その空き家、大丈夫? こんにちは。司法書士の北尾です。 「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空き家対策特別措置法)」が平成 27 年 5 月 26 日から全面施行されました。 空き家問題がテレビのニュースなどで話題になることも増えました。 空き家の中には倒壊の危険がある、ごみ屋敷と化して異臭や害虫が発生しているなど、所 有者のみならず、近くで生活や事業を営む人々にとっても無視できないほど重要かつ緊急 な対策が求められる問題を含んでいるものがあります。 そこで空き家対策特別措置法の目的とその内容を2回に分けてご紹介いたします。 第1回 空き家対策特別措置法の目的 そもそも特別な法律を作ってまで空き家対策を進めなければならなかった事情を考えて みましょう。 ① 空き家による悪影響 一言で空き家といっても、転勤などによる一時的なものから故郷の実家、借主が見つから ないままの貸家など様々です。これらのうち適切な管理がされている空き家に対して特別 な対策が必要になるわけではありません。しかし一部の空き家から生じる以下のような悪 影響が懸念されています。 分類 ①倒壊等著しく保安上危険となる おそれのある状態 特徴 建物全体の傾き、主要構造の腐 敗、屋根・外壁の剥離、設備・門・ 塀の老朽化など 懸念される悪影響 倒壊、脱落、飛散による人的・物的 被害 ②著しく衛生上有害となるおそれ 浄化槽の破損、汚水の流出、ごみ 悪臭など衛生上の悪影響、害獣・害 のある状態 等の放置、不法投棄など 虫の増殖 ③適切な管理が行われないことに より著しく景観を損なっている状 景観計画に不適合 態 ④その他周辺の生活環境の保全を 図るために放置することが不適切 である状態 窓ガラス、門扉の破損 植栽の不整備 街並み、景観上の影響 資産価値の低下 不法侵入、放火等犯罪発生の危険 害獣・害虫の増殖 道路通行上の危険・悪影響 ■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■ 放置された期間が長い古い空き家ほどこれらの特徴と悪影響は増加し、危険度が高まるこ とを考えると、対策の強化が必要なことをご理解いただけると思います。 ② 空き家の増加 一層の対策強化を求められている背景には空き家の増加が予測されていることがありま す。その理由の一部をご紹介します。 (ア)人口・世帯数の減少 東京一極集中が招く人口減少はすでに始まっており、世帯数においても 2019 年をピーク に徐々に減少するという推計もあります。このように少子化にも関わらず持家志向が続く と、住む人がいなくなった家であっても処分されず空き家として残ることが予想されます。 (イ)介護施設の利用増加 生活基盤・様式の違いから親が高齢になってから子供と同居する世帯は少ないといわれ ています。一方でお互いに離れて暮らす不安、または子供らに負担をかけないようにとの親 心から介護施設を利用するケースもみられます。 今後さらに高齢者比率が高まるにつれ介護施設への入所が増えれば実家が空き家になっ ていきます。 (ウ)固定資産税上の優遇 建物がある土地は、土地の固定資産税が最大で 1/6 まで優遇される特例があります。つま り土地上の建物を解体して更地にしてしまうと土地の固定資産税が最大 6 倍に増えます。 これでは空き家が古くなって誰も利用する人がいなくなっても具体的な建て替えの計画が なければ解体しようとしません。 (エ)解体費用の負担 空き家を解体するには相当の費用の負担を覚悟しなければなりません。立地や建築材料 によれば費用が相当高額になる場合もあります。また空き家を解体したからといってすぐ に土地を活用できるとは限らず、前述のように具体的な建て替えや、土地の売買・貸借など の計画のなかで行われるのが一般的です。 (オ)新築・築浅物件の人気 売買でも賃貸でも同じ予算ならできるだけ新しくきれいで現代的な設備や間取りの家に 人気が集まるので、築年数の浅い物件やリノベーション物件の需要が増えます。 当然、リフォームもされず老朽化した空き家は人気が低く、活用が限られてしまい、結果 収益も上がらないため管理や修繕のための費用が捻出できない悪循環に陥っています。 ■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■ (カ)中古物件の価値が低い 木造の建物自体は築後 20 年もすれば市場価値はなくなり、土地だけの価値になります。 また都市部の古い狭小住宅の中には、現在の建築関係法規のもとでは同等の規模の建て替 えや再建築ができない物件があります。そのような物件は単独での市場価値は極めて低い と言わざるを得ません。 ③ 法律で地方の空き家対策をバックアップ これまでみてきたように現に近隣、周辺に悪影響を及ぼす空き家が存在し、さらにそのよ うな空き家予備軍が増えることを考えると、国として空き家対策を進める必要性が高まっ てきました。 そこで、特別な法律を制定して、市町村の空き家対策に法的根拠を与えました。 条文で明記された空き家対策特別措置法の目的 は次の通りです。 • 地域住民の生命、身体又は財産を保護する • 地域住民の生活環境の保全を図る • 空家等の活用を促進する • 空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進する • 公共の福祉の増進と地域の振興に寄与する 空き家対策特別措置法では、これらの目的を達成するために市町村が行う具体的な施策 を定めるのではなく、国が基本方針を策定し、市町村が空き家等対策計画の作成その他の空 き家等に関する施策を推進するために必要な事項を定めるとされました。 では具体的に市町村は空き家対策としてどのような取り組みをはじめるのでしょうか? それについては次回、ご説明させていただきます。 神戸海岸司法書士事務所 司法書士 北 尾 浩 一 〒650−0024 神戸市中央区海岸通4丁目3番17号 清和ビル 38 号 TEL 078(599)5798 FAX 050(3730)0336 E-mail [email protected] http://kobekaigan-office.com ■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■
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