STB第3号

「スコーレ・テクニカル・ブリーフ」第3号
2006年9月
分野:解 析 技 術
テーマ:温度依存性のある線膨張係数の取扱について
【1】 線膨張係数には以下の2つがあります。
・ 瞬間線膨張係数:各温度ごとの線膨張係数(図1)(JIS規格では単に「線膨張係数」という)
・ 平均線膨張係数:基準温度から測定温度ごとの線膨張係数(図2)
熱変形や熱応力の解析にはこちらの線膨張係数を使用する(文献1)。
(ただし、種々の解析ソフトをチェックしたわけではない)
ひずみ
ひずみ
T1
T2
→温度
T1
基準温度
図 1
(T0)
T2
→温度
図 2
・ 温度差(T2-T1)のひずみ=ε
・ 基準温度でのひずみ=0
・ 平均線膨張係数=ε/(T 2 -T 1 )
・ 温度T2での平均線膨張係数
で、T2をT1に限りなく近づけた場合
=T2でのひずみ/(T2-T0)
の、T1での線膨張係数
* 引用文献
1.非線形CAE協会:監修、岸 正彦:著 構造解析のための有限要素法実践ハンドブック P164~165
(2006年5月30日)、P164、森北出版(株)
2.JIS Z 2285(2003):金属材料の線膨張係数の測定方法
【2】 問題は、「平均線膨張係数及び瞬間線膨張係数が温度依存」の場合です。例えば、平
均線膨張係数の場合、熱膨張問題から熱収縮問題に解析を変更する場合、その解析
に合わせた基準温度に平均線膨張係数を変更する必要があります。
解析ソフトによっては変換を自動的に行うものもあるが、手計算(Excelを使用する)で
変換する方法(手順)を示します。
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【3】 変換方法
(1) 熱膨張問題から熱収縮問題に解析を変更する場合
* 計算例:0℃基準の線膨張係数が与えられている場合、100℃基準に変換する。
単位長さ当り
0℃基準の
100℃基準の
温度
平均線膨張係数
0℃基準の
100℃基準の
平均線膨張係数
[℃]
[1/℃]
伸び量
伸び量(縮み量)
[1/℃]
20
5.00E-06
0.000100
-0.000800
1.0000E-05
30
5.50E-06
0.000165
-0.000735
1.0500E-05
40
6.00E-06
0.000240
-0.000660
1.1000E-05
50
6.50E-06
0.000325
-0.000575
1.1500E-05
60
7.00E-06
0.000420
-0.000480
1.2000E-05
70
7.50E-06
0.000525
-0.000375
1.2500E-05
80
8.00E-06
0.000640
-0.000260
1.3000E-05
90
8.50E-06
0.000765
-0.000135
1.3500E-05
100
9.00E-06
0.000900
0.000000
0
↑
↑
↑
①
②
③
例:70℃の場合の計算式
①の計算式: (7.5E-6)*(70-0)=0.000525
70℃での平均線膨張係数*温度差
②の計算式: 0.000525-0.000900=-0.000375
100℃での伸びを0(ゼロ)とした相対的な「伸び量(縮み量)」
③の計算式: -0.000375/(70-100)=0.0000125=1.25E-05
(変換結果)
* 上記のように、0℃基準と100℃基準では、平均線膨張係数が異なります。
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(2) 瞬間熱膨張係数から平均線膨張係数への変換
① 例として、瞬間線膨張率は以下の様に定義されているとする。
ひずみ4
α4
ひずみ3
α3
ひずみ2
α2
α1
ひずみ1
0
20
50
90
140
温 度(℃)
*瞬間線膨張係数(α)は連続関数的に定義(測定)されている場合が多いと考えられるが、
温度区間ごとに定義されているとする。
*各温度範囲におけるひずみは以下。
・ひずみ1=α1*(20-0)
・ひずみ2=α2*(50-20)
・ひずみ3=α3*(90-50)
・ひずみ4=α4*(140-90)
* 計算例
温度範囲 瞬間線膨張係数 温度範囲における
ひずみ
0~20
0.00020
1.00E-05
20~50
8.00E-06
0.00024
0.00024
50~90
6.00E-06
3.00E-06
0.00015
90~140
ひずみの
累積値
0.00020
0.00044
0.00068
0.00083
0℃基準の平均線膨張係数
(注)
1.000E-05
8.800E-06
7.556E-06
5.929E-06
(注):平均線膨張係数は、20、50、90及び140(℃)の時の値である
② 瞬間線膨張係数が連続関数として定義されている場合は、温度範囲を細かくして、
区間積分を実行すればよい。
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