財産債務調書とは 15-012号 通巻:153

15-012号
通巻:153
財産債務調書とは
~提出すべき対象者は緩和~
財産債務調書とは
平成26年分の確定申告では、年間の所得金額が2千万円を超える方は「財産及び債務の明細書」を確定
申告書に添付して提出しなければなりませんでした。平成27年度税制改正で、「財産債務調書」として提出
基準の要件緩和や記載事項の価額等が見直されています。以下でその内容を簡易に見ていきます。
①提出基準の見直し
平成26年分確定申告
所得金額が2千万円超
↓
平成27年分確定申告 所得金額が2千万円超 かつ
①その年の12月31日においてその価額の合計額が3億円以上の財産を有する方
又は
②その年の12月31日においてその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産(※)を有する方
※国外転出特例対象財産とは所得税法第60条の2に規定する有価証券等並びに未決済信用取引等及び未決済デリバティブ取引に係る権利をいいます。
提出すべき対象者は上記の①又は②により緩和されています。該当する方は27年度末の保有財産の
状況をご確認下さい。
②財産の価額の見直し
平成26年分確定申告 土地、建物:その年12月31日現在の見積価額(固定資産税の課税標準の価額等)
有価証券:その年12月31日現在の価額(計算が困難なものは取得価額)
↓
平成27年分確定申告 財産の価額はその年の12月31日における時価(原則)又は見積価額
有価証券については取得価額の記載も必要に
※時価とは、その年の12月31日における財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい
ます。
※見積価額とは、その年の12月31日における財産の現況に応じ、その財産の取得価額や売買事例価額などを基に、合理的な方法により算定した価額をいいま
す。
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③記載事項の見直し
種類別・用途別(一般用及び事業用)・所在別に記載する必要があります。また、財産債務調書
合計表(財産の区分ごとに集計)を別途作成が必要です。
④適正な提出に向けたインセンティブ
財産債務調書を提出期限内に提出した場合
記載がある財産債務に関する所得税又は相続税の申告漏れが生じたとき
→ 過少申告加算税等が5%軽減
財産債務調書を提出期限内に提出していない場合、又は、期限内に提出したが記載すべき
財産債務の記載がない場合
その財産債務に関する所得税等の申告漏れが生じたとき
→ 過少申告加算税等が5%加重
ただし、不提出による罰則規定は従来とかわらずありません。
⑤提出の期日
上記の最初の提出期限は平成28年3月15日(平成27年分確定申告)までとなります。
財産債務の区分
種類
用途
所在
数量
(上段は有価証券の取得価額)
財産の価額又は債務の金額
土地
事業用
東京都千代田区○○
1
250㎡
建物
有価証券
一般用
上場株式 A社
一般用
東京都品川区○○
○○証券○○支店
250,000,000
1
90㎡
89,000,000
5,000株
6,500,000
6,450,000
預貯金
普通預金
一般用
○○銀行○○支店
38,961,915
【国税庁ホームページ】「財産債務調書の提出制度(FAQ)」(参照)
富裕層に対する課税の適正化を目的とした措置が多数創設されています。上記以外にも 「国外送金等調書」
(平成10年4月から)、「国外財産調書」(平成26年1月から)、「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」(平成
27年7月から)などがあります。マイナンバー制度の導入も含めて、国家による財産の管理はどこまでが適正か検
討してみる必要があると考えます。
クラージュ総合会計事務所 吉田 徹