様式 8 学 研究題目 位 論 文 要 旨 (注:欧文の場合は、括弧書きで和文も記入すること) Soluble interleukin-2 receptor level on day 7 as a predictor of graft-versus-host disease after HLA-haploidentical stem cell transplantation using reduced-intensity conditioning (HLA 半合致移植後の移植片対宿主病の発症予測因子としての可溶性) 内科学 血液内科(指導教授又は研究科紹介教授 小川 啓恭) 氏 名 海田 勝仁 移植片対宿主病 (graft-versus-host disease=GVHD)は、依然、同種造血幹細胞移植 における最大の問題点である。血清中の可溶性インターロイキン-2 受容体(sIL-2R)値 は、最も信頼性の高い GVHD のバイオマーカーとされている。しかし、現在のところ、 sIL-2R の HLA 半合致移植における、その有用性は不明である。本研究では、HLA 半合 致ミニ移植における、sIL-2R の GVHD のバイオマーカーとしての有用性を検討した。 兵庫医科大学において、2009 年 1 月から 2012 年 6 月に HLA 半合致ミニ移植を施行し た患者を対象とし、血清中 sIL-2R 値を非特異的に上昇させる、肝中心静脈閉塞症、重 症感染症、拒絶、30 日以内の早期死亡例、sIL-2R 値を上昇させる血液腫瘍症例を除外 した後、計 77 例を解析対象とした。移植前処置は、主として、フルダラビン+シタラ ビン+ブルスファン(あるいはメルファラン)と全身放射線照射 3~4Gy を用いた。GVHD 予防として、タクロリムスとメチルプレドニゾロン(1 mg/kg)を使用した。血清 sIL-2R 値は、抗ヒト sIL-2R 抗体を用いた ELISA 法で週 3 回測定した。 GVHD を発症しなかった患者(38 名)の血清 sIL-2R 値は、移植後 2 週間まで軽度に上 昇するものの、多くは 1200 U/ml 以下の値を取っていた。その後は 1000 U/ml 以下(中 央値:290-450U/ml)に低下した。 GVHD 発症患者の内 8 名は、移植後 sIL-2R 値が上昇中に、GVHD を発症した。発症日 の sIL-2R 値の中央値は 1795 U/ml であった。4 名は、sIL-2R がピークに達し、減少す る時期に GVHD を発症した。GVHD 発症日の sIL-2R 値の中央値は 1465.5 U/ml であった。 10 名は、sIL-2R 値がバックグラウンドレベルに減少した後に GVHD を発症した。移植 後早期のピーク値は 1711 U/ml であり、GVHD 発症日の sIL-2R 値の中央値は 642.5 U/ml であった。3 名は、day 30 日以後に sIL-2R 値がバックグラウンドレベルよりわずかに 上昇する時期に GVHD を発症した。発症日の sIL-2R 値の中央値は 984U/ml であった。 GVHD 発症患者の day 7sIL-2R 値は、それ以外の患者に比べて、有意に高値であった。 ROC 解析の結果、GVHD 発症のカットオフ値は 810 U/ml であった。累積 GVHD 発症率は、 day 7sIL-2R>810 U/ml 群で 43.2%、day 7sIL-2R<810 U/ml 群で 6.5%であり、有意差 (p=0.00076)を認めた。多変量解析では、day 7sIL-2R 値>810 U/ml のみが、重症 GVHD 発症に有意に関係していた(p=00101)。 本研究では、HLA 半合致移植にもかかわらず、GVHD の発症率が低く抑えられていた が、これは、ミニ移植に加えて、ATG とステロイドの使用が、奏効したと考えられる。 血清 sIL-2R 値は、GVHD 発症を real-time にモニタリングする上で、不適当であること が判った。多変量解析で、day 7sIL-2R 値>810 U/ml が、唯一有意の重症 GVHD 予測マ ーカーであることを明らかにすることができた。
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