細胞の判定に苦慮した小児 AML の 1 症例

細胞の判定に苦慮した小児 AML の 1 症例
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○石原 美紀 1)、島袋 末美 1)、宮城 郁乃 1)、渡嘉敷 良乃 1)、名護 珠美 1)、
前田 士郎 1)2)、百名 伸之 3)
(1)琉球大学医学部附属病院 検査・輸血部、2)同 大学院医学研究科先進ゲノム検査医学講座
3)同 骨髄移植センター)
【はじめに】
【考察】
細胞を血液学的に同定する基本的な手段として普通
本症例は、初診時の骨髄検査からその後の骨髄検査
染色があげられるが、形態学的に判別困難な幼若細胞
へ至るまで一貫して、普通染色にて単球系を思わせる
や異常細胞の鑑別には、特殊染色や細胞表面マーカー、
芽球様細胞が観察された。しかし、非特異的エステラ
染色体検査は不可欠である。今回我々は、普通染色で
ーゼ染色で陰性を示していたことで細胞の判定に苦慮
は形態学的に単球系を思わせる芽球様細胞が大多数を
した症例であった。その後報告された細胞表面マーカ
占めているにも拘らず、分化型急性骨髄性白血病の診
ーや染色体検査の結果を踏まえ、分化型急性骨髄性白
断に至った症例を経験した。特殊染色や細胞表面マー
血病(AML M2)、WHO 分類では特定の遺伝子異常を
カー、染色体検査結果の確認を行う必要性を再認識す
有する急性骨髄性白血病と診断された。
る意味で報告する。
本 症 例 で 認 め た
t(16;21)(q24;q22) は
【症例】
t(8;21)(q22;q22)
患者:10 歳代 男性
RUNX1(AML1)-RUNX1T1(MTG8) 遺伝子とよく似
主訴:汎血球減少の精査
た RUNX1(AML1)-CBFA2T3(MTG16) キメラ遺伝子
既往歴:osgood 病
を産生する染色体転座であることから、上記の診断に
現病歴:来院 10 日ほど前よりふらつきを自覚し、そ
至った。t(16;21)(q24;q22) を伴う急性骨髄性白血病は
の後感冒様症状(鼻水、咳)を伴わない発熱、右目の
小児においては 5 例の報告があるのみで、まれな染色
視力低下、鼻出血を訴え近医を受診。その際血液検査
体転座である(臨床血液 52(12):1893-1895,2011)
。
で汎血球減少を認め、精査目的にて当院小児科紹介さ
t(8;21)(q22;q22) とよく似たキメラ遺伝子を産生する
れ入院となった。
が、本症例では Auer 小体を認めない、アズール顆粒
【初診時検査所見】
が少ないという点が、t(8;21)(q22;q22) の形態学的特
〈血液検査〉WBC 1,500/μl(Seg 5.0%、Ly 94.0%、
Blast 1.0%)、Hb 3.7g/dl、PLT
0.7×104/μl
と汎血球
減少。末梢血液像では N/C 比 0.8 以上の小型の芽球様
に
よ
っ
て
生
じ
る
徴と異なっていた。
【結語】
今回、形態学的には単球系を思わせる芽球様細胞が
細胞が認められた。
大多数を占めているにも拘らず、非特異的エステラー
〈骨髄検査〉NCC 42,875/μl、Erythroid 4.4%、
ゼ染色で陰性を示し、細胞表面マーカーや染色体検査
Myeloid 5.0%、Lymph 15.6%、Mono 0.2%、Blast
の結果などから分化型急性骨髄性白血病、WHO 分類
73.4%、M/E 比 1.14
では特定の遺伝子異常を有する急性骨髄性白血病の診
骨髄像は末梢血液像でみられた芽球様細胞とは異な
断に至った症例を経験した。今回の症例は MG 染色に
り、N/C 比:0.6~0.9、大型で核に分葉傾向があり、
よる細胞形態だけでなく特殊染色や、外部委託検査で
クロマチンは繊細、細胞質の一部に bleb や空胞をもっ
ある細胞表面マーカー、染色体検査等の報告結果の確
た単球系を思わせる芽球様細胞を 73.4%認めた。Auer
認を行う必要性を再認識する症例であった。特に、特
小体は見られなかった。MPO 染色は約 90%陽性、単
殊染色は専用設備を必要としない事から、どの検査室
球系細胞の確認のためエステラーゼ二重染色を実施し
においても施行可能であり、迅速な診断に貢献できる
たところ、芽球様細胞の約 50%が ASD 染色陽性であ
ものと考えられる。
り、α-NBE 染色は陰性であった。後日、細胞表面マ
ーカーの結果より CD19+、CD13+、CD33+、CD34+、
HLA-DR+ 、CD10-、CD20-、CD14-、CD41-、CD56であった。染色体検査結果より t(16;21)(q24;q22) を
認めた。
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