(Na, K, Cl) 測定における精度管理調査用試料の反応性に関する検討

電解質 (Na, K, Cl) 測定における精度管理調査用試料の反応性に関する検討
金城 徹, 琉球大学医学部附属病院検査部
【はじめに】 電解質 (Na, K, Cl) は個体内および個体間で変動する濃度の幅が極めて小さいことから,
高い測定精度が求められる項目である。したがって, 施設間における測定値のバラツキにおいても, より
高い精密度が要求される。沖縄県内における電解質の測定方法は, 約 86%がイオン選択電極法 (ISE 法)
を採用している。しかし, ISE 法では測定する試料のマトリックスの影響を受けることが報告されており,
精度管理調査では人血清とマトリックスが近似する試料を用いることが望ましい。今回われわれは, 市販
の凍結乾燥血清と福祉医療技術振興会 (HECTEF) より供給されているイオン電極用常用標準血清
(ISE CRS) について, 3 種類の特性の異なる分析装置を用い, ヒト血清との反応性について検討を行った
ので報告する。
【材料および分析装置】 検討を行った試料は, 従来より沖縄県医師会精度管理調査で使用している試料
(A-1, 2, 3) と市販の凍結乾燥血清 (B-1, 2) , および HECTEF の ISECRS (低濃度, 中濃度, 高濃度) の合
計 8 種類で, それぞれ濃度の異なる患者血清 9 例の測定値と比較した。測定は日立 7600 型分析装置 (日
立製作所)と PVAα-_ (セントラル科学貿易) およびディメンション AR (デイド・ベーリング) で行い, 全
ての測定値について ISE CRS の中濃度の認証値を用い切片補正を行った。
【結果】 測定したそれぞれの試料について平均値を求め, 各分析装置より得られた測定値と平均値の差
を算出し比較を行った。その結果, Na のヒト血清では平均値より測定値が-0.7~1.3mEq/L の間に分布し,
ISE CRS は-0.4~0.3mEq/L に分布した。しかし, 試料 A のディメンションで-0.7~-1.2mEq/L と低値に
なる傾向が確認され, さらに試料 B-1 (正常域) では PVA が 2.0 mEq/L, ディメンションが-2.3 mEq/L と
測定値の異なることが確認された。また, K では全ての試料の測定値が-0.10~0.09mEq/L に分布し, 大
きな差は認められなかった。一方 Cl では, ヒト血清で測定値は平均値より-1.0~0.9mEq/L, ISE CRS で
-0.5~0.5mEq/L に分布するのに対して, 試料 A の日立 7600 で-1.1~-2.7mEq/L, PVA で 0.8~1.1mEq/L,
ディメンションで-0.1~1.9mEq/L と測定値が異なり, 試料 B では日立 7600 で-1.5~-4.0mEq/L, PVA で
2.6~4.7mEq/L と測定値の差は大きくなることが確認された。さらに分析装置の組み合わせによる散布
図を作成し, ヒト血清による一次直線回帰式と各試料の測定値を比較したところ, ISE CRS では全ての
組み合わせで一次直線回帰式上にプロットされた。また, その他の試料では分析装置の組み合わせによっ
ては, ヒト血清の測定値と乖離することが確認された。
【まとめ】 今回の検討より, K をのぞき試料 A および試料 B ともに分析装置間でヒト血清の測定値と
異なることが確認された。とくに Cl で差は大く, 実際の精度管理調査におけるバラツキを大きくしてい
るものと考えられた。測定値に差がみられた原因としては, 測定方式 (希釈法あるいは非希釈法) の違い
や, イオン選択電極の種類で選択性が異なること, また Cl 測定では PVAα-_のみが電量滴定法であるこ
とから, それぞれの分析装置で試料のマトリックスによる影響を受ける度合いが異なることが考えられ
た。一方 ISE CRS では, ヒト血清と反応性の差が認められなかったことから, ISE CRS を検量物質とし
て用いることで測定値の統一化は可能であるものと考えられる。また, 今後の精度管理調査では, よりヒ
ト血清と反応性の一致する試料を使用することで, 正確な評価が行われるものと思われる。