震災復考 - 住まいと耐震工法研究会

震災復考
-安全な住まいは可能か-
第一部 震災から浮上した住
まいをめぐる諸問題
1.震災とすまいについて
2.首都を襲った歴史地震
3.都市直下型地震の衝撃
4.巨大地震がもたらす広域災害
樫原 健一
sumaitotaishin.com
日本列島周辺
東地中海周辺
(プレートテクトニクス)
図2 人類・自然-社会・地震
日本列島とプレート境界・活断層
表1 首都を襲った歴史地震
都市直下型地震の衝撃
(1995年 兵庫県南部地震)
1995年兵庫県南部地震の推定震源域
三宮地区のビル被害(中間層破壊)
第二部 サバイバル列島の住まい
(生活基盤はどのように築かれてきたか)
5.日本列島の人類史① ­ 遊動社会から定住社会へ
写真3 鳥浜貝塚遺跡(三方湖畔)
古典震災論(震災復考PARTⅡ)
6.日本列島の人類史② ­ 定住社会の稲作時代
7.日本列島の人類史③ ­ 工業化社会の生活基盤
8.日本列島の人類史④ ­ ポスト工業化社会
表2 先史時代と日本列島
図6 近世の農作業小屋
(名古屋市近郊)
表3 弥生時代から明治維新まで
の日本列島
写真4 1955年頃の大都
市居住地(大阪市中央区)
表4 近代化を急いだ明治維新後
の日本列島
第三部 震災ルネサンスの社会
写真5 高層化の進む大都
市居住地
(大阪市中央区2012年)
「普通に生きることは
可能か?」
表5 漂流する現代の日本列島
9.震災を回避するために ­ 災害避難
10.震災から立ち直るために ­ 災害救援
11.震災から復興するために ­ 土地と地域社会
12.震災から再生する社会 ­ 生活の自立と自存
広村堤防(1854年安政南海地震・稲むらの火)
地域に暮らす人々の意識と自然景観、落ち着いた
町並みは、津波避難という行動を促す規範として
伝わってくる。広村で生き残った人たちが、自分
たちの体と手で堤防と避難路と住まいを復興した。
表6 住宅の被災判定に関する諸基準
図9 家族の立ち直りプロセス(ラファエル「災害の襲うとき」より)
奥尻島(1993年北海道南西沖地震)
復興とはなにか。グローバルな企業や国家的施策が大波
のごとく展開する破壊主義であってはならない。地域社
会で歴史的に育まれた方言や郷土芸能、被災の記憶が
しっかりと刻まれたムラとマチを自ら回復することだ。
馬に乗った少年 ジェノヴァ・サッカー
スタジアム
ヒューマンな技術
民衆のサイエンス
図13 公的選択の次元(イリイチの思想)
「震災復考」
木造建築物の耐震設計・補強技術
ドキュメント(since 1995)
1995年 兵庫県南部地震
樫原 健一
sumaitotaishin.com
サッカー選手の脚
vita brevis, ars longa
羈束行為 vs 独立不羈
生活に根づく防災技術
ジェノヴァ・カリカメント広場
古寺修理
(兵庫県1996年)
カーボンシート補強・矧木工法
震災復旧修理
古寺修理
(京都府1996­1998年)
貫継手の強度試験(2001年)
古寺修理
(山口県1998-2004年)
櫓および城壁復元改修工事
(兵庫県1999年)
日本建築学会特別研究委員会(1999-2001年)
仕口ダンパー開発(1998-2001年)
単位フレーム復元力特性
日本建築学会特別研究委員会(1999-2001年)
力
地震動の入力(加速度応答スペクトル)
建物の復元力特性
応答値
耐力係数 CB
δ
m
入力加速度 α
H
等価剛性
固有周期 Te
α:Fh,Gs,Teに依存
耐力
伝統的木造軸組の抵抗機構
小破
1/120
層間変形角 R
変形
Te:m,CBに依存
耐力は大きいが変形能力の小さい軸組
(筋かいや面材が主な耐震要素)
(金物部材
接合部の破壊)
1/60
倒壊
耐力は小さいが変形能力の大きな軸組
(土壁や貫が主な耐震要素)
倒壊
(小壁柱の折損)
中破
大破
1/30
1/20
R
Q
層間変形角
1/15
木造建物の設計ルート
建築基準法・同施行令(2000年6月施行)
島根県大田市(石見銀山)2003年
2003年宮城県北部地震(南郷町)
柱の折損
徳島県・薬王寺本堂調査・改修工事(2003年)
豊田市
京町家再生プラン耐震調査・診断(2003-2005年)JSCA関西
喜楽亭ほか6棟
の耐震診断・
喜楽亭
六鹿邸(豊田市指定文化財)
耐震補強設計
(2003∼2004年)
海老名三平宅
田舎家
井上家西洋館
郷土資料館
豊寿園
又日亭
愛知県・弘誓院本堂耐震診断・改修工事(2004年)
大阪市内野田地区長屋調査・診断
(2004-2005年)JSCA関西
山口県萩市浜崎地区(2006年)
山口県建築士会萩支部
2004年
2007年
2002年京都府
2002年静岡県
2002年島根県
2002年兵庫県
2002年愛知県
2002年宮城県
2002年秋田県
2003年石川県
2003年千葉県
2003年東京都
2003年山口県
2004年山梨県
2004年徳島県
2005年大阪府
2005年鳥取県
2005年福岡県
2005年豊田市
2006年JSCA北陸
2006年福井県
2006年和歌山県
2007-09年山口県
都府県建築士会(または建築士事務所協会)
主催講習会
2007年新潟県中越沖地震(柏崎市)
信頼される構造設計をめざして
日本建築協会「建築と社会」2007年9月号所収
■「伽藍が白かったとき」
■「自然状態」社会の建築確認制度
■ 「大いなる正午」の建築
写真2 これは倒壊か
写真3 耐震改修する古い町家
(1995年兵庫県南部地震)
(山口県萩市)
の構造設計
耐震偽装事件に関連して
写真1 関西初の30階建て
超高層RC住宅(1988年施工中)
構造設計者ができることは、曖昧な構造性能・耐震性能であっ
ても、これをできるだけ高めるように努力し続けることである。
道に終わりはない。法規定はこの崇高な職能を守るように運用
されなければならない
Q
耐震セーフティネット
(2007年・河村廣)
Q
木造の可能性 ­デカルトの「方法」をめぐって­
日本建築協会「建築と社会」2008年10月所収
モノコック構造体の開発へむけて
Q
木材の高い「比強度」特性と伝統的建造物で培われた保存・修復技術を有効に活用す
Q
ることで、木造建築技術には無限ともいえるほどの地平が開けている。筆者の見通し
では、木造技術でモノコック構造体を構築することができればRC造に匹敵する中高層
建築が建築できるし、鉄骨トラスと組み合わせてS造の体育館のような大スパン建築
も可能となる。そのためには、まず建築・住居のもつ根源的な機能[7]、すなわち自然
W
W
W
の暴威から人の生命を守る「シェルター」の機能から構造体のコンセプトを再構築し
W
0
0
シェルター型補強
ていく。あらゆる外力・外乱を想定した上で効率よく実験的検証を重ね、同時に生
産・供給体制を整備する。体制の整備は地域主義(地場産業)を心がけ、地場の優良
な工業技術を積極的に取り入れる。しかし基本コンセプトはグローバルな商業主義に
よって変えることなく、利益を地域に還元する供給システムを目指す。利益を地域に
還元することで、木造に不可欠の維持管理システムを備えることができる。このよう
な地道な努力こそが木造技術の可能性を広げるのだと思う。
モノコック構造体の実験(2008年)
木造のモノコック構造体(耐震シェルター)
仕口ダンパー(2000年)
樹脂一体成形の仕口ダンパー・
耐震リングは面外にも働き、
耐久性が桁違いに向上
膝(関節)と同じ働きの仕口
ダンパー(面内のみ)
耐震リング(2010年)
樹脂一体型仕口ダンパー・耐震リング(2009-2010年)
宇治平等院浄土院修理工事(2010年)
弘誓院・観音堂∼大方丈新築(2007年∼2012年)
三徳山「投入堂」
斜面上の安定
2007年入山
1943年鳥取地震の震源域
建築ジャーナル2010年11月号(美しき構造設計の世界)
鳥羽瀬社寺建築施工
弘誓院大方丈内観
経済行為としての構造設計 ­プロがプロでなくなる前に­
(2012年)
日本建築協会「建築と社会」2009年12月所収
技術基準・構造規定について
事故や災害というものはさまざまな学識者
のセクショナリズムの間
をねらって現れ、
意表をつくようにして起こるものだ。技術判
断を問わずに短絡的な仕様と詳細な数値計算
を強要する設計基準は、地域社会に何の貢献
施工中の両サイドjPod
ももたらさないばかりか、とんでもない想定
ダ・ヴィンチ博物館(ミラノ)
「経験は決して誤らない。誤るのは
諸君の判断である」という有名な言葉
1)とともに多くの発明技術を残したレ
オナルド・ダ・ヴィンチ。その足跡を
イタリアの都市ミラノで多く見ること
ができる。
完成した大方丈内の秋田住職
外の被害を招くことはいまさらいうまでもな
い。
「無数のささいな行為を禁ずることは少し
も犯罪を予防することにならず、かえってつ
ぎつぎに犯罪を生むことになるばかりだ」と
は18世紀の法学者・ベッカリーア(ミラノ
大学)の名言である。
大方丈内部
2011年 東北地方太平洋沖地震
2007年
文化財の震災保護対策
(文化庁)
2014年
ヘリテージマネージャー
養成講座テキスト
(日本建築士会連合会)
石巻市日和山より
地震で倒壊せず津波にも残った寺院(石巻市)
石巻市立大川小学校(石巻市東部)
津波到達レベル
図8 吉里吉里の津波被害状況
莱島
南三陸町・橋の手すりと防災対策庁舎(2012年)
南三陸町大森地区(2013年再調査時)
漁船の造船所(復興)
仮設店舗(大森屋商店)
南三陸町大森地区
再調査時(2013.5/2)
気仙沼・住宅地に乗り上げた大型漁船(2012年)
仙台市若林区の農家
(明治時代築・板壁の米蔵)
2006年当時
屋根瓦は崩落
全体に5cm移動
2011年地震直後
2011年 長野県北部地震(栄村)
仙台市青葉区折立5丁目地区(2013年)
翌年雪のため橋が崩落
少ないかかり代
2014年 長野県神城断層地震
鉄骨造住宅の基礎(根巻きコンクリートの破断)
(2014年11月)
(2014年12月)
(白馬村堀之内地区)
(2015年4月)
白馬村・堀之内地区
長野市松代町の住宅(1945年築の養蚕農家をリフォーム)
トモエ設計室
震災復興および
木造(耐震)技術
の現在と将来
アルテミシオン沖で発見された紀元前2世紀の銅像(アテネ国立考古学博物館)
「坂道のいえ」- 南三陸町復興住宅計画 -(2011-2013年)
高知県檮原・神在居の棚田
志賀直哉旧居
Penguin Environmental
Design L.L.C.
56 Lynmoor Place Hamden,
CT 06517
軽量鉄骨造の耐震補強(2010-2014年)
産経新聞2014年6月
カーボンシート接合法
(2013年)
枚方市公共施設部
土壁の強度特性(1999年)
土壁耐力復旧法(2014年)
石場立て(静摩擦係数)2011-2014年
(石-木材)静摩擦係数試験
檜
杉
銅板
鉛
防振スペーサー
ペルプレン
1.0
神戸大学・河村研究室
・土のせん断圧縮強度
Fs 0.1 N/mm2
・周囲部材拘束の土壁耐力
Q = t・L・Fs
・1間幅、60mm厚の土壁
Q = 10.8 kN
→ 設計用として 9kN
・h/D 2.0なら全面壁相当の耐力とみなす
静摩擦係数 [µ]
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
水みがき
小タタキ
ビシャン
バーナー
ノミ切り
御影石面仕上方法
試験値提供:スターライト工業(株)
試験体提供:(株)鳥羽瀬社寺建築
気仙沼漁協
耐震補強としてのモノコック構造体(2011-2014年)
漁協施設前で胸壁工事
幼稚園遊戯室
鉄道駅舎
5年目の東北
港湾近くの住宅地
(鹿折唐桑駅)
地盤の嵩上工事が進行中
(大型の漁船が乗り上げてい
たところ)
5年目の東北
廃線となった大船渡線
気仙沼港と取り壊し中の気仙沼女子高
5年目の東北
2015年