W )W }
¦
n
W
)) w ( k t W j )
1
L
T 1
(T1 1){¦
w ( k t W j )
W 1
j
– (1 r ( k t W i ))
T1
¦
W
i W
1
プラスの定常状態の 1 人当たり資本を k とし、
(4-49)ですべての k t を k とおいて、両辺を k で
T 1
T 1
nW (1 E W )
n (1 E W )
n E
¦ W
¦ W W}
nL
n
W T1 1
W T1 1 n L
L
T 1
T 1
n (1 E W )
n
nW
¦ W}
W (T1 1){¦ W
nL
nL
W 1
W T1 1 n L
ここで、 r
1 /(1 n) とおくと、 nW
W 1
JW
nE
f (k)
1 {
f c(k)}u{¦ W W ¦(1 f c(k))W j 1
k
W 1 nL j 0
T1
W 1
T1
1
nW EW T1
n (1 EW ) T1
(1 f c(k))W j 1 ¦ W
}
¦
¦
nL j W (1 f c(k))j W 1
W 1
T1 1 nL j 0
¦
W
J
W
これは、3 世代重複世代モデルの(4-14)と同じ形
T
であり、そこと同様に、
(4-50) A(k )
1 EW
¦E
t
¦E
t
t 0
T 1
W 1
J¦Et
t 0
t 0
T 1
f (k )
f c(k )
k
n0 r W
さらに、
割ると、
nW EW T1
¦(1 f c(k))W j1
T1 1 nL j 0
T 1
¦
W
A(k ) については、CES 生産関数の場合につい
j
–W (1 r
とおくと、定常状態 k では、
wt W j
T1
j 1
j 0
L
j 0 i j 1
T1
¦
W
W 1
n (1 EW )
1
¦ W
¦
nL j W (1 f c(k))j W 1
W 1
W 1
¦ nW (1 E W )¦
kt
nE
T1
t W ,t
nW E W ¦ – (1 rt W i )wt W j
rt
T1
W W
¦
¦(1 f c(k))W
n
W
B(k)
J
1 EW 1
, E 1
1 E 2
,E
T 1
1
1 / ¦ E t ,J T
1
とおく。
t 0
J W は、生まれてから W 期までの消費性向の累積
であり、 E 1 ならば、上に凸で 1 に向かい、
E 1 ならば、生涯均等に消費する。
- 115 -
B (f )
(4-54)
n0
M ( E , r , T , T1 ) とおくと、
nL
よって、 t 期における t W 期生まれの 1 人の消
費者の消費のオイラー方程式は、
M ( E , r , T , T1 )
T1
r W W (T
¦
W
1
1
T 1
1)¦ r W J W (T1 1)
¦ rW
W
W 1
E (1 rt 1 )ct W ,t ,
ct W ,t 1
(4-55)
T 1
W
0,1,..., T 1
t 期における全人口の消費を集計したマクロ
T1 1
B(f) の符号をみるには、 M ( E , r , T , T1 ) の符
号をみればよい。
各人が死ぬまで働き、時間選好率がゼロなら
ば、各人は稼いだ所得を消費に回すだけで、マ
クロの家計の金融資産はゼロになることが予想
される。実際、これは証明される。
の消費は、
(4-56)
T 1
c
¦
W
Ct
0
t W ,t
N t W
よって、(4-55)の右辺の和を作ると、
T 1
E (1 r
¦
W
E (1 rt 1 )C t
死ぬまで働くのでなく、老年期に備えて貯蓄
T 1
c
¦
W
する場合には、マクロの家計の金融資産がプラ
0
t W ,t 1
c
¦
W
人口増加率がゼロの近傍で、かつ時間選好率が
1
(付録 7.参照)
0
1
t (W 1),t 1
N t (W 1)
t 1W ,t 1
N t 1W
t 1W ,t 1
N t 1W ct 1,t 1 N t 1 ct 1T ,t 1 N t 1T
T 1
c
¦
W
ゼロの近傍の場合には、これが証明される。
)ct W ,t N t W
T
c
¦
W
N t W
T
スになり、 B (f) ! 0 となることが予想される。
t 1
0
C t 1 c t 1,t 1 N t 1
よって、このような条件が成り立っているとき
は、図 4-1-1,2,3 と同様の結果を得る。CES 型
ここで、 t 1 期には t 1 T 期生まれは死んで
生産関数で、 U ! 0 の場合には、定常状態が複
いるので、ct 1T ,t 1
数均衡の可能性がある。
このような条件が成り立たない場合には、
B(f) 0 の可能性がある。 B c(k ) 0 だから、
ある k ! 0 が存在して、 B ( k ) 0 となる。これ
は第 3 節の図 3-1-1,3-1-2 の状況に似ている。
ただし、 B (0)
f 、1 / B(0)
0 だから、複数均
0 である。T が大きければ、
t 1 期に生まれたばかりの世代の消費
ct 1,t 1 N t 1 は無視してよい。よって、
(4-57) C t 1 E (1 rt 1 )C t
マクロの 1 人当たり消費を ct
両辺を全人口 N 0t で割ると、
衡にならず、プラスの定常状態は 1 つになる。
(b) T が大きいときはラムゼー・モデルに近似
前項のやり方で T 世代重複世代モデルの定
常状態の安定性の分析をするには、T 1 次の定
Ct とし、
N 0t
(1 n)ct 1
E
E (1 rt 1 )ct
1 とおくと、上の式は、
1T
(4-58)
ct 1
1 rt 1
ct
(1 T )(1 n)
差方程式を扱う必要があり、難しい。しかし
これは、第 2 節のラムゼー・モデルにおいて、
T が大きいときは、個々の消費者のオイラー方
特に 1 時点効用関数 u (ct )
程式を直接マクロで集計して人口で割ると、マ
log ct とした時のオ
イラー方程式(2-30)になる。これから、T , n, rt 1
クロの 1 人当たり消費行動が、再びオイラー方
が小さいときは、(2-61)と同様に、
程式で近似出来ることが分かる。
s 期生まれの1人の消費者の消費のオイラー
方程式は(4-34)から、
c s , s t 1
(4-59) ct 1 ct
が出る。
E (1 rs t 1 )c s , s t
- 116 -
ct ( f c(k t 1 ) T n)
他方、マクロの資本蓄積の方程式は、各消費
者の予算制約式を集計してマクロの金融資産を
求め、それが企業の資本保有のために貸し付け
られるとして求めることが出来る。
よって、財市場の均衡を表わす資本蓄積の方程
式が出る。
(4-65)
K t 1
K t F ( K t , N Lt ) C t
t 期における t W 期生まれの 1 人の消費者の
労働人口 1 人当たり資本、労働人口比率を
予算制約式は、(4-32)と同様に、
(4-60)
ct W ,t vt W ,t 1
W
wt W ,t (1 rt )vt W ,t
(4-66) vt 1
T1
i 0
を用いて、 Wt
t i
(4-61)
wt N Lt と書く。
T 1
v
¦
W
T 1
0
t W ,t 1
1
N t W
T 1
v
¦
W
1
(1 n)k t 1
t 1W ,t 1
(1 rt )k t wt n L ct
k t f (k t ) n L ct
これは第 2 節ラムゼー・モデルにおける資本蓄
N t W
t W ,t
とおくと、 vt T 1,t 1
v
¦
W
(4-67)
0 に注意して、
Vt
n L k t 1
(4-65)の各辺を N Lt で割ると、
マクロの消費(4-56)と同様に、マクロの金融
資産を、 vt ,t
N Lt
N 0t
とおくと、1 人当たり金融資産の運用(4-64)は、
マクロの労働所得を、労働人口
¦N
Kt
, nL
N Lt
kt
0,1,..., T 1
N Lt
K t rt K t Wt C t
積の式(2-5)と類似している。これを差分の形に
0 に注意して、
書くと、(2-59)と同様に、
T 2
(4-68) k t 1 k t
v
¦
W
0
N t 1W
t W ,t 1
N t W
1
( f (k t ) nk t n L ct )
1 n
(4-59)を再掲すると、
Vt 1
(4-59) ct 1 ct
となる。
ct ( f c(k t 1 ) T n)
よって、(4-60)の両辺に人口をかけて集計する
よって、マクロの集計量の 1 人当たり平均の
と、マクロの家計の予算制約式を得る。
間の関係式として、ラムゼー・モデルに類似の
(4-62)
k t , ct についての定差方程式が得られた。
C t Vt 1
Wt (1 rt )Vt
人口 1 人当たり金融資産を v
t
このように、マクロの集計量の 1 人当たり平
Vt とおき、
N 0t
(4-62)の両辺を N 0t で割ると、
(4-63) ct (1 n)vt 1
均は、あたかも、無限寿命の 1 人の消費者が、
金利 {rt }t
式(2-6)を、マクロの 1 人当たり平均量の関係と
して表わすものである。
max U
K t 1
T
¦E
t 0
(4-69) ct (1 n)vt 1
t
金融資産がすべて企業の資本保有のために貸
Vt 1
01, 2 ,...
を所与とし、
のもとで、生涯効用を最大化するように動く。
これは、ラムゼー・モデルの最初の予算制約
(4-64)
{wt }t
その人生の n L 分だけ働いて、予算制約式(4-63)
n L wt (1 rt )vt
し付けられているとすると、
0 ,1, 2 ,... 、賃金率
t
log ct
n L wt (1 rt )vt ,
0,1,2,...
この最大化問題のラグランジアンを L 、ラク
ランジュ乗数を Ot とすると、
- 117 -
- 118 -
5. 連続時間モデルによる分析
 F ( K ( t ), N ( t ))
 K (t )
 F ( K ( t ), N ( t ))
w (t ) 
 N (t )
r (t ) 
(1) ラムゼー・モデルにおけるマクロ経済計算
第 1 節では、離散時間の場合のマクロ経済
(5-1), (5-2)から、財市場の均衡を表わす資
計算を述べたが、ここではそれを連続時間の
場合に述べる。連続時間の場合は期首、期中、
期末の区別がないので、分析が簡単化される
とともに、現実との対応で捨象される点があ
本蓄積の式が出る。
(5-4)
ることに注意すべきである。
時間軸を t  0 とし、時点 t における人口を
dK (t )
 r (t ) K (t )  w (t ) N (t )  C (t )
dt
 F ( K (t ), N (t ))  C (t ), t  0
以上のマクロの集計量を人口で割って、人
N (t ) とし、増加率 n で増えるとする。
口 1 人当たり変数に変換する。ラムゼー・モ
1 dN (t )
N (t ) dt
デルでは、この人口 1 人当たり変数を、1 人
n
の代表的消費者が体現していると考える。
各家計は、金利 r (t ) 、賃金率 w(t ), t  0 を
所与として、労働所得を稼ぎ、消費し、貯蓄
し、金融資産を蓄積し、取り崩す。時点 t に
おけるマクロの家計全体について集計した金
融資産を V (t ) 、消費を C (t ) とすると、家計全
体の予算制約式は、
C (t )
V (t )
K (t )
, v (t ) 
, k (t ) 
,
N (t )
N (t )
N (t )
Y (t )
F ( K (t ), N (t ))
y (t ) 
, f ( k (t )) 
 F ( k (t ),1)
N (t )
N (t )
c (t ) 
(5-1)の両辺を N (t ) で割ると、
dV (t ) dv (t )
dN (t )

N (t )  v (t )
dt
dt
dt
(5-1) C (t )  dV (t )  w (t ) N (t )  r (t )V (t ), t  0
dt
V (0)  V0 (所与)
などに注意して、1 人の代表的消費者の予算
時点 t で、家計の金融資産 V (t ) は、すべて
銀行に預金され、銀行はそれをすべて企業の
制約式は、
(5-5)
資本保有 K (t ) のために貸し付けるとすると、
(5-2)
V (t )  K (t ), t  0
c (t ) 
dv (t )
 nv (t )  w(t )  r (t )v (t ), t  0
dt
v(0)  v0 (所与)
1 人当たりの家計の金融資産の方程式として
K (0)  K 0  V0
表わすと、
時点 t で、企業は資本 K (t ) 、労働人口 N (t )
を生産に投入して、1 次同次の生産関数 F に
(5-6)
dv(t )
 (r (t )  n)v(t )  w(t )  c(t )
dt
より財を Y (t ) 生産し、生産により得た所得は、
家計の金融資産がすべて企業の資本保有のた
レンタル所得 r (t ) K (t ) 、労働所得 w(t ) N (t ) に
めに貸し付けられている条件は、
分配される。生産関数は、これまでと同様に、
減価償却控除後のネットの生産関数と考える。
(5-7)
v(t )  k (t ), t  0, k (0)  k 0  v 0
企業の生産の条件は、
(5-3)
Y (t )  F ( K (t ), N (t ))
 r (t ) K (t )  w(t ) N (t ), t  0
生産の限界条件は、
(5-8)
y(t )  f (k (t))  r(t)k (t)  w(t ),t  0
(5-9)
r (t )  f ( k (t )),
w(t )  f ( k (t ))  f ( k (t )) k (t ), t  0
- 119 -
(5-12)
資本蓄積の方程式は、
(5-10)
dk (t )
 (r (t )  n)k (t )  w(t )  c(t )
dt
 f (k (t ))  nk (t )  c(t ), t  0
T

0
0


(2) ラムゼー・モデルにおける 1 人の消費者の
t
c ( t ) exp(   ( r ( )  n ) d  ) dt
T
t
w ( t ) exp(   r ( )  n ) d  ) dt  v ( 0 )
0
0
となる。
消費・貯蓄行動の定式化
この消費者が時点 t  0 に生まれてから時
ラムゼー・モデルにおいては、1 人の代表
点 t  T に死ぬまでの全生涯の効用を、生涯
的消費者が時点 t  0 に生まれ、働き、労働所
予算制約式のもとで最大化しているならば、
得を稼ぎ、消費し、貯蓄し、金融資産を蓄積
その任意の途中時点 t  s においても、時点 s
し、取り崩し、時点 t  T に死ぬとして消費・
の金融資産 v(s ) を所与として、時点 s 以降の
貯蓄行動を定式化し、その後 T   とする。
この 1 人の消費者は、時点 t  0 における金
融資産 v(0) 、各時点 t の金利 r (t ) 、賃金率 w(t )
を所与として、働き、労働所得を稼ぎ、消費
生涯予算制約式のもとで、時点 s 以降の生涯
効用を最大化しているはずである。
(5-13) max U ( v ( s )) 
し、貯蓄し、金融資産を蓄積し、取り崩す。
(5-14)
消費者は、1 人当たり消費 c(t ) から u (c(t )) の

効用を受け、それを時間選好率  ,0    1 で
T
s
u ( c ( )) exp(  ) d 
t
c ( t ) exp(   ( r ( )  n ) d  ) dt
s


時点 t  0 に割り引いて合計した、生涯効用を
T
s
t
w ( t ) exp(   ( r ( )  n ) d  ) dt  v ( s )
s
これは、ベルマンの原理と同じことである。
最大化しようとする。
(5-11) max U (v ( 0 )) 
T
s


T
0
この積分制約下の積分最大化は、変分法で
u ( c ( )) exp(  ) d 
等周問題と呼ばれるものであり、関数空間で
この消費者にとって、時点 t における 1 人
当たりの消費 c(t ) の時点 t  0 に引き戻した
考えると、ラグランジュ乗数法と同じやり方
で解くことが出来る。(付録 10、12 参照)
価値は、第 1 に、金利上昇分で割り引くため、
それによれば、(5-13)の積分 U (v( s )) を、関
t
数空間において c(t ) の汎関数と考えて微分
0
(フレッシェ微分)すると、ラグランジュ乗数
exp(   r ( ) d  )
を乗ずる必要がある。第 2 に、時点 t の人口
 (s) が存在して、h(t ) を任意の可積分関数と
は時点 t  0 の人口の
して、
e nt  exp(

t
0
(5-15)
nd  )
倍になっているので、これを乗ずる必要があ
る。両者をあわせて、時点 t における 1 人当
たりの消費 c(t ) の時点 t  0 に引き戻した価
D cU ( v ( s )) h 

T
s
u ( c ( t )) exp(  t ) h (t ) dt
T
t
s
s
  ( s ) D c {  ( c (t )  w ( t )) exp(   ( r ( )  n ) d  )dt  v ( s )}
T
t
s
s
  ( s )  exp(   ( r ( )  n ) d  ) h ( t ) dt
となる。 h(t ) は任意だから、積分記号をはず
値は、
t
したもの同士が等しく、 s  t  T について、
0
(5-16)
c ( t ) exp(   ( r ( )  n ) d  )
となっている。1 人当たり賃金 w(t ) についても
同様なので、この消費者の生涯予算制約式は、
t
u (c(t )) exp(t )   ( s ) exp(  (r ( )  n)d )
- 120 -
s
ハミルトニアンを
が成り立つ。
(5-26)
これは、積分形式のラグランジアンを
H (c (t ), v (t ),  (t ), t )  u ( c (t )) exp( t )
  (t ){( r (t )  n )v (t )  w(t )  c (t )}
(5-17)
L ( s )  U ( v ( s ))
T
t
s
s
とおくと、(5-22)、(5-25)、(5-6)から、ポント
  ( s ){  (c (t )  w(t )) exp(   ( r ( )  n ) d ) dt  v ( s )}
リャーギンの最大値原理の式が出る。
積分の内側のラグランジアンを
H
0
c(t )
d (t )
H

dt
v(t )
dv(t )
H

dt
 (t )
(5-18)
l ( s )  u ( c ( t )) exp(  t )
(5-27)
t
  ( s )( c ( t )  w ( t )) exp(   ( r ( )  n ) d  )
s
とおいて、
(5-19) Dc L( s )  0
時点 t 以降の生涯効用 U (v(t )) が金融資産
(5-20) l ( s )  0
c(t )
v(t ) を所与として最大化されているとき、こ
の所与の金融資産 v(t ) が動いたときに生涯効
用 U (v(t )) がどう動くかは、(5-17)を
とすればよいことを示す。
(5-16)で特に t  s のとき、
(5-21) u (c( s )) exp(s )   ( s )
(5-28)
t  s を任意に固定し、時点 t 以降の生涯効用
L(t)  U (v(t))
を最大化しても同じ結果が出るから、
 (t){ (c(s)  w(s))exp( (r( )  n)d )ds  v(t)}
(5-22) u ( c (t )) exp(  t ) 
 (t )
t
線定理により、
s
(5-29)
 (t )   ( s ) exp(   ( r ( )  n ) d  )
t
 (t )   ( 0 ) exp(   ( r ( )  n ) d  )
0
となる。(5-22)、(5-24)により  (t ) は、(5-12)
で直感的に求めたように、時点 t における消
費 1 単位の時点 t  0 に引き戻した価値を表
わす。
時点 s 以降の生涯予算制約式(5-14)は、t で微
分すると、微分形式の予算制約式(5-6)そのも
(5-6)
dv(t )
 (r (t )  n)v(t )  w(t )  c(t )
dt
となるから、 v(t ) による偏微分の中が等しい
とおけば、U (v(t )) が最大化されているとき、
の方程式が成り立つ。
d (t )
 (r (t )  n) (t )
dt
のになっているから、再掲すると、
U ( v (t ))

D v ( t )U ( v (t ))  D v ( t )
t
t
d  (t )
H


dt
 v (t )
次のように、ハミルトン・ヤコビ・ベルマン
(5-23)を t で微分すれば、
(5-25)
Dv ( t )U (v(t ))  Dv (t ) L(t )   (t )
これから、
特に s  0 のときは、
(5-24)
s
t
と書いて、関数空間での微分についての包絡
これを(5-16)に代入して、
(5-23)
T
t
(5-30)
U (v(t ))
 H
t
同じく、時点 t 以降の生涯効用 U (v(t )) が最
大化されているとき、将来の特定時点 s 0  t
における賃金率 w( s 0 ) 、金利 r ( s 0 ) が動くと
U (v(t )) がどう動くかは、パラメータ w( s) 、
r (s ) にインパルス w( s 0 ) 、 r ( s 0 ) が入った
- 121 -
ときの変化  wU (v(t )) 、  r (v(t )) を求めれば
よい。 (5-28)に包絡線定理を適用し、
(5-34)
(5-31)

T
t
exp(   ( r ( )  n) d )dt 
0
 w U ( v ( t ))   w L ( t )
0
は T   で収束
s0
  ( t ) exp(   ( r ( )  n ) d  ) w ( s 0 )
しなければならない。このためには(付録 13)
t
  ( s 0 ) w ( s 0 )
lim t   (t )  0
(5-35)
(5-32)
が必要である。これは、横断条件である。
 rU (v (t ))   r L (t )
T
(5-33-1)で t のところに 0 を入れ、s 0 のところ
s
  (t )  (c ( s )  w( s ))r ( s0 ) exp(   ( r ( )  n ) d ) ds
s0
t
に t を入れると、
s0
  (t ) exp(   ( r ( )  n ) d )v ( s0 )r ( s0 )
t
(5-36)  ( t ) 
  ( s0 )v ( s0 )r ( s0 )
 wU ( v ( 0 ))
 w (t )
であるから、横断条件は、遠い将来の賃金率
よって、
(5-33-1)  ( s 0 ) 
1 T
 ( ) d
 (0) 0
 w U ( v ( t ))
w ( s 0 )
 r U ( v (t ))
(5-33-2) v ( s 0 )   r ( s 0 )    w ( s 0 )
 wU ( v (t ))
r ( s 0 )
w ( s 0 )
変化が生涯効用に及ぼす影響は、ゼロに近づ
くことを意味する。
さらに、時点 s 以降の積分
U max

T

T
s
s
このように、時点 t における将来時点 s 0 の
t
c ( t ) exp(   ( r ( )  n ) d  ) dt ,
0
t
w ( t ) exp(   r ( )  n ) d  ) dt
0
は、 T   、 s   のとき、ゼロに収束し
ラグランジュ乗数  ( s 0 ) は、その将来時点に
なければならない。(5-14)よりこの 2 つの積
おいて賃金率 w( s 0 ) が高まったとき、生涯効
分は、
用 U (v(t )) がどれ位高まるかを表わす。
T
また、時点 t における金融資産 v(t ) は、将
来時点 s 0 において賃金率 w( s 0 ) が下がった

s
t
c(t ) exp( (r ( )  n)d )dt
0
T
t
s
s
0
0
  w(t ) exp( (r ( )  n)d )dt  v(s) exp( (r ( )  n)d )
とき、金利 r ( s 0 ) が高まって金融資産の価値
となっている。 T   、 s   のとき、右
が高まり、もとの生涯効用水準 U (v(t )) を維
辺第 2 項もゼロに収束しなければならないが、
持出来るように持つのが最適ということにな
(5-24)から、それは
る。
ラムゼー・モデルでは、消費者は寿命 T が
(5-37)
lim t   (t )v(t )  0
無限だと考えるので、生涯予算制約式(5-12)
を意味する。これは、借り放題なし条件である。
の両辺の積分は T   で収束しなければな
(5-32)で t のところに 0 を入れ、s 0 のところに
らない。
t を入れると、
まず、金利 r (t ) 、賃金率 w(t ) 、 0  t  T を
所与としているが、T   のとき、賃金率が
(5-38)
 (t )v(t ) 
 rU (v(0))
r (t )
有界 w(t )  w のときに、生涯労働所得が収束
であるから、借り放題なし条件は、遠い将来
するためには、
の金利変化が生涯効用に及ぼす影響は、ゼロ
に近づくことを意味する。
- 122 -
(3) ラムゼー・モデルで時間選好率の異なる
(5-41) max
複数の消費者を考える場合
数の消費者を考える。これらの消費者は、瞬
 u (c
i
( t ) ) exp(  i t ) dt
0
ラムゼー・モデルでは、1 人の代表的消費
者だけを考えるが、ここではより一般的に複
T
dv i (t )
 ( r ( t )  n ) v i ( t )  w (t )  c i ( t )
dt
t  0, i  1, 2,..., M
(5-42)
間的な効用関数 u (c(t )) は同じだが、時間選好
率が異なるとする。それを
ポントリャーギンの最大値原理により、ハ
1  1   2  ...   M  0
とし、それぞれに該当する人口を N i (t ) 、全
人口に占める割合を ni とする。またそれぞれ
ミルトニアン、共役変数を H i , i (t ) とすると、
の時間選好グループの消費の合計、金融資産
1 階の条件は、
の合計を C i (t ),Vi (t ) とする。すると、
(5-44)
N i (t ) M
,  N i ( t )  N ( t ),
N ( t ) i 1
ni 
M
C
i 1
H i  u (c i (t )) exp(  i t )
  i (t ){( r (t )  n )v i (t )  w(t )  c i (t )}
H i
d  i (t )

   i (t )( r (t )  n)
 v i (t )
dt
さらに、
M
i
(5-43)
( t )  C ( t ),  V i ( t )  V ( t )
(5-45)
i 1
H i
 0  u (c i (t )) exp(  i t )   i (t )
c i (t )
それぞれの時間選好グループの 1 人の消費者
寿命 T   とするので、横断条件は、
の消費、金融資産は、i  1,2,..., M について、
(5-46) lim
C (t )
V (t )
ci (t )  i , vi (t )  i
N i (t )
N i (t )
c (t ) 
M
M
i 1
i
i
i 1
i
i
i 1
 i (T )  0
(5-47) lim T  v i (T )i (T )  0
M
 n c (t ), v (t )   n v (t ),  n
T 
借り放題なし条件は、
i
(5-44)を解くと、
1
それぞれの時間選好グループについて、予算
(5-48)  i ( t )   i ( 0 ) exp( 

t
0
( r ( )  n )d  )
だから、
制約式
dVi (t )
 w(t ) N i (t )  r (t )Vi (t ),
dt
t  0, i  1,2,..., M
(5-49)
(5-39) C i (t ) 
t
 0 (t )  exp(   ( r ( )  n ) d  )
0
とおくと、
が成り立つので、1 人当たりの予算制約式が
成り立つ。
(5-50)  i (t )   i ( 0 )  0 (t )
であり、横断条件(5-46)は、
dv i (t )
 nv i (t )  w (t )  r (t ) vi (t ),
dt
t  0, i  1, 2,..., M
(5-40) ci (t ) 
(5-51) lim t    0 ( t )  0
それぞれの時間選好グループの 1 人の消費
となり、時間選好グループ i に依存せず、金
者は、金利 r (t ) 、賃金率 w(t ), t  0 を所与と
利と人口増加率だけで決まることが分かる。
して、予算制約のもとで、生涯効用関数を最
(5-44)、(5-45)から、
大化するように、消費 ci (t ) 、金融資産 vi (t ) を
選ぶ。
dc i ( t )
exp(  i t )   i u ( ci ( t )) exp(  i t )
dt
  u ( c i ( t )) exp(  i t )( r ( t )  n )
u ( c i ( t ))
よって、
- 123 -
- 124 -
共役変数  (t ) は各グループ共通だから、借
f (k (t ))  rk (t )  a
ここで r, a は定数で、  1  n  r  2 n
り放題なし条件(5-47)も算術平均で成り立つ。
となっているとする。
間選好グループの金融資産の算術平均であり、
S
(5-60) lim t 
 (t )v(t )  0
(厳密には、区間
S
[k1* , k 2* ] を部分区間に区分
よって、マクロの集計量である代表的消費
して、 f ( k (t )) をそれぞれの部分区間で折れ
者に対して、定常状態が存在し、位相図は離
線で近似した場合に、1 部分区間を考えるの
散時間の場合の図 2-3 と同じものが描ける。
と同じである。)
(b) 時間選好率の分布が双峰型の場合
時間選好率が高く、先楽後憂の第 1 の消費
者グループと、時間選好率が低く、先憂後楽
の第 2 の消費者グループがある場合を考える。
上で M  2,  1   2  0 であり、簡単のため、
人口は両者等しいとする。すると、(5-55)は、
すると、(5-61)は、
dk (t )
 (r  n)k (t )  c(t )  a
dt
(5-62) c(t )  1 (c (t )  c (t ))
1
2
2
d (logc i (t ))
  i (r   i  n), i  1,2
dt
よって、 ci (t )  ci (0) exp( i (r   i  n)t )
ci (0)  2 i , i  1,2 とおいて、
dk (t )
 f ( k (t ))  nk (t )  c (t )
dt
1 2
(5-61) c (t )  2  c i (t )
i 1
d (log c i (t ))
  i ( f ( k (t ))   i  n )
dt
i  1,2
c (t ) 
2

i 1
i
exp(  i ( r   i  n ) t )
よって、
2
dk (t )
 (r  n)k (t )    i exp( i (r   i  n)t )  a
dt
i 1
この解は、未定乗数法により、
f (k )   i  n, i  1,2 とすると、1   2 だか
*
*
*
ら、 k1  k 2 であり、 k (t )  k1 のときは、い
k (t )  
ずれの消費者グループにおいても、1 人当た

*
i
り消費は増えるから、経済全体でも 1 人当た
2
i 1
i
( r  n)   i ( r   i  n )
exp( i (r   i  n)t )
a
 3
rn
り消費は増える。 k (t )  k 2 のときは、いずれ
ここで、  3 は、 t  0 のとき、 k (0)  k 0 とな
の消費者グループにおいても 1 人当たり消費
るようにとる。
*
は減るから、経済全体でも 1 人当たり消費は
減る。
*
*
これに対して、k1  k (t )  k 2 のときは、第
1 のグループの 1 人当たり消費は減り、第 2
のグループの 1 人当たり消費は増えるので、
よって、
2
 i  i ( r   i  n)
dk (t )

exp( i (r   i  n)t )
dt
i 1 ( r  n)   i ( r   i  n)
2
dc (t )
   i i (r   i  n) exp( i ( r   i  n)t )
dt
i 1
1  n  r  2 n だから、 c1 (t ) は時間とと
経済全体の 1 人当たり消費は、増えることも
もに減り、c 2 (t ) は増える。両者の平均として、
減ることもあり得る。
このように経済の動きが複雑になるのは、
*
1
k  k (t )  k
*
そのようすを簡
2 のときである。
単にみるため、時間
*
1
り資本が k  k 0  k
傍で、生産関数は、
c(t ) は時間とともに減ってから増えるか、増
え続けるかである。
t  0 ですでに 1 人当た
dk (t ) / dt の第 1 項の係数はマイナスであ
*
2 となっており、その近
り、第 2 項の係数は、プラス、マイナスがあ
り得る。
- 125 -
以上を位相図でみると図 5-1 のようになる。
1 人当たり消費が増える。
先楽後憂の第 1 消費者グループにとって、
鞍点は 1 人当たり資本が k
*
1 と低く、先憂後楽
の第 2 消費者グループにとって、鞍点は 1 人
*
しかし、それが供給力の天井にぶつかり、
dk (t ) / dt がマイナスになると、③のように、
資本を取り崩して消費に回し、次いで消費も
当たり資本が k 2 と高いところにある。両方の
減ることがあり得る。この場合は、循環が生
グループが、 t  0 において、1 人当たり資本
ずる可能性がある。
k 0 を所与として、それぞれの鞍点経路に相当
する 1 人当たり消費 ci (0), i  1,2 から出発す
本を取り崩して消費に回し続ける。⑤は、消
る場合を考える。
費を減らして資本蓄積に回し続ける場合であ
k (t )  k
*
1 の範囲では、経済全体の
1 人当た
④は消費が供給を上回り続ける場合で、資
る。
り資本と消費は、
これらの動きは、平均を表わす代表的消費
k 0 、 c(0)  (c1 (0)  c 2 (0)) / 2
者がいない場合の、マクロの集計量の動きで
から出発し、図 5-1 の①のように、2 つの鞍
あり、擬人的な経済合理性を持った動きでは
点経路の間を通ると考えられる。
ない。このため、境界条件、借り放題なし条
*
1
k  k (t )  k
*
2 の範囲では、
dk (t ) / dt がプ
ラスで、供給力の内側でプラスの資本蓄積が
件は必ずしも成り立たない。よって、これら
の経路のどれもがあり得ることになる。
出来るならば、②のように、1 人当たり資本、
図 5-1 ラムゼー・モデルで、時間選好率の異なる複数の消費者がいる場合の動き
c1
c(t )
c1 , c 2
c
f (k ) nk
c2
c1 , c 2
մ
ճ
c 2 ࡢࡳࡢ
ሙྜࡢ㠡Ⅼ
c1 ࡢࡳ
ࡢሙྜ
ղ
ࡢ㠡Ⅼ
ձ
c1 ,c2
0
k
c1
յ
c1 ,c2
c2
k (t )
*
1
k
- 126 -
*
2
(5-63)
(4) 動学的に非効率な成長となる条件
離散時間の場合に第 2 節(5)でやった問題
は、連続時間の場合にも同様に考えられる。
ラムゼー・モデルで、1 人の代表的消費者


s
t

dt
 exp(  f ( k ( )  n ) d ) dt  
 (t ) s
s
が 0  t  T ( T は後で  の極限をとる)の間
これは経済がパレート最適な資本蓄積経路を
に、瞬間的な効用関数を u (c(t ))  log c(t ) と
たどっていることを示すキャス、バラスコ、
して、各時点 s で次の最大化問題を解くとす
シェルの条件である。これは、横断条件(5-35)
る。
からも出る。この対偶として、
(5-64)
T
max  log(c(t )) exp(t )dt

s

s
dk (t )
 f (k (t ))  nk (t )  c (t ), k (0)  k 0
dt

t
dt
 exp(  f ( k ( )  n ) d  ) dt  
 (t ) s
s
ならば、資本蓄積が過剰で、 f ( k ( ))  n が
ポントリャーギンの最大値原理により、ハ
ミルトニアン、共役変数を H ,  (t ) とおくと、
小さ過ぎ、資本を減らせば消費が増える、動
学的に非効率な成長となっている。
前項(5-54)で   1 とした場合と同様に、次の
1 階の条件を得る。
(5) ラムゼー・モデルでも、横断条件が成り立
d (log c(t ))
 f (k (t ))    n
dt
たなければ、バブルがある
離散時間の場合は、第 2 節(6)でやったが、
よって、 t  s について、(5-48)も使って、
連続時間の場合は、ラムゼー・モデルに単純
t
に貨幣を導入すると矛盾が生ずる、という議
c(t )  c( s) exp( ( f (k ( ))    n)d
論と同じやり方で出来る。
s
代表的消費者は、次の最大化問題を解く。
t
c( s) exp( f (k ( )  n)d )  c( s) ( s) /  (t )
s
 c(t ) exp( (t  s))
max
T
c(s) (s)
s
T
 u ( c (t )) exp(  t ) dt
(5-65)
t
dt
 c(s) exp( f (k ( )  n)d )dt
 (t )
s
s
T
  c(t ) exp(( (t  s))dt
s
(T  )
0
鞍点経路の上で、この各辺を s  t  T の間で
t につき積分すると、 c(t )  c( s ) に注意して、
T
dv(t )
 (r (t )  n)v(t )  w(t )  c(t )
dt
最大化問題のハミルトニアン、共役変数を
H ,  (t )  0 とすると、
H  u (c(t )) exp(t )
  (t ){(r (t )  n)v(t )  w(t )  c(t )}
T
1 階の条件は、
s
(5-66)
d (t )
H

  (t )(r (t )  n)
dt
v(t )
(5-67)
H
 0  u (c(t )) exp(t )   (t )
c(t )
 c( s )  exp(( (t  s ))dt
1
 c( s ) {exp(( (T  s ))  1}  (T  )

よって、
- 127 -
(5-68)
d (log c(t ))
  (r (t )    n)
dt
dk (t )
 f ( k (t ))  nk (t )  c (t )
dt
d (log c (t ))
(5-76)
  ( f ( k (t ))    n )
dt
db (t )
 ( f ( k (t ))  n )b (t )
dt
ここで、前と同様に、
(5-69)
1


u (c(t ))c(t )
u (c(t ))
とし、以下、  一定の場合を考える。
v(0)  k (0)  b(0) で、 t  0 でバブルを導
入すると、 v(0) 所与として、
横断条件、借り放題なし条件は、
(5-70)
lim T    (T )  0
(5-71)
lim T   v (T )  (T )  0
標準バブルの場合は、
k (0) を減らして b(0)  0 を導入、
信用バブルの場合は、
b(0)  0 を導入して k (0) を増やす
標準バブルの場合は、1 人当たり金融資産
v(t ) は、企業の 1 人当たり資本保有 k (t ) のた
めの貸し付けと、1 人当たりバブル b(t ) の購
ことになる。
入に当てられる。
d (b (t ) (t )) db (t )
d  (t )

 (t )  b (t )
dt
dt
dt
 ( r ( t )  n ) b ( t )  (t )  ( r ( t )  n )b (t )  (t )  0
信用バブルの場合は、1 人当たり金融資産
v(t ) 、および 1 人当たりバブル b(t ) の借り入
れにより、企業の 1 人当たり資本保有 k (t ) の
ための貸し付けが行われる。標準バブルを
b(t )  0 、信用バブルを b(t )  0 として、
v(t )  k (t )  b(t )
(5-72)
ところが、
よって、
b ( t )  (t )  b ( 0 )  ( 0 )  b ( t ) 
b ( 0) (0)
 (t )
ゆえに、横断条件(5-41)から、
1 人当たりバブルは、標準バブルの場合は預
lim T  b(T )  (b(0)  0)
または
 (b(0)  0)
金との裁定の条件から、信用バブルの場合は
借り換え、追い貸し、ロールオーバーの条件
ところが、どのような成長経路をとっても、
から、
lim T  k (T ) は有限だから、(5-72)から、1 人
(5-73)
db (t )
 ( r (t )  n )b (t )
dt
当たり金融資産はすべてがバブルになる。こ
れは経済的にあり得ない。よって、もともと
に従う。
バブルはゼロ、b(0)  0 でなければならない。
(5-65)に(5-72)を代入し、(5-73)を用いると、
すなわち、代表的消費者が合理的なラムゼ
財市場の均衡を表わす資本蓄積の方程式を得
ー・モデルに、単純にバブルを導入すること
る。
は出来ない。
(5-74)
dk (t )
 f ( k (t ))  nk (t )  c (t )
dt
 ( r ( t )  n ) k ( t )  w (t )  c ( t )
しかし、これまでみてきたように、代表的
消費者が、多数の消費者の消費をマクロ的に
集計して人口平均をとったものの場合には、
ここで、生産の限界条件は、
r ( t )  f  ( k ( t ))
(5-75)
w ( t )  f ( k ( t ))  f  ( k ( t )) k ( t )
横断条件、借り放題なし条件が必ずしも成り
以上から、k (t ), c(t ), b(t ) に関する連立微分方
ルがあり得る。
立たない。この場合には、離散時間の場合と
同様に、ラムゼー・モデルであっても、バブ
程式を得る。
- 128 -
(6) 連続時間における寿命 T 重複世代モデル
とラムゼー・モデルの再現
(a) 時点 s 生まれの 1 人の消費者の消費行動
時間軸を t  0 とし、時点 s 生まれの 1 人の
消費者は、若年期の s  t  s  T1 に働き、労
働所得を稼ぎ、消費し、貯蓄し、老年期の
s  T1  t  s  T に働かず、貯蓄を取り崩し
て消費し、 t  s  T 時点に死ぬ。
時点 s 生まれの人口を N s とすると、時点 t
における時点 s 生まれの人口は、
N ( s, t )  N s , s  t  s  T
(5-79)
(5-80)  ( s, t )   H s   ( s, t ) r (t )
t
v( s, t )
H s
0
(5-81) c( s, t )
 u (c( s, t )) exp( (t  s ))   ( s, t )
よって、相対リスク回避度を 1 /  として、
(5-82)
t
s
時点 s 生まれの1人の消費者は、当初の金
融資産はゼロ v( s, s )  0 、死ぬときの金融資
産もゼロ v( s, s  T )  0 の条件のもとで、利子
率 r (t ) 、賃金率 w(t ), t  s を所与として、生
涯効用を最大化するように、生涯の消費
c( s, t ) 、途中段階の金融資産 v( s, t ), s  t を選
ぶ。時間選好率  ,0    1 は各世代共通とす
る。
横断条件、借り放題なし条件は、
(5-84)
 ( s, s  T )  0
(5-85)
v(s, s  T )(s, s  T )  0
時点 s 生まれの消費者の時点 t における生
涯予算制約式を導くため、(5-82)から時点 t 以
降の消費の式を、(5-78)からそれをファイナ
ンスするための時点 t における金融資産の式
を求める。
(付録 8.参照)
max U  U (v( s, s))

c( s, t )
  (r (t )   )c( s, t )
t
1
u (c( s, t ))c( s, t )


u (c( s, t ))
(5-83)  ( s , t )   ( s , s ) exp(  r ( ) d )

1 dN s
n
, N s  N 0 e ns
N s ds
(5-77)
 (s,t){r(t)v(s,t)  w(s,t)  c(s,t)}
1 階の条件は、
 0, t  s  T
であり、人口増加率を n とすると、
Hs  u(c(s,t))exp((t  s))
  t  s として、
s T
 u(c(s, t )) exp( (t  s))dt


(5-86) c ( s , )  c ( s , t ) exp( ( r ( a )   ) da
s
t
(5-78) v( s, t )  r (t )v( s, t )  w( s, t )  c( s, t ), t  s
t

(5-87)
b
v ( s , t )   (c ( s , b )  w( s , b )) exp(   r ( a ) da ) db
t
t

 v ( s ,  ) exp(   r ( a ) da )
ここで、時点 s 生まれの消費者の時点 t におけ
t
る賃金率は、
時点 t における生涯労働所得は、
w( s, t )  w(t ), s  t  s  T1
 0, t  s  T1
ポントリャーギンの最大値原理におけるハミ
(5-88)
h( s, t ) 

t

ルトニアン、共役変数を H s ,  ( s, t ) とおくと、
s T
s  T1

t
b
w ( s , b ) exp(   r ( a ) da ) db
t
b
w (b ) exp(   r ( a ) da ) db
t
とくに、t  s とおいて、生まれた時点におけ
- 129 -
に直交する。
る生涯労働所得は、
h( s, s) 
(5-89)
s T

s
s  T1


s
b
(b) 消費、金融資産のマクロ的集計とその時
w ( s , b ) exp(   r ( a ) da ) db
間的変化
s
b
時点 t における総人口は、
w (b ) exp(   r ( a ) da ) db
s
さらに(5-87)で、とくに   s  T とおいて、
時点 t における金融資産の式を得る。

(5-90)
s T
( c ( s , b )  w ( s , b )) exp(   r ( a ) da ) db
t
s T

(5-91)
t
b
生涯予算制約式は、
s T
(5-92)

s
e ns ds 
間の場合も同様なことが言える。
s
ds
s
ds
t T
V (t ) 
t
 v(s, t ) N
d
dt
b (t )
 f ( x , t )dx  { f (b (t ), t )b (t ) 
b (t )

f ( x , t )
dx
t
a (t )

b
とくに{
s
(5-98)
( c ( s , b )  w ( s , b )) exp(   r ( a ) da ) db  0
ところが、(5-83)から、
 ( s, b)
 (s, s)
}内が小さければ、
d
dt
b (t )

f ( x , t )dx 
a (t )
b (t )

a (t )
f ( x, t )
dx
t
と出来る。これを用いると、
dC (t )
 {c(t , t ) N t  c(t  T , t ) N t T }
dt
t
c( s, t )
N s ds
 
t
t T
よって、上の式は、
s T
 ( c ( s , b )  w ( s , b ))  ( s , b ) db  0
s
である。これは、 [ s, s  T ] 上の関数空間で、
dV (t )
 {v(t , t ) N t  v(t  T , t ) N t T }
dt
t
v( s, t )
 
N s ds
t
t T
c( s,)  w( s,) と  ( s,) が直交することを意味
する。(5-29)ででみたように、
U ( v ( s ,))
v ( s ,)
f ( a ( t ), t ) a ( t )}
a (t )
であることを使う。(付録 9.参照)
(5-90)で t  s とおくと、
 ( s ,) 
t
 c(s, t ) N
これら集計量の時間的変化をみるには、一般に、
間の場合は、第 2 節(2)(a)でみたが、連続時
s
C (t ) 
t T
s
exp(   r ( a ) da ) 
N0
(1  e  nT ) e nt
n
N0
(1  e  nT1 ) e nt
n
b
c ( s , b ) exp(   r ( a ) da ) db  h ( s , s )
b
(5-96)
(5-97)
生涯予算制約式の幾何学的意味は、離散時
消費については、{
U  max
だから、関数空間において、c( s,)  w( s,) は、
(5-95)
0
ds
時点 t の消費、金融資産のマクロ的集計量は、
t
とくに t  s とおいて、生まれた時点における
(5-94)
t
N
s
若世代人口比率は、 n L  N L (t ) / N (t )
c ( s , b ) exp(   r ( a ) da ) db
 h( s, t )  v( s, t )
(5-93)
t T
N L (t ) 
時点 t における生涯予算制約式は、
s
t T
うち若世代人口は、
b

t

t
t T
v( s, t ) 
s T
t
 N ( s , t ) ds   N
N (t ) 
U (v ( s ,))
gradU (v ( s ,)) 
v ( s,) U  max
}の中は、最若年と最老
年の消費の差だから、 T が大きければ、無視
してよい。金融資産については、{
ゼロである。よって、
- 130 -
}の中は
t
(5-99)
c ( s , t )
dC (t )
 
N s ds
t
dt
t T
(5-100)
v ( s , t )
dV (t )
N s ds
 
t
dt
t T
k (t ) 
K (t )
N (t ) K (t )
1 K (t )


N L (t ) N L (t ) N (t ) n L N (t )
よって、(5-105)の両辺を N (t ) で割ると、
t
(5-107)
v(t )  n L k (t )
これらに、(5-82)、(5-78)を代入すると、マク
また、
ロの集計量の時間的変化が求まる。
dN (t ) dK (t )
dk (t )
N L (t )  k (t ) L 
dt
dt
dt
t
dC (t )
   ( r (t )   )c ( s , t ) N s ds
dt
t T
(5-101)
から、(5-106)により、
  ( r (t )   )C (t )
dk (t )
1
 (r (t )  n)k (t )  w(t ) 
c(t )
dt
nL
(5-102)
dV (t )

dt
t
 ( r (t )v ( s , t )  w( s , t )  c ( s , t )) N
s
 f (k (t ))  nk (t ) 
ds
t T
 r (t )V (t )  W (t )  C (t )
ここで、生産の限界条件は、
f (k (t ))  r (t )k (t )  w(t )
ここで、時点 t の労働所得のマクロの集計量
r (t )  f ( k (t ))
w(t )  f ( k (t ))  f ( k (t )) k (t )
は
t
 w( s, t ) N s ds 
W (t ) 
t T
t
 w (t ) N
1
c (t )
nL
s
ds  w (t ) N L (t )
よって、経済全体の 1 人当たり資本 k (t ) 、1
t T1
人当たり消費 c(t ) は、次の連立微分方程式に
(c) 1 人当たり消費、1 人当たり金融資産、
従う。
1 人当たり資本の時間的変化
時点 t における 1 人当たり消費、1 人当たり
金融資産は、
(5-108)
C (t )
V (t )
c(t ) 
, v(t ) 
N (t )
N (t )
よって、
dk (t )
1
 f (k (t ))  nk (t )  c(t )
dt
nL
dc(t )
 { ( f (k (t ))   )  n}c(t )
dt
これはラムゼー・モデルと類似しており、
dc (t )
dN (t ) dC (t )
N (t )  c (t )

dt
dt
dt
特に   1, n L  1 のときは、ラムゼー・モデ
から、(5-101)により、
変数をあたかも寿命無限の 1 人の代表的消費
(5-103)
dc(t )
 { (r (t )   )  n}c(t )
dt
また(5-102)から、同様に、
(5-104)
dv (t )
 ( r (t )  n)v (t )  n L w(t )  c (t )
dt
ルそのものとなる。そのときは、1 人当たり
者が、生涯効用を最大化するように消費・貯
蓄行動していると、ポントリャーギンの最大
値原理で定式化してよいように見える。
このとき、共役変数  (t ) は、時点 s 生まれ
世代の式(5-83)で s  0 とした場合と同様に、
t
バブルなしの場合は、
 (t )   (0) exp(  r ( )d )
(5-105) V (t )  K (t )
よって、(5-102)から、
(5-106)
dK (t )
 r (t ) K (t )  W (t )  C (t )
dt
 F ( K (t ), N L (t ))  C (t )
0
となる。しかし、これが t   のときゼロに
収束し、言い換えれば、カッコのなかの所与
の金利 r (t ), t  0 の積分が t   のとき無限
大に発散
若世代 1 人当たり資本は、
- 131 -

t
となっている。V (0)  0 を所与とすると、標
r ( ) d   
0
準バブル B(t )  0 の場合は、 K (0) を減らし、
しなければならない先験的理由がない。各世
信用バブル B (t )  0 の場合は、K (0) を増やす
代は、有限の T 期間生きて死ぬので、各世代
ことになる。
の生きている期間についてのこの積分は有限
標準バブルの場合には、預金との裁定の条
であり、死ぬときには横断条件 (5-84)により、
件から、信用バブルの場合には、借り換え、
 (t ) はゼロになるからである。
追い貸し、ロールオーバーの条件から、バブ
よって、無限寿命の 1 人の代表的消費者に
対しては、横断条件、借り放題なし条件は必
ずしも成り立たない。ゆえに、(5-108)の右辺
をゼロにするような定常状態はあるが、解は
ルは次の式に従う。
1 人当たりバブルは、
鞍点経路をたどるとは限らないのである。
*
1 dB(t )
 r (t )
B(t ) dt
(5-110)
b(t ) 
*
マクロの平均量の定常状態を k , c とし、
B(t )
N (t )
r  f (k * ) とおくと  (r *   )  n である。
よって、(5-109)の両辺を N (t ) で割ると、
マクロの平均量が動かなくても、個々の消費
(5-111)
*
者の消費は動くことが分かる。
c( s, t )  c( s, s ) exp( (r *   )(t  s ))
 c ( s , s )e n ( t  s )
v(t )  n L k (t )  b(t )
こ こ で 、 v(0) は 所 与 と し 、 標 準 バ ブ ル
b(0)  0 導入のときは、 k (0) を減らし、信用
バブル b(0)  0 導入のときは、 k (0) を増やす
調整が行われる。
db(t )
dN (t ) dB(t )
N (t )  b(t )

dt
dt
dt
であるから、各世代とも、生まれてから死ぬ
まで、人口増加率で増加する。これは、離散
時間の場合、第 4 節(2)(b)で得た結果と同じ
である。
(5-112)
バブルありの場合は、
(5-109)
から、
db(t )
 (r (t )  n)b(t )
dt
(5-109)を(5-102)に代入すると、(5-110)によ
V (t )  K (t )  B(t )
が成り立つ。
り、バブル項は消えて、(5-106)が再び出る。
ここで、標準バブルの場合は、 B (t )  0 で
よって、経済全体の 1 人当たり資本 k (t ) 、
あり、家計の金融資産 V (t ) は、銀行に預金し、
1 人当たり消費 c(t ) 、1 人当たりバブル b(t ) は、
それが企業の資本保有 K (t ) のために貸し付
(5-108)、(5-112)の連立微分方程式に従う。特
けられる部分と、バブル購入 B (t ) にあてられ
に、   1 の場合を考え、それを次の形に書
る部分に分かれる。
く。
信用バブルの場合は、 B (t )  0 であり、企
(5-113)
1
dk (t )
 f (k (t ))  nk (t )  c(t )
dt
nL
業の資本保有 K (t ) のための貸し付けは、家計
の金融資産 V (t ) が銀行に預金され、それが貸
1 dc(t )
 f (k (t ))    n
c(t ) dt
し付けられる部分と、銀行の自己資本から家
計に貸し付け、それがさらに企業に貸し付け
1 db(t )
 f (k (t ))  n
b(t ) dt
られる部分 B (t ) からなる。
バブルは時点 t  0 に導入されるとすると、
V (0)  K (0)  B(0)
すると、第 2 式、第3式から、
- 132 -
1 db(t )
1 dc(t )


b(t ) dt
c(t ) dt
S1t  K t 1
よって、
となる。これは一見、貯蓄・投資バランスが
log b(t )  log c(t )  t  const.
成り立たないのではないか、と思わせる。し
ゆえに、
かし、老世代は、前期に供給した資金をすべ
b(t )
c(t )

b(0)
c(0)
て取り崩して消費にあてるので、資本市場で
et  (t  )
は当期の資本に当たる量の資金が回収され
る:
S 2t   K t
よって、離散時間の場合と同様に、バブルは
消費の無限大倍まで膨らむ。従って、経済変
数がマクロの集計量であり、横断条件、借り
経済全体の貯蓄は、若世代と老世代の貯蓄の
合計だから、
放題なし条件が成り立たない場合でも、ある
S t  S1t  S 2t  K t 1  K t  I t
時点で不合理性に気づき、修正が行われる。
しかし、気づくまではバブルは膨らむ。これ
となり、経済全体の貯蓄・投資バランスは、
は、現実に起こる状況である。
本論文の(1-18)のように、通常の形になる。
ダイヤモンドの原論文『新古典派成長モデ
おわりに
ルおける国債』(1965,p.1128, p.1131-1132)
においては、経済全体の貯蓄・投資バランス、
本論文が標準理論からどう 1 歩踏み出した
若世代の貯蓄イコール次期期首の資本の式は
か主要文献と比べ、残された課題を述べる。
明記されているが、老世代の貯蓄の行方につ
いて明記していない。ウィッケンズ『マクロ
(1) 経済主体別および経済全体の統合した経
済計算を明確にしたこと。
経済理論』(2008, p.134)などその後の教科書
でもこの点が明記されていない。本論文では
マクロ経済理論の文献では、理論の展開が
第 1 節でこのようなあいまいさを取り除いた。
主体であり、家計、企業などの経済主体につ
いて、期首の資産・負債の状況、期中の経常
(2) 標準理論では考慮されていない信用バブ
取引による所得・支出の状況、資本取引によ
ルを導入し、その動学的特性を明らかに
る資産・負債の変動の状況、これらを経済全
したこと。
体として統合した場合の状況などは、導入部
ティロールのバブルの標準理論『資産バブ
において言葉で簡単に述べられるのが常であ
ルと重複世代』(1985,p.1503)では、バブルは
る。その結果、どんな経済計算が頭にあるの
資産であるから、マイナスの価値は取り得ず、
か、読者にとってあいまいになることがある。
プラスでなければならないとしている。この
例えば、重複世代モデルでは、資本市場で
立場は、ファーリ・ティロール『バブル的流
若世代が当期の貯蓄から資金を供給し、企業
動性』(2011,定義 1)でも引き継がれている。
が当期末つまり次期期首に必要な資本を取得
このため、バブル資産の取得は、家計の貯蓄
するための資金を需要するので、若世代の当
の運用先の 1 つとなっている。
これに対して本論文では、次のような信用
期の貯蓄イコール次期期首の資本、式で書く
と、本論文の(1-16)のとおり、
バブルを考える。家計は、負債側で銀行借り
入れによって得た資金を、資産側で企業に貸
- 133 -
し付ける。企業は、負債側の借り入れた資金
不安定、大きい解は安定であることを、図
で、資産側に無価値の財からバブル資本を創
3-2-2 で示した。
出する。銀行は追い貸し・ロールオーバーを
日本経済の長期低迷について、複数均衡の
続ける。第 1 節でこの場合の経済計算を行な
低活力状態に落ち込んでいるため、という統
い、信用バブルは標準バブルでマイナスにし
計物理的モデルが提示されているが、本論文
た場合に相当することが分かった。
のようなマクロ経済モデルの具体例も参考に
一度マイナスのバブルを許すと、動学的に
なろう。
は事態は大きな変化が起こる。第 3 節では、
さらに、ミクロの一般均衡理論においては、
標準バブルでは解は普通の鞍点経路をたどり、
バラスコ『価値の一般均衡理論』(2011,p.141)
しかも動学的に非効率であるのに対し、信用
にあるように、均衡多様体が波打つ形だと、
バブルでは解は図 3-4 のように、渦状点また
1 つの資源配分の均衡状態を実現するのに複
は結節点経路をたどり、しかも動学的に効率
数の価格があり得るという複数均衡が、被覆
的であることが明らかにされた。
(covering)の理論を使って分析されている。
重複世代モデルでは、若世代がプラスの貯
蓄をし、老世代になってそれを取り崩すとす
(4) 2 世代重複世代モデル→3 世代重複世代
るものが多いが、トヴェーデ『重複世代経済』
モデル→T 世代重複世代モデル→横断条
(2010,p.15)では、若世代の貯蓄がゼロでない
件なきラムゼー・モデル、の流れを整合
場合は、政府が貨幣を供給して当期と次期の
的に明らかにし分析していること。
予算制約をつなぐとし、若世代の貯蓄がプラ
重複世代モデルは 2 世代が中心である。最
スの場合の均衡を「サミュエルソン均衡」、マ
新の教科書を見ても、ブーレイ『一般均衡、
イナスの場合を「古典的均衡」と呼んでいる。
重複世代モデルおよび最適成長理論』(2007)、
しかし、動学的経路の違いには触れていない。
トヴェーデ (2010)は、2 世代重複世代モデル
で一貫している。
(3) 重複世代モデルで複数均衡と不安定性の
この 1 世代は通常 25 年
と 考 え ら れ て お り ( ウ ィ ッ ケ ン ズ (2008,
p.143))、マクロ経済の不安定性やバブルなど
具体例を提示したこと。
重複世代モデルでは、1 人当たり資本 k t に
現実の問題を考えるには、期間が長期過ぎて、
ついての定差方程式の定常状態を求めること
イメージが合わない。この世代をもっと細分
になる。若世代の 1 人当たり貯蓄関数の形状
したいが、明確な結論が導かれるのは 2 世代
によっては、その定常状態が複数ある可能性
であり、3 世代になると、ファーリ、ティロ
は、ブランシャール・フィッシャー『マクロ
ール『バブル的流動性』(2012)のように、数
経 済 学 講 義 』 (1989,p.95) 、 ト ヴ ェ ー デ
式が一挙に複雑化する。理論的には、2 世代
(2010,p.129)で述べられているが、具体的な
か 3 世代の重複世代モデルで分析し、現実に
例は示されていない。
あてはめるには、定性的な推論を行うことに
本論文では、第 3 節で、効用関数は対数線
なる。
型とし、生産関数を CES 型
f ( k )  a (k    1   )

他方、重複世代モデルでも、コンピュータ・
シミュレーションを行うモデルでは、初期の
1

アウアーバッハ、コトリコフ『動的財政政策』
としたとき、   0 のとき、プラスの定常状
(1987)において、すでに55世代の重複世代
態の 1 人当たり資本は 2 つあり、小さい解は
モデルで分析している。
- 134 -
なお第 4 節、付録 7 では、副産物として、
また、連続時間モデルにおいては、ブラン
シャール『債務、赤字、および有限時限』(1985)
「資本蓄積をライフサイクルによる貯蓄でま
は、家計の各世代が一定の死亡確率のもとで
かなえるか」というコトリコフ・サマーズ『マ
無限時間の中を生きると前提して、その集計
クロの資本蓄積における世代間移転の役割』
量としてのマクロ経済の最適成長モデルを分
(1981)のテーマに関して、彼らの 3 世代重複
析している。
世代モデルから T 世代重複世代モデルに拡張
本論文では、2 世代重複世代モデルにより
バブルを分析したティロール『資産バブルと
し、マクロの金融資産がプラスになるための
条件を、数学的に考察している。
重複世代』(1985)を出発点とし、ブランシャ
ール(1985)の死亡確率つき無限世代モデルを
(5) 寿命無限モデルのときの資本蓄積、重複
参考にしつつ、死亡時点を生まれてから T 期
世代モデルのときの均衡がパレート最適
後と特定した T 世代重複世代モデルに発展さ
となるためのキャス、バラスコ、シェル
せることを念頭におき、効用関数を対数線型
の条件を統一的な視野から見直したこと。
に特定して、分析を進めるアプローチをとる
ことにした。
本論文のメッセージは、T 世代重複世代モ
デルでは、経済全体の横断条件が守られず、
第 3 節では、ティロールのモデルにおいて
マクロ変数が発散する可能性があるというこ
複数均衡の可能性を明らかにするとともに、
とであるが、発散しない条件についても整理
マイナスの信用バブルを導入して分析した。
している。
さらに第 4 節でそれを 3 世代重複世代モデル
マクロ経済理論では、時間を t  0,1,2,..., T
に拡張し、類似の結果が出ることを示した。
の離散時間でとり、この時間の期限 T は有限
3 世代重複世代モデルは、直ちに T 世代重
として計算し、その後期限は無限の未来
複世代モデルに拡張出来、複数均衡の可能性
T   とする手続きをとる。時間を無限大に
までは同じ分析が出来る。だがバブルの分析
すると発散解が生ずる可能性があるので、標
をするには複雑過ぎる。しかし、T が大きい
準理論では、発散しないための条件を明らか
ときは、全世代について合計したマクロの集
にしてきた。
計量が、ラムゼー・モデルで近似されること
寿命無限のラムゼー・モデルにおいて、サ
が分かる。ただし、各世代は横断条件に拘束
ージェント『動学的マクロ経済理論』(1987)、
されていても、マクロの集計量は横断条件で
リュンクヴィスト・サージェント『再帰的マ
拘束される先験的理由がない。こうして本論
クロ経済理論』(2004)は、解は 2 乗和が有限
文のアブローチでは、マクロの集計量に横断
な関数空間 l 2 の範囲で求めるようにしている。
条件の拘束がないため、標準理論で棄却され
2 世代重複世代モデルにおいて、トヴェー
てきたラムゼー・モデルの場合のバブルが、
デ (2010)は、時間範囲を    t   ないし
息を吹き返すことが明らかになった。
0  t   として分析している。この場合、負
T 世代重複世代モデルでは、各家計は、自
担を将来世代に回し続けることで、全世代の
分の寿命の範囲では横断条件に従うが、それ
効用を高めることが出来、均衡状態がパレー
を超えて、無限時間の中で、経済全体の横断
ト最適にならないことが起こる。それを避け
条件に従うインセンティブがない。現実に多
るために、時点 t における財の時点 0 におけ
くの国で財政が破綻に追い込まれていくのは、
る価格が p t のとき、均衡がパレート最適であ
このためであろう。
る条件が、バラスコ、シェル(1980)の条件(ト
- 135 -
よる分析は、類似点は認めながらも、分析者
ヴェーデ(2010,p.42)


t 0
1

pt
の趣味により、別箇に行われることが多い。
これに対して本論文では、第 4 節までは離
である。金利を rt とすれば、この条件は、

散時間のもとで、通常の有限次元空間におけ
t
るラグランジュ乗数法により分析を行った後、
 (1  r )  
i
t 1 i 1
第 5 節では、関数空間におけるラグランジュ
になる。これは、寿命無限のモデルで過剰資
乗数法から入ることにより、議論を平行して、
本蓄積がないという意味のパレート最適を示
整合的に進められることを示した。
これは、数学的には早くから知られていた
すキャス(1972)の条件になる。
本論文では第 2 節で、寿命無限のラムゼ
ことであり、本論文においては、レオナール・
ー・モデルの場合、ラグランジュ乗数  がこ
ヴァンロン『経済学における最適制御理論と
の p t に相当し、分析が意味を持つためには、
静学的最適化』(1992)に加えて、リュステル
生涯予算制約式が収束し、
ニク・ソボレフ『関数解析の基礎』(1965, 第
0
t


t 0
0
t
8 章§11)、ザイドラー『非線形関数解析 III.

変分法と最適化』(1984, 第 43、48 章)を参照
とならねばならないこと、これはキャス、バ
している。第 5 節で扱う問題は、数学的には
ラスコ、シェルの条件を満たすこと、さらに
等周問題という簡単な形をしているので、関
ラムゼー・モデルの最適成長経路はこの条件
数空間のラグランジュ乗数法を使い、さらに
を満たすことを示した。
ベルマンの原理を使うと、ポントリャーギン
生涯予算制約式の収束の条件と同じ条件

p
t 0
t
の最大値原理の式を導くことが出来る。さら
に有限次元の場合と同様に、包絡線定理を導

き、初期条件の変動に対して、目的関数の最
は、ボーレイ(2007,p.479)において、重複世
適値がどう動くかも分析出来る。関数空間に
代モデルにおける均衡のパレート最適のため
おける分析では、この初期条件の変動は、イ
の条件として、提示されている。
ンパルス関数で入れる必要があり、それによ
って目的関数の最適値がどう動くかは、ベン
(6) 離散時間のモデルから連続時間のモデル
に整合的に移行出来ることを示したこと。
スーザン『最適制御における摂動法』
(1988,p.255)を参照している。
マクロ経済理論では、前述のように離散時
間のもとで、財は 1 財とし、家計、企業が効
(7) 残された課題
用、利益の時間的フローの現在価値の最大化
本論文では、バブルの発生メカニズムとし
を図るように定式化するのが一般的である。
て、2 世代、3 世代重複世代モデルでは信用
離散時間なので、最大化は、簡単な場合はラ
バブルを提示し、その動学的経路は効率的で
グランジュ乗数法、複雑化したり確率分布を
渦巻き状になるとしている。さらに T 世代重
入れたりする場合にはベルマンの動的計画法
複世代モデルで T が大きくなると、横断条件
を使うことになる。しかし、資本蓄積を含む
が成り立たないラムゼー・モデルになり、ラ
最適成長モデルでは、連続時間で、ポントリ
ムゼー・モデルのバブルのメカニズムが生き
ャーギンの最大値原理を使うことが多い。こ
返ると主張している。
のため、離散時間による分析と、連続時間に
- 136 -
2 世代重複世代モデルにおける信用バブル
- 137 -
付録
付録 1. 定数係数の 2 次元線形微分方程式と
定差方程式の解の状態 (第 2、3、4 節)
0
t
ゆえに、
x(t )  c1v1e 1t  c 2 v 2 e 2t
微分方程式と定差方程式を次の形に書く。
x (t )  Ax(t )
xt 1  xt  Axt
xt  c1v1 (1  1 ) t  c 2 v 2 (1   2 ) t
簡単のために、 A の 2 つの固有値 1 ,  2 が
 c1 
  T 1 x 0 , orT 1 x(0)
c
 2
ここに、 
異なる場合について述べる。それぞれに対応
する 1 次独立な固有ベクトルを
 v1 
 v1 
v1   12 , v 2   22 
 v2 
 v1 

 y0
(1   2 ) 
 (1  1 ) t
y t  
 0
本稿では、変数 x(t ), xt は定常状態からの乖
離を表わす。
微分方程式のときは、固有値 1 ,  2 が実根
とおくと、 Avi  i vi , i  1,2
で符号が異なるならば鞍点、同符号ならば結
行列
節点になり、虚根ならば渦状点になる。
T  v1
よって、 T
v 2  を考えると、

AT  T  1
0
0

 2 

AT   1
0
0

2 
1
まず実根で符号が異なるならば、
1  0  2 として、 c 2  0 のとき、
x(t )  c1v1e 1t が鞍点経路になる。
その他の鞍点経路は発散する。
実根でプラスの同符号ならば、結節点で発
散し、マイナスの同符号ならば、収束する。
x(t )  Ty (t ), xt  Ty t と変数変換すると、
もとの微分方程式は、

y (t )   1
0
虚根ならば、2 つの固有値は共役、2 つの
固有ベクトルは共役なので、固有値をあらた
0
 y (t )
2 
め て   i 、 固 有 ベ ク ト ル を あ ら た め て
1
v1  iv 2 とおくと、
(v1  iv 2 )e ( 
定差方程式は、
1
 i 2 ) t
1
0

 y t
y t 1  y t   1
 0 2 
0 
1  1
 yt
y t 1  
1   2 
 0
 e  t (v1 cos  2 t  v 2 sin  2 t )
1
 ie  t (v1 sin  2 t  v 2 cos  2 t )
の実部と虚部がそれぞれ 1 次独立な解になる。
定常状態は、渦状点であり、   0 ならば発
1
散し、   0 ならば収束する。
1
定差方程式のときは、 1  i と 1 の大小に
となる。よって、
 e 1t
y (t )  
 0
2
0 
 y ( 0)
e 2t 
よって発散、収束が決まるので、次のように
拡張された対数関数を使うと、微分方程式と
の対応がはっきりする。
- 138 -
1  i
log(1   i )  log 1   i  i arg
1  i
1  i 
虚根の場合は、共役な固有値を     i 、
1
2
固有ベクトルを v  v1  iv 2 とおくと、
1    1  1  i2  e 
ここで、 i    i とおいて、
1
i
ら振動しながら動く。
2
i
(1  1i ) 2   i2
1
 i 2
(v1  iv 2 )(1   ) t
 (v1  iv 2 ) e ( 
1  i
 i2
arg
 tan 1
1  i
1  1i
1
 i 2 ) t
1
 e  t ( v1 cos  2 t  v 2 sin  2 t )
1
 ie  t (v1 sin  2 t  v 2 cos  2 t )
さらに、
の実部と虚部がそれぞれ 1 次独立な解になる。
 i1  log 1   i
定常状態は、渦状点であり、   0 ならば、
1
1  i
  arg
1  i
2
i
すなわち 1    1 ならば発散し、  0 なら
1
ば、すなわち 1    1 ならば収束する。
とおいて、
log( 1   i )   i1  i i2
1
2
1   i  e  i  i i
付録 2. 横断条件に反する経路 (第 2 節)
実根の場合には、 i  0
2
t が十分大きければ、 f (k t )  n ならば、十分
小さい   0 に対して、 t 0 が存在し、 t  t 0 な
 i1  log 1  i
 i2  arg1or arg(1)  0or
つまり、
らば、
f (k t )  n  
1  i  0   i2  0
(2-61)により、
1  i  0   i2  
ct 1  ct
  ( f (k t 1 )    n)   (   )
ct
であり、
1
(1  i ) t  e i t cos  i2 t
よって、
と書ける。
ct 1  (1   (   ))ct    
よって、 1 ,  2 の符号が異なるならば、す
1
1
 (1   (   )) t t0 1 ct0
なわち、 1  i の一方が 1 より大、他方が 1
より小ならば、鞍点となる。1  0 
1
 21 とし
て、 c 2  0 のとき、
1
xt  c1v1e 1t cos 12 t
u (ct 1 )  ct 1
だから、 ct 1  (u (ct 1 ))

(u (ct 1 ))   (1   (   )) t t0 1 ct0
 ,  が同符号ならば、すなわち、 1  i
1
2
がともに 1 より大か 1 より小ならば、結節点
u (ct 1 )  (1   (   ))
になり、前者の場合は発散、後者の場合は収
束する。
1

ゆえに、
が鞍点経路になる。
1
1

よって、
このように、微分方程式の場合と異なり、
1  i がマイナスのときは、経路は 2 方向か
- 139 -

t t 0 1

ct0

1

u (ct )

(1   ) t
1
1
1
1
( 
)0
(1   )(2  n)
1
B ( ) 
 const
((1   )(1   (   ))  ) t
であり、 f ( k )  0 だから、 f (k ) は k が増え
ると減る。よって、B (k ) は k が増えると減る。
ここで、
ゆえに、ある k で
1
((1   )(1   (   ))   1  

だから、 t   のとき、上の不等式の右辺は
となり、このとき B (k )  0 である。
  。よって、
u (ct )
lim t 

(1   ) t
これから、 k が 0 から増えていくときの
これは横断条件(2-35)に反する。
付録 3. 重複世代モデルの定常状態
1
1

, f (k )  
1   1  f (k )
(第 3 節)
減価償却を引く前の生産関数 g (k ) は、
1 / B (k ) の動きを見ると、まず
1 / B(0)  (2   )(2  n)  0
1 / B (k ) は、このプラスの値から出発して増加
を続け、 k に近づくにつれ、  に発散する。
次に A(k ) の動きを調べる。 A(k ) における
生産関数 f (k ) は、減価償却を控除していない
としてよい。
g (0)  0, g (0)  , g ()  0 を満たす。本稿
で考えているように、これから減価償却 k を
k  0 のとき、
f (k ) f (k )  f (0)

 f (0)  
k
k
引いた減価償却控除後の生産関数を
f (k )  g (k )  k とおくと、 f (0)  0 、
f (0)  , f ()   が成り立つ。
なので、A(k ) は    で一般には値が不確定
となるので、さらに生産関数 f (k ) の形を特定
また、
化する必要がある。
コブ・ダグラス型のときは、
f (k )
g ( k )  k
 f ( k ) 
 ( g ( k )   )
k
k
g (k )

 g (k )
k
f (k )  ak  ,0    1
だから、
だから、この式は、減価償却控除前と控除後
で値は変わらない。
A(k )  a(1   )k  1
よって、 A(0)   かつ A(k ) は減少関数であ
り、 A()  0 。
CES 型のときは、
この前提のもとに、
f (k )
 f (k ),
k


1
1
  

B (k ) 
(1   )(2  n) 
1  f (k ) 
A(k ) 
f (k )  a(k    1   )
  1,0    1
だから、
の動きを調べ、A(k ),1 / B(k ) のグラフを描き、
それらの交点
A(k ) 

1
B(k )
f (k )

k

a
1
(  (1   )k  ) 
ak 1
1
(k    1   ) 
のようすを調べる。
B (k ) は、 B (0)   /((1   )(2  n))  0 ,
- 140 -
1

,
において、 A(k )  0
a
f (k ) 
1 
(  (1   )k  )
k  k ならば A(k )  0
k  k ならば A(k )  0
よって、 A(k ) は、 k がゼロから増えるとき、
ゼロから増えていき、 k  k でピークをつけ、

ak  (1  )

1 
(k    1   )

よって、
それ以降減っていき、ゼロに近づく。
a (1   )k 
A(k ) 
1 
(  (1   )k  )
a (1   )k


付録 4. 定常状態の安定性 (第 3 節)
1
1 
(k    1   )
定常状態の安定性を見るため、(3-20)から、

(A-3-1)
0
ゆえに、   0 のときは、
lim k 0 A(k )  0, lim k  A(k )  0
また  1    0 のときは、
lim k 0 A(k )  , lim k  A(k )  0

さらに、 k  x とおくと、
この k t 1  k t  k  0 における値を調べる。
(  (1   ) x)
生産関数がコブ・ダグラス型のときは、
 1

f (k )  ak  1 ,
よって、
d
A(k ) 
dx
(1   )a ( 
1

f (k )  a (  1)k   2
x)
だから、
kf (k )  a (  1)k  1
f (k ) f (k )  a 2 (  1)k 2  2
(1  f (k )) 2  1  2ak  1  a 2 2 k 2  2
k  0 のとき、(A3-1)の分母はプラスの一定
1 2 
(  (1   ) x)
ゆえに、  1 

k t f (k t )
1 

1 f (k t 1 )(k t 1  f (k t 1 ))
(2  n) 
1 
(1  f (k t 1 )) 2

(1   )ax
A(k ) 
dk t 1
dk t

  0 のときは、
d
A(k )  0
dx
値に収束し、分子はプラスの無限大に発散す
る。よって、
である。
dx
 k  1  0
dk
dk t 1
dk t
だから、 A(k )  0

k 0
よって、 A(k ) は、 k がゼロから増えるとき、
よって、 k  0 の定常状態は不安定である。
無限大から減少していって、ゼロに近づく。
生産関数が CES 型のときは、
  0 のときは、
1

   
,k  k  
x

1
1   
- 141 -
ak
f (k ) 
(  (1   )k )
a

dk t 1
dk t
1


よって、 k  0 の定常状態は安定である。
1
(k    1   ) 
 1    0 のときは、(A-3-1)で
k t 1  k t  k として、次のように書きかえる。
a
f (k ) 
1
1
(  (1   ) k  ) 
dk t 1
dk t
 (1  )
ak

1
(k    1   ) 
0
k 0

k

1
1 
1
f (k )
1
2n
1
k

kf (k ) 1   (1  f (k )) 2
f (k )
 a (1   )
 a (1   )

分母の第 1 項にある
k  1
1 
1

(  (1   )k )
1 

k
(k
2
1
1)

収束する。分母の第 2 項は
2
f (k )
k
(1  f (k )) 2
1
だから、
kf ( k )
  a (1   )
k
1 

(  (1   ) k  ) 
 a  (1   )

1
( k    1   ) 

2
(  (1   )k  ) 
2
2
1
(  (1   )k  ) 
 1
1
2ak 1 
1
(k    1   ) 
1


2
2
(k    1   )  k 2 2 
2
dk t 1
の分母は、k  0 のとき、ゼロに収束
dk t k
2
する。ゆえに、
(1  f (k )) 2  1  2 f (k )  ( f (k )) 2
2 a
1
a 2 2

k  0 のとき、ゼロに収束する。よって、
2
(k    1   ) 
1
(k    1   )  k 2 2  をかけると、
k   2
1 
2a
1)  k
だから、分母と分子に
2
k
1 

(k    1   )  k 1 
k   1
1 

1
2
1
(k

1
f (k ) f (k )  a 2 (1   )
 1
a
1
  a (1   )
2
2
(k    1   )  k  1  0 だから、ゼロに
  2
1


1
は、 k  0 のとき
kf (k )
dk t 1
dk t
a 2 2
2
(  (1   )k  ) 
a 2 2 k  2 2 
2
(k    1   ) 
2

k 0
よって、 k  0 の定常状態は不安定である。
2
  0 のときは、 k  0 のとき、
- 142 -
付録 5. 信用バブルの渦状点 (第 3 節)
信用バブルのとき、固有方程式(3-41)の解
の状態を調べる。
 ( )   2

 1

 
r (l * )b *  1 
w(l * ) 
1 

1  n
1

r (l * )b *  0
1 n
1
1
(b  a  1) 2  {4a  (b  a  1) 2 }
4
4
1
 a  {(b  a  1) 2  (b  a  1) 2 }
4
1
 a   4(b  a )  b
4
の形になる。もとの固有方程式にあてはめる
と、
(1  1 ) 2   22 
ここで
r (l * )  0, w(l * )  0, b *  0

1 
w(l * )
となり、本文の結果を得る。
固有方程式は、
x 2  ( a  1  b) x  a  0, a  0, b  0
付録 6. 3 世代モデルの定常状態への経路
の形をしているから、判別式は、
(第 4 節)
D  ( a  1  b ) 2  4a
 a 2  2(1  b)a  (1  b) 2
(4-20)を再掲する。
 {a  ( b  1) 2 }{a  ( b  1) 2 }
の形をしている。よって、虚根となるのは、
 lt11   lt1   a11

 
 l    l    a
 t 1   t   21
(4-20) 
( b  1) 2  a  ( b  1) 2
のときである。これをもとの固有方程式にあ
てはめると、
2


1



 *
 * *
 1   w (l )  1  1  n r (l )b





w(l * )  1
 
 1 

a12  lt1 


a 22  lt 
ここで、
a11   1 r (l * ) w(l * )   2 w(l * )  1
a12   1 (1  r (l * )) w(l * )  0
a 21  1, a 22  1
2
この行列を A 、固有値を  とすると、固有
方程式は、
のとき虚根となる。各辺に
 ( )  2  (a11  a 22 )  a11 a 22  a12 a 21
1 n
0
r (l * )
 2  (a11  1)  (a11  a12 )  0
この判別式は、
をかけて、本文の結果を得る。
次に、虚根を   1  i 2 とおいて、
2
1   を計算する。虚根は、
D  (1 a11)2  4(a11  a12)  (1 a11)2  4a12  0
ゆえに、固有値は実根 1   2 である。
1
1
 1 4a  (b  a  1) 2
(b  a  1) 
2
2
固有値 i に対応する固有ベクトルを
 xi1 
 2  とすると
x 
 i 
の形をしているから、 (1  1 )   2 は、
2
2
- 143 -
次に、1   2 に対応する分枝について調べる。
定差方程式(4-17)の解は、
まず a11  0 のときは、
 lt1 
 x1 
 x1 

  c1  12 (1  1 ) t  c 2  22 (1   2 ) t
 l 
x 
x 
 1
 2
 t
12  (a11  a12 )  0
から、 2  0 である。よって、1   2  1 であ
り、これに対応する分枝は発散する。
の形となる。
2 次方程式  ( )  0 の根の公式から、

a11  0 のときは、
12  (a11  a12 )
から、 a11  a12  0 ならば、前に見たように
1  1 だから、 2  0 である。よって、
1   2  1 であり、これに対応する定差方程式
a11  1 1

(a11  1) 2  4a12
2
2
a12  0 だから、
a 1 a  1
1  11  11
,
2
2
a  1 a11  1

2  11
2
2
の分枝は発散する。
a11  a12  0 ならば、  2  0 となり、
0  1   2  1 となるから、これに対応する分
これから、
枝も収束する。
1  a11  1  2 または
1  1  a11  2
が分かる。これから、1  1 はマイナス、1   2
はプラスである。両者の関係は、
図 4-2-1,3,4 は、1  1 に対応する分枝が収
束する場合である。図 4-2-1,3 では、1   2 に
対応する分枝が発散し、定常状態は鞍点にな
る。図 4-2-4 では、 1   2 に対応する分枝も
収束し、定常状態は結節点になる。
(1  1 )(1   2 )  1  (1   2 )  1 2
これに対して図 4-2-2 は、1  1 に対応する
 1  (a11  1)  (a11  a12 )   a12  0
分枝は、 1  1 がマイナスで絶対値が 1 を超
となっている。上の不等式は、
えるので、定常状態に向かうが行き過ぎるた
1  1  1  a11  0  1   2
1  1  0  1  a11  1   2
め、発散する。 1   2 に対応する分枝も発散
または
するので、常に発散する。
とも書ける。
1  1 に対応する分枝については、
 1  1  1 ,2  1 ,  (2)  0
つまり、  ( 2)  2  a11  a12  0
付録 7. マクロの家計の金融資産プラスか
(第 4 節)
となっているとき、収束する。それ以外のと
(4-54)を再掲する。
きは発散する。
 a11

 1
 x1 
a12  xi1 
 2   i  i2 
 1  xi 
 xi 
 (  , r , T , T1 )
から、
T 1
 1
 1
T 1
r


T1 1
(ケース 1) 人口一定で、 n  0, r  1 のとき
xi1
 1  i
xi2
 (  ,1, T , T1 )
であるから、2  a11  a12  0 のとき、1  1 に
対応する解の分枝の傾きは、絶対値が 1 より
小さい。
T1
  r    (T1  1) r     (T1  1)
T 1
T1 (T1  1)
 (T1  1)    (T1  1)(T  1  T1 )
2
 1
T1 T 1
 (T1  1)(T  1      )
2  1

- 144 -
 (1, r , T , T1 )
(ケース 1-1)さらに時間選好率ゼロで、
  0,   1 のとき
 (1,1, T , T1 )  (T1  1)(T  1 
T  1  T1
 (T1  1)
0
2
T1
T 1
 1
 1

  r    (T1  1) r 
T1 1 T (T  1)
)
 
2 T
2
T  1  T1
T

T
T1
r    (T


1
1
T 1
r


 (T1  1)
T 1


 1)
T1 1
r  (1 
T1 1

T
)0
よって、死ぬまで働く場合は、T  1  T1 であ
よって、人口一定、賃金率一定、ゼロ金利、
り、上の式はゼロ、つまり、 B ()  0 で、マ
死ぬまで働くならば、T  1  T1 で、上記の不
クロの家計の金融資産はゼロとなる。
等式は等号が成り立ち、 B ()  0 、つまり、
死ぬまで働くのではなく、若年期に貯蓄して
マクロの家計の金融資産はゼロとなる。
老年期に備える場合は、T  1  T1 で上の式は
プラス、つまり B ()  0 で、マクロの家計の
死ぬまで働くのではなく、T  1  T1 で、老
年期に備えて、若年期に貯蓄する場合には、
金融資産はプラスになる。
マクロの家計の金融資産はプラスになる。
  1, r  1 の場合
(ケース 3)
(ケース 1-2)
時間選好率がプラスで、
 (  , r , T , T1 )
  1 のとき
T 1




1

1
T 1
1 
T1
(1    ) 

1 

1
T
(T  1 
  r  (T1  1)
1  T
)
1 
 1
T 1
1
T1
  r 
 1
T 1
T1  1 T 1 
r   (T1  1)  r   0

T  1
 T1 1
1
T 1 1 T 1 1

 

T
T
1  1  T 
(ケース 3-2)
よって、  (1   ,1, T , T1 )  0
等比級数の和の公式を微分して、
T1
人口一定、時間選好率ゼロの
 r 
近傍の状況
 1
人口一定で n  0 のとき、   1 かつ時間選

好率   0,   1 の近傍ならば、
B ( )  0
T1 r T1  2  (T1  1)r T1 1  r
(1  r ) 2
r (1  T1 r T1 )
r 2 1  r T1 1
)
(
1 r
1 r
1 r
 (  , r , T , T1 )
人口一定を仮定したが、連続性から、人口増
加率 n が 0 に近ければ、上の分析が成り立つ。
選好率はゼロで、 r  1,   1 のとき
さらに一般の場合
よって、
が成り立つ。
人口増加率がゼロでないが、時間
 T1 1
 (1   , r , T , T1 )
 が 1 に近く、   1   と書けるときは、
(ケース 2)
1
  1   で  が小さい場合

前と同様に、 1     だから、
1
T1 T 1
T T 1
    T 1  1 

2  1
2 1  T 1 
(ケース 1-3)
T 1
r (1    )  (T  1)  r



(ケース 3-1)
だから、
T 1 
1
1  T
r (1  T1 r T1 )
r 2 1  r T1 1
)
(
1 r
1 r
1 r
T1  1 r (1  r T 1 ) r (1  r T 1  T 1 )
{
}


1 r
1  r
1  T

 (T1  1)r T1 1
1  r T 1T1
1 r
この式の符号を決めるのは難しい。しかし、
もともと(4-50)、(4-51)で   0 とおくと、
- 145 -
 (0, r , T , T1 )  0
また上から、
 (1   , r , T , T1 )  0
よって連続性から、ある 0 
b(t  h)
b (t )
a (t  h)
a (t )
h 
 f ( x, t  h)dx   f ( x, t )dx
b (t  h )
  1 があって、
 (  , r , T , T1 )  0,     1
 ( f ( x, t  h)  f ( x, t ))dx

a (t  h)
b (t  h ) b (t )
つまり、あるプラスの時間選好率の範囲で、
B()  0 、すなわちマクロの家計の金融資産
はプラスになる。
(
b (t ) b (t )
   ) f ( x, t )dx  (    ) f ( x, t )dx
a (t  h) a (t  h)
a (t  h) a (t )
b (t  h )

f ( x, t )
hdx 
t
a (t  h)

b(t  h)
a (t  h )
b (t )
a (t )
 f ( x, t )dx   f ( x, t )dx  o(h)
b (t  h )
f ( x, t )
 
hdx
t
a (t  h)
付録 8. 微分方程式の前向き解・後ろ向き解
(第 5 節)
一般に、微分方程式

b ( t )  b ( t ) h
a ( t )  a( t ) h
b(t )
a (t )
 f ( x, t )dx   f ( x, t )dx  o(h)
よって、
dx
 f (t ) x  g (t )
dt
b (t )
lim h0
の解は、   t として、
x( ) を過去で表わすと、
h
f ( x, t )

dx
h a(t ) t
 f (b(t ), t )b(t )  f (a (t ), t )a (t )

x ( )  x (t ) exp(  f (a ) da )
t


b
t
t
t
 exp(  f ( a ) da )  g (b ) exp(   f ( a ) da ) db
付録 10. ラグランジュ乗数の一般的導き方
(第 2、3、4、5 節)
x(t ) を将来で表わすと、

b
t
t
x (t )    g (b ) exp(   f ( a ) da )db
E をベクトル空間、 f を E 上の線形汎関数、
 g1 ( x) 


g ( x)   ...  を E から R m の上への線形
 g ( x) 
 m 

 x ( ) exp(   f ( a ) da )
t
写像とする。 g ( x)  0 なら必ず f ( x)  0 とな
っているならば、実数 i (i  1,..., m) が存在し、
付録 9. 積分記号の中の微分 (第 5 節)
すべての x  E に対し、
b (t )
m
d
f ( x, t )dx  { f (b(t ), t )b (t )  f (a(t ), t )a (t )}
dt a(t )
f ( x )  g ( x )   i g i ( x )
i 1
 g1 ( x) 


...  m  ... 
 g ( x) 
 m 
b (t )

f ( x, t )
dx
t
a (t )

 1
を示す。
m
実際、g が R の上への写像であることから、
R m の標準基底 { y1 ,..., y m } に対し、 E の元
- 146 -
付録 11. n 次元空間における条件付最大化
{x1 ,..., x m } が存在し、
g ( x j )  y j ( j  1,..., m)
(第 2、3、4 節)
g i ( x j )  y i , j   i , j (i  1,..., m)
n 次元空間を E  R n とし、
f , g i (i  1,..., m) を E 上で定義された微分可
能な実数値関数とし、 bi をパラメータとして、
となっている。ここで、
 i , j  0(i  j ),  1(i  j )
制約条件の集合
M  {x : g i ( x)  bi  0, i  1,..., m} の上で、目
任意の x  E は、
m
m
i 1
i 1
的関数 f ( x) の最大化を図る。 x  x 0 が、
x   g i ( x) xi ( x   g i ( x)xi )
max f ( x)
g i ( x)  bi  0(i  1,..., m)
と書け、右辺第 2 項は g をほどこすとゼロに
なる Ker g  g (0) に属する。右辺第 1 項は
の解であるとし、 x0  M における M の接超
E / Ker g に
平 面 を Tx0 と す る 。 x0 の 近 傍 x0  h で 、
1
その補ベクトル空間で、商空間
同型なものに属する。 x に f をほどこすと、
仮定により、右辺第 2 項に f をほどこしたも
のはゼロになるので、
h  Tx0 に対し、微分の定義から、線形汎関数
f ( x0 ), g i ( x0 ) が存在し、
f ( x0  h)  f ( x0 )  f ( x0 )h  o( h )
m
f ( x)   f ( xi ) g i ( x)
gi ( x0  h)  gi ( x0 )  gi( x0 )h  o( h ),i  1,...,m
i 1
よって、 i  f ( xi )(i  1,..., m)
 g 1 ( x 0 ) 


ここで、 g ( x 0 )   ...  : E  R m
 g  (x )
 m 0 
とおけば、これがラグランジュ乗数になるこ
とが分かる。
m
もとの条件が、g i ( x)  0(i  1,..., m) なら必
は R の上への線形写像であるとし、このと
ず f ( x)  0 であるならば、この i  0 である。
実際、この条件のもとでも、 g ( x)  0 なら
き x0 は正常点であると言う。
超接平面 Tx0 は制約条件の集合 M と位相同
必ず f ( x)  0 となっている。もしそうでない
型であるから、g i ( x 0  h)  g i ( x 0 ), i  1,..., m
とすれば、ある x  E が存在して、
であり、最大値をとっているから、
g ( x)  0 かつ f ( x)    0
  0 に対し、 g ( x)  g ( x)  0 だから、仮
定により、 f ( x)  0 。ところが、
f ( x)  f ( x)    0 となり矛盾である。
f ( x 0  h)  f ( x 0 ) である。よって、
h  Tx0 に対し、g i ( x0 )h  0, i  1,..., m なら必
ず f ( x0 ) h  0 となっている。従って、付録
10 のように、ラグランジュ乗数 i , i  1,...,.m
が存在し、すべての h  Tx0 に対し、
よって、前の命題が適用出来、
m
m
f ( x )   i g i ( x )
f ( x0 )h   i g i ( x0 )h
i 1
i 1
x  x j ( j  1,..., m) に お い て 、 す べ て の
i  1,..., m について g i ( x)  0 だから、仮定に
より、 f ( x j )   j  0 。
これは、ラグランジアンを
m
F ( x)  f ( x)   i ( g i ( x )  bi )
i 1
とおいたとき、 F ( x0 )h  0 を意味する。
パラメータ bi , i  1,..., m を bi  k i に動かす
場合は、 g i ( x, bi )  g i ( x)  bi とおき、最大値
- 147 -
を与える x0  x0 (b) として、微分の定義の式
付録 12. 関数空間における条件付最大化
(第 5 節)
を書くと、
g i ( x0 (b  k )), bi  k i )  g i ( x0 (b), bi )
2 乗可積分な関数 x : [0, T ]  R の全体のつ
 g i , x ( x0 (b), bi ) x0 (b)k  g i,b ( x0 (b), bi )  o( k )
2
n
く る 関 数 空 間 を E  L (0, T : R ) と し 、
f , g i (i  1,..., m) を E 上で定義された、フレ
ッシェ微分可能な実数値汎関数とし、 bi を実
g i ( x 0 (b  k ))  (bi  k i )  ( g i ( x 0 (b))  bi )
 g i ( x 0 (b)) x 0 (b)k  k i  o( k )
数パラメータとして、制約条件の集合
制約条件の集合上で左辺はゼロ、右辺の微分
もゼロだから、
g i ( x0 (b)) x0 (b)k  k i , i  1,..., m
M  { x  E : g i ( x )  bi  0, i  1,..., m} の
上で、目的関数 f (x) の最大化を図る。本文で
一方、
f (x0 (b  k))  f (x0 (b))  f (x0 (b))x0 (b)k  o( k )
ラグランジュ乗数の式で h  x 0 (b)k にとれば、
扱うのは、 f ( x ) 

g ( x) 

m
f ( x 0 (b)) x 0 (b)k   i g i ( x 0 (b)) x0 (b)k
i 1
T
0
T
0
u ( x ( t )) dt
v ( x ( t )) dt
m
のような積分タイプであり、等周問題と言わ
i 1
れる。 x  x 0 が、この最大化問題
  i k i
max f ( x)
g i ( x)  bi  0(i  1,..., m)
これは、パラメータ bi が動いたとき、最大値
f ( x0 ) がどう動くかは、ラグランジアンを
の解であるとし、 x0  M における M の接超
m
F ( x, b)  f ( x)   i ( g i ( x )  bi )
i 1
と書き、 b で偏微分すればよいことを示す。
平面を Tx0 とする。
Tx0  {h  E : g ( x0 )h  0}
m
Fb ( x 0 , b) k   i k i
i 1
x0 の近傍 x0  h で、 h  Tx0 に対し、微分の
これは包絡線定理と呼ばれる。
線形汎関数として、   (1 ... m ) は、
定義から、線形汎関数
f ( x 0 ), g i ( x0 ) : E  R が存在し、
f ( x0 (b)) x0 (b)  
であるから、ラグランジュ乗数  は、制約条
件のパラメータが動いたときに目的関数がど
f (x0  h)  f (x0 )  f (x0 )h  o( h )
gi (x0  h)  gi (x0 )  gi(x0 )h  o( h ),i  1,...,m
g i ( x, b)  0 の形で入っている場合も、パラメ
 g 1 ( x 0 ) 


ここで、 g ( x 0 )   ...  : E  R m
 g  (x )
 m 0 
ータ変化による目的関数の最大値への影響は、
は R の上への線形写像であるとし、このと
ラグランジアンを偏微分したものになる。
き x0 は正常点であると言う。
れほど動くかを示している。
パラメータが目的関数、制約条件に f ( x, b) 、
m
Fb ( x, b) k  f b ( x, b) k    i g ib ( x, b)k
i 1
m
超接平面 Tx0 は制約条件の集合 M と位相同型
であるから、 g i ( x0  h)  g i ( x 0 ), i  1,..., m
であり、最大値をとっているから、
- 148 -
f ( x0  h)  f ( x0 ) である。よって、
h  Tx0 に対し、g i ( x0 )h  0, i  1,..., m なら必
ず f ( x0 ) h  0 となっている。従って、付録
10 のように、ラグランジュ乗数 i , i  1,...,.m
が存在し、すべての h  Tx0 に対し、
付録 13. 連続時間の場合の横断条件の導出
(第 5 節)
生涯労働所得が収束するための条件(5-34)は、
lim T  
m
f ( x0 )h   i g i ( x0 )h

T
0

 ( t ) dt 

0
 ( t ) dt  
ここで、  (t )  0 であり、さらに一様連続で
i 1
これは、ラグランジアンを
あるとすると、横断条件
lim t   (t )  0
m
F ( x)  f ( x)   i ( g i ( x )  bi )
が出る。もしそうでないとすると、ある
i 1
とおいたとき、 F ( x0 )h  0 を意味する。
 0  0 と t1  t 2  ...  t n  ...   が 存 在 し
パラメータ bi , i  1,..., m を bi  k i に動かす
て、
 (t n )  2 0 , n
場合は、 n 次元空間の場合とまったく同様に
他方、一様連続であることから、この  0 に対
して、
して、  0  0 が存在して、
m
f ( x 0 (b)) x 0 (b)k   i g i ( x 0 (b)) x0 (b)k
i 1
n , t  [t n 
m
  i k i
0
2
, tn 
0
2
] について、
 (t )   (t n )   0
i 1
これは、パラメータ bi が動いたとき、最大値
すなわち、
 (t )   (t n )   0   0
f ( x0 ) がどう動くかは、ラグランジアンを
m
よって、
i 1
n ,
F ( x, b)  f ( x)   i ( g i ( x )  bi )
と書き、 b で偏微分すればよいことを示す。

tn   0 / 2
tn  0 / 2
 ( t ) dt   0  0
ここで、必要ならば部分列をとって、区間
m
Fb ( x 0 , b) k   i k i
i 1
[t n 
これも包絡線定理と呼ぶ。
線形汎関数として、   (1 ... m ) は、
が区間
f ( x0 (b)) x0 (b)  
件のパラメータが動いたときに目的関数がど
れほど動くかを示している。
パラメータが目的関数、制約条件に f ( x, b) 、
g i ( x, b)  0 の形で入っている場合も、パラメ
t1 
tn 
0
2
0
2

ラグランジアンを偏微分したものになる。
i 1
0
2
], n  1,2,...
[0, [ の中で、重ならないようにす
 0 に選び、t n まで選んだとき、t n 1 は、
 t n 1 
0
2
となるように選べばよい。
このとき、
ータ変化による目的関数の最大値への影響は、
m
2
, tn 
ることが出来る。 n  1 については、
であるから、ラグランジュ乗数  は、制約条
Fb ( x, b) k  f b ( x, b) k    i ( g ib ( x, b)k
0

0
N
 (t ) dt   
n 1
t n  0 / 2
t n  0 / 2
 (t ) dt  N  0  0
N   のとき、右辺、従って左辺も無限大
に発散する。これは矛盾。よって、横断条件
が成り立つ。
- 149 -
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