6 月 24 日(水)の質問/回答集 利他行動について 利他行動の説明が不

6 月 24 日(水)の質問/回答集
利他行動について
利他行動の説明が不十分だったようなので、付け加えます。
授業では、哺乳類(サル)
、鳥類(ペンギン)
、魚類(イトヨ、イシモチ)について例を挙
げました。
・そのほか、動物園で、ゴリラを見物していた少女が、ゴリラの飼育場と見物者を隔てて
いる堀に落ちたとき、ゴリラはその子を堀から助け出して、母親に返してあげた。という
例があります。
・ゾウは、病気になると横になって眠るという行動をいっさいしなくなります。横になる
と、起き上がるときに多くのエネルギーを必要とするため、病気になったときに横になる
と、立ち上がれなくなる可能性があるからです。
ある動物園で、1 匹のゾウが病気になったとき、他の 2 匹のゾウが、病気のゾウを両側から
支えるという行動を、病気から回復するまで数週間、続けました。
利他行動は、昆虫など、もっと下等な動物にも見られます。
・ミツバチやアリの仲間が、蜜やエサを運んで、女王蜂(女王アリ)の幼虫を育てるのも、
利他行動です。
・カバキコマチグモというクモのメスは、生まれた子グモに食べられてしまいます。この
母グモの“食べられてしまう”という行動が、利他行動です。
・同じように、カマキリは、交尾した後、メスがオスを食べてしまいます。このときのオ
スの行動が利他行動になります。
このように、ヒトやサルなどの高等哺乳類の利他行動は、その場の状況に応じた適切な判
断をおこなう、高度の知能に基づく行動ですが、そのほかの動物の利他行動は、本能行動
の要素の強いものです。
ボランティアは利他行動か
はい。利他行動といえます。
ただし、それがペンギンやサカナのような本能行動なのか、ヒト特有のボランティア精神
に依るのか、あるいは内申書の点数を上げるための打算的行為なのかは、定かでありませ
ん。
動物の世界に「逆恨み」はあるのか
知りません。
おそらく、ないと思います。
逆恨みとは、
「親切にされて(感謝すべきなのに、逆に)相手を恨むこと」といえますが、
親切、感謝、恨む・・・などの行為、感情は、ヒトに特有なものといえます。
(最初の授業の時に考えてもらった、「ヒトと動物を隔てるもの」の有力な候補かもしれま
せん。
)
利他行動で、他のペンギンに、自分の子供の世話をしてもらったペンギンは、そのペンギ
ンに感謝はしません。
摂食障害の人は、摂食抑制物質、促進物質が、通常のヒトより高い(低い)ということか
非常に重要な点です。
人の摂食障害は、単に摂食抑制・促進物質の異常でなく、ストレスや環境など、もっとさ
まざまな要因が関連しています。この辺は、来週の香山先生の特別講義で話していただけ
ると思います。
後天的にレプチン遺伝子が欠損することはあるのか
知りません。
非常に重要なことで、おそらくわかっていることと思います。
来週の香山先生の特別講義のときに質問してください。
オレキシンやグレリンは、体外から摂取しても意味があるのか。
体外から取り入れた物質(や薬)が脳に作用するか否かは、それが脳に届くかどうかに依
ります。脳の血管は、ある限られた物質しか通さない構造を持っています(脳血管障壁と
いいます)
。オレキシンは、この脳血管障壁を通れないので、それを食べても、注射しても、
効きません。ただし、物質の化学構造を少し変えて脳血管障壁を通れるようにすることは
できます。この技術によって、最近、オレキシンと似た化学構造で(オレキシン受容体に
結合して)オレキシンの作用を遮断する作用があって、
(阻害剤、あるいはアンタゴニスト
といいます)
、かつ脳血管障壁を通過できる物質が開発され、去年、新しい睡眠薬として発
売されました。
(オレキシンは、摂食促進作用に加え、覚醒作用があるので、その覚醒作用
を抑えることによって眠気を誘発します。)
ベルソヌラ/スボレキサントという名前で出ています。
グレリンは、脳血管障壁を通過するので、体外から摂取しても脳に届きます。ただし、グ
レリンを食べても、胃や腸で消化されてしまうので、いくら食べても効きません。
よく噛んで食べると、お腹いっぱいになるというけど、なぜ?
満腹感は、視床下部の満腹中枢のニューロンが興奮することによっておこります。満腹中
枢ニューロンを興奮させる物質の1つがブドウ糖です。
ブドウ糖は、食べ物(でんぷん)が消化され、腸で吸収されることによって、血液中に増えて
きます。これが脳に運ばれて、満腹中枢に届くまでに、20 分くらいかかります。したがっ
て、ゆっくり時間をかけて食べたほうが、満腹中枢のニューロンを興奮させやすくなり、
満腹感も得られるようになります。ブドウ糖が満腹中枢に届く前にガツガツ食べても、お
腹は膨れるけど満腹感は得られないので、つい食べ過ぎてしまうことになります。また、
唾液にもでんぷんの消化酵素含まれているので、噛むことによってでんぷんがブドウ糖に
分解されやすくなり、より速やかに血液中にブドウ糖が増えやすくなります。
摂食促進物質、抑制物質は、全ての生物にあるのか。
全ての生物で確かめられたわけではないですが、たとえば、オレキシンは、キンギョにも
あります。そのほかの摂食促進・抑制物質も、かなり下等な動物にもあると考えられます。
オレキシン、グレリンなどの摂食促進作用をもつものは、どちらかが多い場合でも、摂食
異常が起きてしまうのか。
オレキシンの分泌が減少してしまう病気はありますが、逆に亢進する症例は、ないと思い
ます。けれども、オレキシンの分泌が異常に亢進すれば、摂食量も異常に増加すると思い
ます。
(グレリンの場合も同様)
オレキシンのところで、
「ペプタイド」という言葉が出てきたが、どういう意味?
アミノ酸がいくつか繋がったものをペプタイド(ペプチド)といいます。
オレキシンには 2 種類あって、オレキシン A は 33 個のアミノ酸、オレキシン B は、28 個
のアミノ酸でできています。
アミノ酸がたくさん繋がったものを、蛋白質といます。
闘争行動の抑制機構は、個体のおかれている環境によって変化するか。
(飼っていた金魚が小さい金魚を激しく攻撃して、致命的なダメージを与えたことがあっ
た。
)
環境によって変化します。
本能行動は、モチベーション(動物の内的状態)によって変化します。
金魚も空腹が強いときは、死んだ固体など(普段は見向きもしないもの)も、食べます。
ストレスなどで、攻撃的になることもあるようです。
本能行動は、定型的で、決まった鍵刺激で誘発されますが、ロボットのように機械的なも
のではなく、外的な環境、動物自身の内的状態、それぞれの個体差などに依る、生物特有
の誤差、いい加減さも備えています。
クワガタが闘争を行うとき、相手を殺してしまうのは、なぜか。
相手を殺してしまうこともあるけれど、多くの場合は殺さないと思います。
上記の回答にあるように、クワガタの攻撃行動にも、相手を殺さないような抑制機構が備
わっているはずですが、たまたま運悪く、クワガタの角で致命傷を負う個体もいるのでし
ょう。
別の種どうしで、闘争行動をしないのか。
します。
動物が別種の動物とけんか(闘争)をするのは、エサやなわ張りが絡むときです。
樹木の蜜を吸いにくるクワガタムシとカブトムシは、けんかをします。
カブト虫のほうが強いです。
角のあるカモシカと角のないカモシカは、生活圏が異なるので、普段ほとんど出会うこと
はないので、けんかはしません。
たまたま(動物園などで)出会っても、基本的に他人に興味がないので、ほとんどけんか
になりません。動物が興味があるのは、エサ、同種の異性(ただし期間限定)くらいで、
自然界の動物は、それ以外のものに興味をもつほど悠長な暮らしはできません。
生きていくのに必死です。
負けたカワスズメの体色は、どのくらい時間がたつと戻るのか。
知りません。
一般的に、魚類の体色変化は、神経(交感神経)の支配を受けているので、かなりすばや
い変化です。数分~数十分で元に戻るものと思います。
角の生えたカモシカは、今後もボディーブロー攻撃をするように遺伝子が変化することは
ないのか。
全くないとはいえません。
遺伝子は、常に変異する可能性を秘めています。
ただし、そんなカモシカは、長い目で見ると生存に不利で、死に絶えてしまうだろう。
と考える人が多いです。
本能行動を引き起こす要因は、主に“生殖”と“食欲”という認識でいいのか。
確かに生殖と食欲は、生物の生存に重要な営みなので、多くの本能行動は、生殖、食欲に
関連するといえるでしょう。でも、それ以外にも(たとえば睡眠など)も、その 2 つと同
じくらい重要な営みはあるでしょう。