光音響効果を用いた内部欠陥検出に関する研究

光音響効果を用いた内部欠陥検出に関する研究
指導教員
山田
諄
教授
972027
浦川
隆之
津田
紀生
講師
972127
槇田
誠
<はじめに>
光音響効果とは断続光を物質に照射することにより音波が発生する現象である。本研究では半導体レーザ
(LD)を光源として用い、レーザ光を変調することによって光音響信号を得ている。光音響信号を用いる
ことで非破壊・非接触で物質内部の状態を知ることが可能である。前年度までは市販ロックインアンプを用
い、試料移動ごとに位相調整を行いながら内部欠陥を検出していたため、測定終了までにかなりの時間を必
要とした。今年度我々が設計した測定回路では、測定開始時のみ位相調整することで測定時間の高速化を目
指した。
<実験方法>
実験装置の概略を図 1 に示す。光源として波長 830nm、最大出力 30mW の半導体レーザを使用し、こ
れに方形波変調をかけて発振させる。レーザ光は集光レンズを用いて集光距離 50mm、直径 0.2mm に集光
され、斜め上方より試料表面に照射する。レーザ光照射面より発生する光音響信号は空中超音波センサによ
り検出される。空中超音波センサで検出された信号は、センサ回路内の一次増幅器にて増幅された後、同回
路内の BPF(バンドパスフィルタ)で一度ノイズ成分を取り除き、測定回路に取り込まれる。測定回路では、
さらにノイズを取り除く為に光音響信号と同周波数・同位相成分を持つ変調信号を掛け合わせる必要がある。
しかし、変調信号と光音響信号の間には位相差が生ずる。
変調信号
従って、変調信号を光音響信号と同相になるように位相調
LD
レンズ
レーザ光
整し、その信号とセンサ回路から得られる光音響信号とを
を持つ光音響信号だけが増幅され、その後平滑し、直流信
試料 X-Yステージ
LD位置調整装置
掛け合わせたことにより光音響信号と同周波数、同相成分
LD駆動&
変調回路
号として取り出される。取り出された最終出力信号をデジ
センサ
回路
Xステージ
タルオシロスコープにて測定した。また、試料は縦 20mm、
空中超音波
センサ
光音響信号
Y方向
X方向
デジタル
オシロスコープ
測定回路
横 60mm、厚さ 5mm アルミニウム板を用い、欠陥部の代
最終出力信号
<Top View>
用として側面に直径 1.8mm の穴を開けた。試料は X-Y ス
図 1 実験装置概略図
テージに固定し、レーザ光照射位置を Y 方向に移動させ
図2に市販ロックインアンプ、測定回路それぞれで測定し
た欠陥検出特性を示す。LD、試料、空中超音波センサは共
に同じ物を用いた。S/N は市販ロックインアンプでは 0.28dB、
測定回路では 3.37dB の差が見られた。また、欠陥部検出位
置はどちらの装置でも同じであった。欠陥部以外の光音響信
号の変動分は数回同じ条件で測定しても同様の傾向が見ら
れたため試料の表面荒さによるものと思われる。以上の点か
ら我々が設計した測定回路を用いた場合、高速に内部欠陥検
出が可能である事が分かった。
ロックインアンプ
測定回路
2
450
400
1.5
欠陥部
0
5
10
15
試料Y方向移動距離[mm]
図 2 欠陥検出特性
350
20
光音響信号(測定回路) [mV]
<測定結果>
光音響信号(ロックインアンプ)[μV]
欠陥検出を行った。