成人患者の急性発熱 + 全身性紅斑

Clinical Question 2015年7月19日
JHOSPITALIST Network
成人患者の急性発熱 + 全身性紅斑
~問診だけで診断を試みる~
亀田総合病院 総合内科
後期研修医 長谷川 真也
佐田 竜一 監修
※スライド11以外の写真はすべて長谷川/佐田による経験症例
分野: 皮膚科
テーマ: 診断
症例 ADL full 80歳男性
X-34日 ふらついて転倒するエピソード出現.
X-28日 前医で心不全にて入院, 10日間の治療で退院.
X日 食事摂取できなくなり救急要請.
体温 38℃台, 左肺野wheezes聴取, 全身皮疹あり.
Clinical question
Fever & generalized rashを目の前にして
どう問診するか?
Fever & generalized rashをみたら
① shockの有無を確認
② 2ヶ月以内の薬剤歴を確認
③ 海外渡航歴を確認
④ 性交渉歴を確認
⑤ その他のウイルス性疾患の可能性を確認
⑥ 問診だけでは診断困難な疾患を想起
発熱 +
全身性紅斑
① shockの有無を確認
shock
播種性Vibrio vulnificus
感染症
髄膜炎菌/
肺炎球菌菌血症
新規開始
薬剤
数時間の
経過
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
数日の
経過
診断困難
※TSS: toxic shock syndrome
TSLS: toxic shock like syndrome
DM, LC, CKD
海水・海産物
脾摘, 液性免疫不全
TSS, TSLS
タンポン, 術直後
感染性心内膜炎
Clostridium感染症
管と異物
口腔内不衛生
汚染のひどい外傷
Aeromonas感染症
淡水との接触
リケッチア感染症
発症前の活動・旅行歴
発熱 +
全身性紅斑
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
診断困難
Fever + Rash + Shock を来たす疾患
~“VS WATER”の語呂で覚える~
V: Vibrio vulnificus
S: spleen
(Pneumococcus, H. influenzae type b, Meningococcus, Capnocytophaga)
W: Waterhouse-Friderichsen = Meningococcemia
A: Anaerobe (Clostridium perfringensなど)
T: toxic shock (Staphylococcal/Streptococcal)
E: endocarditis
R: Rickettsia
H25.10.11. 東京GIMカンファレンス13 多摩総合医療センター 九鬼隆家先生のmnemonics.
発熱 +
全身性紅斑
shock
新規開始
薬剤
数時間の経過→致死率の高い疾患を把握!
◎ 播種性Vibrio vulfinicus感染症
-糖尿病, 肝硬変, 慢性腎不全の背景.
-7日以内の海水曝露・海産物摂取.
Mandel et al. Principles and Practice of Infectious Diseases. 8th Edition. 2015.
◎ 侵襲性髄膜炎菌/肺炎球菌菌血症 [Fig. 1]
-脾摘, 液性免疫不全がリスク.
海外
渡航歴
性交渉歴
Am J Med Sci. 2006;332(6):339-45.
Fig. 1
◎ 毒素性ショック症候群(TSS) [Fig. 2, 3]
-タンポンに関係するものは月経開始2-3日で発症.
-術後感染症としては多くは術後約2日で発症.
Lancet Infect Dis. 2009;9(12):281–90.
ウイルス
診断困難
◎ 毒素性ショック様症候群(TSLS)
-糖尿病, アルコール, 手術, 外傷, 水痘がリスク.
Mandel et al. Principles and Practice of Infectious Diseases. 8th Edition. 2015.
Fig. 2
Fig. 3
発熱 +
全身性紅斑
shock
1-2日の経過→致死率の高い疾患を把握!
◎ 感染性心内膜炎 [Fig. 4, 5]
-リスク因子→既存の心疾患,口腔不衛生,
IV-drug abuser, 人工物留置, 透析など.
新規開始
薬剤
◎ Aeromonas感染症
海外
渡航歴
◎ Clostridium感染症
性交渉歴
ウイルス
診断困難
-7日以内の淡水との接触.
-免疫不全で菌血症を起こし, 致死率高い.
Fig. 4
Fig. 5
-汚染のひどい外傷.
◎ リケッチア感染症 [Fig. 6]
-居住地区, 流行地域への旅行歴, 畑仕事・入山歴.
Fig. 6
-ツツガムシ→日本全土で考慮.
日本紅斑熱→千葉以西の太平洋岸に多く分布. 他地域でも報告数が増加.
Mandel et al. Principles and Practice of Infectious Diseases. 8th Edition. 2015.
IASR. 2010;31(5):120-22.
発熱 +
全身性紅斑
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
② 2ヶ月以内の薬剤歴を確認
SJS/
TEN
2か月以内からのセフェム, キノロン,
ロキソプロフェン, アセトアミノフェン等
DIHS/
DRESS
2-6週前からの抗痙攣薬, アロプリノール,
テトラサイクリン, サルファ剤等
AGEP
1日以内の抗菌薬,
または11日以内の抗真菌薬,
抗マラリア薬, Ca拮抗薬
ウイルス
診断困難
※SJS: Stevens-Johnson syndrome
TEN: toxic epidermal necrolysis
DIHS: drug-induced hypersensitivity syndrome
DRESS: drug rash with eosinophilia and systemic syndrome
AGEP: acute generalized exanthematous pustulosis
発熱 +
全身性紅斑
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
診断困難
SJS(Stevens-Johnson syndrome) /
TEN(toxic epidermal necrolysis) [Fig. 7]
◎ 薬剤開始後28日以内の発症が8割.
だが, いつでも生じうる.
◎ 本邦で多い報告:セフェム, キノロン,
ロキソプロフェン, アセトアミノフェンなど.
※多形滲出性紅斑の29%に4週間以内の
ヘルペス感染が関与.
日皮会誌2011;121:2467-82.
Arch Dermatol. 2002;138(8):1019-24.
Fig. 7
発熱 +
全身性紅斑
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
診断困難
DIHS(drug-induced hypersensitivity syndrome)
DRESS(drug rash with eosinophilia and systemic syndrome) [Fig. 8]
◎ 開始後2-6週での発症.
◎ 使用薬剤
-アロプリノール, ミノサイクリン, メキシレチン,
ジアフェニルスルホン,サラゾスルファピリジン,
抗痙攣薬(カルバマゼピン, フェニトイン,
フェノバルビタール), etc…
◎ 薬剤中止後も2週間以上遷延する.
Fig. 8
Am J Med. 2011;124(7):588-97.
発熱 +
全身性紅斑
AGEP(Acute generalized exanthematous pustulosis) [Fig. 9]
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
診断困難
◎ 種々の抗菌薬, 抗真菌薬,
抗マラリア薬, Ca拮抗薬など.
◎ 薬剤投与開始後, 発症までに Fig. 9 (UpToDate®より)
抗菌薬→1日 / その他薬剤→11日
◎ 原因薬剤を中止後, 速やかに消退する.
Br J Dermatol. 2007;157(5):989-96.
発熱 +
全身性紅斑
③ 海外渡航歴を確認
shock
熱帯・
亜熱帯
マラリアを確実に除外!
リケッチア感染症
(ロッキー山
紅斑熱等)
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
診断困難
渡航先
の
流行
疾患
滞在
月日
(潜伏期)
デング熱
曝露歴
レプトスピラ感染症
腸チフス
ウイルス性
肝炎
発熱 +
全身性紅斑
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
渡航先の流行疾患を確認
◎ 今まで経験した渡航地全ての流行疾患を
調べる.
‣ FORTH 厚生労働省検疫所 http://www.forth.go.jp/
‣ CDC Travelers’ Health http://wwwnc.cdc.gov/travel/
Yellow Book http://wwwnc.cdc.gov/travel/page/yellowbook-home-2014
性交渉歴
‣ Fit for Travel http://www.fitfortravel.nhs.uk/home.aspx
ウイルス
‣ HealthMap http://healthmap.org/en/
診断困難
大曲貴夫ら『Fever-発熱について我々が語るべき幾つかの事柄-』金原出版, 2015年.
発熱 +
全身性紅斑
発熱と皮疹を呈する輸入感染症
http://www.sozai-library.com/sozai/2576, Ann Intern Med. 2013;158(6):456-68. を基に作成
shock
新規開始
薬剤
>
>
海外
渡航歴
>
>
>
>>
>
>
ウイルス
診断困難
>
>
>
>>
>
>>
性交渉歴
>
マラリア
A型肝炎
リケッチア感染症
急性HIV感染症
デング熱
肺外結核
腸チフス
E型肝炎
>
>>
>
熱帯・亜熱帯地域では
マラリアを必ず想起
発熱 +
全身性紅斑
潜伏期・曝露歴を確認
Short:10日以内
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
診断困難
潜
伏
期
曝
露
歴
 ウイルス性
出血感染症
 デング熱
 リケッチア感染症
 髄膜炎菌感染症
咬傷
 蚊 -マラリア
-デング熱
 ダニ
-リケッチア症
Medium: 11-21日





マラリア
レプトスピラ感染症
腸チフス
リケッチア感染症
A, B型肝炎
経口摂取
 水 -A, E型肝炎
 乳製品 -結核
 汚染飲食物
-腸チフス
Long: 30日以上




マラリア
結核
HIV感染症
A, B, C, E型肝炎
接触
 清流, 土壌
-レプトスピラ感染症
 性行為感染症
 sick contact
Lancet.2003;361(9367):1459-69. UpToDate® 一部改編
発熱 +
全身性紅斑
④ 性交渉歴を確認
shock
急性HIV感染症
新規開始
薬剤
播種性淋菌感染症
ウイルス性肝炎(A, B, C型)
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
診断困難
5“P”の
聴取
リスクの
ある
性交渉
二期梅毒
HTLV-1感染症
単純ヘルペス感染症
発熱 +
全身性紅斑
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
診断困難
性交渉歴の問診
→リスクのある性交渉の把握
◎ 5“P”を尋ねる
Partners: 性交渉の相手人数, 性別, 特定/不特定
Practices: オーラル/アナルセックスの有無
Protections from STIs: コンドームの使用の有無
Past history of STIs: 自身・パートナーのSTIsの既往
※STIs: sexually transmitted infections
Prevention of pregnancy: 避妊・妊娠計画の有無
http://www.cdc.gov/std/treatment/sexualhistory.pdf.
発熱 +
全身性紅斑
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
発熱と皮疹を呈するSTIs
‣ 播種性淋菌感染症
‣ 二期梅毒
‣ ウイルス性肝炎
(A, B, C型)
‣ 急性HIV感染症
‣ HTLV-1感染症
‣ 単純ヘルペス感染症
(による多形滲出性紅斑)
性交渉歴
※STIsは臨床像のみでRule in / Rule outできない.
ウイルス
STIsを疑えば, STIsについての網羅的検査が必須
診断困難
青木眞『レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版』医学書院, 2015年.
発熱 +
全身性紅斑
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
診断困難
⑤ その他のウイルス性疾患
◎ワクチン未接種の場合に想起する疾患
‣ 水痘
‣ 風疹
‣ 麻疹
◎sick contactの聴取が重要な疾患
‣ HPV-B19 [Fig. 10] ‣ IM (EBV, HIV)
‣ コクサッキーウイルス
‣ エコーウイルス ‣ エンテロウイルス
※IM: Infectious Mononucleosis EBV: Epstein-Barr virus
HPV-B19: Human Parvovirus B19
Fig. 10
発熱 +
全身性紅斑
shock
⑥ 問診だけでは診断困難なもの
→基本的には subacute / chronic
‣ 腫瘍→リンパ腫(非ホジキン > ホジキン)
新規開始
骨髄異形成症候群 [Fig. 11]
薬剤
白血病(慢性骨髄性白血病, T細胞性前リンパ球性白血病など)
Fig. 11
海外
渡航歴
‣ 膠原病→SLE [Fig. 12], IgA血管炎 [Fig. 13],
AOSD [Fig. 14], FMF, TRAPS,
性交渉歴
サルコイドーシスなど
ウイルス
診断困難
※SLE: systemic lupus erythematosus
AOSD: adult onset Still’s disease
FMF: familial mediterranean fever
TRAPS: TNF receptor-associated periodic syndrome
Fig. 12
Fig. 13
Fig. 14
発熱 +
全身性紅斑
Fever & generalized rash: 問診フレームワーク
播種性Vibrio vulnificus感染症
髄膜炎菌/肺炎球菌菌血症
TSS, TSLS
感染性心内膜炎
Clostridium感染症
Aeromonas感染症
リケッチア感染症
数時間の経過
shock
数日の経過
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
海水・海産物
2か月以内からのセフェム, キノロン, ロキソプロフェン, アセトアミノフェン等
2-6週前からの抗痙攣薬, アロプリノール, テトラサイクリン, サルファ剤等
1日以内の抗菌薬, または11日以内の抗真菌薬, 抗マラリア薬, Ca拮抗薬
SJS/TEN
DIHS/DRESS
AGEP
熱帯・亜熱帯
渡航先の
流行疾患
5 “P”の聴取
DM, LC, CKD
脾摘, 液性免疫不全
タンポン, 術直後
管と異物, 口腔内不衛生
汚染のひどい外傷
淡水との接触
発症前の活動歴, 旅行歴
滞在月日
(潜伏期)
リスクのある性交渉
ウイルス
ワクチン未接種
sick contact
診断困難
腫瘍
膠原病
風疹
IM
マラリアを確実に除外!
曝露歴
リケッチア感染症(ロッキー山紅斑熱等)
腸チフス
デング熱
レプトスピラ感染症
ウイルス性肝炎
急性HIV感染症
播種性淋菌感染症
HTLV-1感染症
二期梅毒
ウイルス性肝炎(A, B, C型)
水痘
麻疹
HPV-B19
エコー, エンテロ, コクサッキーウイルス
リンパ腫
白血病
MDS
SLE
AOSD
IgA血管炎
サルコイドーシス
FMF/TRAPS
発熱 +
全身性紅斑
症例振り返り ADL full 80歳男性
X-42日 痛風に対し前々医にて
アロプリノール開始.
新規開始 X-28日 前医に心不全にて入院.
薬剤
X-19日 AST 1098/ALT 1779あり,
内服を全て中止し退院.
海外
X日 食事が摂れなくなり救急要請.
渡航歴
shock
海外渡航歴, 性交渉歴, sick contact
などは全てなし.
ウイルス 体温 38℃台, shock vitalなし. 全身に表皮剥離を伴う
診断困難 標的状紅斑あり, 口腔内粘膜疹・顔面浮腫あり.
性交渉歴
発熱 +
全身性紅斑
shock
新規開始
薬剤
海外
渡航歴
性交渉歴
ウイルス
診断困難
症例振り返り ADL full 80歳男性
SJS/
TEN
2か月以内からのセフェム, キノロン,
ロキソプロフェン, アセトアミノフェン等
DIHS/
DRESS
2-6週前からの抗痙攣薬, アロプリノール,
テトラサイクリン, サルファ剤等
AGEP
1日以内の抗菌薬,
または11日以内の抗真菌薬,
抗マラリア薬, Ca拮抗薬
➡ DIHS/DRESSを最も疑う
Take home message
• 発熱 + 全身性紅斑の鑑別は, 鍵となる問診で整理!
① ショックの有無
② 2ヶ月以内の新規開始薬剤
③ 海外渡航歴
④ 性交渉歴
⑤ その他のウイルス性疾患
• ただし, subacute/chronic diseasesやSTIsにおいては
問診の限界を認識する.