磁化・スピン流・秩序状態のレーザー制御についての理論 佐藤 正寛 国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター スピン・エネルギー変換材料科学研究グループ Theory of laser controlling magnetizations, spin currents and orders Masahiro Sato Advanced Science Research Center, Japan Atomic Energy Agency, Tokai 319-1195 ERATO, Japan Science and Technology Agency, Sendai 980-8577, Japan 近年、量子多体系における振動外場(レーザーや超音波)が誘起する非平衡現象の研究が活 発に行われている。特にレーザー及び光物性科学の進展は目覚ましく、凝縮系にレーザーを 照射することで多様な非平衡状態が実現可能になりつつある。理論面でも非平衡量子系の研 究は進展を続けており、例えば、周期外場中の非平衡量子系がフロケの定理を介して馴染み のある平衡量子系の問題に還元されることが広く認識されつつあ る。このような状況におい て、我々は量子多体系(特に磁性体や固体電子系)でレーザーにより生み出される新しい現象 の理論的探索を行っている。その結果、(1)広いクラスの量子磁性絶縁体において静磁場なし で円偏光レーザーにより磁化過程を実現する方法の提案[1](図 1)、(2)スピンカイラリティと 電気分極が結合する標準的なマルチフェロイック磁性体における(楕)円偏光レーザーによる ジャロシンスキー・守谷(DM)相互作用の制御方法の提案[2](図 2)、(3)スピン軌道相互作用が 強いモット絶縁体の有効模型であるキタエフ・ハニカム模型における(楕)円偏光レーザー誘 起トポロジカル・スピン液体の理論の構築[3](図 3)、という 3 つの成果を挙げている。講演 では、これらの成果について、本質的に重要な部分を抽出し、時間の許す範囲で分かりやす く説明する予定である。特に円偏光光源により豊かな非平衡状態が生成可能であることを強 調したい。 [1] S. Takayoshi, M. Sato, and T. Oka, Phys. Rev. B90, 214413 (2014). [2] M. Sato, S. Takayoshi, and T. Oka, in preparation. [3] M. Sato, and Y. Sasaki, and T. Oka, arXiv:1404.2010. 図 1:(左)円偏光レーザーを照射された量子磁 性体。(右)ある量子スピン模型におけるレーザ ー誘起磁化曲線:磁化(縦) vs レーザー照射時 間(横)。 図 2:円偏光レーザー中 のマルチフェロイクス 系(2 スピン)の概念図。 2 スピン間で定義され る電気分極自由度 P が レーザー電場と結合す る。 図 3:円偏光レーザー中 のキタエフ・ハニカム模 型。レーザーにより系の 端にギャップレスのマ ヨラナフェルミオン流 が流れる。
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