サルコペニア、筋肉内脂肪蓄積、内臓脂肪蓄積は、 独立した肝細胞癌の予後因子である Sarcopenia, intramuscular fat deposition, and visceral adiposity independently predict the outcomes of HCC. J Hepatol. 2015;63:131‐40 【はじめに】 肥満は BMI によって規定されるが、肝細胞癌のリスクを有意に 増加させる。肥満だけでなく、体重が過少な場合も、肝細胞癌の 患者の予後は不良である。よって BMI よりも体組成の違いの方 が、真の予後決定因子である可能性がある。しかし、この仮説は 完全には証明されていない。 【方法】 我々は 1257 名の患者の大規模な後ろ向きコホート調査を施行し た。骨格筋指数(SMI) 、平均骨格筋 CT 値(MA) 、内臓脂肪インデ ックス、皮下脂肪インデックス、内臓/皮下脂肪織の面積比 (VSR)を、CT によって計測した。そしてこうした体組成因子が、 様々なステージの肝細胞癌の予後にどう影響するか、総合的に分 析した。 【結果】 5 つの体組成因子のうち、サルコペニア(低 SMI)、筋肉内脂肪 蓄積(低 MA)、および内臓脂肪蓄積(高 VSR)が、癌のステージ や Child‐Pugh クラスに関わらず、死亡率に有意に関連していた。 多変量解析では、サルコペニア(ハザード比[HR] 1.52、95%信頼区 間[CI] 1.1‐1.96、P = 0.001) 、筋肉内脂肪蓄積(HR 1.34、95%CI 1.05‐ 1.71、P = 0.020) 、及び内臓脂肪蓄積(HR 1.35、95%CI 1.0‐1.66、P = 0.005)が有意に生存に関係したが、BMI は関連性がなかった。低 体重と肥満の患者は、正常体重の患者よりも、有意に多くの予後 不良な体組成因子を持っていた。 【結論】 サルコペニア、筋肉内脂肪蓄積、及び内臓脂肪蓄積は、肝細胞 癌患者の独立した死亡予測因子であった。BMI ではなく体組成が 肝細胞癌患者の予後の主要な決定因子であった。 1 骨格筋指数 筋肉 CT 値 (平均) 骨格筋指数 骨格筋指数 皮下脂肪指数 内臓脂肪指数 内臓/皮下脂肪織比 筋肉 CT 値 (平均) 骨格筋指数 骨格筋指数 皮下脂肪指数 内臓脂肪指数 内臓/皮下脂肪織比 筋肉 CT 値 (平均) 第三腰椎レベルの CT 画像から体組成因子を測定した A1‐2 は肝細胞癌の患者 2 名の CT 画像である。 2 名の患者の BMI はほぼ同じである。赤、緑、青はそれぞ れ、骨格筋、内臓脂肪組織、皮下脂肪組織の領域を示している。 B1‐3 は骨格筋量がほぼ同じ 3 名の患者の CT 画像である。黄色は CT 値が低い(‐29~29 HU)骨格筋を示し ている。 HU; CT 値(ハンスフィールド単位)。 予後を示す体組成因子 変数 骨格筋成分 骨格筋の中の 脂肪蓄積 骨格筋指数 (SMI) 平均骨格筋 CT 値 (MA) 腹腔内の脂肪 組織の分布 内臓/皮下脂肪織 面積比(VSR) カットオフ値 定義 (男性) (女性) (男性) (女性) サルコペニア 筋肉内 脂肪蓄積 (男性) (女性) 内臓脂肪蓄積 これが予後不良を示唆する3つの体組成因子である 2 予後に関わる体組成因子の数と死亡リスクの関係 3 2 1 0 死 亡 率 % 予後に関わる 体組成因子数 予後に関わる体組成因子の数が増えると、死亡リス クが増加する。体組成因子は肝細胞癌の患者の予後 が不良なことを予測する補完的な関数である。 年 患者数 3 2 1 0 BMI 予後因子 カテゴリー の数 低←危険性→高 ハザード 95% レシオ 信頼区間 低体重 体重正常 BMI カテゴリー別に見たとき、予後に関わる体組 成因子は生存にどう影響するか 低体重の患者は、3 つの負の予後因子がいずれも ない場合は長期生存したが、負の予後因子が 2‐3 個あると生存期間が最短であった。 肥満 ハザードレシオ 負の予後因子が 2‐3 個ある患者 の割合(%) 負の予後因子が 2‐3 個ある患者は、低体重および肥満に多い このため、低体重および肥満の患者は予後が不良であった。 低体重 体重正常 肥満 BMI カテゴリー 3
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