マレーシア国立大学と群馬大学の学生交流に関する報告書 Student 1 1.概要 マレーシア国立大学(UKM:University Kebangsaan Malaysia)との研究交流会を行うために、演習 を含め、11 月 5 日から 1 月 9 日まで留学生交流支援制度プログラムに参加し、その中で 11 月 25 日か ら 12 月 4 日まで研修に参加した。私自身の目的は主に 3 つあり、①学んできた英語を用いてマレーシ アの人々とコミュニケーションをとる、②UKM の学生と友好関係を築く、③日本との文化や宗教の違 いを肌で感じることであった。日程としては、11 月 25 日にマレーシアへ到着し、26 日には UKM の学 生と研究の口頭発表やポスター発表を行うことで、意見交換を行った。27 日にはパームオイル工場、 Permanis 工場(清涼飲料水等をつくる飲料工場)に伺った。28 日には UKM、群馬大学の先生方の発表 を傍聴し、その後、Beryl’s(チョコレート)工場を見学した。29 日と 30 日は UKM の学生と市内を見学 した。12 月 1 日には方法論という学問における UKM の講義を傍聴し、2 日には UKM の学生たちに案 内され、KLCC 等で交流会を行った。3 日は自分たちで市内を散策し、さまざまな文化や宗教にふれ、 4 日に帰国した。 2.報告 2‐1. 大学紹介・研究発表会(11 月 26 日) UKM へ行き、午前は群馬大学の学生がそれぞれ大学の紹 介を行い、その後、研究発表を行った。口頭発表では、群馬 大学の学生が 3 名、UKM の学生が 2 名行い、午後にポスタ ー発表が行われ、本学生・UKM の学生合わせて 7 名が発表 を行った。現在、私は直接メタノール形燃料電池における触 媒開発を行っており、UKM でも同様の実験を行っていると いうことを聞いていたため、何か新しい知見が得られるの ではないか、と思い、UKM の学生を囲んで、ポスター発表 を行った。英語での発表ということで、事前には原稿を作成 して発表練習を行い、予想される質問への 本校を紹介する様子 返答を考え、ポスター発表に臨んだ。しかし、発表当日は英語で話す自信のなさから、聞き手の反応を 見ながら発表することができず、原稿を見ながら発表してしまった。また、時間が決められていたにも かかわらず、要点を押さえずに長々とした発表になってしまった。質疑応答では、原稿等で事前に準備 することができないため、研究における英会話を行える場であった。UKM の方々がゆっくりと簡単な 単語を使ってくれたため、相手が自分に聞いている内容を理解することができたが、相手に分かりやす い回答をすることができず、最終的には先生の力を借りてしまった。そのため、自分の英語能力の未熟 さに気付くことができ、今後、英語の勉強をする必要があることを確認することができた。UKM の学 生の研究は酸化チタンを用いたアンモニア分解やアルコール酸化活性、バイオ燃料電池など、本研究室 で行われている研究内容と似た内容であった。UKM の学生の発表を聞いて思ったことは、第 2 言語で ある英語が流暢であり、質問への対応を即座にすることができており、自分もそのレベルまで英語を使 いこなしたいと思った。研究内容を聞いて分からないところは積極的に質問することができ、良い経験 ができてよかったと感じた。 2‐2.Palm Oil 工場、Permanis 工場(11 月 27 日) 2 日目にパーム油工場に行った。パーム油は油やしの果実 から得られる植物油のことである。マレーシアでは大規模な プランテーションを行っており、生産量はインドネシアに次 ぐ世界第 2 位を誇り、輸出総額の約 10 %を占める国家的輸 出産業になっている。パーム油の用途はマーガリンやチョコ レートなどの食用、石鹸やシャンプーなどの工業用に応用さ れて、将来的にはディーゼルエンジン油としての活用も期待 されている。また、私が最も関心を持ったことは、パームオ イル産業におけるゼロエミッション化である。油やしからパ ーム油を採った後、枝葉や廃液、古木が廃棄物として排出さ れる。パーム古木にはグルコースが豊富に含まれ、果肉の繊維や廃液は肥料や重要なバイオマス燃料と して再利用することができる。食用から工業用に用いられ、工場の電気や肥料まで作り出し、それが雇 用や工業の発展にもつながることから、油やしに捨てる部分が発展途上国といえども、環境問題への積 極的な取り組みに感銘を受けた。日本は大量生産、大量消費の国であることから、廃棄物を再利用する といったエコな取り組みをもっと推進すべきであると考えた。 Permanis 工場では炭酸飲料などの作り方や生産ラインを見た。他にも説明があったが、英語が聞き 取れないところが多々あったが、積極的に質問できなかったことが反省点として挙げられる。 2‐3.UKM・群馬大学の先生方の発表と Beryl’s 工場(11 月 28 日) 大講義室のようなところで中川先生を含め、3 名の講義を受けた。UKM の Wan 教授は固体高分子形 燃料電池(PEMFC)の研究開発における発表を行っていた。自身の研究ではカーボンナノファイバーを 用いた触媒の開発を行っているが、Wan 教授はカーボンナノチューブやグラフェンなどの他のカーボ ン材料を用いていたが、後半の講義が駆け足になったため、自分が最も知りたい内容については詳しく 聞くことができなかった。次に、バイオ燃料電池の研究を行っている Kim 教授の講義を聞いた。バイオ 燃料電池の出力の向上や被毒改善のアプローチ方法について講義を行っていた。 その後、チョコレート工場を見学した。チョコレート工場では、UKM の学生と工場内を見学し、カ カオの歴史やカカオの豆から製品になるまでの工程を説明 していただいた。Beryl’s 工場のチョコレートは現地では高 級なお菓子であり、日本のチョコレートよりも高価であっ た。UKM の学生も工場に行くのを楽しみにしていたよう で、UKM の学生と写真を撮ったり、クイズにチャレンジ するなどして盛り上がった。UKM からホテルに帰った後 はホテル周辺を散策した。散策したところ、インドや中国 のお店やマレーシアの家庭料理店などがあり、クアラルン プール市内でさまざまな文化が混在していた。 Beryl’s 工場のマスコットキャラクターと UKM・群馬大学の学生 2‐4.講義・研究室見学(12 月 1 日) UKM の講師の講義を傍聴した。研究に関する哲学と方法 論における講義であった。講義の内容は、盗作や論文の引用 における研究倫理やある問題を解決するための方法、心構え を説いたものであった。授業が終わりに昼食を食べた後に、 自分が最も楽しみにしていた研究室見学を行う予定であっ たが、体調不良に襲われ、UKM の学生に送られ、早退して しまった。後で話を聞くと、UKM の燃料電池研究所を訪れ、 さまざまな分析装置など設備が整った実験室があり、DMFC や固体酸化物形燃料電池(SOFC)、バイオ燃料電池を中心に 研究が行われていた。本プログラムの目的でもある再生可能 研究室の様子 なエネルギーについての研究を実際に見ることができなくて非常に残念であった。 2‐5.クアラルンプール市内散策 (12 月 2 日) UKM の学生とイスタナブダヤという国立劇場に行った。この施設ではミュージカルや他国から来た 劇団が実際に披露しているそうだ。中に入ると、かなり広いというわけではないが、いずれの席でもミ ュージカルの臨場感を味わえるような造りになっていた。施設内では実際にスタッフが働いている裏方 や芸能人が使う楽屋、大統領の待機室など普段入ることができない場所に行くことができ、珍しい体験 をすることができた。 イスタナブダヤ(国立劇場) 施設内で UKM の学生と 2‐6.その他の活動(11 月 29 — 30 日、12 月 3 日) マレーシアの文化に触れるために UKM の学生に案内され、イスラム教の礼拝堂であるモスクを見学 した。モスクと言っても建物によって形や色がさまざまで特徴的であったが、モスクの中は非常に神聖 な場所で幻想的であった。また、日本では見られない造りやあまりの壮大さに目を奪われた。また、マ レーシアの食文化に触れるために、さまざまな店に訪れた。マレーシアでは中国やインドの文化も混在 しているため、マレーシアの家庭料理であるナシゴレンの味は、インドのお店はカレー風味であったり、 中国の店は香辛料を使っていてとても辛く、同じ料理でも味付けが異なるなどの違いを感じた。マレー シアの料理は日本人にも好まれる味で非常に美味であったが、体調不良を起こしたため、次回に外国へ 行く際には水に気を付けようと思った。また、違う日にクアラルンプールから車で 2 時間ほどの世界文 化遺産のマラッカにいった。ここはヨーロッパとアジアを結ぶ貿易の中継点として繁栄し、ポルトガル・ オランダ・イギリスとヨーロッパの国々に支配された影響と東南貿易の中継点として異文化が混合した 都市である。マラッカの街並みやポルトガル人によって建てられた教会跡として知られているセント・ ポール教会、1511 年にポルトガル領マラッカとしてオランダとの戦いに備えて作られた砦であるサン チャゴ砦、海洋博物館を 1 日かけて私たち学生と先生方と見学した。マラッカの街並みは中国風の建物 がある一方で、教会やヨーロッパ風の街並みがあり異文化を感じられ、貿易港としての歴史も勉強する ことができた。 マラッカにて 政府機関プトラジャヤにて 3. 本プログラムへの参加を通して 本プログラムへ参加し、自分のコミュニケーション能力を向上できたと思う。日本語が通じないマレ ーシア、日本と異なる宗教であるマレーシア、まさに異文化の国で 1 週間以上体験できた数多くのこと は貴重な経験となった。自分にとっては初めての海外であり、実際にマレーシアの人々や UKM の学生 とコミュニケーションをとるために必要なことは、英語能力はもちろん、笑顔でいること、聞こうとい う姿勢を見せることが特に重要であることが分かった。しかし、研究発表やディスカッションを通して、 どうしても伝わらない部分があり、自分の英語能力の低さを実感できたため、英語の勉学へ取り組むと いう新たな目標ができた。UKM の学生と非常に長い時間を過ごしたことでとても仲が良くなり、笑い 話ができるような関係になり、海外に友人ができたことは私にとって一番の財産である。また、マレー シアでは非常にお世話になり、厚く歓迎してくれた。日本に来ることがあれば連絡を取って、今度は私 が日本の街を案内し、さらに関係を深めていきたいと考えた。
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