不活化全粒子経鼻インフルエンザワクチンの臨床応用に向けた研究

文部科学省 橋渡し研究加速ネットワークプログラム
C17:不活化全粒子経鼻インフルエンザワクチンの臨床応用
に向けた研究
プロジェクト責任者:東京大学医科学研究所 俣野哲朗
プロジェクト概要
本研究は、毎年季節流行を起こすインフルエンザウイルスに対する不活化全粒子経鼻接種ワクチン
の実用化に向け、臨床試験開始を目指すものであり、H26年度はそのための非臨床試験推進を主目的
とした。東京大学医科学研究所、国立感染症研究所(長谷川秀樹部長)、不活化全粒子を提供する阪
大微生物病研究会およびCVP含有基剤を提供する東興薬品工業株式会社による共同体制で研究を
推進した。
シーズの概要
不活化全粒子インフルエンザワクチンを粘膜付着性添加物CVPと共に経鼻接種するワクチンである。
これまでのマウス・カニクイサル等を用いた申請者らの研究では、この経鼻ワクチンにより、血清中和
抗体だけでなく粘膜上に交叉防御能の高い分泌型IgAが誘導され、感染インフルエンザウイルス株が
ワクチン株と異なっていても、同じ亜型内ではほぼ100%の感染防御効果が確認されている。また、高
病原性鳥インフルエンザウイルス感染に対する生存率改善を示す結果も得られており、亜型を超えた
交叉防御能も示唆されている。さらに臨床研究から、ヒトにおいても、血清中和抗体に加え、鼻腔粘膜
上に中和能を有するIgA抗体が誘導されることが示されている。したがって、接種の簡便性の利点に加
え、粘膜免疫誘導による高い感染阻止効果およびウイルス多様性に対応できる交叉防御免疫誘導効
果の点で、現行の注射器を用いるワクチンより優れた効果が期待される。
現在の進捗
本プログラムにより、臨床試験に向けての研究が加速的に進展した。PMDA薬事戦略相談を通して、
試験物の規格決定・製造体制の整備、デバイスの最適化および非臨床試験を推進し、順調に進展した。
 試験物の製剤調達法、剤型、製剤規格、規格試験項目の決定。
 非臨床試験:これまでに実施したラットを用いた毒性試験・生殖発生毒性試験およびサルを用いた安
全性薬理試験の結果をもって新たな非臨床試験実施の必要はないとの意見を得た。
 経鼻接種専用デバイスの設計・評価:使い捨てデバイスを設計するにあたり、求められる性能につい
て、先端部分形状、噴霧粒度分布、噴射角度、噴霧パターン、使用性、容器内残量、噴霧量等の各
パラメータに目標値を設定し、試作品を作製、評価を行った。
 治験実施計画書の骨子作成:臨床治験の推進に向け、我々の確立してきた評価系を治験評価項目
に組み入れて実施することができるように、GCPに準拠し、粘膜抗体評価系を組み入れ、血清抗体
価を主要評価項目、粘膜抗体を副次評価項目とした治験実施計画書の骨子作成を、CROにコンサ
ルトし年度末までに完了予定である。
今後の研究計画
本プログラムによる進展状況のもと阪大微生物病研究会との協議により、本シーズを阪大微生物病
研究会に導出する方向で進めることとなった。さらに導出時期について協議の結果、阪大微生物病研
究会より第一相から企業治験を行うとの申入れがあり、本シーズの治験プロトコール作成までを橋渡し
研究としてアカデミアで実施し、第一相試験は導出先の阪大微生物病研究会がH28年度内に実現させ
ることとした。