Technical Article K-Line:旧来のプロトコルに対する柔軟なソリューション ∼精密なモニタリングから汎用的なバイトプロトコルのデータ操作まで∼ かつて、K-Lineは多様な車両の診断に用いられた標準的な診断プロトコルでした。そしてそれは現在でも幅広く使用 されており、誕生から長い時を経たにもかかわらず、そのインターフェイスは今日の最新のハードウェアやソフトウェア の診断、開発プロジェクト、サービス作業においても現役で用いられています。そこには、これを使用することで、ECU との単純な通信から独自技術によるバイトレベルの K-Line バリアントのサポート、さらにはK-Line 診断テスターと K-Line ECU全体のシミュレーションに至る、幅広い要求に対応できるという理由があります。 以前、K-Lineが担っていた診断タスクは、かなり前からCANや ライセンス下でアジアで組み立てられました。そして、ヨーロッパ Ethernetなどのシステムに引き継がれているため、K-Lineという でのそれらの量産は何年も前に終了しているに関わらず、現地で 診断プロトコルが新規開発で主要な役割を果たすことはなくなり の組立ては今日でも続いています。少量生産の場合は特にそうで ました。しかし、いまだに多くの車両やECUがK-Line技術を使用し すが、実績のあるECU開発を後継や関連の製品ラインに引き続い ており、その状況が当面は変わらないという事実を、世界のどの て使用することはまだ慣例的に行われており、これもK-Lineの寿 自動車メーカー、サプライヤー、サービス工場も無視するわけに 命を延ばす一因となっています。 はいきません。K-Lineのインターフェイスを持つECUは今でも乗 用車、トラック、オートバイなどに使用されているのです。 バス特性を持つシリアル UART 診断プロトコル 生き延びた絶滅危惧種 K- L i n e は I S O 14230 標 準 に 準 拠した 診 断 プ ロトコ ル で、 標準のRS 232シリアルインターフェイスと同じく、通常のUART (Universal Asynchronous Receiver Transmitter) 回路の技術 中国、インド、南アジアなどの市場では特に、K-Line技術を使用 している乗用車やオートバイが今なお数百万の規模で路上を走行 を基盤としています。非同期伝送では、送信側と受信側がスタート しています。これらは一般に、約10年から15年前の技術水準で作 ビットとストップビットを使用することにより同期が行われます。 られた車両であり、この時期に開発されたヨーロッパ車の多くが、 すなわち、このシステムでは信号線が1本あれば十分で、補助的な May 2015 1 Technical Article クロック線は不要です。RS232とは対照的に、K-Lineはバスシス これらのソリューションは、考えられるあらゆる要件をカバーする テム同様、アドレスを指定することで他のECUとの通信を実現し ほか、単一チャンネルのK-Lineをモニタリングするツールから、 ます。標準の転送レートは10.4kBaudですが、メモリの書換えな K-Lineの診断テスターとECU、さらには大規模なHILシステムの どの用途には最大で115.2kBaudまでの速度が使用されます。 シミュレーションが可能なソリューションまでも実現する、柔軟な K-Lineはオンボード/オフボードいずれの診断にも適しており、 初期化には2つの専用のパターンが用意されています。高速初 期化は10.4kBaudの標準に基づくもので、ウェイクアップパター ンが送出されます。もう1つは5Baud初期化パターンと呼ばれる もので、ここではシステムがアドレスバイトを5Baudで送信する と、受信側がこの低速の伝送レートを検知します。K-Lineにはこ スケーラビリティーを備えています。最後に挙げたソリューション のほかに、専用のキーバイトを使用してヘッダー形式とタイミン グ用パラメーターを特定するという特徴もあります。 自動車メーカーにとり、適切なK-Lineテスターを備えたサー ビス工場を設置して、K-Line 搭載車両のサービスをグローバル は、リアルタイム性をはじめとする特性を備えており、CAN、LIN、 FlexRayなどの他のバスシステムをK-Lineと合わせて統合するこ とで、マルチチャンネルECUのテスト環境をシミュレーションできま す。ベクターは、USBインターフェイスやPCIバスを介してK-Line に接続する各種のインターフェイスを提供しています。これらには インターフェイス製品であるVN1600やVN8900に加え、VN7572 などのプラグインカードや、VTシステム用のVT6204が含まれてい ます (図1)。物理的なレベルでの伝送は、K-Lineを最適にサポート する7269 LINトランシーバーが処理します。 に支援することは、アフターセールス市場における重要な作業 の1つです。K-Lineを利用したECUの開発では、提供される新機 能をテストしなければなりません。そのため、メーカーやサプライ ヤーには、K-Lineのテスト機器とECUに使用できる、K-Lineプロト コル対応の高機能のハードウェアとソフトウェアが必要です。 テスト用ハードウェアに対する要求はさらにシビアに どのような診断/テストプロセスでも、診断用PCとテスト対象デ バイス (DUT:Device under test) との接続を実現する適切なイ ンターフェイスハードウェアの存在は、基本的な前提条件です。 PCに搭載されている従来のUART/RS232インターフェイスでも K-Lineデバイスのテストは可能ですが、この方法ではすぐに限界 に直面することになります。これには仕様適合性をチェックし、正 図1: 単一チャンネルのUSBインターフェイスからHILモジュール までをカバーする各種のK-Lineインターフェイス しい動作を検証するための高度な機能が備わっていません。また、 仕様上の限界値に対するDUTの動作レベル、すなわちパフォーマ ンスの余裕がどれだけあるかも把握しておく必要があります。 独自のK-Lineバリアントとバイトプロトコルのサポート 効率のよいK-Lineインターフェイスは、RS232のソリューション とは対照的に、精密な通信タイミングの取得を可能にします。送 CANoeとCANalyzerはベクターが提供するソフトウェアツール 信/受信のいずれのK-Lineフレームにも正確なタイムスタンプが で、お客様のニーズに合ったいずれかを選択してご利用いただ 与えられます。また、高速初期化や5Baud初期化といったボーレー けます。CANoeが (自動) テストとシミュレーションを目的とした トの自動検出が可能であるだけでなく、K-Lineのタイミングと 汎用的なソリューションであるのに対し、CANalyzerでは分析や データを操作し、任意のバイトストリームを送信することもできま モニタリング作業に重点が置かれています (図2)。これらのツー す。これらのインターフェイスは任意のPCとUSB経由で接続でき、 ルでは、すべてのK-Lineパラメーターと設定へのアクセスが可 ソフトウェアツールにぴたりと連動します。たとえば専用のK-Line 能です。テスト担当者はテスト、測定、エラー注入を、診断レベ APIを使用することにより、あらゆるハードウェアの機能をテストス ルや通信レベルだけでなく、独自の機能であるバイトレベルも含 クリプトで手軽に実現できます。 むさまざまなレベルで実施できます。そのためこれらのツール は、汎用的なシリアルバイトプロトコルに留まらず、標準から スケーラブルな K-Lineソリューション 離れた独自の K- L i n e バリアントについても利用が可能です。 トレースWindowおよび解析Windowには、タイミング、ボーレー ベクターは、高品質のインターフェイスハードウェアと高機能 ト、ヘッダーバイト、データバイト、インターバイトスペース、イ のソフトウェアツールから構成された、K-Line開発におけるテスト ンターフレームスペースが高い精度で表示されます (図3)。他の とシミュレーションを支援する、K-Line製品を取り揃えています。 WindowではK-Lineフレームのインタラクティブ送信が可能です。 May 2015 2 Technical Article 図2: K-Line のテストおよびシミュレーション環境 図3: 異なる通信レベルでの K-Line の解析 May 2015 3 Technical Article アプリケーションプログラミング言語のCAPLを使用すれば、任意 のフレームの送出やエラー注入を実行できます。CAPLに専用の K-Line APIを併用することにより、シミュレーションも作成可能 で、そこからテストモジュールを通じて自動テストシーケンスを 生成し、レポートを生成できます。 まとめ K-Lineプロトコルが年代物のプロトコルであることは事実です が、今なお診断テスターやECUの保守などの目的で使用されて おり、K-Line向けの現代的で高機能のツールも提供されていま す。これらのツールによって、自動車メーカーやサプライヤーで は質の高い適格なテストを実施できるだけでなく、既存のK-Line コンポーネントのさらなる開発や再利用をスムーズに行うことが できます。 本稿は、2015年5月にAutomotive EE Times Europeに掲載された ベクター執筆によるオンライン記事の内容を和訳したものです。 提供元: 見出し画像および全図:Vector Group リンク: ベクター・ジャパン www.vector-japan.co.jp 執筆者: Peter Decker 2002年にVector Informatikに入社、現 在はネットワークおよび分散システム製 品部門のプロダクトマネージャー。 ■ 本件に関するお問い合わせ先 ベクター・ジャパン株式会社 営業部 (東京) TEL:03-5769-6980 FAX:03-5769-6975 (名古屋)TEL:052-238-5020 FAX:052-238-5077 E-Mail:[email protected] May 2015 4
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