「18F-FDG を用いた全身PET 撮像のための標準的

「18F-FDG を用いた全身PET 撮像のための標準的プロトコール(パブコメ版)」
「18F-FDG を用いた全身PET 撮像のためのファントム試験手順書(パブコメ版)」
に対する意見募集の結果報告
平成 27 年 7 月 3 日
日本核医学会分子イメージング戦略会議
委員長 千田道雄
日本核医学会分子イメージング戦略会議がとりまとめた 18F-FDG を用いた全身 PET 撮像の PET 撮像
」
施設認証制度における「18F-FDG を用いた全身 PET 撮像のための標準的プロトコール(パブコメ版)
と「18F-FDG を用いた全身 PET 撮像のためのファントム試験手順書(パブコメ版)」に対しまして、2014
年 8 月 13 日~2014 年 12 月 31 日の間、意見募集を行いましたところ、以下のとおりご意見をいただき
ました。募集期間中に寄せられたご意見の概要とご意見に対する考え方は以下のとおりです。
ご意見をいただいた方に、深く御礼申し上げます。
1. 実施期間等
(1) 募集期間:2014 年 8 月 13 日(水)~2014 年 12 月 31 日(水)
(2) 実施方法:日本核医学会ホームページに掲載
(3) 意見提出方法:電子メール
2. 寄せられたご意見の概要と対応[提出件数:8 件]
・ファントム試験手順書の評価基準について/4 件
・ファントム試験手順書の画像再構成条件について/1 件
・その他/3 件
【寄せられたご意見の概要と回答】
意見 No.1
[受付日]平成 26 年 10 月 28 日
[意見]ファントム試験手順書の評価基準について
Figure 10:各サイズの陽性像における SUVmax の基準範囲において、パブコメ版では具体的な上限
と下限レベルが記載されておりません。EANM のガイダンスでは、RCmax や RCmean の上限値、下
限値が記載されており、適否の判断に、とても役に立ちます。可能であれば、本邦におきましても、
SUVmax もしくは RCmax、RCmean の上限値、下限値を各球径毎に、明示して頂けましたら幸いで
す。
(回答)
ファントム試験手順書は、物理学的評価基準および画質評価方法を公開していない CTN(Clinical
Trials Network)の方針を参考に策定したものでありますが、ご指摘のとおり EARL(EANM Research
Ltd)では数値を公開しており、適否の判断に役立つと考えております。ご指摘のコメントを反映し、他
の画質評価基準と同様に以下に示します各球体の基準をファントム試験手順書の「5 評価基準」に明示
することにいたしました。
Sphere size [mm]
Upper limit
Lower limit
37
4.17
3.82
28
4.21
3.56
22
4.09
3.25
17
3.71
2.58
13
3.04
1.52
10
2.00
1.19
意見 No.2
[受付日]平成 26 年 11 月 10 日
[意見]ファントム試験手順書の画像再構成条件について
ファントム試験で定量性を評価する際に TOF を OFF にする件について、柔軟性を持たせるのはいか
がでしょうか。
(回答)
TOF PET は non-TOF PET と比較して腫瘍対肝臓比が高値となる(Eur J Nucl Med Mol Imaging.
2011;38(6):1147-57)
、微小病変の SUV が高値となる(Eur J Radiol. 2014;83(1):226-30)との報告に基
づき、放射能分布や腫瘍病変の大きさに依存して定量値が異なるため多施設臨床研究では注意が必要で
あると考えております。また、EARL(EANM Research Ltd)の基準を満たす平滑化処理によって TOF
の効果が無くなる(J Nucl Med. 2013;54(Supplement 2):1233)
、PET の新技術適用によって他施設の
SUV を共有できない可能性がある(Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2013;40(7):982-4)との報告に基づ
き、TOF PET を推奨しないファントム試験手順書としておりました。
しかしながら、EANM の新しいガイドライン(FDG PET/CT: EANM procedure guidelines for tumour
imaging: version 2.0. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2014 Dec 2. [Epub ahead of print])で TOF PET
を積極的に適用することが明示されたことを踏まえて本学会 PET 核医学委員会 PET 撮像法標準化小委
員会で議論を行い、各サイズの陽性像における SUV が基準範囲を満たす条件であれば TOF PET を許容
することとしました。ご指摘のコメントを反映し、標準的プロトコールおよびファントム試験手順書を
変更しました。
「18F-FDG を用いた全身 PET 撮像のための標準的プロトコール:3.14.画像再構成」 下線部修正
なお、腫瘍の検出能や画質向上に point spread function (PSF) 技術や time of fight (TOF) PET を組
み込んだ画像再構成法は有効であるが、PSF 技術は 1 画素の定量値が変化するため SUV を用いた治療
効果判定など定量的効果判定を行う研究プロジェクトでは採用しないことが望ましい[16]。TOF PET も
放射能分布や腫瘍病変の大きさに依存して定量値が変化するが[17, 18]、個別の研究プロジェクトにより
決定される。また、PSF 技術や TOF PET は視覚評価に影響するため視覚的スコアを用いた研究プロジ
ェクトでは PSF や TOF 使用画像と非使用画像を混在させないことが望ましい[10]。
「18F-FDG を用いた全身 PET 撮像のためのファントム試験手順書:2.3.7 画像の作成」 下線部修正
PET 画像の画像再構成法や各種処理条件は臨床研究の撮像プロトコルに従うが、後述する評価基準
(§5.2) を満たす条件とする。このとき、評価基準(§5.2)の(4)~(7)を評価するために point spread
function(PSF)技術を組み込んだ逐次近似法(反復画像再構成法)を用いない PET 画像を作成する。この画
像再構成法はアーチファクトの出現によって定量性が損なわれる可能性があり(Boellaard, 2011; Zeng,
2011; Snyder et al., 1987)、相対リカバリー係数や SUV の評価、および腫瘍と正常組織の集積比による
診断補助を想定した均一性の評価に対して不適切な PET 画像になるためである(Boellaard et al., 2010;
Lasnon et al., 2013; Scheuermann et al., 2009)。
意見 No.3
[受付日]平成 26 年 11 月 18 日
[意見]ファントム試験手順書の評価基準について
がん FDG-PET/CT 撮像法ガイドラインでは全スライスを見て、点数評価を行い、平均点が 1.5 点以上
を推奨としているが、認証制度ではなぜこの基準を使用しなかったのでしょうか。
(回答)
「がん FDG-PET/CT 撮像法ガイドライン」では、対バックグラウンド比 4 対 1 の 10 mm 径のホット
球が位置不明なときに視覚的に正しく検出されているかの描出能を視覚評価するため、すべての画像ス
ライスを用いると考えております。
ファントム試験手順書は“PET 撮像施設認証のためのファントム試験”に適用されるものであり、
「18F-
FDG を用いた全身 PET 撮像のための標準的プロトコール(パブコメ版)
」を参考にして設定された当該
施設の撮像条件(画像再構成条件含む)を認証する際に用いることを想定しております。このとき、使用
する NEMA body ファントムの全てのホット球にはバックグラウンド領域の 4 倍の放射能濃度の溶液が
満たされておりますのでホット球の位置関係が容易に判断可能であり、「がん FDG-PET/CT 撮像法ガイ
ドライン」のファントム第一試験と条件が異なると考えております。このため、陽性像の視認性は複数の
判定者が合議しアーチファクトの有無も含めて評価することとしました。
また、
「がん FDG-PET/CT 撮像法ガイドライン」のファントム第一試験における視覚評価は、NEMA
body ファントムのバックグラウンド領域に発生しうる 10 mm 径のホット球と同程度のノイズについて
も評価しますが、本認証制度におけるファントム試験は全てのホット球にバックグラウンド領域の 4 倍
の放射能濃度の溶液が封入されておりますので第一試験と同等の評価を行うことは困難であると考え
ております。しかしながら、NEMA body ファントムのバックグラウンド領域は均一に描出される必要
があると考えておりますので、ノイズと均一性の評価についてはバックグラウンド変動性(N10mm)と
均一性(∆SUVmean)を用いて評価することとし、今回の提案に至っていることをご理解いただきますよ
うお願いいたします。
意見 No.4
[受付日]平成 26 年 11 月 18 日
[意見]ファントム試験手順書の評価基準について
標準的プロトコールにおける標準投与放射能量は、
“2.0~5.0 MBq/kg(例えば、体重 30~70 kg 被験
者に 3.7 MBq/kg 投与した場合には 111~259 MBq 投与することになる)とする”となっていますが、
ファントム手順書の物理学的指標の基準値は、がん FDG-PET/CT 撮像法ガイドライン第 2 版の被験
者に 370MBq/70kg(BG:5.3kBq/mL)投与を前提として決められた値ではないでしょうか。
(回答)
本認証制度における物理学的評価基準は、ご指摘のとおり日本核医学技術学会と日本核医学会の PET
撮像法標準化ワーキンググループがこれまでに蓄積した全てのデータに基づき定めております。また、
バックグラウンド領域の放射能濃度 5.30 kBq/mL の基準値を採用したのは、①これまでの各種ワーキン
ググループ報告で 5.30 kBq/mL の基準値を主体としていること、②「がん FDG-PET/CT 撮像法ガイド
ライン」が普及して各施設の条件設定等に活用していただいていること、③過去の報告から“直径 10 mm
の病変を検出するのであれば”妥当な数値であること、などを考慮しております。物理学的評価基準は、
「PET イメージングにおける撮像法の標準化とデータの品質管理および撮像施設認証に関するガイドラ
イン」にも明示されておりますとおり暫定基準でありますので、今後の装置技術の進歩を考慮して変更
を検討してまいります。
なお、物理学的評価基準で評価します PET の画質は投与量のみに影響するのではなく、投与量と撮像
時間の乗算(画質≒投与量×撮像時間)
、および各種補正も含めた画像再構成条件に依存することをご理
解いただきますようお願いいたします。
意見 No.5
[受付日]平成 26 年 12 月 24 日
[意見]その他
18F-FDG
を用いた全身 PET 撮像のためファントム試験手順書にて、TOF 技術や PSF 技術を用いない
理由として「これらの画像再構成法はアーチファクト出現によって定量性が損なわる可能あり」と記
載されています。その根拠としていくつかの文献があげられていますが、文献内には PSF 技術の言及
はありますが TOF 技術の言及がありません。よって TOF 技術に「アーチファクトの出現によって定
量性が損なわれる可能」がここでは明確ではないと考えますが、その理由を教えていただけませんで
しょうか。
(回答)
ご指摘のとおり、説明不足の文面および不適切な文献が記載されていたため、ご指摘のコメントを反映
し、
「18F-FDG を用いた全身 PET 撮像のための標準的プロトコール」と「18F-FDG を用いた全身 PET 撮
像のためのファントム試験手順書」を修正致しました。修正文および TOF PET については意見 No.2
の回答をご参照ください。
意見 No.6
[受付日]平成 26 年 12 月 24 日
[意見]その他
18F-FDG
を用いた全身 PET 撮像のためファントム試験手順書の付録 A における Siemens Biograph
mCT、島津の SET-3000B/L、3000GCT/M は、7.4MBq/kg のときより 3.7MBq/kg の収集時間が短い
のでしょうか。そのことに関して十分な説明・補足がないと混乱や誤解を招くおそれはないでしょう
か。
(回答)
付録 A は、
「がん FDG-PET 撮像法ガイドラン第 2 版」から導き出した収集時間でありますが、当該施
設の画像再構成条件に依存するデータであり、かつ個々の装置について客観性の高い十分なデータ数を
用いて導き出した収集時間ではありませんでした。このため、ご指摘いただきましたとおり、混乱や誤解
を招く恐れがあると考え、
「18F-FDG を用いた全身 PET 撮像のための標準的プロトコール」と「18F-FDG
を用いた全身 PET 撮像のためのファントム試験手順書」から付録 A を削除し、現時点での公表は控える
ことにしました。
PET 撮像認証を進めて各装置のデータを蓄積しつつ、今後の装置技術の進歩を考慮して「18F-FDG を
用いた全身 PET 撮像のための標準的プロトコール」と「18F-FDG を用いた全身 PET 撮像のためのファ
ントム試験手順書」での公開を検討してまいります。
意見 No.7
[受付日]平成 26 年 12 月 24 日
[意見]ファントム試験手順書の評価基準について
1.評価基準を満たす条件として、物理学的評価の目標値にしている参考文献[10]“がん FDG-PET 撮
像法ガイドラン第 2 版“の基準値根拠に疑問を感じます。
1-1. 95%信頼区間が大きいにも関わらず中央値を目標とした根拠は何でしょうか。
1-2.なぜ、物理学的目標値として 5.30kBq/mL の結果を指標としたのでしょうか。
2.物理学的評価の目標が描出能スコアリングとの相関から導かれたことを考慮すると、施設ごとに
10mm 球の視覚的評価として描出能スコアリング評価が満たされれば物理学的評価は必要ないと考え
ますがいかがでしょうか。
(回答)
1. 評価基準を満たす条件については、意見 No.4 の回答をご参照ください。
2. 視覚評価は主観的評価でありますので複数の判定者が合議して視認性を評価したとしても、物理学
的指標と合わせて評価することは極めて重要であると考えております。仮に、直径 10 mm の陽性
像を視認できなかった場合には、物理学的指標を用いることで原因追及が容易に行えると考えてお
ります。また、18F-FDG を用いた全身 PET 撮像では腫瘍の視認性にとどまらず、SUV などの定量
値も診断補助に頻用されますので、定量的な評価としての物理指標の併用は必要であると考えてお
ります。本認証制度におけるファントム試験は、視覚評価と物理学的評価とで総合的に評価します
ので、ご理解いただきますようお願いいたします。
意見 No.8
[受付日]平成 26 年 12 月 24 日
[意見]その他
18F-FDG
を用いた全身 PET 撮像のためファントム撮像のためファントム試験手順書には、臨床プロ
トコールに用いられているオーバーラップに関する記述がありません。オーバーラップしている部分
で視覚的評価及び物理学的評価を行うことが、臨床に用いているプロトコールを検討するためには現
実的でないしょうか。もしくは、ファントム試験プロトコールでオーバーラップを考慮した検討を行
っていない理由について十分な説明・補足がないと混乱や誤解を招くおそれはないでしょうか。
(回答)
ご指摘のとおり、多段階寝台移動にて全身撮像する PET 装置はオーバーラップの条件が重要であると
考えております。ご指摘のコメントを反映し、「18F-FDG を用いた全身 PET 撮像のための標準的プロト
コール」と「18F-FDG を用いた全身 PET 撮像のためのファントム試験手順書」を修正致しました。当該
施設は設置されている PET(/CT)装置の販売業者と協力して、適切な条件設定に取り組んでいただきま
すようお願いいたします。
なお、本認証制度におけるファントム試験は、認証施設の訪問と同日に行うことを想定しており、1 回
の PET 撮像で多くの評価対象画像を収集いたします。本認証制度におけるファントム試験では、マルチ
ベッド収集に対応したリストモード収集を行えない装置があること、放射能の減衰によってオーバーラ
ップ部の正確な画質評価を行うことが困難であること、およびオーバーラップ条件と放射能の減衰を総
合的に考慮したマルチベッド収集が本認証制度における現実的なファントム試験ではないと考えており
ます。欧米諸国における認証制度を注視して、本認証制度におけるファントム試験手順書の改訂も検討
してまいりますので、ご理解いただきますようお願いいたします。
以上