ご案内、発表要旨(pdf) - 公益財団法人豊田理化学研究所

主催
豊田理化学研究所・特定課題研究
「制御・情報理論による生物システムのロバストネス解析と設計」
第2回講演会
近年,遺伝子ネットワークや細胞集団の振舞いを大規模な動的システムとみなし,その機能を解析・設
計することを目指すシステム生物学の研究が活発である.特に最近,生物システムの情報伝達・ロバス
トネスに関する研究が注目されている.そこで第 1 回講演会に続き本講演会では,実験生物学,理論生
物学,制御理論,統計力学など,理工学の様々なフィールドの研究者に,本テーマに関連した研究内容
について御講演頂くことにした.広い分野の研究者・若い学生さんなど,奮って御参加下さい.
日程:2015 年 1 月 15 日(木),13:00-17:00
会場:東京大学本郷キャンパス,工学部 6 号館 3 階セミナー室 AD
スケジュール:
13:00~13:05 講演会趣旨説明
13:05~13:55 「数理生物学による免疫システムの理解に向けて~先ず隗より始めよ~」
秋山 泰身 (東京大学医科学研究所)
13:55~14:45 「細胞内シグナル伝達の情報処理」
黒田 真也 (東京大学大学院理学系研究科)
14:45~15:00 休憩
15:00~15:50 「分子ロボットのための制御工学」
中茎 隆 (九州工業大学大学院情報工学研究院)
15:50~16:40 「個体スケールから集団スケールへ:生物個体群を統計力学的視点から見る」
大泉 嶺 (東京大学大学院数理科学研究科)
16:40~17:00 まとめ
参加費:無料
参加方法:以下のアドレスにアクセス頂き,氏名,所属,メールアドレスを記入の上,
「送信」ボタンを押して下さい.
http://goo.gl/forms/QcCuV9ZSuR
連絡先:津村幸治
東京大学大学院 情報理工学系研究科 システム情報学専攻
e-mail: [email protected]
主催
豊田理化学研究所・特定課題研究
「制御・情報理論による生物システムのロバストネス解析と設計」
第2回講演会 発表要旨
2015 年 1 月 15 日
「数理生物学による免疫システムの理解に向けて~先ず隗より始めよ~」
秋山 泰身 (東京大学医科学研究所)
免疫学における知見の多くは、分子生物学的、遺伝学的、生化学的手法により得られる。例えば、
因子 X をコードする遺伝子を欠損したマウ スを作成、リンパ球や組織をフローサイトメーターや
免疫組織で解析、
標的細胞内で変化するタンパク質をウエスタンブロット法などで解析することで、
免疫応答などにおける因子 X の必要性を検証する。
本講演では、
その典型例(1)を紹介するとともに、
どうすれば数理生物学と免疫学の接点を最大に広げることができるか、
議論と教示をいただきたい。
(1)Akiyama N et al. J. Exp. Med., 211, 2425-2438 (2014)
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/research/papers/post_59.php
「細胞内シグナル伝達の情報処理」
黒田 真也 (東京大学大学院理学系研究科)
細胞内シグナル伝達は細胞の運命決定や代謝などさまざまな生命現象を制御しています。その細
胞内シグナル伝達経路による遺伝子発現制御のシステム同定(1)や、細胞内シグナル伝達の情報処理
のロバスト性など(2)を中心に議論します。
1. Saito T.H. et al, (2013) Temporal Decoding of MAP Kinase and CREB Phosphorylation by Selective Immediate
Early Gene Expression. PLoS ONE 8(3): e57037.
2. Uda., S. et al, (2013) Robustness and Compensation of Information of Signaling Pathways. Science 341,
558-561.
「分子ロボットのための制御工学」
中茎 隆 (九州工業大学大学院情報工学研究院)
新学術領域研究「分子ロボティクス」では、生体材料・分子のみで構築される全く新しい自律ロ
ボットの実現を目指しており、生物、化学、物理、数学、工学など様々な専門分野の研究者がプロ
ジェクトに参加している。メカトロニクスにおけるロボットと同様に、自律的な運動を実現するた
めには、分子ロボットにおいても生物的なアクチュエータやセンサ、制御演算回路が必要となる。
モーションコントロールという点においては、センサ情報をもとにフィードバック制御則の計算を
行い、アクチュエータの動作を調節すれば良いが、制御演算は生化学反応系で行われるため、マイ
コンや電気回路を前提としたメカトロニクスのための制御系設計法の常識や前提条件は満たされな
いことがある。ここに、分子ロボティクスのための制御理論の構築が求められている。本発表では、
分子ロボットシステムの安定性や制御系設計について概説する。
「個体スケールから集団スケールへ:生物個体群を統計力学的視点から見る」
大泉 嶺 (東京大学大学院数理科学研究科)
生物個体の生活史は種の特性を表す代表的な一つである。それらは広い意味で成長率、繁殖率、死亡
率に関わる個性として見る事が出来る。例えば、推移行列モデルはこれら三つを内包する状態推移確率
を調査データから導き、それらを用いて様々な生物集団の動態を予測する手法として確立されている。
これは、ミクロな粒子の統計量から熱力学のようなマクロな現象を説明しようとする統計力学の思想に
通じるものがある。推移行列モデルを含むこのような生態学の手法を、線形人口モデルと呼ぶ。本講演
では、これら三つの生活史の要素がその集団の動態にどのように影響を与えるのか、線形人口モデルに
統計力学の手法(とりわけ経路積分法など)を交える事で解説したい。