80 妊娠 25 週母児リステリア症の 1 例 ◎山川 徹 1)、江島 遥 1)、松尾 恵里 1)、沖 茂彦 1)、小屋松 加奈子 2)、山本 和子 3) 独立行政法人 国立病院機構 長崎医療センター 1)、同 産婦人科 2)、同 呼吸器内科・感染症内科 3) 【はじめに】Listeria monocytogenes は人畜共通感染症とし グラム陽性短桿菌を認め、Listeria の疑いがあることを臨床へ て問題となるグラム陽性桿菌である。今回我々は妊娠 25 週で 報告した。培養翌日には、血液寒天培地に灰白色の半透明 L.monocytogenes 菌血症を合併し、細菌検査室での迅速診断 で弱い β 溶血を示すコロニーを認めた。コロニーの性状とグラム染色 により母体を救命し得た症例を経験したので報告する。 による形態(グラム陽性短桿菌)、カタラーゼ試験陽性であった 【症例】年齢 22 歳、1 経妊 0 経産、既往歴は特記事項なし。 ことから L.monocytogenes と推定され、自動検査機器でも同 自然妊娠。妊娠 25 週 3 日に妊娠検診を実施された際に全身 菌と同定された。 倦怠感と頭痛を訴えていた。妊娠 25 週 4 日に 40 度の発熱 【経過】母親は産褥 3 日目までゲンタマイシン、15 日目まで が出現し、子宮収縮症状が出現したため A 病院を受診。血 アンピシリンが投与され、軽快し入院後 16 日で退院。児は生後 液検査で WBC 11,800/µl、CRP 3.2mg/dl と炎症所見の上昇 4 日目までゲンタマシン、5 日目までアンピシリンが投与されたが出生 と右腰部痛を認め、腎盂腎炎の診断で同院に入院。妊娠 5 日後に永眠した。 25 週 5 日、子宮収縮の増強を認め、B 病院へ母体搬送され 【考察】L.monocytogenes によるリステリア症は我が国では報告 た。子宮収縮抑制剤の投与が行われたが、胎児の心拍が不 が少ないが、妊婦は健常人の 20 倍も罹患しやすく、本菌は 安定となったため、当院へ緊急搬送された。同日、緊急帝 胎児に垂直感染し、新生児と母体の致命率が高いとされる。 王切開術が施行され、子宮切開時に排膿を認め、さらに羊 本症例は検体のグラム染色結果より、L.monocytogenes 感染を 膜の破膜時に羊水混濁を認め、子宮内感染が疑われた。児 疑い、迅速な結果報告を行ったことで、母体の救命につな は娩出時に自発呼吸を認めず、NICU へ入院となった。 がったと考える。 【微生物検査】母親の血液、子宮内膿汁、羊水および児の 血液、鼻腔、耳漏検体が提出された。全ての検体にて (連絡先)0957-52-3121(内線 3226)
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