会計検査の事例解説修正情報 32 頁 (赤字が修正部分です)

会計検査の事例解説修正情報 32 頁 (赤字が修正部分です)
公共工事編 区 分
番号
目 次
報告年度
②Ⅱ 配筋図(鉄筋径・鉄筋間
隔),設計図面の誤り
16
橋台の設計(配筋図に示された橋台のつま先版の
主鉄筋の配置を誤っている)
平成 3
17
橋脚・橋台の設計(配筋図の作成誤り)
平成19
18
雨水管の設計(土圧条件が設計と施工で異なって
いる)
平成 6
19
擁壁の設計(擁壁背後の地形形状誤り)
平成20
20
橋脚の耐震補強工の設計(炭素繊維の適用誤り)
平成21
21
農業用排水路の設計(実際の地形が設計と異な
る)
平成23
22
貯水池の設計(実際の擁壁背後の盛土が設計と異
なる)
平成23
23
既設橋りょうの耐震補強工事の設計(橋脚の基礎
部分に与える影響を考慮した工法選定を行うよう
是正改善の処置を求める)
平成24
24
公立学校等施設整備費・地震補強事業(型枠の所
要量,スパイラル筋の長さ誤り)
平成18
25
擁壁の設計(ガードレールと一体である擁壁の安
定計算が不十分)
平成20
26
落差工の設計(静水圧の算定誤り,遮水工の設置
もれ)
平成24
27
道路橋・鋼管基礎杭の設計(深度別土質図の地盤
高が誤っている)
平成 2
28
公園整備・径600㎜から1,000㎜までの管きょ雨水
排水管の設計(土圧計算を誤っている)
平成 8
29
ロックボルトの設計(引抜き力,引張耐力の算定
が不適切)
平成 9
30
農地保全整備事業・ボックスカルバートの設計
(盛土の鉛直土圧を過小に計算)
平成 9
31
橋台・基礎杭の設計(橋台かかと版の取扱いを間
違って背面土圧を算定している)
平成 2
32
ボックスカルバートの設計(鉛直土圧係数の算定
誤り)
平成25
33
農業用排水路の設計(U 型水路の重量誤り,松杭
の先端支持力算定誤り,ボックスカルバートの荷
重誤り)
平成20
34
落石防護柵の設計(H 形鋼の構造計算を特注品で
行い,実際は標準品を使用)
平成20
35
水路工・プレキャストコンクリート製 U 型水路
の設計(沈下対策に対する工法の検討が不十分)
平成20
②Ⅲ 設計と施工で掘削勾配が
異なっている
②Ⅳ 擁壁構造物の背後地形が
設計と施工で異なっている
②Ⅴ 曲げモーメントの見落と
し,土圧係数など土圧条件
の誤り
②Ⅵ 荷重の誤り
32
34 頁 (赤字が修正部分です)
公共工事編 区 分
②Ⅸ 橋梁・建築物・耐震補強
②Ⅹ 設計基準書の適用誤り,
理解不足
番号
目 次
報告年度
57
歩道橋・橋台胸壁の設計(押抜きせん断力,せん
断力の検討が不十分)
平成12
58
橋台・胸壁の設計(曲げモーメント,せん断力の
検討が不十分)
平成14
59
河川等関連公共施設整備・落橋防止システムの設
計(地盤の液状化の判定が不適切)
平成18
60
路改築事業・落橋防止システムの設計(変位制
道
限構造と落橋防止構造は兼ねてはならない)
平成19
61
木造建築物の耐震設計(耐力壁機能の有無)
平成24
62
鉄筋コンクリート造住宅・アルミ面格子の耐震施
工(見積価格の適用誤り)
平成20
63
橋りょうの耐震設計(設計振動単位の設定誤り)
平成16
64
特定環境保全公共下水道事業・反応タンクの設計
(常時及びレベル 1 地震動時の応力計算を省略)
平成19
65
災害関連緊急砂防・多段積護岸の設計及び施工
(前面と本体を誤って連結する構造としていた)
平成18
66
道路改築事業・EPS ブロックの設計(背面地盤
の傾斜角度が急な場合の照査が不十分)
平成18
67
緊急地方道路整備事業・橋台・場所打杭の設計
(設計基準強度,呼び強度の誤り)
平成18
68
配電設備改修工事の設計(配電盤の地震時の機能
の維持が確保されていない)
平成18
69
道路照明施設の設計(高圧ナトリウムランプの仕
様誤り)
平成20
70
橋台・基礎杭の設計(設計便覧に基づいていな
い)
平成21
71
水路工の設計(コンクリート矢板の溶接仕様が不
適切)
平成21
72
地すべり対策施設・護岸工の設計(吸出し防止材
の検討が不十分)
平成22
73
擁壁・ガードレールの設計(衝突荷重を考慮して
いない)
平成22
74
堰本体,取付擁壁の設計(受働土圧の計上誤り)
平成22
75
桟橋・防舷材の設計(吸収エネルギーの性能を記
載していない)
平成22
76
汚水処理施設・合併浄化槽・基礎底版の設計(地
盤反力の検討が不十分)
平成23
77
防災行政無線・自家発電設備の設計(蓄電池盤の
アンカーボルトの設計が不適切)
平成23
34
35 頁 (赤字が修正部分です)
公共工事編のはじめに
区 分
②Ⅹ 設計基準書の適用誤り,
理解不足
番号
目 次
報告年度
78
堰本体・遮水矢版の設計(遮水矢版による受働土
圧の計上は不適切)
平成23
79
樋管・フラップゲートの設計(角落しのための戸
溝の設置)
平成24
80
高速道路・構造物点検業務の仕様(大型橋りょう
点検車の運転経費の改善)
平成19
81
橋りょう・仮設工・鋼矢板工費の設計,積算(水
上施工,鋼矢板の継施工の必要はない)
昭和62
番号
目 次
報告年度
82
ポケット式落石防護網の設計(可能吸収エネル
ギーの算定方法の明確化)
平成23
83
トンネル非常用照明・無停電用蓄電池の設計(ア
ルカリ蓄電池と鉛蓄電池に対する検討が不十分)
平成 3
84
下水道事業・終末処理場等の設計(基礎杭とく体
の底版との結合部について改善)
平成25
85
現場吹付法枠工・枠内排水の設計(中詰工の種類
を考慮したより経済的な排水方法に改善)
平成24
86
護岸コンクリートブロック・埋戻し部の設計(御
影石張りを根本部分まで使用)
平成 5
87
桟橋築造工事・鋼管杭の設計(鋼管杭上部及び下
部の材質(SKK490,SKK400)の選定検討が不
十分)
平成 8
88
ため池・法面保護工の積算(ブロックマット工法
の検討)
平成25
番号
目 次
報告年度
89
水路・基礎砕石工費の積算( 1 日当たり施工量の
単価を 1 ㎡当たり単価と誤認)
平成13
90
歩道舗装用タイルの材料費算定( 1 ㎡当たりタイ
ル単価(タイル50枚分に相当)を 1 枚当たり単価
と誤認)
平成 4
91
PC 桁・間詰コンクリートの養生工費(100㎡当
たり単価を誤って 1 ㎡当たり単価として適用)
平成 5
92
り面工・中詰工費の積算(施工面積に施工厚さ
の
(0.2m)を乗じていない)
平成11
93
仮桟橋の積算(覆工板損料の供用月数の算定誤
り)
平成 5
せき
第 3 章 設計(共通事項)
区 分
③Ⅰ 設計基準の明確化
③Ⅱ 社会や現場の実情に合わ
せた設計基準の策定
第 4 章 積算(個別)
区 分
④Ⅰ 施工単価の適用誤り
④Ⅱ 施工数量の算定誤り
35
38 頁 (赤字が修正部分です)
公共工事編 区 分
番号
目 次
報告年度
⑥Ⅰ 設計図書と施工が異なっ
ているもの
131
コンクリート被覆式護岸の施工(強度の低い鋼管
杭を施工)
平成 7
132
トンネル工事・覆工コンクリートの施工(鉄筋の
かぶり不足)
平成 3
133
擁壁の施工(伸縮目地が施工されていない)
平成25
134
モルタル吹付工の施工(設計と施工が相違してい
た)
平成25
135
土留壁の施工(設計と施工が相違していた)
平成25
136
トンネル照明の施工(照明取付金具の取り付けを
上下誤る)
平成10
137
ポケット式落石防止網工の施工(ルーフアンカー
施工が不十分)
平成11
138
ブロック積護岸の施工(コンクリート打ち継ぎ面
の清掃や湿潤状態保全を怠っていた)
平成11
139
水路トンネルの施工(底版主鉄筋の位置が所定よ
り深い部分に配筋されていた)
平成12
140
水路トンネルの施工(鉄筋の定着長が確保されて
いない)
平成12
141
かんがい排水事業制御盤据付工事の施工(制御盤
の地震時における機能の維持が確保されていな
い)
平成20
142
地すべり対策事業遮水シート継目の施工(シート
の接着が行なわれていない)
平成 5
143
キュービクル式高圧受変電設備の施工(施工が適
切でなく,固定されていない)
平成25
144
地すべり抑止工事の施工(アンカー部注入材の不
充填)
平成12
145
生涯学習センター建設事業の実施(設計図,しゅ
ん功図,出来形などに多くの不整合があった)
平成12
146
練石積工,橋りょう工の施工(埋戻し土の締固め
不足,胴込めコンクリートの打設量不足,桁下高
の不足)
平成13
147
コンクリート吹付工の施工(吹付け厚さの不足,
コンクリートが地山に密着していない)
平成15
148
道路改良工事・ボックスカルバートの施工(止水
目地のパッキングが施工されていない)
平成 7
149
ックボルトの施工(注入材の充填,引抜き抵抗
ロ
力の確認が不十分)
平成 8
⑥Ⅱ 施工が不適切なもの
⑥Ⅲ 出来高が不足しているも
の
38
154 頁 (赤字が修正部分です)
公共工事編 [46]パイプカルバート(暗きょ管)の設計(選定図の適用誤り)
パイプカルバートの布設に当たり,管頂部における埋戻し幅が管外径
の 2 倍以上の場合の選定図を適用して設計すべきであるのに, 2 倍未満
の場合の選定図を適用したため,パイプカルバート等は所要の安全度が
確保されていない状態となっている
《工事の概要》
村は,緊急地方道路整備事業の一環として,村道を拡幅するため,平成14年度に,土
工,舗装工,横断施設工等を工事費6058万円(国庫補助金3029万円)で実施した。
このうち横断施設工は,道路の拡幅により付け替えが必要となる既存の排水管の機能
を維持するなどのため,道路下を横断するパイプカルバート(カルバート)を 4 箇所に
布設するもので,このうち, 3 号カルバートは管内径1,000㎜,延長15.0m, 4 号カル
バートは管内径450㎜,延長9.0mとなっている。
カルバートの設計は,「道路土工カルバート工指針」(社団法人日本道路協会編)によ
り行うこととし,管種及び基礎形式については,「パイプカルバート基礎形式選定図」
により,管頂部における埋戻し幅が管外径の 2 倍未満などの場合(溝型)の選定図を適
用して決定している。そして, 3 号及び 4 号カルバートについては,活荷重注 1 )が作用
する部分の土かぶり厚がそれぞれ1.50mから3.40m,0.48mから1.60mであることから,
管種を遠心力鉄筋コンクリート管( 1 種管),基礎形式をコンクリートによる90度固定
基礎とすれば,設計上安全であるとし,これにより施工していた(図参照)。
土圧計算の対象となる範囲
路面
埋戻し
管頂部
遠心力鉄筋
コンクリート管
(管外径 1,164mm)
(管外径 526mm)
(3,760mm)
(2,000mm)
のり勾配
(5 分)
(3 分)
コンクリート90 度固定基礎
突出型
溝型
(注)寸法等の記載は,上段が3号カルバート,下段が4号カルバートのもの
パイプカルバートに作用する土圧の概念図
注 1 )活荷重 自動車等が構造物上を移動する際に作用する荷重。
154
175 頁 (赤字が修正部分です)
第 2 章 設計(個別)
[57]歩道橋・橋台胸壁の設計(押抜きせん断力,せん断力の検討
が不十分)
歩道橋の整備事業の実施に当たり,落橋防止装置を通じて橋台の胸壁
に作用する力を十分に考慮しなかったため,橋台の胸壁等は所要の安全
度が確保されていない状態になっている
《工事の概要》
市は,歩道橋整備事業の一環として,既設橋りょうの両側に歩道橋(橋長70.05m,
歩道幅員3.5m)を新設するため,平成11,12両年度に,橋台 4 基の築造,鋼桁の製作
及び架設等の工事を工事費計 2 億9017万円(国庫補助金 1 億4508万円)で実施した。
この歩道橋については,地震発生時における鋼桁の落下による落橋を防止するため,
橋台の胸壁と鋼桁を PC 鋼材で連結する落橋防止装置を各胸壁の中央部 1 箇所,計 4 箇
所に設置していた(図参照)。
この落橋防止装置を設置する場合,「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会
編)によると,地震発生時に落橋防止装置を通じて作用する力についても考慮して,橋
台の設計を行う必要があるとしている。
そして,設計計算書によると,地震発生時に橋台の胸壁基部に作用する曲げモーメン
ト注 1 )は,落橋防止装置を通じて作用する力を考慮しても,設計上の耐荷力を下回るこ
とから応力計算上安全とし,これにより施工していた。
PC鋼材
70cm
落橋防止装置
70.05m
70cm
鋼桁
橋台の胸壁
︵既設橋台の胸壁︶
︵上流側︶
︵下流側︶
落橋防止装置
断面図(上流側,下流側)
平面図
鋼桁
390cm
(既設の桁)
鋼桁
歩道橋の概念図
注 1 )曲げモーメント 外力が部材に作用し,これを曲げようとする力の大きさをいう。
175
橋台の胸壁
367cm
193 頁 (赤字が修正部分です)
第 2 章 設計(個別)
[65]災害関連緊急砂防・多段積護岸の設計及び施工(前面と本体
を誤って連結する構造としていた)
多段積護岸の鉄線かご各段の連結が不十分である。また,本体と基礎
部の保護工を分離せず連結していた
《補助事業の概要》
この補助事業は,県が,平成15年から17年までに,えん堤工,護岸工等を工事費9486
万余円(国庫補助金6257万余円)で実施した。
護岸工は,洪水時に流水が河岸に強く当たる左岸側に,割栗石を中に詰めて製作した
鉄線かご(縦0.5m,横1.0m,長さ1.0m又は2.0m)を多段に積み重ねるなどして連結し
た一体構造とし,高さ0.5m~2.0mの鉄線かご型多段積護岸(延長34.0m)を築造する。
多段積護岸の設計及び施工は,「河川災害復旧護岸工法技術指針(案)」(社団法人全
国防災協会編)及び同県制定の「鉄線籠型多段積護岸工法設計施工の留意事項」による
としている。そして,この技術指針に基づき,多段積護岸の基礎部の前面河床が洗掘さ
れると,護岸全体の安定が損なわれるおそれがあることから,基礎部の保護工法につい
ては,鉄線かごを多段積護岸本体の前面に並べて接するように設置する並列式として設
計していた。
また,多段積護岸本体の鉄線かご各段の連結の方法は,コイル(らせん状に巻いた鉄
線)式として施工していた。
《検査の結果》
多段積護岸の設計及び施工が,次のとおり適切でなかった。
技術指針は,多段積護岸の基礎部の保護工法を並列式とする場合には,多段積護岸本
体に影響を与えないために前面に並べて設置する鉄線かごと多段積護岸本体との連結を
避け,分離して設けることとされていた(図 ₁ 参照)。しかし,設計図書において誤っ
て連結する構造としていた(図 ₂ 参照)。
また,多段積護岸本体の鉄線かご各段の連結の方法はコイル式とし,接続する長さは
鉄線かごの全延長とされていた(図 ₁ 参照)。しかし,設計図書において連結方法を明
確に示しておらず,更に,請負人は多段積護岸についての理解が十分でなかったため,
多段積護岸本体の鉄線かご各段の接続する長さについて確認を行わず,鉄線かごの全延
長の 2 分の 1 の長さしか接続していなかった(図 ₂ 参照)。
このため,基礎部の保護工である鉄線かごと多段積護岸本体とが一体となっていた
り,多段積護岸本体の鉄線かご各段の接続する長さが十分でなかったり,河床が洗掘を
受け基礎部の保護工である鉄線かごに沈下の変状が生ずると,多段積護岸本体に影響を
及ぼし,護岸全体の安定が損なわれるおそれがある。
193
205 頁 (赤字が修正部分です)
第 2 章 設計(個別)
[71]水路工の設計(コンクリート矢板の溶接仕様が不適切)
コンクリート矢板に埋め込んである鋼製プレートと山形鋼の溶接が不
十分なために底版コンクリートと一体化されていない
《工事の概要》
この補助事業は,雨水等による浸水対策のために,水路工を実施したものである。
この水路工は,雨水の流出量の増大に対処するため,既設の U 型水路延長43.8m,内
空断面の幅1.5m,高さ2.4mを取り壊して,新たに幅4.0m,高さ3.0mの水路を築造する
もので,このうち延長35.8mの区間は,側壁を既製のコンクリート矢板により,底版を
現場打ち鉄筋コンクリートにより施工するものとなっている。矢板水路は,設計図書に
よると次のように施工することとしていた(図参照)。
⑴ 既設水路の両側壁の背面に,幅1.0m,長さ9.0mのコンクリート矢板計72枚を所
定の深さまで打ち込み,既設水路を取り壊しながら,所定の深さまで土砂等を掘削
し,掘削後の地盤に,砕石を敷き均して転圧する。
⑵ コンクリート矢板の天端から2.9mの位置の両端にあらかじめ埋め込んである鋼
製のプレート(幅10㎝,高さ15㎝)に,山形鋼を両側壁で計70か所溶接(以下,こ
の箇所を「溶接部」という。)して結合させた上で,山形鋼の上部に,鉄筋を配置
した後,砕石の上にコンクリートを厚さ25㎝に打設して,この底版コンクリートと
コンクリート矢板とを一体化させる。
⑶ コンクリート矢板の頭部に笠石コンクリートを打設する。
《検査の結果》
矢板水路の設計に当たって,側壁外部の水位が水路の底版より上にあり,溶接部には
底版コンクリートに作用する水圧等によりせん断力が生ずることから,これに対する安
全性の検討が必要であったのに,その検討を行わないまま,設計図書において,プレー
トと山形鋼を溶接すべき旨を指示するのみで,溶接の仕様は一切示していなかった。ま
た,溶接の施工や出来形についての管理を全く行っておらず,施工写真においても溶接
が行われたかどうかを確認できない状況となっていた。
そこで,現地において,底版コンクリートをはつるなどして,溶接部70か所すべての
溶接状況を確認したところ,このうち35か所においては,山形鋼がプレートより上に
あったり,山形鋼とプレートとの間にすき間が生じたりなどしていて,溶接が全くされ
ていなかった。また,残りの溶接部35か所においては,溶接した形跡はあるものの,脚
長はいずれも測定することも困難なほど短いものであった。このため,矢板水路のコン
クリート矢板と底版コンクリートは,全延長にわたって一体化されていない状態となっ
ていると認められる。
205
243 頁 (赤字が修正部分です)
第 4 章 積算(個別)
[89]水路・基礎砕石工費の積算( 1 日当たり施工量の単価を 1 ㎡
当たり単価と誤認)
水路の基礎砕石工費の積算に当たり, 1 日当たり施工量の単価を 1 ㎡
当たり単価と誤認したため,工事費が割高になっている
《工事の概要》
県は,中山間地域総合整備事業の一環として,ため池を改修するため,平成12年度に
堤体工,水路工等を工事費6261万円(国庫補助金3443万円)で実施した。
このうち水路工は,三面張りコンクリート水路(延長42m,高さ0.8mから1.2m,底
幅0.8mから1.0m)を築造するもので,基礎には基礎砕石工として再生砕石を15㎝の厚
さに施工している。
そして,基礎砕石工費については,農林水産省が定めている積算基準等を適用するこ
ととして, 1 ㎡当たりの単価を182,227円と算出し,これに施工面積81㎡を乗じて1476
万円と積算していた。
《検査の結果》
基礎砕石工費の積算が次のとおり適切でなかった。
基礎砕石工の単価とした182,227円は 1 日当たりの施工量155㎡に係る金額であるの
に,県では,これを 1 ㎡当たりの単価と誤認したもので,正しい単価は,この金額を
155㎡で除するなどした1,172円となる。
したがって,基礎砕石工費を正しい単価に基づいて積算し,これにより工事費を修正
計算すると,積算過小となっていた流用土仮置きに係る運搬費等を考慮するなどして
も,工事費は1749万円割高となっており,国庫補助金962万円が不当となっていた。
243
247 頁 (赤字が修正部分です)
第 4 章 積算(個別)
[92]の り面工・中詰工費の積算(施工面積に施工厚さ(0.2m)
を乗じていない)
のり面工の中詰工費の積算に当たり,施工面積に施工厚さ(0.2m)を乗
じて,施工数量を過大に算出したため,工事費が割高になっていた
《工事の概要》
県は,一般国道の特殊改良事業の一環として,道路を新設するため,平成10,11両年
度に,のり面工,橋りょう下部工等を工事費 1 億7031万円(国庫補助金8515万円)で実
施した。
このうちのり面工(施工面積2,206.4㎡)は,切土したのり面の崩壊を防止するため,
格子状にのり枠を築造し,のり面から水がしみ出る部分においてはのり枠内に割栗石を
厚さ20㎝に中詰めし,これ以外の部分においてはのり枠内に緑化のための種子,肥料,
生育基盤材等を混合した厚層基材を吹き付けるものである。
のり面工の工事費のうち,割栗石の中詰工費については,同県制定の積算基準等に基
づき, 1 ㎥当たりの施工単価に施工数量360㎡を乗じて635万円と積算していた。また,
厚層基材吹付工費については, 1 ㎥当たりの施工単価に施工面積1,240㎡を乗じて489万
円と積算していた。
《検査の結果》
中詰工費等の積算が次のとおり適切でなかった。
中詰工費の積算において,施工数量は,施工面積を算出しこれに割栗石の施工厚さを
乗じて算出すべきであるのに,施工面積の計算を誤ったうえ,施工厚さ(0.2m)を乗
じていなかったため,施工数量が過大に算出されていた。したがって,実際の施工面積
313.9㎡に施工厚さ0.2mを乗じて算出した正しい施工数量63㎥に 1 ㎥当たりの施工単価
を乗じて中詰工費を積算すると111万円となり,524万円が過大に積算されていた。
また,厚層基材吹付工費の積算において,現場条件による割増し補正を誤って施工単
価を算出していたなどのため,50万円が過大に積算されていた。
これらにより工事費を修正計算すると,積算過小となっていたコンクリート工事費等
を考慮しても,工事費は605万円割高となっており,国庫補助金302万円が不当となって
いた。
247
330 頁 (赤字が修正部分です)
公共工事編 [134]モルタル吹付工の施工(設計と施工が相違していた)
請負人が粗雑な施工を行っていたのに,これに対する監督及び検査が
適切でなかったこと
《工事の概要》
この交付金事業は,道路の山側切土のり面を保護するなどのために,土工,植生工,
モルタル吹付工等を実施したものである。モルタル吹付工計1,828㎡(平成23年度施工
分1,200㎡,24年度施工分628㎡)について,次のように施工することとしていた。
① モルタル吹付層と地山とが密着するよう,地山が岩盤の場合には,ごみ,泥土,
浮石等の吹付材の付着に害となるものを除去する。
② モルタル吹付層を補強するために,菱形金網(網目 5 ㎝ × 5 ㎝)を布設する。
金網は,モルタル吹付層の中央に位置するよう,かつ,吹付けなどにより移動しな
いよう,アンカーピン等を使用して固定する。
③ モルタルを厚さ 8 ㎝(以下「設計厚さ」という。)に吹き付ける。そして,許容
される最小吹付け厚さは 6 ㎝,平均吹付け厚さは設計厚さ以上とする。
④ 吹付箇所に付着しないで周辺に飛び散ったはね返り材は速やかに取り除いて施工
する。
《検査の結果》
現地の状況を確認したところ,モルタル吹付工を施工したのり面計1,828㎡に多数の
亀裂が発生するなどしていた。そこで,当該のり面の計94か所(平成23年度施工分62か
所,24年度施工分32か所)においてコアを採取するなどして,モルタル吹付けの施工状
況について確認したところ,次のような状況となっていた。
コアを採取した箇所の平均吹付け厚さは,23年度施工分で6.6㎝,24年度施工分で5.5
㎝となっていて,いずれも設計厚さを下回っていた。そして,上記94か所の中には許容
される最小吹付け厚さの 6 ㎝を下回っているコアが計50か所(23年度施工分30か所(吹
付け厚さ1.1㎝~5.9㎝),24年度施工分20か所(同2.9㎝~5.5㎝))あった。また,モルタ
ル吹付層と地山との間に,泥土やはね返り材等が残存していて,モルタル吹付層が地山
に密着していないものが計59か所(23年度施工分45か所,24年度施工分14か所)あっ
た。さらに,金網が地山に直接張り付いていたり,はね返り材等の中に埋もれていた
り,設計図書等に示された所定の位置より地山寄りに大きくずれていたりしていたもの
が計88か所(23年度施工分61か所,24年度施工分27か所)あった。
したがって,本件モルタル吹付工計1,828㎡(工事費相当額計12,533,000円)は,施工
が設計と著しく相違して粗雑なものとなっていて,工事の目的を達しておらず,これに
係る交付金相当額計7,095,489円が不当と認められる。 330
350 頁 (赤字が修正部分です)
公共工事編 入していなかったりなどしており,このため,アンカーの地山への定着が十分でなかっ
たことにより,55本のアンカーが設計どおりの抵抗力を有しておらず,その平均の引抜
き抵抗力は31.1tf と設計抵抗力の50.5tf に対して著しく低いものとなっていた。
そこで,アンカーの引抜き抵抗力に基づいて斜面の横幅 1 m当たりの抑止力を計算す
ると61.7tf となり,前記の必要な抑止力79.9tf を著しく下回ることから,アンカー及び
これで地山に固定されている受圧板は,地すべり抑止効果を十分発現できないものと
なっていた。
したがって,アンカー工及び受圧板工は,アンカー工の施工が著しく粗雑となってい
たため,工事の目的を達しておらず,国庫補助金7488万円が不当となっていた。
町道
アンカー工
地すべり線
受圧板
4 段目 22 本
3 段目 21 本
2 段目 21 本
1 段目 21 本
合計 85 本
施工箇所概念図
受圧板
アンカー頭部
引張り鋼材
パッカー
定着具
引張部 12m∼21.5m
定着部 6m
アンカー概念図
350
グラウト材
382 頁 (赤字が修正部分です)
公共工事編 [156]高速道路と立体交差するこ道橋耐震補強対策
高速道路の安全な交通の確保するために高速道路と立体交差するこ道
橋の点検状況,耐震補強対策を的確に把握するよう改善の処置を要求
《工事の概要》
⑴ 高速道路と立体交差する橋りょうの概要
6 会社(高速道路株式会社他 5 社)は,独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機
構と締結した協定において,同機構から借り受けた高速道路を常時良好な状態に保つよ
うに適正かつ効率的に維持,修繕その他の管理を行うこととされている。
高速道路は,平成25年 3 月末現在,その管理延長が計9,740.0㎞となっており,このう
ち供用開始後30年以上経過した区間が計3,748.5㎞となっている。その管理する対象は,
高速道路本線のトンネル,橋りょう等に加えて,一般道路と本線との間で流出入した
り,本線間を連絡したりするため本線を横断する橋りょう「高速連絡橋」及びこれらに
付属する標識,照明等がある。
また,本線上には,高速道路の新設等に当たり,既存の道路,水路等について本線を
横断させる形で立体交差させて付け替えるなどした道路橋,水路橋,鉄道橋等「こ道
橋」が多数架設されている。
こ道橋の管理は,道路橋,水路橋等については国,地方公共団体等が,鉄道橋につい
ては鉄道事業者がそれぞれ管理者となっており, 6 会社は,高速道路と立体交差する部
分の管理区分を明確にするため,こ道橋の管理者との間で管理協定を締結することにし
ている。
⑵ 高速連絡橋及びこ道橋に係る点検
1 高速連絡橋に係る点検
高速道路の安全な交通を確保等するため, 6 会社がそれぞれ定めた保全点検要領等
に基づき,道路構造物等の点検を実施している。そして,高速連絡橋については,日
常点検として,主に桁の下面からコンクリート片が剥離して落下して高速道路の通行
車両等に及ぼす被害を未然に防止するための点検等を実施したり,上記の日常点検の
内容に加えて道路構造物等の健全性を詳細に確認する点検「詳細点検」を実施したり
して,定期的に損傷等を発見し把握して,補修,補強等の対策を計画的に行うことと
している。
詳細点検は, 5 年から10年までの間に 1 回の頻度で,必要に応じて本線の通行止め
又は交通規制を行い,高所作業車を使用するなどして近接しての目視「近接目視」打
音等の方法により実施することとしている。
2 こ道橋に係る点検
6 会社は,こ道橋に係る点検について,年 2 回程度の頻度で点検車両から降車して
382
421 頁 (赤字が修正部分です)
第10章 用地補償業務
[176]建物・移転補償の算定(基礎杭による水増し)
基礎杭の種類本数が実態と異なる
《補助事業の概要》
この補助事業は,県が,共同住宅を移転させるため,平成14,15両年度に⑴4746万
円,⑵3515万円,⑶3681万円,計 1 億1942万円(国庫補助金5971万円)で,その所有者
3 人に建物等移転補償を行ったものである。
公共事業の施行に伴う損失の補償については,「公共用地の取得に伴う損失補償基準
要綱」
(昭和37年閣議決定)に基づき県が制定した「公共用地の取得に伴う損失補償基
準」
(昭和39年告示第130号)及び「損失補償基準標準書」(平成14年用地対策連絡会)
に基づいて行うこととされている。
損失基準によれば,事業者が事業の実施に当たって取得する土地の上に存在する建物
等を補償するに際しては,事業者が当該建物等を取得せず又は使用しないときは,当該
建物等を通常妥当と認められる移転先に,通常妥当と認められる移転方法によって移転
するのに要する費用を補償するものとされている。
補償費のうち補償の対象となった建物の基礎杭に係る補償費についてみると,外径
1.5m,杭長33.1mの場所打杭10本であるとして,専門業者からの見積書により杭 1 本当
たりの単価を210万円とし,これに基礎杭の本数,諸経費率等を乗じ,同県は基礎杭の
補償費を2846万円としていた。
《検査の結果》
補償費の算定が次のとおり適切でなかった。
基礎杭は,前記の外径1.5m,杭長33.1mの場所打杭10本ではなく,外径0.4m,杭長
4.0mの既製杭24本であり,その補償費は303万円となっていて,2543万円過大となって
いた。
(説 明)
〔発生原因〕
用地交渉の公正を確保するため原則として 2 人以上の職員で用地交渉に
当たらせることとしているのに本件では担当者 1 人で用地交渉に当たらせていて,この
担当者が,成果品の検査を終えた後,早期に建物等の移転補償を実現するため補償費の
水増しを図り,成果品を水増しした補償内容のものに差し替えていたのに,これを看過
していたことなどによると認められる。
421