RC電動ヘリの理論と実際 目 次 1.まえがき 2.RC電動ヘリのDCモータ・ギア減速駆動システム 3.DCモータの諸定数 4.ギア減速系の基本特性 5.RC電動ヘリとDCブラシレスモータの数値例 6.モータ電流特性 7.ギア減速系の作用と効果 8.ガバナーの作用と効果 9.まとめ − ロングフライト化への道 付 録 − モータ電流特性計算用プログラムの使用法 Ver. 1.0 copyright T.Furuhata RC電動ヘリの理論と実際 Ver. 1.0 copyright T.Furuhata 1.まえがき 無線操縦のラジコンヘリコプター(Radio Controlled Helicopter:RCヘリ)は、アクロバティック な3Dフライトが可能で長時間クルージングも容易なエンジン機が現在主流となっている. このエンジン式のRCヘリはアルコール(メタ ノール)を主成分とする特殊な燃料(グロー燃料) を使うことからGPヘリ(Glow Powered Helicopter) とも称される . しかし、エンジン機を飛ばすには、こうした燃 料やエンジンに対する相応の知識と経験が求めら れる . 例えば、まず最初にエンジン始動の儀式− プラグヒートしてからスタータでエンジン始動、 アイドル調整とニードル調整−が不可欠となる. この儀式も最初はエンストとの戦いになり、何 とかエンジン始動のコツを習得したのちエンジン の慣らし運転を経てようやくフライトの練習とな るため、RCヘリの初心者には相当敷居の高いも のとなっている. その一方で、エンジンの騒音は大きな環境問題 GP60クラスのスケールヘリ にもなるため自ずとフライトできる場所を選ぶ. 国土の狭い日本で 、ましてや都心近くや住宅街に住む人にとっては 、その場所探しが一苦労となる. またエンジンは燃料の排気で機体を汚すため、あとの手入れやメインテナンスも厄介な問題となり、 置き場所にさえ困ることになる. 加えて、ランニングコスト(燃料代)も無視できない問題になる. これに対し、もっと手軽なものに電動式のRCヘリ(Electric Powered Helicopter:EPヘリ)があ る. このEPヘリはバッテリー(燃料に相当)を載せて電動モータ(エンジンに相当)でロータを回 転させて浮上・飛行させることになるが、電動モータの始動と回転制御は電子的なコントローラ(ア ンプ)が受け持つためスイッチ一つで簡単かつ確実に始動できエンストの心配から解放される. この手軽さだけでなく、非常にクリーンで機体を汚すこともなく、しっかりと充電されたバッテリ ーさえあればすぐにでも始められる. 初期投資を除けば、ランニングコストもほとんどかからない、 騒音環境問題からも解放されるなど、そのメリッ トは大きなものになっている . しかしその一方で、EPヘリの最大の難点は、 燃料として使うニッカドバッテリー(NiCD Battery) やニッケル水素バッテリー( NiMH Battery)の重 量と容量制限によりフライト時間が十分にとれな いこと(かつては、540クラスの軽量化された 電動ヘリでも4∼5分が限界)であった . しかし技術の進化と共に、ここ数年でEPヘリ の環境は大きく変わりつつある. それは、リチウムポリマーバッテリー( Lithium Polymer Battery: Li-Po リポバッテリー)に代表さ れる、小型軽量化された大容量・高放電の高性能 バッテリーの登場である. 例えば、容量 3300mAh /12 セル(1.2V × 10 = EP16ヘリ(GP30クラス相当) 12.0 V)の Ni-MH バッテリーの重量が 700g に対 し、ほぼ同容量 3100mAh / 3 セル( 3.7V × 3 = 11.1V)の Li-Po バッテリーの重量は 230g となって おり、リポバッテリーの方が重量比約3倍のアドバンテージが得られている. 加えて、単セルのリポバッテリーを直列・並列で複数接続することにより、さらに大容量・高電圧 のバッテリーを手にすることが容易となり、大型機のフライトも可能になる. その結果、全備重量2∼3 Kg のGP30クラス相当のEPヘリでも15分以上のロングフライト が可能になっている . ここでは、RC電動ヘリに秘められているポテンシャル(能力)とプロパティ(特性)を理論面か ら探り、かつ実験的に導かれる駆動系のロスやモータの電流特性、システムの効率などを明らかにす ることにより、更なるロングフライトの実現に向けて今後のEPヘリのあるべき姿を垣間見ることに する . なお、最新RC電動ヘリ関連機材の検討(組合せの最適選択)にあたっては、World Air Model の 松本氏よりアドバイスとノウハウを頂き、またその実験検討に資したEPヘリの開発元であるクイッ クの五百部氏より開発実績に基づく技術情報を頂いたことを付記し謝辞とする . -1- 2.RC電動ヘリのDCモータ・ギア減速駆動システム RC電動ヘリで広く採用されているDCモータ・ギア減速駆動システムの概略を図1に示す. rm m rl N= l Jm Jl m J m :モータ軸イナーシャ J l :ロータ軸イナーシャ l i e m l DCモータ k e R N G R kek Jm :モータ軸負荷トルク :ロータ軸負荷トルク G Jl m m m rl :減速比 rm N l l N : 1 理想変成器 図1. ギヤ減速駆動系とその等価回路 3.DCモータの諸定数 電機子抵抗 トルク定数 逆起電力定数 モータKV値 : : : : ギア減速比 : モータ回転数 : ロータ回転数 : モータ駆動トルク: ロータ駆動トルク: 従来の単位系 R( ) k T (gf cm /A ) k E (V /rpm ) K V ( rpm /V ) 国際(SI)単位系 R( ) 単位記号[定義] N [kg m /s 2 ] k ( N m /A ) k e ( V / ra d /s ) K V ( ra d /s / V ) N N N m ( rpm ) N l ( rpm ) M T (gf cm ) LT (gf cm ) ( ra d /s ) ( ra d /s ) l M (N m) L (N m ) m モータ駆動電圧 モータ駆動電流 : e (V ) : i (A ) e (V ) i (A ) モータ磁界磁束 モータ磁束密度 コイル有効長 コイル有効半径 コイル巻数 : : : : : (W b: ウ ェ ー バ ) b (T : テ ス ラ) l (m ) r (m ) m ( V s) b ( V s/m 2 ) l (m ) r (m ) m W b [V s ] T [W b /m 2 ] とすると、SI単位系において次式が成立する . = rbl [V s] モータ磁界磁束 φ(Wb)は k = m / [ V / ra d /s] モータのトルク定数 kτ (N・m/A)は M = m rb li = m i / = k i モータで発生する駆動トルク(回転力)Mτ (N・m)は → フレミング左手の法則「磁界中に置かれた導体に電流 i を流すとその導体に力が作用する」 e m = m m rb l = m m / モータが角速度 ωm で回転しているときに生ずる逆起電圧 e m は → フレミング右手の法則「磁界中に置かれた導体が速度 v で磁界をよぎると起電力が発生する 」 モータの逆起電力定数 k e (V / rad/s)は e m = k e m より k e = m rb l = m / = k すなわちSI単位系で見るとモータのトルク定数 kτ (N・m/A)と逆起電力定数 k e (V / rad/s)の値は 等しくなる . k [ N m /A ] k e [V / ra d /s] -2- ここでSIの単位換算 1 gf = 9.807×10−3 N 1 N = 101.97gf 1 gf・cm = 9.807×10−5 N・m 1 N・m = 1.0197×104gf・ cm 1 gf・cm/A = 9.807×10−5 N・m/A 1 N・m/A = 1.0197×104gf・ cm/A 1 rpm = 0.1047rad/s 1 rad/s = 9.549rpm 1 rpm/V = 0.1047rad/s / V 1 rad/s / V = 9.549rpm/V 1 V/rpm = 9.549V / rad/s 1 V / rad/s = 0.1047V/rpm 1 rpm/gf・cm = 1.068×103rad/s / N・m 1 rad/s / N・m = 9.365×10−4 rpm/gf・cm を用い、各パラメータをKV値を使って表すと、 KV = 1 / ke = 1 / k モータの KV 値(rad/s / V)は モータの KV(rpm/V)値は = 0 .1 0 4 7 K V [ ra d /s / V ] K V = 9.549 K V [rpm /V ] モータのトルク定数 kτ (N・m/A)は k = 1 / K V [ V / ra d /s] 〃 = 9 .5 4 9 / K V [ N m / A ] k T = 1.0197 × 10 4 k [gf cm /A ] k T (gf・cm/A)は = 9.737 × 10 4 / KV [gf cm /A ] k e = k = 9 .5 4 9 / K V [ N m / A ] モータの逆起電力定数 ke(V / rad/s)は 〃 k E = 1 / K V [V /rpm ] k E (V/rpm)は 電圧 e による無負荷時のモータ回転数 Nm(rpm)は 〃 モータ回転速度 ω m (rad/s)は 〃 ロータ回転数 Nl(rpm)は 〃 ロータ回転速度 ωl (rad/s)は 電流 i によるモータ駆動トルク Mτ (N・m)は 〃 モータ駆動トルク M T (gf・cm)は 〃 ロータ駆動トルク L T (gf・cm)は N m = e K V = N l N [rpm ] = 0 .1 0 4 7 N m = 0 .1 0 4 7 e K V [ ra d /s] m N l = e KV / N = N m / N [rpm ] l = m / N = 0 .1 0 4 7 e K V / N [ ra d /s] = k i = 9 .5 4 9 i / K V [ N m ] M M T = 1.0197 × 10 4 M = k T i = 9.737 × 10 4 i / K V [gf cm ] LT = M T N = 9.737 × 10 4 iN / K V [gf cm ] モータの耐負荷特性 Mτn (rad/s / N・m)は M n = R / k ek = R K V = 1 .0 9 6 × 1 0 〃 M TN (rpm/gf・cm)は M TN = 9.365 × 10 2 2 R KV 4 M 2 [ ra d /s / N m ] n = 1.026 × 10 R K V 2 [rpm /gf cm ] 5 4.ギア減速系の基本特性 図1のギア減速駆動系の状態方程式は次式で与えられる . e = Ri + k e m J : 変動角周波数 M = k i = J ms m + m + l s l + l (s = j ) N N m = N l これより、モータ軸の回転速度ωm とロータ軸の回転速度ωl は次式で与えられる . M n M nG m ( s ) m Gm (s) l m = KV G m ( s )e N KV M n M n Gm ( s )e Gm (s) m Gm (s) l l = N N N2 ここで Gm (s)はモータの動特性(伝達関数)を示し、次式で与えられる. -3- ( 1) ( 2) Gm ( s) = 1 1 + Tm s Tm = M n (Jm + Jl ) N2 また、モータの駆動電流 i は次式で与えられる. 1 K i = (1 G m ( s )) e + K V G m ( s ) m + V G m ( s ) l R N これより、モータの静特性(直流域 s 0 での定常解)は次式で与えられる . 2 M n RKV 2 Nm M n m RKV m m = KV e l = KV e l N N 2 2 KV M n M n KV RKV RKV Nl e e l = m l = m l 2 N N N N N N2 KV i = KV m + l N ( 3) ( 4) すなわち(4)式より、モータの駆動(消費)電流 i は印加電圧 e には依存せず、モータ軸の実負荷ト ルク τm とロータ軸の実負荷トルク τl に応じてその消費電流 i が決まる. ただし、モータ印加電圧はその KV 値に応じて所定のロータ回転数が得られるような電圧でなけれ ばならない. 例えば、KV(rpm/V)のモータを減速比 N で駆動してロータ回転数 Nl を得るのに必要な印加電圧 e は 次式で与えられる. NN l e = Ri + k e m ( 5) KV 5.RC電動ヘリとDCブラシレスモータの数値例 一般に、胴体半径 r、胴体長 l の大きなモータほど磁界磁束φを大きくしてモータのトルク定数 k τ を大きくできるため、モータ発生トルク Mτ を(kτ に比例して)増やすことができる. またコイル巻数 m を増やせば(m に比例して)モータ発生トルク Mτ を大きくできるが、同時に内 部抵抗 R が増大するため、モータの耐負荷特性は低下(Mτn が R に比例して増加)する. トルク定数 kτ の大きなモータ[高トルク型モータ]は KV 値が小さくなるため、 KV 値の小さなモー タほどモータ発生トルク Mτ を増大させることができる. ここで電動ヘリ用の小型モータとして最近注目されている model motors(チェコ)の AXI シリー ズDCブラシレスモータ(アウターロータタイプ)を例に、モータの諸定数を表1に示す(同社のカ タログから抜粋). 表1 DCブラシレスモータの諸定数 AXI 2820/10 AXI 2820/12 AXI 2826/10 AXI 2826/12 DCブラシレスモータ KV (rpm/V) 1110 930 870 730 R 0.039 0.059 0.042 0.062 (Ω) M TN (rpm/gf・cm) 0.493 0.524 0.326 0.339 耐負荷特性 Mτn (M TN )は KV 値を小さくするとその自乗に比例して小さくなるが、このモータで は(巻数 m を増やして)KV 値を小さくすると内部抵抗 R が増大して Mτn (M TN )が大きくなり、耐 負荷特性が低下する傾向にあることが分かる. なお、この耐負荷特性は後述する電子ガバナー制御の補助手段により改善することができる. ところで(1)式から明かなように、モータ発生トルク Mτ は駆動電流 i (と kτ)に比例して増大でき る. したがって、モータの駆動(消費)電流 i を減らしつつ大きな駆動トルク Mτ を得るには、 KV 値の 小さな(kτ の大きな)モータ[高トルク型モータ]を選択するのが得策となる. しかし、KV値の小さなモータを用いると、高速のロータ回転数を得るためにはバッテリー電圧を 大きくしなければならなくなる. 一方(4)式で示されるように、ギア減速はロータ軸負荷トルクτ l を1 /N に低減する効果(駆動ト ルクを N 倍にする効果)をもたらす . したがって、バッテリー電圧を下げるには、KV 値の大きなモ ータ[高回転型モータ]でギア減速比 N を大きくするのも一つの選択肢となる. 表1のDCブラシレスモータ AXI 2826/12 を GP 30 クラスの電動ヘリ Quick EP-16 に用いたとき の諸定数を以下に示す. -4- 電動ヘリ:Quick EP-16 ロータメインギア:120 T モータピニオンギア:15 T ギア減速比:N = 120/15 = 8.0 DCブラシレスモータ: モータ内部抵抗: モータKV値: モータトルク定数: モータ逆起電力定数: AXI 2826/12 R = 0.062 (Ω) KV = 730 (rpm/V) K V = 0.1047KV = 76.4 (rad/s / V) kτ = 9.549/KV = 1.31×10−2 (N・m/A) k T = 9.737×10 4 /KV = 133.4 (gf・cm/A) ke = 9.549/KV = 1.31×10−2 (V / rad/s) k E = 1/KV = 1.37×10−3 (V/rpm) (浮上開始点− Hoovering の数値) ロータピッチ: p= 6 ° N l = 1400 (rpm) ロータ回転数: ω l = 0.1047N l = 146.6 (rad/s) N m = N l N = 11200 (rpm) モータ回転数: ω m = 0.1047N m = 1172.6 (rad/s) i = 12.5 (A) モータ駆動電流: e = Ri + ke ω m = 16.1 (V)[≧ NN l /KV = 15.3 (V)] ← (5) モータ印加電圧: Mτ = 9.549i/KV = 0.164 (N・m) モータ駆動トルク: M T = 9.737×10 4 i/KV = 1.67×10 3 ( gf・cm) 6.モータ電流特性 メインロータ軸で発生する負荷トルク τ l は、ロータの風切り音などで観測されるようにロータが 空気(粘性体)中を回転することによりもたらされるため、ロータの回転速度 ω l に依存するような成 分(粘性摩擦抵抗)を多く含むと考えられる. 一方、RC電動ヘリのモータに作用する負荷トルクとして、このメインロータの駆動に必要な負荷 トルク以外に、ギア減速駆動のための負荷トルク(ギア減速系のロス)やテールロータの駆動に必要 な負荷トルク(テール駆動系のロス)なども考慮しなければならない. ここでは、これらのロスを全てロータ軸の負荷トルクとしてτl に含めて考える. このためロータ軸の負荷トルクτ l は、ロータ回転速度に依存する成分 τωと、そうでない成分τ 0 とに分け、ロータ回転速度ω l に対する依存度をαとすると次式で表せる . l = 0 + ( 6) l ところでモータ軸負荷トルクτ m は軸受けロス等が支配的になるため、通常は十分小さく無視でき るレベルと考えることができる. したがって、モータ軸負荷トルクτ m を無視すると(あるいはこのτ m を τ 0 に含めて考えてもよ いが )、(4), (6)式よりロータピッチが一定のもとでは、モータ電流 i はモータ非回転時の負荷電流を i 0 として次のように近似することができる . KV KV ( 0+ ) i l = N N ( 7) i = i0 + a l この(7)式で近似できるモータ電流特性の実測結果を図2の実線に示す(測定条件は下記). 《測定条件》 電動ヘリ:Quick EP-16 / 全備重量:2.6kg モータ:AXI 2826/12 (730-KV/0.062 Ω /14-pole) コントローラ:future-32.55 OPTO (Governor) 電源:Li-Po PQ-2600 3S ×2 ×2 (6S2P) 電圧:22.2V ロータブレード:ファンテック FT-550G SR メインギヤ:120T ピニオンギヤ:15T(ギア減速比:N = 8.0) 電圧・電流計:Astro Flight Meter 浮上開始点:n = 1400 rpm, p = 6° , i = 12.5 A -5- なお図2の点線はメインロータがない(スタビライザーバーとテールロータのみを回転させた)場 合の電流特性を示すもので 、上記のギア減速系のロスとテール駆動系のロスを示していることになる. また、同図の破線はモータ単体(無負荷で)の電流特性を示す. =7.0° =5.0° モータ電流: (A) =3.0° =1.0° 浮上開始 メインロータ なし モータ単体 ロータ回転数: (rpm) / =8.0 図2. 電動ヘリ EP-16 のモータ電流特性(その1) この図2のモータ電流特性は、ロータ回転数 n = 800rpm / 1200rpm におけるモータ電流の実測値か ら(7)式の近似関数を算出して表示したものであり、実測値とよく整合していることが分かる. 具体的には、例えばロータピッチ p = 5.0 °の場合のモータ電流 i は次式で近似できている . ( 8) i = 0.2 + 1.325 × 10 7 n 2.512 ( p = 5.0° ) また、メインロータなし(ギア減速系とテール駆動系のみ)のモータ電流は、 i = 0.2 + 1.089 × 10 5 n1.710 で与えられ、モータ単体での無負荷電流は次式で与えられている . i = 0.2 + 1.277 × 10 5 n1.563 これらの近似関数は独自開発のプログラム Motor_0.exe (後述の使用法参照)を用いて算出している. なおコントローラ(アンプ)は OPTO( BEC なし)にしているため、モータ電流 i には回路系(受 信機、サーボ、ジャイロ)の負荷電流は含まれていない. この電流特性からモータ軸負荷トルク τ m とロータ軸負荷トルクτ l の実際の値を知ることができ る. 例えば、ロータピッチ p = 5.0 °、ロータ回転数 n = 1200 rpm におけるモータ電流値 i1 = 7.4 A と モータ単体(無負荷)での n = 1200 rpm におけるモータ電流値 i0 = 1.1 A から、(4)式を用いると モータ軸負荷トルク: m = i0 / KV = 0.0144 [N m] ( = 147 [gf cm]) ロータ軸負荷トルク: l = (i1 i0 ) N / KV = 0.659 [N m] ( = 6724 [gf cm]) が求まる. これよりモータ軸負荷トルクτ m はロータ軸負荷トルクτ l に対して2%程度と小さいため、τ m を 無視した(7)式の近似は妥当であることが分かる. -6- 次に、ロータ回転速度ω l に依存する負荷トルク(粘性摩擦抵抗)τω には、さらにロータのピッ チ量 p に依存するような成分が含まれると考えられる . このためロータ回転速度に依存する成分 τ ω は、ロータのピッチ p に依存する成分 τ p とそうでな い成分τ00 とに分け、ロータのピッチpに対する依存度を βとすると次式で表せる. = 00 + p ( 9) p l 00 l , p したがって、(4), (9)式よりロータ回転速度一定のもとでは、モータ電流 i はピッチ 0 °における 電流を i00 として次のように近似することができる. (10) i = i00 + bp この(10)式で近似できるモータ電流特性の実測結果を図3に示す. =1600 rpm モータ電流: (A) =1400 rpm =1200 rpm 浮上開始 =1000 rpm =800 rpm =600 rpm ピッチ: ° 図3. 電動ヘリ EP-16 のモータ電流特性(その2) 図3の実測データは図2のものと同じであり 、図2がロータ回転数対モータ電流特性(n − i 特性 ) を示すのに対し、図3はロータピッチ対モータ電流特性( p − i 特性)を示している. この図3のモータ電流特性は、ロータ回転数 n を一定にしてピッチ p = 0 ° /3 °/5 °におけるモー タ電流の実測値から(10)式の近似関数を算出して表示したものであり、実測値とよく整合しているこ とが分かる. 例えば、ロータ回転数 n = 1200 rpm におけるモータ電流 i は次式で近似できる. (11) i = 5.0 + 4.946 × 10 2 p 2.412 ( n = 1200 rpm ) この近似関数は独自開発のプログラム Pitch_i.exe(後述の使用法参照)を用いて算出している. 以上のことから、ロータ回転速度 ω l とロータピッチ pをパラメータとするモータ電流特性の統合 近似関数は、(7), (9), (10)式より次式で与えられる. (12) K i = V ( 0 + 00 + p ) = i0 + ( a + bp ) l N この(12)式の統合近似関数を用いて、先の図2に重ね表示した結果を図4に示す. -7- =7.0° =5.0° モータ電流: (A) =3.0° =1.0° 浮上開始 ロータ回転数: (rpm) / =8.0 図4. 電動ヘリ EP-16 のモータ電流特性(その3) 図2の電流特性はピッチをパラメータにしているため、ピッチが変わる度に( 7)式の近似関数が変 わる . これに対し、この図4の電流特性ではピッチとロータ回転数に対して、(12)式で示される共通 の統合近似関数で表示されている. この図4のモータ電流特性は、ロータ回転数 n = 1200rpm, ピッチ p = 0 ° /3 ° /5 °におけるモータ 電流の実測値と、n = 800rpm, p =5 °におけるモータ電流の実測値から(12)式の統合近似関数を算出 して表示したものであり、これも実測値とよく整合していることが分かる. ちなみにこの(12)式の統合近似関数は、独自開発のプログラム Motor_i.exe(後述の使用法参照) を用いて算出することができ、図4の例では次式で与えることができる. (13) i = 0.2 + (8.831 × 10 8 + 9.100 × 10 10 p 2.412 ) n 2.512 7.ギア減速系の作用と効果 所定のロータ回転数を得るには、 KV 値の大きなモータに対しては(過剰回転にならないようにバ ッテリー電圧を小さくして)減速比 N を大きくし、逆に KV 値の小さなモータでは(過少回転にな らないようにバッテリー電圧を大きくして)減速比を小さくする必要がある. 例えば KV 値が2倍のモータを用いた場合は、減速比 N を2倍にしてロータ回転数を合わせる . したがって、一つのシステムで KV 値の異なるモータを用いた場合、同じロータ回転数を得るため には、通常はモータ間で次の関係式が成り立つようにギア減速比 N を選ぶことになる. KV (14) C( r a d / s / V ) : 一 定 N これを(4)式に適用すると、 i = NC m +C (15) l ここで、特にモータ軸負荷トルクτm が小さく無視できる場合は、 -8- i C (16) l すなわち(16)式からは、 KV 値の異なるモータに換えても、同じロータ軸負荷トルク τl に対して C [= K V /N]を一定にする限り、モータの駆動(消費)電流 i は変わらないことになる. 一方、KV 値の同じモータでも減速比N を大きくすると C が小さくなるためロータ軸負荷トルクτl に消費されるモータ電流は低減される. 例えばロータ軸負荷トルクが一定のもとで、減速比Nを 20% 増やせば、モータ消費電流は 20% 低減されることになる. しかしこれは、ギア減速系でのロスが無視できる位に小さいか、あるいはそのロスが不変の場合に 限るものであり、実際はギア減速系のロスは無視できない . 例えば、①モータ側のギア(ピニオンギア)の歯数を減らして減速比を大きくすると(所定のロー タ回転数を得るために)ギア高速回転が必要となりそれに伴う摩擦ロスが増え、減速比 Nが大きいほ どそのロスは増えることになる. すなわち、減速比を増やしても得る分と失う分が存在するため、必 ずしも(16)式の通りの効果は得られない. また、②ロータ側のギア(メインギア)の噛み合う歯数が増えると摩擦ロスが増えるため、同じ減 速比でもメインギアの歯数を多くするほどその摩擦ロスは増えるものと推測される. このギア減速系の摩擦ロス①の影響の実例を図5に示す . = 8.0 = 10.0 =7.0° =5.0° モータ電流: (A) =3.0° =1.0° 浮上開始 ( = 8.0) ロータ回転数: (rpm) 図5 . 電動ヘリ EP-16 のモータ電流特性−ギア減速系の影響(その1) この図5はモータの消費電流低減を狙って 、同じモータ 、同じメインギアでギア減速比をN 1 = 8.0 (実線の特性)と N 2 = 10.0(破線の特性)に変えた場合を比較しているが、結果的には電流低減 効果と電流増加作用の両方が観測される . すなわち、ロータ回転数 N l が 1300 ∼ 1400 rpm 以上の高速回転側ではギア減速比を増大させたこ とにより 10% 程度の電流減少傾向が見られるが、逆にそれ以下の低速回転側では 10% 程度の電流 増加傾向が見られ、減速比を増加させた割合( 25%)ほどには全体的なモータ消費電流の低減効果が 得られていない. この電流低減効果は(16)式に基づくものであるが、電流増加作用の方は減速比を大きくしたことに よりギア高速回転に伴う摩擦ロスが増えて、ロータ低速回転から全体的にモータ電流が増えたことが 原因しているものと推察される. -9- 次に、ギア減速系の摩擦ロス②の影響の実例を図6に示す(測定条件は下記). =7.0° =5.0° EP-16 N=13.3, p=5° =3.0° モータ電流: (A) =1.0° 浮上開始 メインロータ なし EP-16 N=13.3 モータ単体 ロータ回転数: (rpm) / =12.5 図6 . 電動ヘリ LOGO-10 のモータ電流特性−ギア減速系の影響(その2) 《測定条件》 電動ヘリ:Mikado LOGO-10 / 全備重量:2.3kg モータ:Hacker B50-16L (1509-KV/0.0262 Ω /2-pole) コントローラ:future-18.61 OPTO (Governor) 電源:DM-330M / Li-Po PQ-2600 4S ×2 (4S2P) 電圧:14.8V ロータブレード:MAH カーボン メインギヤ:200T ピニオンギヤ:16T(ギア減速比:N = 12.5) 電圧・電流計:Astro Flight Meter 浮上開始点:n = 1400 rpm, p = 5.5° , i = 17.2 A この図6は、同じモータ( Hacker B50-16L)を異なる2つのシステムに搭載してモータ電流特性を 比較したものであり、太線の特性は電動ヘリ Mikado LOGO-10 の特性を示し、細線は上記図2∼図5 で用いた電動ヘリ Quick EP-16 の特性を示す. 前者 LOGO-10 では歯数 200 T、後者 EP-16 では 120 T のメインギアが採用されており、特に後者 では剛性の高い切削ギアが用いられている. このメインギアの歯数と剛性の違いにより、上記(16)式の電流低減効果を覆すような結果となって いる . すなわち、減速比が両者で大差ない(N = 12.5 と 13.3)にも関わらず LOGO-10 の方が EP-16 よりもモータ消費電流が大幅に増えており(例えば n = 1400 rpm, p = 5 °において 3.0 A の 増加− EP-16 比で 25% の 増加 ) 、その結果、LOGO-10 の方が軽量化されているにも係わらず、ホバリング開 始のモータ消費電流が 4.0A 以上も増えている. これは LOGO-10 が低剛性で歯数の多いメインギヤを用いていることが要因の一つと考えられる. ところでこれらのギア減速系のロス以外にも、ギア減速系のバックラッシュ(ギア噛み合いの隙間) およびテール駆動系のバックラッシュ等の調整不良や調整バラツキによっては、減速比を変えても得 - 10 - る分と失う分が相殺されて余り差が出なくなるか 、あるいは逆転することも起こり得ると考えられる. このバックラッシュの影響の実例を図7に示す(測定条件は下記). バックラッシュ大(ゆる目) バックラッシュ小(きつ目) モータ電流: (A) =5.0° 浮上開始 メインロータ なし ロータ回転数: (rpm) / =21.9 図7. 電動ヘリ Baron Whisper のモータ電流特性−ギア減速系の影響(その3) 《測定条件》 電動ヘリ:Kalto Baron Whisper / 全備重量:1.2kg モータ:Kontronik Twist-37 (3700-KV/0.0116Ω) コントローラ:Phoenix-45 BEC (Governor) 電源:DM-330M / Li-Po PQ-2600 3S ×2 (3S2P) 電圧:11.1V ロータブレード:JRC ウッド( 6° ねじり下げ) メインギヤ:350T (2 段減速:70×85/17) ピニオンギヤ:16T(ギア減速比:N = 21.9) 電圧・電流計:Astro Flight Meter 浮上開始点:n = 1300 rpm, p = 4° , i = 11.5 A (BEC 電流:0.3 A) この図7のシステムでは、バッテリー電圧を低く(低セル化)するために KV 値の大きな小型モー タで2段減速駆動して N = 21.9 の 大きな減速比を得ている. なお、コントローラは BEC (Battery Eliminator Circuit) を使用しているため、モータ電流には電気 系(受信機、サーボ、ジャイロ)の負荷電流が含まれている. したがって、測定値からそれを差し引 いた値が駆動系で消費される電流となる . この例は、ギア取付時のバックラッシュ調整誤差によってモータ消費電流が大きく変化することを 示している. すなわち、同じモータ、同じ減速比でもギア駆動系とテールベルト駆動系のバックラッ シュを(小さく)きつ目にしただけで、ロータ回転数 1200rpm にてモータ消費電流が 20%近くも増 加している. また図6の場合と同様に低速回転から全体的にモータ消費電流が増加しているように観測される が、これは低剛性で歯数の多い2段減速メインギアが用いられていることが原因と考えられる. - 11 - 8.ガバナーの作用と効果 モータの回転数が一定になるように制御するガバナーは、図8の比例制御システム(P制御系)とし て表すことができる . モータ軸負荷トルク RKV m RKV N 2 ロータ軸負荷トルク 2 l DCモータ − + e 入力電圧 KV − − + m Gm ( s ) + 1 N l ロータ回転速度 Pループ P 図8 . ガバナーによるP制御システム P制御系の制御ゲインを P( V / rad/s)とすると、このシステムの直流域での定常解 ( s 次式で与えられる. 2 2 KV RKV 1 RKV = Nm e m m l 1 + PKV 1 + PKV N 1 + PKV 1 1 KV i= m + l = KV m + l k Nk N 0) は (17) この(17)式と(4)式を比較すると明らかなように、ガバナーはモータの内部抵抗 R を1/(1 + PK V ) に低減して耐負荷特性を改善するシステムと見ることができる. そして制御ゲイン P を大きくするほど、その改善量は増加する. また入力電圧 e から見れば、ガバナーはモータの KV 値を K V /( 1 + PK V )に低減して見かけ上、高 トルク型のモータ特性にする作用があると言える . 一方、制御ゲイン P はモータ印加電圧 e に作用するだけで、モータ電流 i には寄与しないため、モ ータ駆動(消費)電流がガバナーによって変わることはない. このガバナー制御によるギア減速駆動系の実負荷特性を図9に示す. RKV 2 RKV N2 2 レスポンス / 減速による改善 Gm ( s ) ガバナーによる改善 2 RKV 2 N (1 + PKV ) Gm '( s ) 0 = 1 Tm 0 '= 1 Tm ' 図9 . ギア減速駆動系の外乱に対するレスポンス - 12 - → 変動角周波数 9.まとめ − ロングフライト化への道 以上3種類のEPヘリ(EP-16 / LOGO-10 / Baron Whisper)についてモータ電流特性を求めたので、 ここではロータピッチを一定(p=5°)にしたときの各電流特性を比較して図10に示す. ① EP-16 / AXI 2826-12 (730-KV, N=8.0, 2.6 kgf) ② LOGO-10 / Hacker B50-16L (1509-KV, N=12.5, 2.3 kgf) ③ Baron Whisper / Kontronik Twist-37 (3700-KV, N=21.9, 1.2 kgf) ③ C = 168.9 ② C = 120.7 i = 0.2 + (2.674 × 10 6 + 2.954 × 10 7 p1.303 )n 2.103 ① C = 91.3 モータ電流: (A) i = 0.2 + (2.925 × 10 6 + 9.937 × 10 8 p1.817 )n 2.068 ( = 5.5°) ( = 6.0°) 浮上開始 ( = 4.0°) i = 0.2 + (8.831 × 10 8 + 9.100 × 10 ロータ回転数: (rpm) / 10 p 2.412 ) n 2.512 =5.0° 図10. EPヘリモータ電流特性の比較 以上のモータ電流特性から、各システムのギア減速系ロスやテールロータ駆動系ロスを含めたロー タ軸の実負荷トルクを知ることができる . すなわちモータ軸負荷トルクτm が無視できた場合は、(16)式より、モータでの消費電流が i(A)の ときのロータ軸負荷トルクτ l(N・m)、あるいはそれを単位換算した T l (gf・cm) は次式で与えられる. i = C l C KV ( rad/s/ V) N N i( N m ) l = KV N Tl = i × 9 .7 3 7 × 1 0 4( g f c m ) KV (18) (19) ① 例えば、図2∼図5のモータ電流特性を有する EP-16 / AXI 2826/12 ( KV = 730 rpm/V, N = 8.0)の浮 上開始点[n = 1400 rpm, p = 6° , i = 12.5 A]におけるロータ軸負荷トルクは、 T l = 1 3 .3( k g f c m ) l = 1 .3 1( N m ) あるいは となり、このロータ回転トルクが重量 2.6kgf の機体を浮上させることになる. → 機体重量 1kgf 当たりの浮上に必要なロータ回転トルク: 5.12 kgf・ cm / kgf 〃 モータ駆動電流:4.81 A / kgf - 13 - ② 一方、図6のモータ電流特性を有する LOGO-10 / Hacker B50-16L ( KV = 1509 rpm/V, N = 12.5)の 浮上開始点[n = 1400 rpm, p = 5.5° , i = 17.2 A]では、 T l = 1 3 .9( k g f c m ) l = 1 .3 6( N m ) あるいは のロータ回転トルクが重量 2.3kgf の機体を浮上させることになる. → 機体重量 1kgf 当たりの浮上に必要なロータ回転トルク: 6.04 kgf・ cm / kgf 〃 モータ駆動電流:7.48 A / kgf ③ これに対し図7のモータ電流特性を有する Baron Whisper / Kontronik Twist-37 ( KV = 3700 rpm/V, N = 21.9) の浮上開始点[n = 1300 rpm, p = 4° , i = 11.5(-0.3)A]では、 T l = 6 .4 5( k g f c m ) l = 0 .6 3 3( N m ) あるいは のロータ回転トルクが重量 1.2kgf の機体を浮上させることになる. → 機体重量 1kgf 当たりの浮上に必要なロータ回転トルク: 5.38 kgf・ cm / kgf 〃 モータ駆動電流:9.33 A / kgf ① と ② を「機体重量 1kgf 当たりの浮上に必要なロータ回転トルク 」で比較すると 、前者 (EP-16 / AXI 2826/12) の方が後者 (LOGO-10 / Hacker B50-16L) よりも 18% 程度効率が上回っていることがわか る. この効率の違いは、上記したようにメインギアの歯数と剛性に起因するギア減速系のロスの違いが原 因しているものと推察できる. ① と ③ を比較すると、2:1(2.6kgf: 1.2kgf)の機体重量比に対してモータで消費される電流が ほぼ1:1(12.5A: 11.2A)になっているものの、機体浮上のためにモータで発生されるロータ回転ト ルクがほぼ 2:1(13.3kgf・ cm: 6.45kgf・ cm) になっていることから、両者で同等の効率が得られて いる(厳密には ①の方が 5% 程効率が上回っている)ものと推察できる. これは、③のギア減速系の ロスを機体の軽量化がカバーした結果と言えるだろう. なお、①の開発元であるクイックより、フレームの強度が負荷に影響するとの報告がある. すなわ ち、フレーム自体のねじれ剛性が弱いと2つのギア(メインギアとピニオンギア)の平行度が狂い、 ギア駆動系の負荷が大きくなることが実験で明らかになっているとの報告である. ①ではフレームがメタル化されているため、非メタル(強化プラスチック製)の②や③よりもフレ ームの剛性が上がっており、ギアの取付精度も高くなっていることから、2つのギアの平行度が(出 力に関係なく)保たれ、結果的にロータ高速回転でのギア減速系のロスが減ってモータ消費電流が減 るものと推察される . ところでロータ軸負荷が変化したときのモータ電流の変化に着目すると、(18)式より i = C = l KV N (20) が導かれる. すなわち、 C[= K V /N] の値が大きいほどロータ軸負荷の変化に対するモータ電流の変化が大きく なることを意味する . したがって C の値が大きいシステムほど、ロータ軸負荷が増大するロータ高速 回転側でモータ電流が増大することになる. 換言すれば、ロータ回転数対モータ電流特性(n − i 特 性)の傾きが高速回転側に行くほど急になる. 各システムの C の値を図10に併記してあるが、その傾向がはっきりしていることが分かる. 以上を総合すると、モータ消費電流を減らしてシステムの効率を高めるためには、 (a) C[= K V /N] の値を減らすようなモータKV値とギア比Nとバッテリー電圧の選択を行う、 (b) ギア減速系の歯数を少なくしその剛性を高める、 (c) フレームをメタル化し適切なバックラッシュ調整によりギア減速駆動系ロスを最小化する ことが有効となるだろう. 特に(b)と(c)を低コストで実現しているものの一つに EP-16 を挙げることができる. この EP-16 はフルメタル化されていて重量増となっているにも係わらず、アウターロータの小型 軽量・高トルクのDCブラシレスモータ AXI 2826/12 を高電圧 22.2V の軽量化リポバッテリーと少 歯数・高剛性のギアで駆動することにより、システム全体の高効率化が実現できており、モータ消費 電流も図10の3システムの中では最小に押さえられていることから一層のフライト長時間化を期待 することができるだろう. 最後に「DCブラシレスモータの電子ガバナー装置」によりロータ(に負荷変動を生じても)回転 数を一定に制御するシステムが実現されたことが、上記のモータ電流特性のデータ取得を容易にし、 その動作解析を可能にしたことを付記しておく. - 14 - 付 録 【モータ電流特性計算用プログラムの使用法】 ① Motor_0.exe の使い方 *RCヘリ機体を拘束しておき、ガバナーモードにしてロータ回転数とピッチを変えたときのモー タ電流を測定しておく. * Motor_0.exe を起動すると測定データの入力が促される . 例えば 測定したときのピッチ p = 5 °を入力してから ロータ回転数 n1 = 800 rpm / n2 = 1200 rpm におけるモータ電流の実測値 を入力すれば、ピッチをパラメータとする「ロータ回転数対モータ電流特性の近似関数」が画面 上に表示される . *この近似関数を使ってグラフにする(図2の例を参照). ** 近似関数の精度を上げるには、n1 と n2 はある程度離した値で測定した方が望ましい. また n2 の値は機体が浮上しないような回転数で測定した方が望ましい . → 機体が浮上するところを拘束して測定すると、拘束により負荷電流が増大し浮上状態とは異 なるデータが採れてしまうため . - 15 - ② Pitch_i.exe の使い方 *RCヘリ機体を拘束しておき、ガバナーモードにしてロータ回転数とピッチを変えたときのモー タ電流を測定しておく. * Pitch_i.exe を起動するとデータの入力が促される. 例えば、 測定したときのロータ回転数 n = 1200 rpm を入力してから、 ピッチ 0 °/ 3 ° / 5 °におけるモータ電流の実測値 を入力すれば、ロータ回転数をパラメータとする「ピッチ対モータ電流特性の近似関数」が画面 上に表示される . *この近似関数を使ってグラフにする(図3の例を参照). - 16 - ③ Motor_i.exe の使い方 *RCヘリ機体を拘束しておき、ガバナーモードにしてロータ回転数とピッチを変えたときのモー タ電流を測定しておく. * Motor_i.exe を起動するとデータの入力が促される. 例えば、 ロータ回転数 n1 = 1200 rpm, ピッチ p = 0 ° / 3 ° / 5 °におけるモータ電流の実測値 ロータ回転数 n2 = 800 rpm, ピッチ p = 5 ° におけるモータ電流の実測値 を入力すれば、ピッチをパラメータとする「ロータ回転数対モータ電流特性の統合近似関数」が 画面上に表示される. *この統合近似関数を使ってグラフにする(図4の例を参照). ** 近似関数の精度を上げるには、n1 と n2 はある程度離した値で測定した方が望ましい. また n1 の値は機体が浮上しないような回転数で測定した方が望ましい . → 機体が浮上するところを拘束して測定すると、拘束により負荷電流が増大し浮上状態とは異 なるデータが採れてしまうため . *なお、プログラムの続きとして、この近似関数を使って、任意のピッチ、ロータ回転数を入力す れば、そのときのモータ電流を算出することができる . - 17 -
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