ニュースバル BL10 における軟X線吸収・反射率分析の環境構築 物質制御計測化学研究グループ TM13B012 植村智之 Peak intensity ratio */ *) TEY normalized at * peak (arb.unit ) … 1. 緒言: ニュースバル(NS)の軟X線ビームラインBL10[1]は,主に極端紫外線リソグラフィ (EUVL)に関する光学素子の反射率評価に利用されてきた。これまで,当研究室は高度研 木下研究室と共同して BL10 の軟 X 線分析環境の構築に取り組み[2-4], 2014 年度は軟 X 線吸収分光(XAS)装置を開発・導入した。一方,反射率装置を備える BL10 はX線反射率 (XRR)測定による薄膜試料の膜質評価も期待できる。本研究では BL10 における軟X線吸 収・反射率分析の環境構築を目的として,新たに導入した XAS 装置の特性評価とともに, 有機薄膜試料の XAS・XRR 計測を試みた。 2. 実験: XAS 装置の特性評価は黒鉛系試料のX線吸収端構造(XANES)の入射角依存 測定で行った。試料は市販の高配向性熱分解グラファイト(HOPG)とカーボンブラック(CB) である。測定は試料電流を計測する全電子収量(TEY)法で行った。XRR 装置を用いた XAS ・ XRR 測定は , シリコン基板上に約 100 nm の膜厚で真空蒸着させた [N,N'-Di(1-naphthyl)-N,N'-diphenylbenzidin], C44 N2H32 (-NPD)薄膜を対象とした。 試料基板に導線を結線することで試料電流を電流計に導き TEY を計測した。測定領 域は CK~OK 端を含む 200~600 eV に設定し,XRR 測定と同時に TEY-XAS を測定した。 入射角()は 5~20°の範囲で変化させた。 XAS ϕ XRR 3. 結果と考察: XAS 装置と XRR 装置の写真を Fig. 1 E E に示す。XAS 装置は XRR 装置の上流約 850 mm の位 θ 置に設置した。測定チャンバーは ICF305の大型フラ ンジを O リングで開閉できる構造とし,試料周りへのアク XAS XRR セスを容易にした。排気速度[800 L/ s]のターボ分子ポ ンプで真空排気し,到達真空度は 10-8 Torr 台である。 SR SR XAS 装置の試料プレートサイズは 25 mm x 75 mm で あり,5 mm 角の試料であれば約20 個を保持できる。試 料バンクには 3 枚のプレートを導入でき,3 本フォークを もつトランスファーロッドでプレートを測定チャンバーに Fig. 1 Photo of XAS and XRR 安定して出し入れできる。試料マニピュレータは 4 軸駆 stations in BL10/NS. 動とし(x, y, z, ),水平面内で HOPG * 2.5 2.0 直線偏光する入射光に対して HOPG / deg * 垂直軸周りに試料回転すること 2.0 = 54.7° 15 1.0 (magic angle) で入射角()依存測定ができ 1.5 90 る 。 XAS 装 置 で 測 定 し た 0 1.0 * * 1.0 CB HOPG と CB の入射角()依存 ϕ/° CB 15 60 0.5 CK 端 XANES を Fig. 2 に示す。 30 75 45 90 配向性の高い HOPGは*ピー 54.5 0 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 ク強度が入射角に対して大きく 270 280 290 300 310 cos2φ Photon energy / eV 変化するが,非晶質の CB は 入射角に依存しない。一般に Fig. 2 Incident-angle-dependent CK-XANES of HOPG and 双極子遷移ではcos2に対して carbon black (left panels). Right panel shows the relationship between the */* peak height ratio and cos2ϕ. 17 Total electron yield (arb. units) *ピーク高をプロットすると直線になるが,本 XAS 装置においても高い直線性が得られた。 以上より,XAS 装置を用いれば XANES による状態分析に加えて配向性評価ができること を確認した。 XRR 装置で同時測定した-NPD 薄膜試料の TEY-XAS スペクトルと XRR スペクトルを Fig. 3 に示す。なお,事前に XAS 装置でこの試料の入射角()依存 CK 端 XANES を測定 し,配向性がないことを確認した。XAS スペクトルでは,CK 端よりも低エネルギー側で干渉 構造が現れ,入射角()に依存する周期と振幅の変化が観測された。CK 端でのX線吸収 が低いこの領域ではX線が膜に深く進入して基板との間で干渉を生じ,この干渉光の強度 変化が試料表面の試料電流に反 α -NPD 映したと考えられる。一方 CK 端よ (a) TEY-XAS 101 CK りも高いエネルギー領域では干渉 NK θ / OK 5° 構造はほとんど観測されず,スペク 10° 15° 100 トル形状は入射角に依存せず同一 20° であった。これから,膜の表面近傍 において深さ方向の化学状態がほ 10-1 200 250 300 350 400 450 500 550 600 ぼ一定であることを確認できた。勿 Photon energy / eV 論この XANES を解析すれば化 (b) Reflectivity 100 学・電子状態分析が可能である。 θ / XRR スペクトルでは,入射角に依 10-2 5° 存した周期と振幅の干渉構造が 10° 15° 10-4 200~600 eV 全域にわたって観測さ 20° -6 れた。この干渉構造を Center for 10 X-Ray Optics (CXRO)の光学シミュ 200 250 300 350 400 450 500 550 600 Photon energy / eV レータで解析した結果,膜厚は Fig. 3 Simultaneously measured TEY-XAS (a) and XRR (b) 103.5 nm となり妥当な結果が得ら spectra of the α-NPD film sample, measured with the incident れた。以上より,薄膜試料の軟X線 angles of 5, 10, 15, and 20°. 吸収・反射率測定から,状態分析と 膜質評価ができることを示した。 4. 結言: BL10/NS における軟X線吸収分析の環境構築を目的として,XAS 装置を開発・ 導入し,その特性を評価した。さらに,XRR 装置による有機薄膜試料の XAS・XRR 同時計 測を試みた。その結果,BL10/NS は軟 X 線を利用した化学・電子状態分析および薄膜試 密度 2400mm-1 の多層膜回折格子がビームライン分光器に導入された。遷移金属標準試料 を用いた分光特性評価から,1100 eVまでの XANESが十分に測定できることを確認した[5]。 これにより,BL10 は 70~1100 eV の領域において XAS と XRR による高度な軟X線分析が 可能なビームラインとなった。今後,軽元素機能材料の研究開発において,BL10 が分析評 価に活躍すると期待される。 [1] T. Watanabe, H. Kinoshita, K. Hamamoto, M. Hosoya, T. Shok, LASTI Ann. Rep., 2, 50-51 (2000). ; [2] 村松康司, 潰田明信, 原田哲男, 木下博雄, X 線分析の進歩, 43, 407-414 (2012).; [3] 村松康司, 潰田明信, 植村智之, 原田哲男, 木下博雄, X 線分析の進歩, 44, 244-251 (2013). ; [4] 植村智之, 村松康司, 南部啓太, 原田哲男, 木下博雄, X 線分析の進 歩, 45, 269-278 (2014).; [5] 植村智之, 村松康司, 南部啓太, 福山大輝, 九鬼真輝, 原田 哲男, 渡邊健夫, 木下博雄, X 線分析の進歩 (submitted). Reflectivity (%) N 18 N ピラー化炭素の合成と細孔の制御 物質制御計測化学 TM13B042 林田 旭弘 Intensity / A.U. 1. 緒言 最近、配位高分子やナノ/メソポーラス材料等ナノサイズの均一な細孔を持つ 多孔質材料が多く合成されており、各種吸着材料やキャパシタ、電池の電極など への応用が期待されている 1)。一方我々の研究室では、シリル化酸化黒鉛の熱分 解により、平均径 0.7nm 程度の比較的均一なミクロ孔を有する多孔質炭素材料 であるピラー化炭素を合成している。ピラー化炭素へは種々の有機分子がサイ ズ選択的に挿入され、ピラー長は約 1.9nm、ピラー間に 0.4nm 程度の隙間がある ことも分かっている 2)。しかしながら、上記のような応用には細孔サイズや表面 特性をさらに精密に制御する必要がある。そこで本研究ではシリル化回数を変 化させることによるピラー密度の制御や、ピラー中に導入する官能基を変化さ せることによる表面特性の制御を試みた。 2. 実験方法 天然黒鉛をBrodie法により5回酸化し酸化黒鉛(GO:C8H3.0O4.7)を得た。これをメ チルトリクロロシランで1~5回繰り返しシリル化し、真空下500℃で5時間熱処理 することでピラー化炭素を得た。(C1(n)-500、nはシリル化回数) 一方、オクチル トリクロロシランでシリル化した後、3-アミノプロピルトリエトキシシラン (APS)でシリル化、同様に真空下500℃で熱処理したピラー化炭素(C8-APS-500)も 合成した。得られた試料は、X線回折測定、77Kでの窒素吸着測定、298Kでの水 蒸気吸着測定等により評価した。また、種々のアルキルアミン(CnN, n=4,6,8)、有 機分子(炭酸エステル等)を前報2)に基づいて挿入した。 3. 結果および考察 Fig.1に1~5回シリル化した酸化黒鉛か ら得られたピラー化炭素のX線回折パタ (E) ーンを示す。1回シリル化のものではピー クが非常にブロードでピラー化炭素が得 (D) られたとは言い難いものの、それ以外の ものには2θ=13.5°付近にピラー化炭素 (C) の(002)回折ピークが見られた。シリル化 (B) 回数が増加するのに伴い幾分層間距離が (A) 増加しているが、これはより密に固定化 2 6 10 14 18 22 26 30 されたピラーが層間を押し広げたためと 2θ/ deg.CuKα 考えられる。これらの試料へアルキルア Fig.1 X-ray diffraction patterns of pillared obtained from GO silylated with ミンを挿入した時の層間距離の変化から carbons methyltrichlolosilane for (A):1, (B):2, (C):3, ピ ラ ー 長 は シ リ ル 化 回 数 に 関 わ ら ず (D):4 and (E):5 times. 1.9nmでほぼ一定だった。一方、最小分子 19 化が見られなかったことから、この試料 の細孔入口径が他のものよりもやや狭 くなっていることが分かった。 Fig.2に各ピラー化炭素の窒素吸脱着 等温線を示す。いずれもⅠ型で比表面積 250 V / cm3(STP)g-1 厚み0.36nmのジエトキシエタン中に浸 漬した際C1(5)-500でのみ層間距離の変 (B) 200 (C) 150 (D) 100 (E) 50 はそれぞれ、78、734、638、323、77㎡/g でありシリル化回数2回のものが最大で (A) 0 0 0.6 0.8 1 P / P0 Fig.2 N2 adsorption isotherms at 77K of pillared carbons obtained from GO silylated with methyltrichlolosilane for (A):1, (B):2, (C):3, (D):4 and (E):5 times. その後減少した。ピラー長が1.9nmで変 化がなかったことを考えると、シリル化 回数の増加に伴いピラー密度が増加す ると近傍のピラー同士が架橋され細孔 が塞がれたものと考えられる。 0.2 0.4 250 V / cm3(STP)g -1 200 Fig.3 に C1(3)-500 と C8-APS-500 の 水 蒸 気吸脱着等温線を示す。どちらの試料に 150 (B) おいてもP/P0=0.1~0.4付近の低相対圧で 100 若干の吸着が起こっているが、高相対圧 側ではC1(3)-500にはほとんど吸着しな 50 (A) かったのに対し、C8-APS-500では急激な 吸着量の増加が見られた。C1(3)-500はピ 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 ラー中のメチル基によって細孔内が疎 P / P0 水化されているが、C8-APS-500ではシリ Fig.2 H2O adsorption isotherms at 298K of (A): C1(3)-500 and (B): C8-APS-500. ル化剤に含まれるオクチル基やアミノ プロピル基が熱処理時に脱離するため、ピラーにヒドロキシ基が導入され細孔 内が親水化されたものと考えられる。またC8-APS-500ではヒステリシスがみら れることから、親水化されたピラー化炭素中で水分子はヒドロキシ基に吸着し てモノレイヤーやクラスター状の形態で安定化されると考えられる。 4.結言 シリル化回数を増やすことでピラー密度が大きく細孔入口径の小さいピラー 化炭素が合成できた。また、シリル化剤を変えることで、ピラー化炭素の細孔 を親水性および疎水性に制御することができた。 5.参考文献 1) H. Nishihara, et al, J. Phys. Chem. C, 2009, 113, 3189-3196 2) Y. Matsuo, et al, Carbon, 2012, 50, 2280-2286 20 姫路城大天守におけるいぶし瓦表面炭素膜の劣化分析 物質制御計測化学研究グループ TM13B058 村上竜平 Normalized intensity (arb. units) Intensity (arb. units) 1. 緒言: 世界遺産姫路城の「平成の大天守保存修理」(2009~2015 年)[1]では,(1) 屋根瓦の葺直し,(2)漆喰の塗替え,および(3)耐震構造補強を実施する。このうち,(1) 屋根瓦の葺きなおしで扱う瓦は「昭和の大修理」時の 1958 年に製造された約 8 万枚の いぶし瓦であり,物理的な割れ・欠けで破損した瓦を除いた 99%の瓦は今回の修理で 再利用される。したがって,いぶし瓦としての今後の耐久性を見込むには,現時点で の劣化状態を知ることが重要となる。いぶし瓦は焼結粘土素地の表面にいわゆる熱 CVD 法で炭素(いぶし)膜を被覆した日本の伝統瓦であり,この炭素膜の劣化状態は 放射光軟 X 線吸収分光法で評価できる[2]。本研究では,姫路城いぶし瓦の炭素膜 の劣化状態を明らかにすることを目的として,放射光軟 X 線吸収分光の他,ラマン分 光,SEM-EDX,マッピング分析等による多角的な劣化分析を行った。 2. 実験: 姫路市城周辺整備室の協力の下,姫路城いぶし瓦を五層天守閣の各層, 東西南北より 1 枚ずつと四層目から方位不明の 6 枚をサンプリングした。各瓦から風雨 日照に曝された表面と曝されていない裏面を各分析手法に適した大きさに切り出した。 試料表面を純水で超音波洗浄した後, 放射光軟 X 線吸収分光,ラマン分光, SEM-EDX,マッピング分析による測定を行った。 3. 結果と考察: (a) 放射光軟 X 線吸収分光[3]: 全電子収量(TEY)法で測定した姫路城瓦の表面 (5EBf)と裏面(5EBb)および新品瓦(new)の X 線吸収スペクトルを Fig. 1 に示す。母材 の炭素による吸収ピークの他に,裏面には酸 CK 素のピーク,風雨日照に曝された表面には酸 CaL OK FeL 素と鉄のピークが顕著に確認できる。またカル シウムのピークもわずかに観測される。このよ うに放射光軟 X 線吸収分光法により,風化に 5EBf よる化学状態変化をとらえることができる。CK 端,CaL 端, OK 端,FeL 端の X 線吸収端構造 5EBb (XANES)および吸収ピーク強度比の解析か new ら,カルシウム,酸素,鉄が新品<裏面<表 面の順に増加するとわかった。これより,風雨 200 400 600 800 日照に曝された表面で劣化が進むことがわか Photon energy / eV った。なお,試料電流を計測する TEY 法の測 Fig. 1 X-ray absorption spectra of Kawara samples (5EBf, 5EBb, new). 定は導電性の炭素膜が瓦表面に被覆されて いることの証左である。このことから,今回の修 G-band D-band SG/BG = 0.199 復で再利用される約 90%の姫路城瓦には炭 1 4EBf 素膜が概ね被覆されていることがわかった。 SG/BG = 0.591 4EBb (b) ラマン分光: 姫路城瓦の表面(4EBf),裏 0.5 SG/BG = 3.081 new 面(4EBb)および新品瓦(new)のラマンスペクト ルを Fig. 2 に示す。なお,532 nm の励起波長 0 2000 1800 1600 1400 1200 1000 で測定し,スペクトル強度は G-band 高で規格 Raman shift / cm-1 化した。試料間で G-band と D-band のピーク Fig. 2 Raman spectra of Kawara samples 位置および G/D 比にほとんど変化はないが, (4EBf, 4EBb, new). 21 (a) 炭素膜が残存していることを確認できる。しかし, S/B 比は大きく変化し,バックグラウンドは表面>裏 carbon films 面>新品の順であった。一般に,酸化グラフェンの ラマン測定では可視光領域に蛍光を発し,これが バックグラウンドの増加に寄与する。また,炭素膜 の減少もバックグラウンドの原因になる。したがって, 姫路城いぶし瓦は風化により炭素膜の酸化や減 carbon films (b) 少が進行し,特に風雨日照に曝された表面でより 顕著な風化が進んでいることが確認できた。 (c) SEM-EDX[4]: 姫路城瓦の断面 SEM 像に exfoliated area SEM-EDX の CKα 線マップで識別した炭素膜部 分を重ねて Fig. 3 に示す。測定した瓦試料の約 10 m 90 %から新品同等の膜厚数 μm の炭素膜を観測 できた。しかし,炭素膜が部分的に剥離した試料も Fig. 3 Cross-sectional SEM images of the Kawara samples. 見られたことから,いぶし瓦の炭素膜は風化によっ Photo TEY-map Raman て徐々に薄くなるのではなく,部分的に剥離すると -map 考えられる。このような剥離箇所から,焼結粘土素 4EBf 地に含まれる鉄成分が瓦表面に析出すると考えら れる。 (d) マッピング分析: CK 端での TEY とラマン分 1 m 光の G-band でモニターしながら試料を xy スキャン して得た姫路城瓦の表面(4EBf)と裏面(4EBb)の 4EBb 強度マップを Fig. 4 に示す。試料外観で黒色化し た箇所は CK 端 TEY マップで強度が低く炭素が部 分剥離しているとみなせる。特に風雨日照に曝さ Fig. 4 Photos, TEY-maps at the CK edge and Raman-maps at the G-band れた表面は TEY 強度が低く,炭素膜が全面的に peak of the Kawara samples (4EBf, 少ないことを確認できた[5]。ラマン分光マップから 4EBb). も,試料外観の黒色化した箇所で G-band の信号 強度が低く,炭素膜が部分剥離していることがわかった。また,表面の G-band 信号強 度が低く,炭素膜の減少と酸化が全面的に進行していることを確認できた。これらのマ ッピング分析結果は,放射光軟 X 線吸収分光,ラマン分光,SEM-EDX 等の微小範囲 での劣化評価と整合する。 4. 結言: 姫路城いぶし瓦の炭素膜の劣化状態を明らかにすることを目的として,この 炭素膜の多角的な劣化分析を行った。その結果,(1)炭素膜は約 50 年間の風化で酸 化されて黒鉛系炭素の層構造が乱れる。(2)残存する炭素膜の平均膜厚は新品時の 膜厚を保持するが,風化により部分的に剥離する。(3)炭素膜の間隙から焼結粘土素 地に由来する鉄酸化物が表面に析出する。(4)これらの状態変化は,風雨日照に曝さ れることにより促進される。しかし,約 90 %の瓦に炭素膜が残存することから,「平成の 大天守保存修理」で再利用される瓦は概ねいぶし瓦として利用できると結論できる。 [1]小林正治, 化学と工業 , 64, 323-325 (2012).; [2]Y. Muramatsu et al., X ‐ Ray Spectrom., 34, 509-513 (2005).; [3]村松康司 et al., X線分析の進歩, 45, 149-171 (2014).; [4]村上竜平 et al., ibid., 45, 173-180 (2014).; [5]村松康司 et al., ibid. (submitted). 22
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