タワマン節税の監視強化

週間 【税のしるべ】 平成27年11月9日号 に以下の記事が掲載されました
タワマン節税の監視強化
高層マンションなどの市場価格と財産評価基本通達(評基通)に基づく相続評価額との乖離を利用し
た相続税の節税スキームとされるタワーマンション節税に対し、国税庁が監視の目を強め、適正に対応
するよう全国の国税局に指示していたことが分かった。こうした節税策は近年、新聞や雑誌にも頻繁に
取り上げられるようになり、広く流布している。同庁では市場価格と大きな開きが生じ得る現行の評価方
法自体にも問題があるとみており、評基通の見直しも視野に入れ始めた。
マンション(区分所有建物およびその敷地)の相続税評価額の計算方法
マンションの価格= 区分所有建物の価格① + 敷地(敷地権)の価格②
① 区分所有権の価格 = 建物の固定資産税評価額(注1)
② 敷地(敷地権)の価格 = マンションの敷地全体の価格(注2)×共有持分(敷地権割合)
(注意1) 「建物の固定資産税評価額」は、1棟の建物全体の評価額を専有面積の割合によって
枝分して各戸の評価額を算定
(注意2) 「マンションの敷地全体の価格」は、路線価方式または倍率方式により評価
各局に適正対応を指示
国税庁 評基通の見直しも視野
評基通に基づくマンションの相続評価額の計算方法は図表の通り、マンションの価格は上
層階に行くほど値上がりする傾向にあるが相続税評価額は上層階でも下層階でも広さが同じ
であれば同額となる。こうしたマンション、特に価格の高い高層マンションの上層階の部屋の
市場価格と相続税評価額との開きを利用し、相続税負担を少なくしようとする動きがタワーマ
ンション節税と呼ばれるものだ。
3年間343件調査 差額は最大6.93倍
平成23年から25年に売買された20階以上の高層マンションで、国税庁が譲渡所得の申告
書などから売買価格を把握できた343件の部屋について調査したところ、売買価格と相続税
評価額には最大で6.93倍、平均で3.04倍の開きがあった。平均値の3.04倍というのは、例え
ば売買価格が1億円だった部屋でも、相続税評価額は約3289万円だったということだ。
現金で1億円を相続すれば、1億円がそのまま相続により取得した財産の価格となるが、市
場価格1億円のマンションの部屋を相続しても、前記の平均値並みの相続税評価額だったす
れば、相続により取得した財産の価格を3分の1にまで圧縮することができる。
ただ、現行の評基通でも第6項で「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認
められる財産の価格は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と定めている。同項を摘要し
て、これまでにも相続開始直前に被相続人(亡くなった人)が借り入れた資金で不動産を購入
し、相続開始直後に同不動産が売却された事案などで、同不動産を評基通に基づく評価方
法によらず、売買価格で評価をした税務署の課税処分を適法と判断した確定判決などがある。
国税庁は10月27日の政府税制調査会で同スキームを取り上げられたことに関連し、今後も適
正な課税の観点から同項の運用を行う旨のコメントを発表していた。(11月2日号1面参照)
第6項の摘用 増加の可能性も
今回の指示を受けて、相続日に近接した売買等によりマンションを取引した場合、税務署か
ら同項を摘用した評基通によらない評価方式が適切と判断される事例が増加することも考えら
れる。また、評基通自体が見直されることになれば高層マンションに限らず、マンションを相続
財産に含む相続税評価全体に影響を与える可能性もある。
出典: 【税のしるべ】 平成27年11月9日号記事