モモせん孔細菌病の発生状況と対策について 新 潟 県 で は 近 年 、モ モ せ ん 孔 細 菌 病 の 多 発生 が 問 題 と な っ て お り、 過 去 10年の 県 病害 虫 防除所の調査を見ても、少発生年が1回のみで、中発生年3回、多発生年3回、甚発生年 3回です。細菌が病原となる本病は難防除病害とされており、様々な要因から発病の軽減 が難しいのが現状です。 そこで、病害虫防除所の平成17年から10年間のデータを基に、新潟地域における近年の 発生状況を踏まえ、防除対策について検討を行いました。 1 近年の発生状況 80 西蒲区)のせん孔細菌病の 70 発生状況は多発生だった6 60 年の発病葉率を図1に示し ました。多発生年の傾向と して7月後半から発病が急 H17 H19 発病葉率( %) 新潟地域(新潟市南区、 H21 50 H23 40 H25 30 増している傾向が見られま 20 す。 10 H26 0 5月前半 5月後半 6月前半 6月後半 7月前半 7月後半 8月前半 8月後半 9月前半 図1 2 せ ん孔 細 菌病 の 多発 生 年 の発 病 葉率 の 推移 発病状況と気象要因の関係 (1)生育期間中の気象要因との関係 一般的に、せん孔細菌病は風が強い地域で雨が多いと発病が多くなると言われてお り 、 和 歌 山 県 で は 生 育期 ( 4 月 下 旬 ~ 5 月 下旬 ) に お い て、 最 大風 速 10m/s以 上で か つ降水量2mm以上の条件を満たす風雨日数と7月中旬の発病葉率に有意な正の相関が 見られたと報告しています。 14 そこで新潟地域での発病 と風雨(アメダス地点:新 津)の関係を見たところ、 7月前半の発病葉率と最大 風速3m/s以上かつ降水量2 12 ( 7 月 前 半 発 病 葉 率 れました(図2)。 新潟県では和歌山県より % ) mm以 上 の 日 数 に 相 関 が 見 ら y = 0.5766x - 4.5506 r = 0.6402* 10 8 6 4 2 0 0 も風速が弱くても、降雨日 数が多いと発病が多くなる ことがうかがわれます。 5 10 15 20 最大風速3m・降水量2mm以上の日数 図2 5 ~ 6月 の 風 雨の 条 件と 7 月前 半 の 発病 葉 率の 関 係 25 (2)収穫後の気象要因との関係 収穫後、秋季の降水量が多いと2次感染が増加し、この時期の感染が越冬細菌量 の増加につながり、翌年春の春型枝病斑が増加すると言われています。 そこで、新潟地域の秋季の降水量と翌年5月の発病葉率の関係を見たところ、9 月 ~ 10月 中 旬 の 降 水 量 3.0 と5月下旬の発病葉率 に高い相関が見られま した(図3)。 2.5 5 月 後 半 発 病 葉 率 y = 0.0104x - 1.57 r = 0.8981** 2.0 1.5 ( 1.0 ) % 0.5 0.0 0 100 200 300 400 500 前年9月~10月中旬降水量(mm) 図3 3 9 月 ~10月 中 旬の 降 水量 と 5月 後 半 の発 病 葉率 の 関係 これらの結果を踏まえた防除対策 (1)薬剤防除 県内のももの防除暦は、せん孔細菌病対策を重点として作成されていますが、せん 孔細菌病が多発生の状態では防除効果も期待できないため、効果的な防除を行うには 初期発生を軽減させることが重要です。初期発生を軽減させるためには春型枝病斑を 減らすことが必要で、秋季の降水量と翌年春の発病程度に関係があることから、秋季 防除の徹底が重要です。特に、秋季の降水が多い場合は、収穫後10月中旬頃まで必ず 定期的に防除を実施します。 (2)耕種的防除 ○春型枝病斑のせん除 春型枝病斑が感染源になるので、病斑の除去 が発病の軽減につながります。4月下旬頃から 病斑のある枝をせん除します。 ○防風対策 今回の調査から、県内平坦地では5~6月は 風速が弱くても7月の発病と関係があることか ら、防風施設の設置は必須となります。 また、この時期の風向は一定方角だけではな いので、防風施設設置方角には注意が必要です。 春型枝病斑 今回はデータの関係から新潟地域の過去10年の検討を行いましたが、今後も発病状況を 踏まえ、県内のせん孔細菌病の発病軽減に向けた取組を進めていきます。 【経営普及課農業革新支援担当 大村 宏和】
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