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抄読会資料 commentary より
担当:中岡
20080911
Commentary より
Falls risk-prediction tools for hospital inpatients.
Time to put them to bed?
David Oliver
Age and Ageing 2008;37 :248-250
・ 偶発的な転倒は、病院の入院患者やケアホームの入所者が直面する、最も一般的な安全面の
事故である。
・ National Patient Safety Agency(NPSA)の報告:Slips Trips and Falls in Hospital
イングランドとウェールズ(2004-2005)200,000 件の報告
→全て年齢群における全インシデントの約 32%
・ 転倒は、傷害、入院期間、スタッフや関係者の制度上の不安、文句や訴訟等に関連するので、
病院やケアホームのリスク管理の優先的なものであり、近年は、Healthcare commission に
よって老齢患者ケアに焦点をあてて調査されてきた。
・ 病院における転倒や、転倒に関する負傷を防ぐための介入におけるエビデンスが増えている。
多くの研究介入の一要素や、病院での’
real-life’
転倒対策の一般的な特徴は、転倒リスク予測
ツールを用いることである。一般的なリスク因子の‘チェックリスト’をスタッフに促し、
転倒を減らす可能性を意味していない。
・ 筆者の考え:ツールは実際には、複雑な老人性のアセスメントやケア計画を促すものである
が、そのようなツールの使用に賛同していない。筆者の関心は、患者の転倒リスクの高低を
分類することによって、介入が「高リスク」の患者を対象とすることができるということで
ある。病院で最も用いられているが、病院におけるツールの使用に関する論評は、長期ケア
や地域における使用にも等しく適用されるだろう。
・ 近年、病院の転倒予測ツールの関するシステマティックレビューや妥当性検証研究がある。
・ Vassalo らの研究結果を踏まえて・・・予測的妥当性の要素と他の(まったく異なる)母集団
及び環境の間でのトレードオフ、転倒の予測と防止における実践的な有用性を取り巻くいく
つかの興味深い疑問が生じた。
(1) 便利であるために、予測ツールは、実施が簡易で早く、項目数が少なく、平明で、得点化
するのに単純で、評価者間の信頼性もある。最も重要なことは、その予測能力が、その母
集団に予測的に有効であるべきということである。良い「内的妥当性」は、完全に異なる
母集団にとって「外的妥当性」をもつということを意味しない。多くの予測ツールは、ホ
ームメードであり、妥当性検証されていない。STRATIFY や the Morse Falls Scale のよ
うな一つ、二つのツールは、このような基準を満たしている。なぜそれらを用いないのだ
ろうか?
(2) 我々がそれらを用いるべきでないという理由に関して答えるために、最初に、予測的な妥
当性の要素を考慮する必要がある。これらは、Wyatt と Altman や診断的ツールの使用
に関する STARD ガイドラインによって説明されている。
・感度(転倒した患者がハイリスクとして予測されていた割合)
・Positive Predictive Value(PPV)(ハイリスクとしてみなされた患者が転倒した割合)
・Negative Predictive Value(NPV)(ローリスクとみなされた患者が転倒しなかった割合)
・Total Predictive Accuracy
・ROC カーブi
抄読会資料 commentary より
担当:中岡
20080911
実際に、ツールは、実践的に多く用いられる操作上に予測できる妥当性のあるすべての要
素を十分に、首尾一貫して、機能していない。
(3) どんなリスクアセスメントツールやスクリーニングにとっても、ルーチンのスタッフの臨
床判断よりよいか、危険であるとアセスメントされる患者の割合が増すということによっ
て「付加価値」がつけられなければならない。これは、栄養上のスクリーニング尺度でよ
く言われているようであるが、Vassallo らが示したように、転倒リスクアセスメントツー
ルの場合は十分ではない。
(4) 入院中の虚弱もしくは、急性の疾患の老年者の特徴は、転倒リスクが、現在の疾患や、姿
勢の不安的さや、精神錯乱状態、低血圧等に伴って、しばしば変わり易い。しかし、転倒
リスクアセスメントツールは、「一度限り」の測定を適応させる傾向にあり、それは、真
実を反映していない。
(5) 単に、「転倒リスクアセスメント」が完成されたものであるということに対する’
ticking
the box’
は、具体的ななにかが転倒を防ぐために行われるということを意味しない。ハイ
リスクであるものを明らかにすることは、得点化することで、今「何かがなされている」
と誤って再保障するということに変更する行動を導かねばならない。しかし、そうではな
い!NPSA レポートでは、しばしば「でっちあげた」リスクアセスメントツールが、転
倒予防へ意味のある影響を全く持たなさそうな「ステレオタイプ的な行動に関わる限られ
たレパートリー」を導いている多くの病院を調査していた。
(6) これらから、もし、我々が、リスクアセスメントツールの目的が、転倒を防ぐものである
と受け入れているなら、病院における転倒予防における、より良い質の積極的な研究のい
くつかは、概してリスク予測ツールの使用を避ける。しかし、未だ、リスク予測ツールは、
転倒率を減らし続けている。そして、たいていの介入は、多くの因数をもつにつれて、総
合的な効果へのリスクアセスメントが関わる貢献が確かであるということは難しい。
・ これらの考慮や警告は、ケアホームの入所者もしくは、自宅で暮らす高齢者にも等しくあて
はまる。両者のケースにおいて、予測的妥当性の存在やイベント指標―転倒―に関するデー
タは、ほとんどないのが一般的であるように、リスク予測ツールの使用に携わらない根拠に
基づいた介入を伴う。
・ 我々が転倒予測ツールの使用を放棄するべきであると主張するなら、転倒予防の差し迫った
問題に取り組むスタッフはいらいらすることになる。
・ この領域の研究者らは、筆者のアドバイスを「非論理的である」というが、病院での転倒予
防に関する、特に RCTsiiからのエビデンスがあれば、異議を唱えられる。
・ あらゆることに関するツールを取り入れたり、工夫するために伴うものが存在する理由を容
易に理解することができる。ツールを使用することが、問題におけるスタッフの精神に注目
し、リスク管理者もしくは監査者に説明するように思われる可能性があることを私は理解し
ている。しかし、我々が、ツールの限界や使用のエビデンスを理解していなければ、愚かな
パラダイスとなる。もし、我々が、よりよく、病院のすべての高齢者を世話するなら、より
彼らは転倒しなくなるだろう。
Receiver operating characteristic curve:受信者動作特性曲線
ある一つの検査の精度の評価や、目的が同じ複数の検査法の優劣の比較、あるいは検査で所見
ありと判断する値(カットオフポイント)の決定に用いられます。
ii randomized controlled trials:ランダム化比較試験
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