フィードバック制御 2014年度 後学期 担当教員: 藤田政之 教授 (S5-303B) 第13回講義 1月29日(木) 9:45~12:15, S515講義室 第 8 章 :フィードバック制御系の設計法 8.3 位相進みー遅れ補償による制御系設計(pp.156~166) キーワード : 位相進みー遅れ補償 第 9 章 :2 自由度制御系 9.1 フィードフォワードとフィードバックの役割(pp.168~170) キーワード : フィードフォワード,フィードバック 9.2 2 自由度制御系の構造と設計法(pp.P171~175) キーワード : 2 自由度制御 学習目標 : ループ整形の考え方を用いて,位相進みー遅れ補償に よる制御系設計を習得する.フィードフォワードとフィード バックのそれぞれの役割を理解し,これら 2 つの長所を 併せ持つ 2 自由度制御系の構造と設計を理解する. 2 位相進みー遅れ補償 T1 s + 1 α 2 (T2 s + 1) K ( s ) = K α 1T1 s + 1 α 2T2 s + 1 位相進み (α1 < 1, α 2 > 1) 位相遅れ ゲイン20 log | K ( jω ) | [dB] [注] 多段にしても良い 定常特性・過渡特性の改善 + 20 log α 2 [dB] 1 1 位相進み: < ω < T1 α1T1 [注] 位相遅れ, 高周波ゲイン 20 log(α 2 K ) 20 log( K / α1 ) 20 log K 位相 − 20dB / dec + 20dB / dec 1 /(α 2T2 ) 1 / T2 1 / T1 1 /(α1T1 ) ∠K ( jω ) 90 0 − 90 ω [rad / s] 図 8.16 位相進みー遅れ補償 のボード線図 3 ゲイン [dB] ω gc ω gc 0 位相 [ ] − 180 PM ω [rad / s ] 4 位相進みー遅れ補償とPID補償 位相進みー遅れ補償 過去 (α1 < 1, α 2 > 1) 現在 偏差 T1s + 1 α 2 (T2 s + 1) K (s) = K α1T1s + 1 α 2T2 s + 1 + 20 log α [dB] , + φmax [°] ゲイン K (0) = α 2 K , K (∞) = K / α1 20 log | K ( jω ) | [dB] α1 → 0, α 2 → ∞ 1 K ( s ) = K (T1s + 1)1 + T2 s PD 位相 PID補償 時間 − 20dB / dec + 20dB / dec 1 /(α 2T2 ) 1 / T2 1 / T1 1 /(α1T1 ) ∠K ( jω ) PI 1 K (T1 + T2 ) TT 1 + = + 1 2 T2 (T1 + T2 ) s T1 + T2 20 log(α 2 K ) 20 log( K / α1 ) 20 log K 未来 s 1 K PID ( s ) = K P 1 + + TD s TI s 90 0 − 90 ω [rad / s] 5 [ 例 8.5 ] 位相遅れ( PI 補償) K PI (s ) = 100 s + 0.1 s L1 = PK PI 低周波ゲイン:大 位相余裕 PM= -3.37deg 0.1rad/s ζ = 0.2 HDD ゲイン [dB] 2 ω n 2次系の 一般形 s 2 + 2ζω n s + ωn2 ωn = 100 50 0 − 50 − 100 P 0 − 90 L1 − 180 − 270 − 360 10 −2 位相 [ ] 制御対象のモデル 0.01 P (s ) = 2 s + 0.04 s + 0.01 L1 P 10 −1 100 ω [rad / s] 101 10 2 6 K L (s ) = 14.3( s + 0.53) s + 7.52 K = 1, α = 0.07, T = 1. 9 位相進み-遅れ補償 1430( s + 0.1)( s + 0.53) K LL (s ) = s ( s + 7.52) L2 = PK LL ゲイン [dB] 位相進み − 50 − 100 ゲイン [dB] 3.0rad/s ω [rad / s] 傾き:緩 L2 P L1 0 − 90 L − 180 1 − 270 − 360 10 −2 位相余裕 PM= 58.5deg 1.92rad/s ゲイン交差周波数: 2dB(=1.26) 1.7dB(=1.21) 1.2rad/s 100 50 0 位相 [ ] [ 例 8.5 ] 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 P 10 −1 2 L2 100 101 4 t [s]6 8 ω [rad / s] 10 2 10 7 ゲイン [dB] ω gc 0 位相 [ ] − 180 PM ω [rad / s ] 8 ロール・オフ フィルタ 143000( s + 0.1)( s + 0.53) 100 = K (s ) = K LL (s ) × 2 s ( s + 7.52)( s 2 + 10 s + 100) s + 10 s + 100 ωn2 2次系の一般形 2 s + 2ζω n s + ωn2 ωn 以上の周波数帯の ゲイン [dB] 0 -40[dB/dec] 0 − 90 − 180 −1 10 100 50 0 − 50 − 100 L = PK L 100 ωn101 10 2 ω [rad / s] L2 P 0 − 90 L 1 − 180 − 270 − 360 −2 103 10 L1 P L2 位相 [ ] 位相[°] ゲイン[dB] ゲインを下げる. ωn = 10 ζ = 0.5 L 10 −1 100 ω [rad / s] 101 10 2 9 ノッチフィルタ 特定の周波数のゲインを下げる(上げる)フィルタ s 2 + 2 ⋅ 0.03 ⋅15s + 152 K n (s) = 2 s + 2 ⋅ 0.1 ⋅15s + 152 (ζ 1 = 0.03) (ζ 2 = 0.1) 40 | Gnom ( s ) | 20 | G (s) | ω = 15 100 0 ゲイン [dB] − 20 50 s 2 + 2 ⋅ 0.03 ⋅15s + 152 0 − 50 ω = ω3 − 40 10 −2 (ζ 1 = 0.03) K n (s ) 15 rad/sのゲイン だけ小さくする. ω = ω1 ω = ω2 10 −1 10 0 ω = ω4 101 10 2 (ζ 2 = 0.1) 1 s 2 + 2 ⋅ 0.1 ⋅15s + 152 − 100 10 −1 100 101 ω [rad / s] 10 2 103 10 9. 2自由度制御系 9.1 フィードフォワードとフィードバックの役割 r + d e − K (s ) u + + P(s ) y 図 9.1 フィードバック制御系 フィードバックの利点 a. 外乱の影響を抑制 b. 特性変動の影響を低減 c. 不安定系を安定化 d. 目標値応答の整形? 11 [ 例 9.1 ] + e − K (s ) u + + P(s ) 図 9.1 フィードバック制御系 制御対象 P( s) = 1 s −1 0.5 0 − 0.5 (不安定系) 0 1 1.5 2 t 3 4 5 出力 1 コントローラ y (t ) 4s + 6 K (s) = (PI補償) s a:外乱の影響を抑制 ステップ外乱入力 1 d (t ) r 1.5 0.5 0 OK − 0.5 0 t 3 4 図 9.2 (a)ステップ外乱応答 1 2 5 12 r + e − K (s ) P → P~ ( s ) = d u + + y K (s ) は r を情報として使わず e=r−y 制御対象 コントローラ 4s + 6 K (s) = s 20 ( s − 1)( s + 20) オーバーシュート大 図 9.1 フィードバック制御系 1 P( s) = s −1 変動 P(s ) (不安定系) のみ用いている!! 1 .5 1 (PI補償) b. 特性変動の影響を低減 OK c. 不安定系を安定化 OK y (t ) [ 例 9.1 ] 0.5 変動前 0 変動後 − 0.5 0 1 2 t 3 4 5 図 9.2 (b)目標値応答 (r = 1) 13 フィードフォワードの利点 GM ( s ) P( s) r GM (s ) :望ましい目標値応答を u y P (s ) 有するモデル伝達関数 図 9.3 フィードフォワード制御系 GM ( s ) 例: GM (s ) u (s) = r ( s ) : r のみ用いる P( s) 1 y (t ) ∴ y ( s ) = GM ( s ) r ( s ) d: 目標値応答の整形 OK a. 外乱の影響を抑制 b. 特性変動の影響を低減 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 T = 0.2 1 r NG C (s ) 2 u t 3 P (s ) 5 4 y c. 不安定系を安定化 2 自由度制御系へ 図 9.4 2自由度制御系 (一般系) 14 9.2 2 自由度制御系の構造と設計法 y ( s ) = P ( s )u ( s ) r C (s ) u P(s ) y フィードフォワード制御 F (s) u ff ( s ) = r (s) P( s) 図 9.4 2自由度制御系 (一般系) F (s ) :設計パラメータ (望ましい目標値応答 r → y ) u = u ff とすれば F y = P ⋅ r = Fr P 15 フィードバック制御 u fb ( s ) = K ( s )( F ( s )r ( s ) − y ( s )) r 以上より u ( s ) = u ff ( s ) + u fb ( s ) F (s) P( s) u ff + u fb とおく u y P (s ) + K (s ) F (s) u ff ( s ) = r (s) P( s) F (s ) − + 図 9.5条件付きフィードバック構造 F (s) P( s) r F (s ) + − K (s ) + + u y P (s ) 16 モデル化誤差がない場合 y = Fr より u fb = K ( Fr − Fr ) = 0 ∴ G yr ( s ) = F ( s ) u ( s ) = u ff ( s ) + u fb ( s ) u fb ( s ) = K ( s )( F ( s )r ( s ) − y ( s )) F (s) u ff ( s ) = r (s) P( s) モデル化誤差がある場合 y ≠ Fr より フィードバック K の効果 r F (s) P( s) ・ F (s ) :目標値応答を指定 u ff u + u fb + y P (s ) K (s ) ・ K (s ):フィードバック特性を指定 F (s ) ・互いに独立 条件付きフィードバック構造 + − 図 9.5 条件付きフィードバック構造 17 制御対象 1 P( s) = s −1 1 ~ P (s) = 20 ( s − 1)( s + 20) y (t ) [ 例 9.2 ] 1.5 0.5 変動前 変動 0 変動後 フィードバックコントローラ 4s + 6 K (s) = s − 0.5 フィードフォワードコントローラ 1 (τ = 0.3) F (s) = τs + 1 [ 例 9.1 ] と比べてみると, a ~ c OK & d OK ステップ応答の速応性を 3倍にするには? y (t ) 0 5 2 t 3 4 1 図 9.2 (b)目標値応答 ( r = 1) 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 τ = 0.1 変動前 変動後 0 1 2 t 3 4 図 9.6 2自由度制御系の 目標値応答例 5 18 2自由度制御系の安定条件 (I) F (s ) が安定, P −1 ( s ) F ( s ) が安定 (プロパー) (II) P (s ) と K (s ) からなる閉ループ系が安定 r F (s) P( s) + u + P (s ) y K (s ) F (s ) + − 19 2 自由度制御系の設計手順 [ステップ1] 目標値応答の観点から, F (s ) を安定条件の 範囲内で選ぶ. [ステップ2] フィードバック特性の観点から, ループ整形法等 を用い, K (s ) を内部安定性を満たす範囲で設計する. [ステップ3] 上記の F ( s ), K ( s ) を, 図 9.5 のように 組み合わせる. r F (s) P( s) + u + P (s ) y K (s ) F (s ) + − 20 第 8 章 :フィードバック制御系の設計法 8.3 位相進みー遅れ補償による制御系設計(pp. 156~166) キーワード : 位相進みー遅れ補償 第 9 章 :2 自由度制御系 9.1 フィードフォワードとフィードバックの役割(pp. 168~170) キーワード : フィードフォワード,フィードバック 9.2 2 自由度制御系の構造と設計法(pp. 171~175) キーワード : 2 自由度制御 学習目標 : ループ整形の考え方を用いて,位相進みー遅れ補償に よる制御系設計を習得する.フィードフォワードとフィード バックのそれぞれの役割を理解し,これら 2 つの長所を 併せ持つ 2 自由度制御系の構造と設計を理解する. 21 フィードバック制御のまとめ(学習目標) 第 1 章 : 序論 1.1 制御とは 1.2 制御系の標準的構成と制御目的 1.3 フィードバック制御の利点と課題 学習目標 : フィードバック制御の利点を理解する. 第 2 章 : ダイナミカルシステムの表現 動的システム基礎 2.1 ダイナミカルシステム 2.2 伝達関数表現 2.3 ブロック線図 学習目標 : ダイナミカルシステムの伝達関数表現を理解する. 第 3 章 : ダイナミカルシステムの過渡応答と安定性 3.1 インパルス応答とステップ応答 3.2 1次系の応答 3.3 2次系の応答 3.4 極・零点と過渡応答 3.5 ダイナミカルシステムの安定性 学習目標 : システムの過渡応答特性を理解し,極の位置との関係 を把握する.また,システムの安定性の概念を理解し, 22 ラウス=フルビッツの安定判別法を習得する. 第 4 章 : フィードバック制御系の特性 4.1 感度特性 4.2 定常特性 4.3 根軌跡 学習目標 : フィードバック制御系の感度特性・定常特性を理解する. 第 5 章 : 周波数応答 5.1 周波数応答と伝達関数 5.2 ベクトル軌跡 5.3 ボード線図 5.4 ボード線図性質 学習目標 : システムの周波数応答を理解し,ベクトル軌跡 ・ボード線図による表示を習得する. 第 6 章 : フィードバック制御系の安定性 6.1 フィードバック系の内部安定性 6.2 ナイキストの安定判別法 6.3 ゲイン余裕,位相余裕 学習目標 : フィードバック系の内部安定性を理解し, ナイキストの安定判別法を習得する. さらに安定余裕について理解すること. 23 第 7 章 : フィードバック制御系のロバスト性解析 7.1 不確かさとロバスト性 7.2 ロバスト安定性 7.3 制御性能のロバスト性 学習目標 : モデルの不確かさとフィードバック制御系のロバスト性 について理解する. 第 8 章 : フィードバック制御系の設計法 8.1 設計手順と性能評価 8.2 PID補償による制御系設計 8.3 位相進みー遅れ補償による制御系設計 学習目標 : ループ整形の考え方を理解し,フィードバック制御系の 設計法を習得する. 第 9 章 : 2自由度制御系 9.1 フィードフォワードとフィードバックの役割 9.2 2自由度制御系の構造と設計法 9.3 安定化制御器のパラメータ表現 今回は省いた 9.4 H∞制御による自由パラメータの選択 学習目標 : 2自由度制御系の構成について理解する. 24 講義の目的 「制御」に関する体系的な学問である制御理論の基礎について, まず最も重要な概念である「フィードバック」の本質的利点の理解 に重点を置きながら学習する.特にシステムの伝達関数表現に基 づきながら,古典制御の枠組で扱われてきたフィードバック制御系 の解析と設計に関する内容を学習する.さらに,制御系のロバスト 性解析について学び,ループ整形によるフィードバック制御系の設 計法や2自由度制御系の構成について学習する. 25
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