細菌同定に関する研修

細菌同定に関する研修
魚類課
1. 目的
飼育生物の健康管理に必要な、細菌検査技術等の習得のため、研究機関等へ職員を派遣
する。
2.内容
期間
Ⅰ・平成 19 年 5 月 27 日~平成 19 年 6 月 9 日
Ⅱ・平成 20 年 3 月 2 日~平成 20 年 3 月 16 日
場所
東京大学海洋研究所
海洋生態系動物部門
微生物分野研究室
Ⅰ・分子同定の技術習得
DNA 抽出、PCR 法、電気泳動、シークエンス、シークエンスデータの解析方法、
インターネットを使用したグローバルデータベースの利用方法。
Ⅱ・RAPD 法の技術習得
制限酵素の決定方法とその使用方法。
3.結果
Ⅰ・分子同定の技術習得
従来水族館で実施してきた病原性細菌に対する同定検査の方法では、低水温域(水温
20 度未満)の生物から分離培養した細菌は、同定できなかった。しかし、今回習得した
技術は、これらの菌に対して近縁種の推定が可能で、低水温域を含む幅広い飼育生物で健
康管理を実施していく上で、有効に活かせることが判った。
Ⅱ・RAPD 法の技術習得
大がかりな機械投資が必要なシークエンスまで実施しなくても、制限酵素を用いて
DNA を切断し、電気泳動・ゲル撮影の実施により、種の決定が可能となる技術(RAPD
法)を習得した。
4.今後の予定
習得した分子同定技術を利用し、これまで分離培養した細菌の塩基配列データの解析お
よび収集を行う。特に、魚病細菌に関して、種の決定可能な RAPD 法に使用できる制限酵
素を選定する。しかし、この作業を一から実施するためには、遺伝子に関する熟練した専
門的な知識が必要なため、情報収集および、研究機関への連携を強める。
最終的には、細菌感染症に罹患した飼育生物の確定診断が、水族館内で 5 日以内に出来
るような手法の確立を目指す。
近年、DNA 抽出や PCR 法を用いた DNA の増幅は、機器類の値段が安くなるだけでなく、
手法が簡単になり、時間もかからなくなってきている。また、DNA 情報は、DDBJ 等のイ
ンターネットサイトを利用し、無料で検索出来るようになっているため、細菌に限らず、
すべての生物において利用方法を検討する価値がある。
写真1
DNA 抽出作業
研修時、市販の DNA 抽出キットを用いたが、魚類課では自動核酸抽出機を購入したため、作
業にかかる時間が大幅に短縮される。
写真2
RAPD 法を利用した電気泳動の結果
研修先において既に RAPD 法の有効が確認されている、発光細菌を用いて手技を学んだ。
魚病細菌において、RAPD 法が有効であった場合、シークエンスを行う手間や時間、費用が省け、
更に種の特定も可能となるため、病魚への迅速な処置が可能となる。