SCOPE Vision 2020 港湾・空港分野における期待に応えるための SCOPE Vision 2020 (1)SCOPE は、受発注者業務の効率化に貢献できる総合的な技術支援サービスを 提供します。 【技術情報提供】 (2)SCOPE は、技術者の育成と専門技術力の継承を支援します。 【人材育成】 (3)SCOPE は、現場からの施工技術の改善案に基づく技術開発を促進します。 【総合技術】 (4)SCOPE は、情報処理技術等の高度化による建設から維持管理・更新に至る業務の効 率化推進技術を提供します。 【情報処理技術】 (5)SCOPE は、国内外における新規プロジェクトの推進を支援します。 【新規プロジェクト技術】 (6)SCOPE は、社会的責務の持続的発揮を可能とする健全な経営を目指します。 【社会的責務】 1 1.SCOPEを取り巻く港湾・空港整備の現状と動向 (1)今後の港湾・空港の事業の推移 ・ 国土強靱化法に基づき防災・減災、老朽化対策に対する投資が着実に増加 ・ 重点施設への集中投資的な傾向が続く ・ 港湾・空港施設の民営化が進展 港湾の事業費自体は過去 10 年以上減少しており、地震の影響を除くと、ここ 数年間は下げ止まっている状況。こうした中で、国際競争力の向上や耐震強化 の推進など港湾の整備ニーズに十分には応えられていない。このため、平成 25 年 12 月に国土強靱化法が成立し、防災・減災、老朽化対策に対する投資が着実 に増加し、今後は、新規施設の整備だけでなく、既存施設の長寿命化と安全性 向上に資する事業費は確保される可能性は高く、維持管理や更新投資に対する ニーズも増えていくものと考えられる。しかし、投資にあたっては幾つかの重 要施設(各整備局 1 つ程度か又は2~3整備局に1つの目玉的施設)への集中 投資的な傾向が、今後も続くものと考えられる。 空港については、社会のグローバル化に伴い国際旅客を中心として旅客増加 のニーズは根強くあるものの、関空、中部、羽田の 3 大プロジェクトが完成し、 空港の新設計画はなく、今後は那覇、福岡の空港の滑走路の増設、米軍基地の 民間空港としての活用などが中心になると考えられる。これら空港の拡張整備 への投資は、集中的に行われる傾向にあるため、拡張整備事業の最盛期には全 国から専門技術者を集中させる必要がある。また、その他の空港でも、滑走路 等基本施設の維持・補修、耐震対策としての液状化防止対策事業などへの投資 が着実にあるものと考えられる。 (2)港湾・空港を整備する人材の育成 ・ 港湾・空港に特有の専門技術力を有している技術者の高齢化と熟練技術者が 大量に退職する時期 ・ 若手を中心とした技術者の育成と熟練技術者からの専門技術力の継承が大 きな課題 港湾・空港を整備する体制については、国の技術者は近年大幅に人員が減少 しており、特に若手の採用がしばらくの間は極端に少なかった。このため、20 代から 30 代前半の技術者が少なくなっている。一方で、ある程度熟練した技術 力を有している 50 代後半の職員が大量に退職する時期にさしかかっている。 2 また、港湾管理者においては、技術職員が少なくなっており、かつ港湾だけ でなく道路や河川などの分野とローテーションで経験する技術職員が中心にな っており、港湾専門の土木技術者が減少している。 さらに、民間施工業者の技術者についても、長期にわたる公共事業費の減少 傾向により、技術者の新規採用の抑制や、中堅技術者の転職または港湾・空港 以外の分野への異動などが進んでいる。このため、港湾・空港整備を支える専 門技術者の層は年々薄くなっており、港湾・空港技術の継承が危ぶまれている。 今後、港湾・空港の事業費が安定的に確保できたとしても、若手技術者を中心 とした人材の確保・育成は重要な課題となるものと考えられる。 このような中で、港湾・空港分野における技術者の育成と特有の専門技術の 継承が大きな課題となっている。 (3)港湾・空港整備の入札制度 ・ 発注者側は、新しい入札制度の導入や試行等の作業に時間がとられ、受発注 者との間で、現場状況を踏まえた総合的な観点から、品質確保と施工技術課 題の検討が不足している状況 港湾・空港工事は、工事内容の特殊性や地域性が高いため、港湾・空港の入 札制度にはユニットプライス方式などの簡易積算方式は向かず、技術面での総 合評価方式による競争入札になる場合が比較的多い。 一方で、公共事業の入札制度改革が進められ、随意契約方式の大幅な抑制、 指名競争入札制度の見直し、一般競争入札からプロポーザル方式、総合評価方 式等新しい入札方式が試行された。これらの新しい入札制度の導入や試行など により、受発注者双方において技術者のエネルギーが入札契約に係る手続き作 業につぎ込まれるようになった。 このため、発注者側においては、施工現場に出て現場実務を経験する時間が 少なくなっている傾向にあり、施行プロセス・三者会議など改善を図っている。 しかし、調査・設計会社や施工業者からのヒヤリングや技術課題の検討が不足 している状況で発注がなされ、不調になる入札案件が増加している。 また、港湾工事では特殊な海上作業船の確保が必要であるが、国内港湾事業 者による作業船の所有が困難となっている現状を見逃すことはできない。港湾 建設に必要な船舶等作業機械の調達状況及び保有率と売却率の傾向を把握し、 継続的な対策の実施が必要である。 3 (4)情報化の進展と海外活動の活性化 ・ 港湾・空港分野を含むインフラ技術の海外輸出が国家戦略として進められて おり、海外進出企業に対する工事受注環境や仕組みを整える面での支援も重 要に 情報技術の進展に伴い、電子入札制度の導入、港湾・空港工事積算システム の高度化など、SCOPE 業務を取り巻く環境が大きく変化している。また、基本 となる情報システムの進歩に併せて港湾・空港情報処理プログラムの改良や効 率化を目指した再構築など、多様かつ精緻で高度な情報処理技術を要する作業 が増えてきている。 また、少子高齢化の進展の影響もあり、今後の我が国においては、かつての ような高度経済成長を期待することは難しいことから、港湾・空港を含む様々 な分野でインフラ輸出が国家戦略として進められている状況にある。技術的に も品質的にも優れた日本の港湾・空港のインフラ技術を海外に輸出すること自 体、国際貢献として意味のあることであるが、併せて、日本企業が海外におい ても港湾・空港整備に携わりやすいよう、当該国の工事発注書仕様、技術基準 や規定類等に我が国における設計・施工基準や公正な競争入札にあたっての考 え方を反映するなど、海外進出企業に対する工事受注環境や仕組みを整える面 での支援も重要になってきている。 4 2.SCOPEに期待されているもの 上記のように、SCOPE を取り巻く環境の変化に対応して、SCOPE には、民 間企業では対応が難しい行政的な観点からの業務の実施も含めて、以下のよう な期待が寄せられている。 1)港湾・空港の施工マネジメントができ、施工現場での技術的問題を解決で きる現場技術力を持った組織。また、新しい分野において、蓄積された施工 現場データと現場発想に基づく総合的な施工技術の改善や、高度な情報処理 技術を駆使した技術開発を積極的に提案できる組織 ①港湾・空港の施工に関する施工方策の検討、積算、現場施工技術の評価、 適正な施工管理、工事安全指導など ②遠隔離島等厳しい海域条件での施工技術、沿岸域における洋上風力発電の 整備など新しい分野での施工技術の改善など ③港湾・空港施設の設計から施工、維持管理までの一連の業務に必要な技術 開発を行い、発注者業務に対する総合的な支援 ④現有作業船の受発注者への総合的な支援 2)大規模かつ集中的な事業実施(大規模な震災復旧事業を含む)を技術支援 できる機動力のある組織 ①施工検討調査、現地踏査による概略設計から施工管理計画まで総合的な 施工計画技術支援 ②大規模地震等による災害復旧事業への現地踏査、復旧工法検討、査定設 計書作成、現地査定補助業務等による総合的な技術支援 ③既存施設の健全度、災害時の使用可否判断等を支援する技術開発 3)港湾・空港施工の現場技術に関して、受発注者の全般にわたる専門技術者 の育成と技術力の継承を支援できる組織 ①現場経験の豊富な退職者(60 歳以上)の有効活用による技術伝承の支援 ②工事記録書(工事誌)の作成、保存による技術伝承の支援 4)新しい分野における施工技術の開発と基準類の整備などに対して支援がで きる組織 ①既存施設の補修・改良等に関する既存施設補修・改良のための施工管理 基準の作成及び施工技術マニュアルの作成 5 5)港湾・空港の施工分野において、CIM( Construction Information Modeling) などの応用情報処理技術を展開し、施工品質の向上と効率化に資する施工管 理技術を開発できる組織 6 3.“Vision 2020”実現のためのアクションプラン (1)受発注者業務の効率化に貢献できる総合的な技術支援サービスの提供 【技術情報提供】 発注者(国、港湾管理者)との適切な距離を取りつつも、発注者の意図を くみ取り、港湾・空港の幅広い技術的分野(設計の考え方を基にした施工検 討、必要な設計見直し、積算、現場管理、品質管理及び施設完成後の維持管 理)において、高度な情報処理技術を駆使し、発注者を支援する総合的な技 術支援サービスの提供を継続して行う。 事業名:公共調達支援事業、積算技術開発事業、情報処理サービス事業 (2)技術者の育成と専門技術力の継承のための積極的な支援 【人材育成】 港湾・空港の総合技術センターとして、SCOPE 自ら専門技術者を育成し高 い技術力を確保しながら、更なる専門技術力の高度化を目指す。 同時に、港湾・空港に関係する発注者(国、港湾管理者)と受注者(コン サルタント、施工業者など業界)、研究機関の全般にわたり、技術者の育成と 専門技術力の継承のための支援を行う。 事業名:講演・出版等技術情報提供事業、技術研修事業 海上/空港工事施工管理技術者認定事業、研究開発助成事業 (3)現場からの施工技術の改善や技術開発の提案 【総合技術】 港湾・空港に関する現場を熟知し、現場業務の改善を進めるとともに、現 場からの発想を基本とした技術開発、施工プロセス検査技術、積算技術、維 持管理・リニューアル技術や関連する技術規定類の作成・改定などを提案す る。 事業名:総合技術支援事業、調査研究事業、 (4)情報処理技術等の高度化による建設から維持管理・更新に至る業務の効 率化推進技術の提供 【情報処理技術】 港湾・空港事業の建設から維持管理・更新に至る一連の業務について、 LCC(Life Cycle Cost)を縮減する観点から、最新の情報処理技術を取り入れた 業務の高度化、効率化のための提案を行う。また、施工現場の状況を踏まえ て、CIM など最新の情報処理技術を駆使した施工管理手法を確立し、受発注 7 者に提供する。 事業名:情報化技術適用支援事業、維持管理技術支援事業 (5)国内外における新規プロジェクトの推進への支援 【新規プロジェクト技術】 ①新規プロジェクトの実現への貢献 遠隔離島等厳しい海域条件下における港湾整備や、沿岸域における洋上風 力発電所の本格的な整備など、新しい分野における港湾施工に対する技術支 援を行う。 ②日本企業の戦略的な海外業務展開のための技術支援 日本の港湾・空港の高い品質管理手法や効率的な施工技術について海外へ の紹介や開発途上国職員への研修等を通じて、日本の港湾・空港整備技術の 海外普及を支援し、東南アジア等における港湾・空港技術水準の向上や施工 品質の向上に貢献する。また、海外で働く日本企業が港湾・空港分野で円滑 に業務が進められるよう必要な支援の検討を進める。 事業名:施工技術基準等の国際化支援事業 (6)社会的責務の持続的発揮を可能とする健全な経営 【社会的責務】 以上の業務を行うにあたっては、港湾・空港技術者としての誇りを持って 取り組むとともに、非営利型一般財団法人としての公益性に基づく事業展開 を社会的責務と認識し、その持続的発揮を可能とする財務基盤を確保しうる 健全な経営を行う。 8
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