<事業目標> <事業成果>

当センター管理事業、
経済産業省平成24年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)
●エステック株式会社(島根県松江市:プロジェクトリーダー)
●近畿大学工学部(広島県東広島市)、●鳥取大学医学部(鳥取県米子市)
産学3者共同体による再生医療等の先進医療・バイオ向け精密ロボット装置等の研究開発事業が、
平成26年度末で終了しましたので、開発成果をご紹介します。
<事業目標>
★血球系細胞等から iPS 細胞等の幹細胞の作製や、標的細胞への分化誘導のため、
受容細胞と、目的遺伝子を導入した微小核細胞との融合効率の飛躍的な向上
★タンパク質分解酵素を使用せず、細胞にダメージなく高効率で目的細胞を剥離・回収
<事業成果>
細胞配列(細胞ナンバリングと位置決め)と高機能性素材(融合促進と細胞はく離)をコーテ
ィングしたマイクロデバイス(細胞マイクロアレイ)基板と最先端レーザー光操作技術を駆使す
る融合用パルスレーザー、回収用 Continuous Wave(CW)レーザーを搭載し、基板上細胞の膜厚レ
ベルと XYZ 軸 3D 空間に対応可能な超精密位置決めと高速光細胞診断・レーザー照射装置の開発
↓
◎先端医療・バイオ研究開発が切望する、細胞へのダメージがない細胞融合と目的細胞の回収を
高効率で可能とする卓上型細胞融合・回収自動化システムの開発に成功。
【各モジュール機能と外観】
通過照明
レーザー導入部
(装置背面)
XY ステージ、
チャンバー受け
顕微鏡、CCD カメラ
(カバー内部)
ファンユニット
(殺菌・酸素 HEPA
フィルタ)
クリーンブース
培地管理ユニット
(シリンジポンプ)
照明用コントローラ
制御部
<開発装置を活用した細胞操作の実施例>
★細胞マイクロアレイ/レーザー照射による細胞融合
・パルスレーザー照射:融合を促進する細胞膜の局所部位の瞬間穿孔と膜再生
30μm
照射位置
レーザー照射前
レーザー照射 5 秒後
レーザー照射 20 秒後
・CW レーザー照射:融合を誘導する細胞マイクロアレイ上での細胞集積
レーザー未照射
★温度刺激による非ダメージ細胞はく離回収
レーザー照射後
<今後の展開>
★エステック株式会社
本研究開発の成果物である「卓上型細胞融合・回収自動化システム」をデモ機として、国際
バイオテクノロジー展など世界中からの集客が期待される展示会への出展、ユーザー貸出、企業
や研究機関への個別広報を行い、事業化を推進する。
★近畿大学工学部
① 本研究開発の今後の展開
(1) 再生医療分野への利用を視野に入れ、プライマリー細胞の選択的回収(特に、温度応答性
ポリマー構造と固定化法を改変しつつ接着性を含む少数の細胞群からの効率かつ非侵襲
的な回収)
(2) ヒト人工染色体 Human artificial chromosome ( HAC) を含む微小核細胞のプライマリー細
胞への導入のためのマイクロアレイとレーザー照射装置を併用した高効率融合技術の進
展(マイクロアレイ用融合用素材のスピンコーティング等による簡便塗布用素材の開発と
細胞アレイ化へ現在進行している新技術を導入して集積技術を進化)
② 他の関連分野の研究への応用 → 鳥取大学医学部と共同の取組み
(1) エステック事業を支援して、バイオ研究分野での要求をカスタマイズ化して、装置の構成
を提案する。
(2) 臨床応用としてコンパクトかつ少量細胞の迅速診断装置を開発する。
(3) 細胞診断等で注目されるスフェロイド等の組織化した細胞の表面非接着コーティング/
スフェロイドペプチド固定化マイクロアレイによる調製
(4) 細胞診断や細胞操作を指向し HAC の細胞導入のみならず、ペプチド、タンパク質、遺伝子、
siRNA 等の細胞内導入と評価機器への応用
(5) 簡便な自動培養と細胞の経時評価が可能となるようシステム全体を進化させる。
★鳥取大学医学部
・本件に関わる今後の活動
人工染色体ベクターは、創薬、医療、様々な化合物や食品の安全性、機能性の探索など幅広い
応用が考えられる。対象となる受容細胞も、株化細胞をはじめ初代培養細胞、組織幹細胞、多能
性幹細胞など多岐にわたる。本装置の利用により、受容細胞への染色体ベクター導入を簡便に行
うことができれば、波及効果は多大である。今後は本装置活用の先鞭をつけ、優位性を提示でき
る実施例を追加することにより、人工染色体技術の普及に務める。