麻酔科医に薦めたい本三重大学附属病院臨床麻酔部教授宮部雅幸内藤先生の手法は徹底的に症例報告を集め、まとめ漢方薬副作用百科ることにある。この手法で特発性腸間膜静脈硬化症の内藤裕史著原因がサンシシ（乾燥クチナシ）の成分ゲニポシドであることを見抜かれた。症例報告は、まさに臨床医の原丸善出版 2014年 9月本体4,400円 + 税点であり、症例報告を積み重ねることで真実が浮き彫りになる。個々の症例の大切さを教えてくれる一冊である。ちなみになぜ表紙が彩飾写本なのかというと、彩飾写本収集が内藤先生の趣味だからである。彩飾写本は �� 医学系の学術書には珍しい中世ヨーロッパの彩飾写本が表紙を飾る。彩飾写本とは、聖職者が毎日、時間 � �� ごとの祈りに用いた時祷書で、きれいな挿絵が施されている。内藤先生のこれまでの著書「中毒百科」、「健康食品中毒百科」も彩飾写本を表紙に用いている。見て美しく、読んで内容が深いとのこと。ただしラテン語で書かれているため、読むには勉強が必要である。内藤先生にはぴったりの趣味だが、中毒関係の著書執筆のため彩飾写本を読み解く時間は余りないとお聞きしている。内藤先生は麻酔科医で、methoxyfluraneの日本への導入時、良い麻酔薬として導入に積極的であった。ところが腎毒性のため、その後使われなくなった。「ちゃんと情報を得ておけば、ちゃんと調べておけば」との思いが内藤先生を中毒研究の道に導いたと聞いたことがある。内藤先生は本書の前に「健康食品中毒百 �� 科」を上梓されている。健康食品は医薬品と違い安全で副作用がないと信じられている。しかし健康食品による健康被害という笑えない症例が散見される。中毒学 �� を究める内藤先生としては見過ごすことができなかった。さらに漢方薬も健康食品のように服用され、健康被害も報告されている。一般の方が漢方薬を自分で服用して健康被害に合うことも問題だが、医師が処方する漢方薬でも重篤な副作用が多数報告されている。中には肝不全から肝移植に至る場合もある。著者曰く「副作用を知らずして、漢方薬を使用するなかれ、飲むなかれ！」。もし皆さんの中に漢方薬を処方されてプロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・宮部雅幸 Masayuki Miyabe 三重大学附属病院臨床麻酔部教授 1978年 3 月：札幌医科大学卒業同年 4 月：札幌医科大学麻酔科入局 1985年 7 月：Johns Hopkins Univ. 留学（fellow） 1993年 4 月：Johns Hopkins Univ. 留学（assistant prof.） 1994年12月：筑波大学附属病院麻酔科講師 1998年 8 月：筑波大学附属病院麻酔科助教授 2009年11月：三重大学附属病院臨床麻酔部教授いる先生、漢方薬を常用されている先生がいらしたら趣味：ジョギング是非お手元に置くことをお勧めします。好きな言葉：「行雲流水」こううんりゅうすいこのコーナーでは、お薦めしたい本（ジャンルは問いません）についてご執筆いただける方を募集しております。詳細は巻末informationをご覧ください。 21