21世紀COEプログラム 平成 16 年度研究計画書

21世紀COEプログラム
平成 16 年度研究計画書
「北向き IMF 時における低緯度磁気圏境界面の三次元モデル化と、太陽風
エネルギーの磁気圏・電離圏への輸送プロセスの解明」
氏名 松本洋介
所属 統合モデリンググループ(グループ3)
太陽地球系の領域間結合モデル・サブグループ
(1)所属グループでの役割・計画
申請者が所属するサブグループでは、太陽から地球大気にいたるまでのプラズマエネルギーの輸
送過程について明らかにし、人工衛星、地上観測のデータと合わせることによってモデル化すること
を目的としている。 太陽から地球大気にプラズマのエネルギーが至るまでには、太陽風/地球外部
磁気圏、磁気圏/電離圏と2つの領域の境界があり、これら領域を結合する物理メカニズムを明らか
にすることが重要となってくる。申請者はその中でも特に、低緯度磁気圏境界面での太陽風エネルギ
ーの輸送過程について明らかにし、その後の内部磁気圏への輸送プロセスと、磁力線を介した電離
圏への輸送メカニズムについて明らかにすることを目的として研究を行う。
(2)研究内容
本年度ではまず、低緯度磁気圏境界面の三次元モデルを開発し,太陽風プラズマのエネルギー・物
質輸送についてその物理プロセスを明らかにすることを目的としている。
研究背景
地球磁気圏は太陽風と地球大気が直接相互作用するのを防いでおり、固有磁場がシールド
の役目を果たしている。しかしながらオーロラに代表されるように、何らかの方法で太陽風エ
ネルギーが地球大気にまで影響を及ぼしているが、その物理プロセスは未だ明らかになって
いないものも多い。特に、惑星間空間磁場が北向きの時の磁気圏の応答については未だ多
くの謎を残している。その中でも、低緯度磁気圏境界面では太陽風プラズマが幅広い領域ま
で直接侵入している痕跡が報告されており (e.g. Eastman et al., 1985)、この様な観測は
Dungey[1961]の磁気リコネクションモデルに替わる新たな太陽風-地球磁気圏相互作用モ
デルの存在を示唆してきた。しかし、現状では衛星による“状況証拠”が報告されているだけ
にとどまっている。これらを理解するにおいては、まず、理論的モデルの確立が急務となって
いる。
三次元 KH 不安定の非線形発展の理解
低緯度磁気圏境界面では速度シア不安定である Kelvin-Helmholtz(KH)不安定が成長する
ことが明らかになっている。申請者はこれに注目し、KH 不安定を介した太陽風プラズマの輸
送過程について明らかにする。二次元平面内での KH 不安定による輸送プロセスについて
は Matsumoto and Hoshino[2004]によって大きな進展が得られているが、本研究ではこれを
三次元モデルに拡張し、将来のグローバルモデルへの統合に向けてモデル化の開発を行う。
その他に三次元へと拡張することによって期待できる新たな点は以下の二つが挙げられる。
一つ目は三次元性を考慮することによる新たな物理の解明である。中性流体の KH 不安定
の三次元シミュレーションでは、三次元性による新たな二次不安定性の励起による乱流への
移行が報告されているが、磁気流体においては未知の領域である。また、その乱流の移行メ
カニズムは未だ確立されておらず、三次元性を考慮した乱流への移行メカニズムについて理
論的に理解をすることを目指す。二つ目の点は、三次元性を考慮することによって、電離圏
への影響も同時に扱うことができる点である。低緯度境界面では磁力線を介して電離圏と相
互作用することが可能であり、三次元性を考慮した結果、上記で得られた乱流の発達による
磁力線方向のプラズマエネルギーの輸送についても解明したいと考えている。
(3)予算申請
本研究では三次元モデル化に伴い、大規模な数値シミュレーションの実行が要求される。その結果
得られる大量のデータを処理し、保存することが必要であることが予想される。従って、以下の内容の
ような予算を申請したい。
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コンピュータ機器(51 万円)
✗ ノート PC(30 万円)
✗ データ保存用大容量ハードディスク(17.5 万円)
✗ 携帯用ハードディスク(3.5 万円)
国内旅費交通費(15 万円)
✗ 学会参加(5/9-13、 7万円)
✗ 学会参加(9/25-29、 8万円)
消耗品等(ソフトウェア、論文掲載料を含む、30 万円)
計 96万円
以上