第38号 品川区胃がんリスク検診2年間の報告

目 次
◆ 品川区胃がんリスク検診2年間の報告 …1
◆ あとがき・お知らせ………………4
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品川区(人口37万人。高齢化率20%)では平成24
(ABC検診)を導入し
年から、胃がんリスク検診が、地区医師会の行政、議
た。なお、他地域と異
会に対する働きかけにより、区の独自事業として行わ
な り 、 50歳 か ら の 開
れるようになった。対策型検診(X線検査)の受診率
始とし、5歳毎に75歳
は低迷し、4.3%(平成23年度)にすぎず、改善の期
までを対象とした。
待は無く、平成21年度の区民の胃癌死130例に対し、
40歳 代 を 除 外 し た 事
同年の検診(X線)発見癌は9例にすぎない。このよ
に関しての考察は、当
うな状況下、他に選択肢は無く、胃がんリスク検診
初からの課題であっ
荏原医師会胃がんリスク検診検討委員会代表
瀬 底 正 彦
表1
表2
品川区胃がんリスク検診2年間の結果
年齢別 胃がんリスク群の割合(%) 24年度
表3
年齢別 胃がんリスク群の割合(%) 25年度
た。ABC検診受託医療機関数は157(24年)、161(25
ところで、ABC検診にはHP抗体価のカットオフの
年)である。精検は内視鏡検査によるが、区内に対応
基準、ペプシノーゲン値に影響を与える種々の要因、
可能な診療所53、病院4、大学病院1があり、地域内
これから生じる偽A群やE群の混在を過大評価し、
で完結可能である。結果は表1に示すが、受診率が著
“確実なデーターの検証なしに,性急な自治体検診への
しく低い。原因は、ほとんどなされなかった広報活動
導入は行うべきではない”との意見がある。しかし、
の不足である。がん発見率は0.32%、0.48%である。
最前線で検診に関わるものとしては、今後10数年が最
なお2年間の発見癌23例のうち22例が早期胃癌、1例
も大切な時であり、ベストではなくともベターな方法
が進行胃癌であった。
を選択すべき時は「今」である。最近、消化器関連医
50歳 か ら の 検 診 導 入 の 適 否 に つ い て は ( 表 2,
学雑誌で、「胃がん検診に未来はあるか」のタイトル
3)、2年間の発見癌の最年少は55歳で、50歳ではA
で幾つかの論文が発表されているが、この答は私達の
群の割合は76.3%、79.7%であり、40歳代のリスク
50歳のA群の割合からみて、25年後には消滅する検
群は、20%以下と推定される。胃がん検診としては
診と考えられる。
50歳からでよいと考えるが、40歳代で検診し,HP感
行政との交渉で“都市型検診のエビデンスを作りま
染者の除菌治療をするならば、発癌予防効果は若干期
しょう。”と発言しているので、今後も検診結果の集
待できる。なお、国立がん研究センターは「胃がん検
計と課題の検討を続け、継続した情報発信の予定であ
診ガイドラインー2014版」で、対策型検診(X線。
る。
内視鏡)は50歳以上が望ましいと提言している。
8月28日に行われた当NPO主催のABC検診フォーラムには、全国の自治体の検診担当者
を中心に100名の方にお集まりいただき、盛況であったことをご報告いたします。住民検診
における、胃がんリスク検診への注目度の高さを実感しました。
今回の品川区での成果のご紹介は、東京都内では目黒区、西東京市に続いて3報目で
す。 住民のライフスタイルが多様化している都市部においては、胃X線検診の受診率向上
は望めません。国立がん研究センターの胃がん検診ガイドラインにおいて、50歳以上の胃
内視鏡検診が推奨されることになりましたが、内視鏡検診を有効なものとするためには受
診率の向上、特に胃がんリスクの高い方に受診を継続してもらうことが大切です。集団の死亡率減少効果より
も、自分が胃がんになりすいかどうかを知ることこそが、検診を受ける動機になると考えます。
そしてピロリ菌感染率の低下していく今後は、ABC検診によって感染者を集約し早期に除菌療法を行い、定
期的に経過観察する体制を作ることで、「胃がん検診のない時代」にすることが可能です。
(M)
あとがき
胃がん対策の最前線!
主な内容
血清 ABC 検診で
内視鏡で
X 線で
1 章 胃がんリスク検診
2 章 内視鏡・病理
3 章 X 線
4 章 Hp 除菌と ABC 検診・内視鏡検診・X 線検診
5 章 ABC 検診・内視鏡検診・X 線検診徹底比較
6 章 これからの胃がん対策(若年者への胃がん対策)
7 章 症例集 ABC 分類と画像診断の乖離例
コラム
胃炎をどうする?
一検診から対策まで一
執筆者一覧
日本医事新報社
定価(本体 4,200 円+税)
編集:三木一正
認定 NPO 法人
日本胃がん予知・診断・治療
研究機構理事長
三木一正 乾 純和 沖本忠義 伊藤高広 安田 貢 矢田智之 加藤勝章 菊地正悟
伊藤史子 井上和彦 青山伸郎 村上和成 古田隆久 吉川公彦 上村直実 福田能啓
伊藤慎芳 佐々木陽典 吉原正治 繁田さとみ 九嶋亮治 杉本光繁 後藤田卓志 渡海義隆
奥田真珠美 大泉晴史 瓜田純久 伊藤公訓 金坂 卓 加藤元嗣 山出美穂子 大隅寛木
中島寛隆 春間 賢 青木利佳 増山仁徳 保田智之 上堂文也 間部克裕 魚谷貴洋
藤崎順子 榊 信廣 末廣満彦 小林正夫 藤田安幸 寺尾秀一 八尾建史 大和田進
佐原 秀 平田賢郎 渡邊能行 河本博文 入口陽介 萩原廣明 松尾泰治 山田晃弘
河合 隆 市川仁美 鈴木秀和 鈴木英雄 鎌田智有 小田丈二 乾 正幸 貝瀬 満
中島滋美 鏡 卓馬 笹島雅彦 齋藤洋子 塩谷昭子 水谷 勝 (所属・肩書き敬称略)
■ 平成27年度 ご支援のお願い
新年度も引き続き胃がん撲滅に向けて活動して参ります。みなさまのご支援をお願いいたします。
【会費】平成27年度(平成27年4月1日〜平成28年3月31日)
賛助会費 (個人)1口3000円 (法人)1口30,000円 【寄附】平成27年度(平成27年4月1日〜平成28年3月31日)
当機構は平成25年5月29日に認定NPO法人になり、2000円を超えるご寄附をいただきますと、
税制上の優遇措置がございます。寄附金受領証明書が必要な方は、事務局へご請求ください。
■ お振込み先
お振込み先 *三菱東京UFJ銀行 目黒駅前支店 普通預金 No. 0008527
特定非営利活動法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構 理事長 三木 一正
*郵便振替 00130-9-429200日本胃がん予知・診断・治療研究機構
☆お振込の際、ご親族・職場等、複数の会員様でまとめる場合は、お手数ですが払込取扱票の通信欄に全員のお名前をご記入下さい。
■ 転居・所属変更・退会希望等は、お早めに電話・FAX・メールにて事務局までお知らせ下さい。
認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構
電 話 03-3448-1077 FAX 03-3448-1078
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