月号 - とくしま産業振興機構

385
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記事
関連 ∼
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県内で活躍する
サテライトオフィス紹介
(第3回)
The
Business
Information
of
県 内 で 活 躍 す るサ テライトオ
フィスの現状や今後の展望をお
届けする本コーナー。第3回とな
る今月号では、三好市にオフィ
スを構える3社をご紹介します。
C ontents
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22
別 冊
徳島の企業
(株)昌栄
経営革新にチャレンジ
千歳産業(株)
徳島大学 技術シーズ紹介
県内で活躍する
サテライトオフィス紹介(第3回)
県事業紹介
商工労働観光部の平成27年度主要施策の概要
レポート
第19回機械要素技術展出展レポート
レポート
創業事業者ステップアップセミナー&交流会
徳島県よろず支援拠点便り
アジア展望
∼上海事務所だより∼
徳島経済産業会館だより
平成27年4∼6月期の景況調査
公益財団法人
とくしま産業振興機構
企業情報
とくしま
8
2015
AUGUST
月号
URL : http://www.our-think.or.jp/
E-mail : [email protected]
株式会社昌栄
本社社屋(店舗・工房)
外食産業から洋菓子作りへ
た。それまで、店舗ではアイスクリー
のことについての知識が乏しいと感じ
ムだけは仕入れたものを使っていた。
ていた社長は、猛然と勉強を始めた。
徳島を代表する洋菓子店の一つであ
もちろん品質の高いものを使ってはい
多くの菓子店がしのぎを削る神戸など
る「イルローザ」を運営する株式会社
たが、出来たてのものの方がおいしい
に視察に訪れたり、セミナー・研修に
昌栄は、昭和51年7月に創業された。
のだということに気づき、早速小型の
参加したりした。
当社は当初から洋菓子店を営んでい
アイスクリームマシンを購入し、自家
たわけではなく、元々は外食産業を営
製アイスクリームの提供を始めた。
じたのは、
その豊富な品揃えであった。
んでいた。昭和54年3月、昭和町の
やがて、厨房で作っているだけでは
店に入って選ぶだけでも楽しく、客も
本社ビル 2 階に珈琲レストラン時計台
あきたらなくなり、本格的に始めたい
喜んでうれしそうに買い物をしている
をオープンし、昭和57年には幸町に
という思いが募り、昭和61年、フラ
のが強く印象に残った。徳島はどうか
時計台ジュニアをオープン。出来合い
ンス菓子とジェラートの専門店「ケー
というと、当時そこまで品揃えが豊富
のものは使わず、手間暇かけておいし
キ・ジェラート・イルローザ」を助任
な店はなかった。
いものを手作りし、評判を得ていた。
橋にオープンした。当時ジェラートの
こういう店が徳島にもあればと考え
朝のモーニングから夜のディナーまで
専門店は都会にも少なく、その先進的
た社長は、昭和63年11月、新しく
レストランを運営する中で、ティータ
な取組がいきなり消費者に受け入れら
できる紺屋町アクティ21の1階に
イムにもお客に来てもらうにはデザー
をオー
れることはないだろうと考えており、 「徳島洋菓子倶楽部イルローザ」
トが重要であると感じており、これも
あくまでも飲食部門にデザートを提供
プンすることを決意した。現在の「イ
極力手作りで提供していた。
することが主目的だった。
ルローザ」の出発点である。焼き菓子
そんな折、岡田昌夫社長は、大阪で
開催されていた食材や厨房機器の展示
会「ホテル・レストランショー」に訪
れる。この展示会で、イタリアンジェ
ラートの実演に出会い、できたての
ジェラートのおいしさに衝撃を受け
2
そんな中、多くの洋菓子店を見て感
企 業 情 報 とくしま 2015.8
No.385
やデコレーションケーキなど、品揃え
豊富な品揃えで楽しめる
店創りを
洋菓子店を始めたものの、菓子業界
で県下一を目指し、一気にアイテム数
を増やした。繁華街の入り口に立地し
ていることから、夜の売上は当然のこ
ととして、老舗の商店が近隣にあるこ
とから昼の売上も上がるであろうとい
お客様のために、社員のために、地域のために
う予測をしての出店だった。
徳島の 企 業
プ型店舗として初となるフジグラン北
予測は当たり、順調に販売量を伸ば
島店をオープン、現在では、徳島、香
した当社は、平成 2 年には昭和町の本
川、淡路に 23 店舗を展開している(内
社ビル 1 階に菓子工房を開設し、増え
インショップ型は 10 店舗)
。
企 業 DATA
代表取締役社長
岡田 昌夫
続ける需要に対応した。
平成 5 年には徳島駅ビルクレメント
店をオープンした。ナショナルブラン
地域の素材を使う意義
ドの店舗をと考えていた運営に対して
昭和町に菓子工房を開設し、店頭に
「徳島の玄関は地元企業が担う」とい
も様々な種類の菓子が並び順調に推移
う強い思いで粘り強く交渉した末の出
していた中でも、経営的にはひとつの
店だった。同年、飲食の店舗を閉店し、
課題を抱えていた。ギフト商品の不在
そのスタッフを菓子工房と販売に振り
である。
分け、菓子部門に注力していくことと
好調な売れ行きを示していた店頭の
なる。なお、残念ながらクレメント店
商品ではあったが、賞味期限の短さか
はその役割を終え、平成27年7月に
らタイミングによっては大量の廃棄を
閉店している。
余儀なくされていた当社にとって、企
業として成功するには安定したギフト
商品が必要不可欠であった。
豊富な品揃えを誇る店内
県下一円への展開を
目指して
会社概要
●会社名:株式会社昌栄
●所在地:徳島市南沖洲5-6-20
(本社)
●創 業:1976
(昭和51)
年7月
●資本金:5,000万円
●従業員数:正社員80名、パート約220名
●電話番号:088-664-1882
●F A X:088-664-1901
●U R L:http://www.ilrosa.co.jp/
Re Born
当社の経営目的は
「お客様のために、
社員のために、地域のために」
。昭和
ギフトというからには「徳島の洋菓
61 年に助任橋店をオープンしてもう
子店」であるイルローザならではとい
すぐ 30 年を迎えようとしており、長
うものが必要だと考えた社長が目をつ
年にわたって経営目的を達成するため
けたのが地域の素材。様々な素材を用
に愚直に様々な取組を続けてきた。当
いて開発が進められ、平成 4 年頃には
初から続く毎月の全社朝礼や定期的な
現在も定番商品となっているポテレッ
販売研修など、当社独特の人財育成へ
ト(鳴門金時を使用)を開発。そして、
の取組が知られている。
平成 9 年には、現在では年間 300 万個
しかし、企業として大きく広がって
以上を売り上げるマンマローザ(県内
きている中で、
店舗、
社員の負担となっ
産の原乳からできた生クリームを使
ている部分も大きいのではないかと考
用)が開発された。
えた社長が今期の経営計画に掲げたの
バブル崩壊以降、繁華街の厳しさが
定番商品となった現在でも、現状に
が「Re Born」。イルローザがさらに
増す中、助任橋店には徳島市内だけで
満足することなく常に改良が重ねられ
新たな段階へ進むためには、ここで一
はなく市外からも多くのお客さんが訪
ており、さらに地域の素材を使った新
度生まれ変わる必要があるという決意
れていた。
商品の開発にも取り組んでいる。社長
が込められている。これまでの取組を
そのような状況に、これまでの飲食
は「余分なものを使っていないシンプ
一度整理し、結果を重視しながらも、
業経営の経験から郊外型店舗展開の可
ルな配合でおいしさを追求している。
社員の負担やコストを減らし、効率よ
能性を見いだした社長は、藍住町に同
これからも、地域の素材、国産の素材
くできる方法はないか見直しを進めて
社初の郊外型店舗をオープンする。
を使い、安心しておいしく楽しめる菓
いくという。
好調に売上げを伸ばし、既存の工房
子作りを追求していく」と語る。
「社員の物心両面の幸福を実現する
では生産が間に合わなくなったため、
という経営目的は経営者にとっては重
平成 8 年 2 月に現在の本社所在地に移
い。しかし、社員が幸せでなければお
転、工房も大幅に強化し、3 月には本
客様に満足なサービスは提供できな
社店舗をオープンした。
い。チャレンジしがいのある課題だ」
県下一円に展開し、当社のお菓子を
と社長は前向きに取り組む。
楽しんでもらいたいと熱望していた社
店舗で提供する商品、サービスと
長は、翌年にかけて松茂、鳴門、阿
いった総合的品質を高め続けながら、
南、脇町、小松島と着々と展開を進め
変化する業界事情に対応して外商・通
ていった。平成 13 年にはインショッ
年間 300 万個以上を売り上げる
「マンマローザ」
販分野での拡大を目指している。
企 業 情 報 とくしま 2015.8
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経営革新にチャレンジ
千歳産業株式会社
-自家製バター製造機の開発-
会社概要
作業工具や測定工具の販売、機械部品加工や
産業用機械の受注生産で培った設計や製造力
で、自社商品である自家製バター製造機を開発し、
販売に乗り出している。
社屋
工場
設計・製造・販売の
トータル企業
現社長の祖父佐々木巌氏が、小松
を蓄積していった。昭和 58 年には、
品調達力と設計から製造・据え付け・
産業用だけでなく、生コンプラント
補修をトータルで行えることから、
の補修やメンテナンスにも事業を拡
単品から量産までの様々な要望に対
大していった。
応可能な企業として発展している。
島市鳳栄町で機械工具を販売する
現在では、機械工具の販売機能と
佐々木商店を始めたのは昭和 26 年
各種機械の設計・製作機能を有して
のことだ。旧国道沿いに販売拠点を
おり、機械工具販売部門では作業工
設け、事業が軌道に乗るとともに、
具、切削工具、電動工具や測定機器
JR中田駅前で穴あけ加工などの加
はもとより、伝導機器、運搬機器や
工に事業を拡大していった。昭和
工作機械を取り扱っている。設計部
34 年の有限会社化を経て、昭和 42
門では、顧客の要望に合わせて計画
年には現在地へ移転して工場・店舗
図(構想図)、組立図、部品図を作
を集結させ、社名を千歳産業株式会
成する。製造部門では、大型の製缶
社として今日に至っている。
加工、機械加工、各種機械装置・搬
工具を製造会社向けに販売する中
4
●会社名:千歳産業株式会社
●代表者:代表取締役社長 佐々木 哲也
●所在地:小松島市中田町字新開 29-2
●電話番号:0885-33-2733
●F A X:0885-32-0869
●設 立:1967(昭和 42)年
●従業員数:34 名
● U R L: http://chitose-net.co.jp/
送コンベアラインの設計・組立等、
で、最初の経営革新といえるのが昭
設計から部品の製作、部品調達、加
和 30 年頃からの旋盤による部品加
工、溶接、組立、据付け、試運転ま
工で、続いてフライス盤での加工へ
での全てのプロセスをトータルで
と展開していった。昭和 40 年代に
行っている。
は、大手製紙会社の輸入機械の修理
このように,当社では、機械工具
ニーズや機械の部分的な取り替え受
販売店として製作用部品を自社内で
注に応えていくうちに機械製作能力
在庫として保持し、スピーディな部
企 業 情 報 とくしま 2015.8
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顧客ニーズに対応するための
設備が揃う
「和」の精神で
オンリーワンを目指す
を長く務めた。
目した。備え付けのステンレス製容
創業者も先代社長も自社製品を持
器に生クリームを入れ、容器の台を
つのが夢で、口癖のように「何かな
電動モーターで上下や左右に揺らし
佐々木哲也社長は 3 代目。平成
いか、何かできないか」
と社員に語っ
てかき混ぜるシェイク方式だ。この
20 年 6 月に社長に就任した。折し
ていたという。アイデアはあっても
方式で生クリームをかきまぜると、
も 2 か月後にリーマンショックが発
資金力が続かないのが中小企業の共
15 ~ 20 分で液体とバターに分離す
生し、受注が激減した。佐々木社長
通する悩みで、試作・販売にまでつ
る。
は「自分の給料を下げるなど、つぶ
なげられなかったのだが、この間の
洗浄の容易さも清潔を維持する上
れないようにする後ろ向きの対策が
悩みは無駄ではなかった。公益財団
で重要な要素となる。当社製品は簡
先決だったが、
「和」の精神で乗り
法人とくしま産業振興機構の経済飛
単に取り外しできる構造を設計し
切った。ここ 2 ~ 3 年で、前向きな
躍ファンドに応募し、採用されるこ
た。複数台揃えれば、洗いながら作
方向に舵を切っている」と苦しかっ
とで、蓄積された設計開発力と製造
ることもできるという省スペース型
た時期を振り返る。
力は、一気に自社商品の開発へと夢
の設計で、使い勝手、効率性を重視
の実現へ突き進んだのである。
したものだ。これは、受注生産で顧
当社の基本理念は、「和」の精神
を第一とし、誠意と熱意をもってあ
客の要望に応えてきた中で蓄積され
らゆるニーズに応え広く社会に貢献
た設計技術だ。小型化で価格も従来
する、ことである。そして、経営方
針には、
1.「社会との和」
「社内での和」「家
庭内での和」を常に考え行動する
自家製バター製造機の
開発
乳業会社への装置納入やメンテナ
タイプの 3 分の 1 から 5 分の 1 程度
に抑えることができた。
設備を使用する側では、製造過程
でハーブやレーズンを加え、自由
ンスの経験、食品関係企業との取引
にアレンジすることが可能なので、
で長年培ってきた食品機械に対する
ベーカリーショップやケーキショッ
3. 信用を高め、環境に調和し、地域
ノウハウを活かす機会が訪れること
プでは自家製バターを使ったオリジ
社会に貢献するオンリーワン企業
になる。町のケーキ屋さんが、コン
ナル商品の販売に活用できる。ホテ
を目指す
ビニの大量生産された洋菓子と競争
ルやレストランでは、パンと一緒に
していることを知った藤田好広常務
自家製バターを添えるバイキング形
が、自家製バターでお店の独自の味
式もできる。
2. 常に向上心を持ち、
「正確」「迅速」
「責任をもって」行動する
の 3 項目を掲げている。
を出せないか、そのための設備をと
発案したのである。
工場内にも基本理念と経営方針が
掲示されている
実験は数十回に及びその結果を
データ取りした。商品温度や外気温
既に市場に出回っていたのは大量
度の違いが製品の味や時間に影響す
に販売することを前提にした大型設
ることもわかった。今後は、10 月
備。佐々木哲也社長は藤田常務の発
に開催される徳島ビジネスチャレン
案を受け入れ、市場情報等を収集し
ジメッセに出品を予定するなど、い
て市場性を検討し、社内協議を重ね
ろいろな展示会に出展して顧客の反
ていく中で、小規模経営でスペース
応を吸収していく方針だ。大きさや
が狭い店舗では、小型で効率性が高
材質の異なる試作品 3 台を完成し、
くて、味が差別化できる設備なら
無料貸し出しも行っている。佐々木
これは、2 代目社長である佐々木
使ってもらえる可能性が高いと昨
哲也社長は「使っていただいた感想
雅敏氏のときにつくったものであ
年 4 月から開発に着手したのであっ
をぜひ聞かせていただき、製品改良
る。家庭のために働き、幸せになっ
た。
に生かしていきたい」と初めての自
てもらうことから出発して、人格と
装置の構造設計の段階では、生ク
社製品の完成で持ち前の設計・製造・
技術を磨くことが顧客のニーズに細
リームをかきまぜる方法が難問だっ
販売力をアピールしていく考えだ。
かく応えられるオンリーワンの会社
た。既存の方法は生クリームをドラ
になれることだと説いた。なお、佐々
ムで回転させながらかき混ぜる方式
木雅敏氏は食品充填機械の大手メー
で、大量に生産する菓子メーカー向
カーである四国化工機株式会社の協
きだ。そこで当社では、カクテルを
力企業グループ共進会の 3 代目会長
作るときのシェイカーの振り方に着
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徳 島 大 学 技 術 シ ー ズ 紹 介
小径穴加工時の切りくず処理の
悩みを解決する工具の開発
徳島大学では、知的財産の確保・管理・利用、共同研究や受託研究の管理
等及び外部資金獲得のための情報収集・発信等、様々な業務を行い、着実な
実績を上げています。本コーナーでは、県内中小企業の皆様に、徳島大学の
研究成果をもっと活用していただけるように、徳島大学の持つ技術シーズを
徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部
先進物質材料部門材料加工システム
み ぞ ぶ ち
避けて通れない
切りくず処理
高品位・高能率穴加工を
可能にする工具
あきら
溝渕 啓
ご紹介します。
要はなく、直接、被削材に加工が可
能であること
②被削材の上面や下面に敷板(捨て
板)の類いを準備する必要はないこ
切削加工や研削加工等の除去加工は
穴加工時の切りくず処理性能を向上
必ず切りくずを生成します。切りくず
させる方法として、図 1 に示すような
は所望の形状を成形する際の材料の不
工具を設計・開発しました。図は硬脆
要な部分として生まれ、切りくずの形
材料(セラミックス、ガラスや石材な
等であり、特筆すべき長所は、切りく
状、
色および大きさ(長さや厚さなど)
どの非常に硬く、衝撃に弱く割れやす
ず排出性の良さにあります。
は被削材、加工法および加工条件に
い材料)への高品位・高能率穴加工を
よってさまざまな姿を現します。切り
可能にした開発工具の一例を概略図で
くずの姿は1つ1つ異なりますが、除
示しています。開発工具は、2 本のス
去加工の抱える切りくずに対する共通
トレート面を持ち、半球形状の先端部
の問題は、切りくずの処理が不適切な
を成しています。被削材の硬さの制約
場合、加工トラブルの原因になること
から、切れ刃として採用した材質はダ
です。加工トラブルとは、工具の折損、
イヤモンド砥粒です。砥粒は、超硬合
直径が小さく、穴深さが深いほど難し
被削材の損傷や工作機械の停止等であ
金のシャフト上に接触しており、ニッ
くなります。
り、切りくず処理を疎かにすれば、加
ケルメッキで固定しました。このよう
市販品工具での一般的な排出方法
工品位、加工能率および加工コストへ
な工具はダイヤモンド電着工具や軸付
は、加工行程と切りくず排出行程を繰
直接的に跳ね返ることになります。
き砥石等と呼ばれています。
り返しながらのステップ送り(工具を
切りくず処理は、除去加工において
重要な要因の 1 つといえ、この処理方
開発工具の特長は、
①別の切削用工具で下穴加工を行う必
と(図 2)
③穴縁のチッピング(微小な欠け)は
ほとんど見られないこと
様々な切りくず排出機能
穴加工において、切りくず排出は、
上下運動しながらの加工)を採用して
います。
法は多々に存在し、それぞれの加工法
に適した処理方法の取捨選択が必要と
なります。いずれの処理方法も目的は
同じであり、加工領域内の切りくずを
ダイヤモンド砥粒をNi 電着
効率よく排出し、優れた切りくず処理
性能を発揮することにあります。
本記事は小生の研究の中から、大掛
かりな設備投資を行うことなく、現状
設備への簡単な解決策で切りくずをス
ストレート面
ムーズに処理できる研究成果(シーズ)
について紹介します。
図 1 開発工具の概略図
6
企 業 情 報 とくしま 2015.8
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ともに排出されることで加工は効率的
なお、開発工具ではスマートフォン
に行えています。チップポケットは切
のレシーバー部のような長穴形状や円
りくず排出機能の 1 つといえますが、
柱形状のような 3 次元形状を加工で
目づまりとこれに起因する切れ味の低
き、硬脆材料の種類および大きさ(た
下や工具折損等に関わってきます。穴
だし、厚さは工具長さに関係するため
加工においては、一時的とはいえ目づ
限界深さをもつ)を問わずに加工でき
まりを生じることは好ましくはありま
ます。
せん。常時、加工領域には切りくずは
図 2 材料の把持の様子
残留せず、切れ味が保たれている方が
良いのです。
「切り屑」から
「切り宝」へ
開発工具では、直径 1mm 以下、ア
開発工具の穿孔部は砥粒をニッケル
スペクト比(穴深さと穴直径の比)10
で固めた砥石といえ、この表面の凹凸
以上であっても、ドリリング送り(被
はチップポケットとして作用し、微量
加工品位・加工能率に影響を及ぼす
削材の上面から下面への一方向の加
の切りくずが堆積します。しかし、2
切りくずは除去加工にとって厄介な存
工)での穴加工を可能としています。
つのストレート面で成す空間はポケッ
在であり、切りくず処理はスムーズに
さらに、ドリリング送りの採用は、ス
トの収容量より大きいため、この空間
行うことが望ましいことは間違いあり
テップ送りに比べ、加工能率を向上で
の切りくずの収容および排出の機能が
ません。しかし、切りくずは加工を阻
きます。
有効に働きます(図 3)
。円筒面にス
害するだけの存在とはいえません。冒
多種多様な穴加工用工具のうち、例
トレート面を設ける解決策で大半の切
頭でも記載したように切りくずの姿は
えば、ツイストドリルは工具本体に 2
りくずは排出でき、他の追加設備は不
1 つ 1 つ異なります。刃物によって材
本のねじれ溝を持っています。このド
要となりました。そして、ドリリング
料の不要な一部が削り取られた際、こ
リル形状は、穴の内部から切りくずを
送りの加工で工具洗浄を行わずとも
の小片は切りくずとして生まれた時の
効率よく排出するために、ねじれ溝と
1000 穴弱の加工は可能であり、工具
状況や成長過程等のいろいろな状況が
穴内面によって囲まれた空間(切りく
損傷状態の観察から加工穴数はさらに
記録されているのです。切りくずを回
ずを排出するためのスペース、切りく
増えそうです。
収し、記録された状況を観察し、切り
くずと上手に付き合うことができれば、
ずの外部への逃げ道)が広くなるよう
しかし、若干の切りくずの付着が見
に設計されています。しかし、この空
え始めており、穴内面に残留する極微
工具と材料の相性や加工の設定条件等
間を広くするとドリルの断面積は減少
量の切りくずが工具の凹凸に堆積して
を知ることができ、高品位化・高能率
し、ドリルの剛性が低下することにな
いると考えられます。現在は、切りく
化への道しるべになります。削り取ら
ります。穴加工用工具を設計する際の
ず付着を抑制するため、開発工具の切
れた材料の声に対して、耳を傾けずに
ポイントは、切りくず排出の空間およ
りくず形状や排出状況等を観察し、洗
廃棄すると「切り屑」ですが、親身に
びドリルの断面積との兼ね合いが重要
浄フリー機能をもつ工具開発に向けて
声を聞けば、利をもたらしてくれる存
となるのです。
研究を継続中です。
在に変わり「切り宝」となるのです。
4
4
開発工具においては、切りくずがス
ムーズに排出できるための切りくず排
工具の移動方向
出空間の大きさやストレート面の位置
などの検討を試行錯誤で行った結果、
図 1 に示すような形状に至りました。
工具
切りくず
洗浄フリー機能をもつ
工具開発を継続
主軸回転方向
切りくず
材料
また、通常の研削加工に用いる砥石
の表面には隙間や窪み(チップポケッ
切りくずの流れ
ト)が存在し、切りくずは一時的にこ
のポケットに収容され、適宜、砥粒と
図 3 切りくず排出の概略
企 業 情 報 とくしま 2015.8
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第 3 回
県内で活躍するサテライトオフィス紹介
政府の掲げる「地方創成」~都市から地方への新しい人の流れを生み出す先進事例として注目を集
めているとくしまサテライトオフィスプロジェクトについて、本誌3月号で概観したとおり、現在、様々な
事業者が、県内4つの市と町でそれぞれの活動を展開しています。本コーナーでは、徳島で活躍するサ
テライトオフィスの個々の取組や今後の展望などをご紹介しています。
第3回となる今回は、三好市で事業を行っている3事業者を紹介します。
三好市は、徳島市から高速道路を
用する事業計画を持った県外からの
使用して約 1 時間強の山間部にあり、
移住者を含むサテライトオフィスの
四国のほぼ中央に位置することから
進出も進んでいます。また、市街地
古くから「四国のへそ」と呼ばれて
では廃業した旅館をオフィススペー
います。池田町ではたばこ産業等で
スとして活用し、事業を展開してい
栄えていましたが、ここ近年は人口
る企業も見られます。
も減り過疎化が進んでいます。
そのような中、廃校となった山間
部の小学校を市が中心となって活用
三好市
今回は、山間部の自然と街を活か
したサテライトオフィスを展開する
3 事業者を紹介します。
する事業を進めており、廃校を利活
株式会社あしたのチーム
開設地:三好市池田町
東京本社:東京都中央区
開設時期:平成 25 年 3 月
URL:http://www.ashita-team.com/
データ入力とサポートを集中処理
ルを磨いてもらっています。また、自
当社が提供しているのは、人事評価制
など、やる気に対するサポート体制も
度の導入と運用です。東京本社や大阪を
充実させています。異動希望は自由に
はじめとして、営業拠点が国内外に9拠
出せるので、やる気次第で地元を出発
点あり、ここサテライトオフィス三好ラ
点として様々なキャリアプランを描く
ンドでは、その営業拠点から送られてく
ことも出来ます。
るデータの入力業務や、システムに関す
地域の活性化に向けて
当社は今年度、三好市のサテライト
地域に仕事の場を増やす
オフィス誘致事業の委託を受けて、UIJ
方が目標を設定する際に、その内容を添
三好市では、正社員として就職しよう
います。当オフィスのほとんどが地元
削し具体的なアドバイスをする業務も一
とするとまだまだ数が少なく、特にバッ
出身で、U ターン者もいることから、
括して行っています。
クオフィス業務でとなると、ほとんど無
一度地元を離れていたからこそ分かる
いと言っても過言ではありません。
地域の魅力を十分伝え、セミナーや視
る質問に回答するサポート業務を行って
います。また、被評価者である従業員の
これまで各営業拠点で行っていた
8
己研鑽のための書籍購入等を補助する
ターンセミナーや視察研修を開催して
バックオフィス業務を、ここ三好市で
当社では今年もさらに2名の増員を予
察研修に参加された方々を巻き込みな
すべて行うようになったのはこの5月
定しており、募集を進めているところです。
がら、地元の活性化に貢献できればと
からで、スタッフも今年新たに採用し
国内外9拠点の営業活動が広がるにつれ
考えています。
本来業務がバックオフィ
た地元出身の2名を含めて7名の体制
て、ここで行う業務量も増加していきます。
ス業務なので、本業ではなかなか地域
で進めています。新入社員には、本社
少しずつではありますが、地元で仕事が出
との関わりを持ちにくい部分がありま
での研修や3ヵ月に一度のテストを含
来る環境を整える一助となり、地域活性化
すが、これからはもっと地域との関わ
む社内教育制度を通してビジネススキ
につながればと考えています。
りを増やしていきたいと考えています。
企 業 情 報 とくしま 2015.8
No.385
NPO法人てヲとる(株式会社クリップインターメディア)
開設地:三好市池田町
東京本社:東京都墨田区(クリップインターメディア)
開設時期:平成 26 年 5 月
URL:http://www.ub1.jp/
http://clip.jp/(クリップインターメディア)
地方の課題、都市部の課題
地方の素材を活かす拠点として
い様々なレイヤーにいるクリエイティブな
地方にはどうしても多様性・創造性と
三好市は四国の真ん中に位置し、馬
せることで、クリエイティブを最大化して
いった部分が少ないのですが、編集されて
場小学校は池田駅も近いということが
いない生の素材は非常に豊富にあります。
あり、可能性を感じました。地域の素
逆に都市部では、いわゆるクリエイターと
材も良いものがありますし、その地の
言われる人たちがクリエイターとしての
利を活かして三好市だけではなく四国
業務で食べていけない現状があります。
の素材を活用することも考えています。
スキルを持った人たちをつなげて組み合わ
新しいものを生み出していきたいです。
じっくりと取り組む
宿泊設備を備えた拠点では、4月から
そのような環境の中、クリエイター
拠点として整備することで、都市部か
AirBnB(宿泊希望者と宿泊場所提供者を
を地方に連れて行き、地方の素材を活
らクリエイティブな人を招き、地域の埋
ネットで結ぶサービス)に登録し、クリ
かして作品を作る活動を行ってきまし
もれているクリエイターとのつながりを
エイター限定で宿泊施設として提供して
た。その活動を地元の若手が続けて欲
作り、埋もれている素材を活用して製品・
います。また、酒粕コーヒーなど新たな
しいと考えていたのですが、なかなか
サービスの創造を促進していきます。
商品も生まれて来ていますので、それを
続かないという状況がありました。
いわゆるクリエイターと言われる人た
事業化できる営利事業会社の立ち上げも
そこで、クリップインターメディア
ちだけではなく、料理人、農家の人、職人
予定しています。こういった取組は一朝
のサテライトオフィスとして進出した
さんなど本人がそうと思っていないだけで
一夕で出来るものではないので、継続さ
馬場小学校を活用して、常設の活動拠
クリエイティブなスキルを持っている人は
せる仕組みをしっかりと作り、じっくり
点を作ることにしたのです。
たくさんいます。普段は交流することがな
と取り組んでいきたいと考えています。
株式会社ハレとケデザイン舎
開設地:三好市池田町
開設時期:平成 26 年 4 月
URL:https://www.facebook.com/haretokedesign
自然の魅力
人との出会い
人のつながりのハブとして
東京でデザイン会社に勤め、アート
起業後、サテライトオフィスであり
現在、小学校の 2 階を利用して宿泊
ディレクターやクリエイティブティレク
休廃校の利活用、I ターンなどという
施設を作っています。音楽やアート、イ
ターとして企業のブランディングなどを
こともあり、さまざまなメディアに、
ンテリアデザイン、英語など様々なスキ
行っていました。そんな折、当時の上司
学校での事業のことや移住について、
ルを持った人たちとのつながりを活かし
から三好市の廃校利用やサテライトオ
イベントの内容などを取り上げていた
て、イベントや教室ができるような体制
フィス誘致の取組を聞き、何度か三好市
だき、県内外の方々とのつながりがで
を整えられればと進めています。例えば、
を訪れました。当時 2 才だった息子は気
きました。
とくにイベントについては、
豊富な自然を活かして、アウトドアのス
管があまり強くなく、夜は咳に悩まされ
家族や若者の楽しめる催しを意識し、
ペシャリストの方の指導のもと、山や川
ていたのですが、こちらに来るとぐっ
にぎやかになりつつあります。素晴ら
といった自然を体験しながら、その良さ
すりと眠っていたことから、子育てす
しい人材との出会いも濃く、学校に似
と危なさを知ってもらい、自然とはどう
る環境としても魅力を感じました。デ
合うスキルを持つ方々が集まり、また
いうものであるのかを親子で知るイベン
ザインという仕事はどこでも出来る部
地元のみなさんも伝統からちょっとし
トも考えています。
分が多く、また、勤めていたデザイン
た趣味まで提供してくださって、さま
地域の人、地域外の人、いろいろなスキ
会社からも協力いただけるということ
ざまな文化を共有できるようになりま
ルや想いを持った人がいて、本当の学校の
で、デザインを軸とした事業計画を立
した。
ようにいろんな時間にいろんな人が出入り
てて三好市に移住し起業しました。
できる環境が作れたらと考えています。
企 業 情 報 とくしま 2015.8
No.385
9
県 事 業 紹 介
商工労働観光部の
平成27年度主要施策の概要
平成27年度に措置されました予算から、商工労働観光部の主要施策の概要を紹介させていただきます。
なお、
「商工労働部」を改組し、本年5月1日から「商工労働観光部」としてスタートしたところであり、これま
で以上に「戦略的な観光行政」に取り組んでいきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
県予算
(全体)のポイント
雇用対策」や「地方創生」のスタート
た施策展開を加速していくこととされ
ダッシュとなる事業が盛り込まれまし
ております。
た。さらに、「骨格予算」を「肉付けし
今年度は、統一地方選挙の関係等か
て通年予算」とする「6月補正予算」
ら、3段階の予算措置がされました。
については、「とくしま新未来」の実現
まず、当初予算は、「骨格予算」と
に向けた第一歩を踏み出し、県民の皆
して編成され、人件費等の義務的経費、
様に実感していただけるよう各種事業
継続的な事業及び年度当初の執行に支
をしっかり盛り込み編成されました。
障を来さないための事業について予算
計上されました。
商工労働観光部の主要施策
こうしたなか、商工労働観光部で
は、施策体系を5つのアクションに
これらの予算と合わせて、
「
『とくし
分類し、それぞれの施策を国や市町
ま地方創生・元年』予算」とし、「地
村・商工団体等と連携し、推進して
次に、2月議会の最終日に提案され
方創生のモデル」ひいては、「日本創
いくことで、県内経済及び雇用環境
ました平成26年度2月追加補正予算
生」の礎を徳島から築いていくんだと
の確かな回復を実感あるものへと取
では、国の「地域活性化・地域住民生
いう強い気概、そして誇りを持ち、本
り組んでいきたいと考えております
活等緊急支援交付金」を活用し、県内
県の取組をもう一段高い次元へと進化
ので、そのアクションごとに主要施
景気の一日も早い回復を図る「経済・
させ、「県民目線・現場主義」に立っ
策を紹介していきます。
(単位:千円)
ActionⅠ 強みを活かした成長産業の創出・集積
~「徳島ならでは」の産業を創出し成長する経済~
①企業立地促進事業費補助金 1,151,000
地域経済の活性化、雇用創出につなげるため、補助金等、
優遇制度の活用により、企業立地及び本社機能移転の促
進を図る。
新 光ブロードバンド環境活用事業
②○
80,000
徳島県が誇る光ブロードバンド環境を活用し、テレワー
クの推進及び4K関連企業の集積を図るため、テレワー
クセンターの実証事業やコンテンツの 4K ライブ中継な
どを実施する。
光ブロードバンド環境活用事業
10
企 業 情 報 とくしま 2015.8
No.385
県事業紹介
③健康・医療クラスター
ステージアップ事業 53,000
「とくしま『健幸』イノベーション構想」に基づき、健康・
医療関連産業創出と糖尿病克服に向けた取組みを加速化
するため、研究開発と成果の事業化を推進する。
新 徳島クリエイティブ産業
④○
育成プロジェクト事業 19,300
クリエイティブ関連企業の創業・集積を促進し、クリエ
イティブな力の活用を図るため、4Kアワードの開催や
産学官が連携したワークショップを実施する。
新 ロボット関連産業
⑤○
創出モデル事業 2,500
クリエイティブ産業育成プロジェクト事業
ロボットテクノロジーの実用化を推進するため、産学官
のコンソーシアムを創設し、本県のものづくり技術を集
結することにより、介護分野等におけるロボットの技術
開発を実施する。
新 新市場を拓く農商工
⑥○
連携モデル創出事業 1,500
農商工連携による新たな市場を開拓するため、農業分野
への県内ものづくり企業のさらなる進出や、「藍」を活
用した新たな製品開発技術の創出を推進する。
ロボット関連産業創出モデル事業
ActionⅡ 観光交流人口の拡大による地域活性化
~観光施策の推進により人が行き交い賑わう経済~
新「ふるさと旅行券」
①○
発行事業
新「ふるさと名物商品」
○
購入助成事業
298,964
宿泊観光の増加と県産品の消費拡大による地域活性化を
図るため、
「ふるさと旅行券」の発行、
「ふるさと名物商品」
の販売支援を行う。
③コンベンション誘致促進事業 30,350
本県への交流人口の増加を図るため、コンベンション開催
費助成に加え、多くの参加者が見込める全国大会等に対す
る会場使用料助成により、積極的なコンベンション誘致を
行う。
新 vs東京とくしまにぎわい
②○
戦略事業 36,090
国内外からさらなる観光客を誘致するため、
「マチ★アソ
ビ」
「国際アニメ映画祭」
、
をさらに充実し、
その魅力を海外
に向けて情報発信を行う。
また、
関西方面からの誘客を促進
するため、
大鳴門橋開通30周年記念イベントを開催する。
新 vs東京
④○
「おどる宝島!とくしま」
キャンペーン事業 14,500
本県への宿泊者数のさらなる増加につなげるため、「おど
る宝島!パスポート」の充実を図るほか、キャンペーンブ
ックの作成など、観光誘客を強力に促進する。
企 業 情 報 とくしま 2015.8
No.385
11
県 事 業 紹 介
⑤阿波おどり振興費 22,772
徳島が世界に誇る伝統芸能であり、本県最大の観光資源で
ある「阿波おどり」を活用し観光誘客を図るため、「春の
阿波おどり」として親しまれている「はな・はる・フェス
タ」や徳島市の「阿波おどり」の運営等に対し支援を行う。
新「阿波おどり大絵巻2015“秋”」
⑥○
開催事業 5,700
本場の阿波おどりで「徳島」を強力に発信し、年間を通
じた阿波おどりのフル活用による誘客促進を図るため、
秋の阿波おどりイベントを実施する。
⑦「とくしま県産品振興戦略」推進事業 7,600
県内での消費拡大と大都市圏での認知度向上を図り、県産品の振興による
地域産業の活性化を促進するため、アンテナショップを活用した市場調査
の他、県産品利用キャンペーンなどを実施し、情報発信の強化を図る。
ActionⅢ とくしまグローバル戦略の加速化 ~国際社会に対応し海外市場で稼ぐ経済~
新 世界へ飛躍!県内企業
①○
グローバル展開支援事業 57,819
グローバルに展開する企業を育成し、県内経済の活性化
につなげるため、新規市場の開拓や東アジア・東南アジ
アでの国や地域に応じた販路開拓支援を実施し、県内企
業の海外展開を推進する。
新 徳島の魅力発信!
②○
インバウンド推進事業 37,000
本県の魅力を発信し、インバウンドを推進するため、台湾
での徳島インディゴソックスの試合に合わせ、四国遍路や
アニメ、マラソンの魅力を発信するほか、専用ホームペー
ジの開設によるハラール圏への情報発信等を行う。
12
グローバル展開支援事業
新 外国人観光客倍増推進事業 31,750
③○
新 とくしまマラソン海外PR事業 30,000
④○
訪日観光への追い風を取り込み2020年までの外国人
延べ宿泊者数10万人を達成するため、東アジア、東南
アジア、ミラノ万博等において現地プロモーションや情
報発信を強力に展開する。
海外からの誘客を促進するため、「とくしまマラソン」の
魅力を盛り込んだアニメ動画を製作し、国内外に向けてP
R活動を実施する。
新 海外アンテナショップ開設事業 3,900
⑤○
新 地域グローカル人材育成事業 6,300
⑥○
世界に羽ばたく県産品として、海外における県産品の認知
度向上と販路拡大、本県への観光誘客に繋げるため、海外
アンテナショップの設置等を行う。
県内企業のグローバル化を図るため、経済団体、県内企業
や高等教育機関との協働により、学生の海外留学や国内外
インターンシップ活動を支援し、県内就職へと促す事業を
実施する。
企 業 情 報 とくしま 2015.8
No.385
県事業紹介
ActionⅣ 頑張る企業に対する効果的な経営支援
~活発な創業が起こり事業者が持続成長する経済~
①中小企業振興資金貸付金 21,449,000
新 地域経済振興支援事業 675,000
②○
消費税増税後の消費低迷の長期化や円安による原材料価格
の高騰等、厳しい状況が続く本県経済の実状を踏まえ、中
小企業向け融資制度において、「経済変動対策資金」など
の融資条件の改正を行い、県内中小企業の資金繰りの円滑
化を図る。
消費を拡大し、経済の好循環を図るため、プレミアム20
%を含む総額48億円の地域商品券を市町村・商工団体と
連携して発行する。
③徳島県地域産業活性化事業
(オンリーワン補助金) 43,359
④創業促進・あったかビジネス
支援事業 16,000
商工業の健全な発展を図るため、商工団体が行う経営改善
普及事業及び連携組織支援事業等に対して助成を行う。
独自の技術や経験等を活かした創業の促進を図るため、県
内で新たに創業する者等を対象に事業計画を認定し、関係
機関と連携して各種支援を行う。
新 女性の創業
⑤○
トータルサポート事業 2,000
女性の起業・創業による地域経済の活性化を図るため、女
性を対象にした起業・創業のための講座開催や創業間もな
い女性経営者への専門家派遣制度を設ける。
⑥とくしまBCP策定支援事業 1,000
「南海トラフ巨大地震」に対し、県内企業の事業継続力及
び災害対応力向上を図るため、「事業継続計画(BCP)」
の策定段階に応じたきめ細やかな導入支援を行う。
ActionⅤ 産業人材の育成と確保 ~多様な人材が能力を発揮して活躍する経済~
新 女性の力で経済飛躍推進事業 3,000
①○
人口減少に対する最大の潜在力である「女性の力」を発揮す
るため、働く女性応援に係る取組みやファミリー・サポート・
センターの機能強化を行う。
新 テクノスクール・
③○
デュアル訓練事業 2,500
若い頃からの「ものづくりに誇りを持てる職業観」の育成を
図るとともに、ものづくり産業界に対して実践力を持った産
業人材の供給を行うため、テクノスクールでの職業体験や産
業界と連携した実践的な現場作業訓練を実施する。
新 徳島版マイスター制度創設事業 2,000
⑤○
「技能」と「誇り」を持った人材を供給するため、ドイツ・
ニーダーザクセン州職業訓練センターと「産業人材育成に
係る交流協定」を締結し、徳島ならではの職業訓練システ
ムである「徳島版マイスター制度」を創設する。
新 未来の若い力育成・確保事業 3,000
②○
雇用のミスマッチによる若者の早期離職を防止するため、
インターンシップや企業見学会等により職業観の育成を図
るとともに、四国4県が連携し、県外大学生等のUIJタ
ーン就職を促進する。
新「ICTママ」
④○
養成事業 2,500
自営型テレワークの普及を図るため、
「ICTママ(ママテ
レワーカー)
」の養成を行うとともに、
「ICTママ」が活
躍できる仕事を創出するテレワークコーディネーターの育
成を行う。
新 テクノスクール
⑥○
障がい者雇用促進事業 1,000
ハナミズキ西部サテライト利用者、特別支援学校生等の障
がい者の就労を支援するため、西部テクノスクールにおい
て就労現場に沿った作業体験を実施する。
企 業 情 報 とくしま 2015.8
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13
レ ポ ー ト
日本ものづくりワールド2015
第19回機械要素技術展 出展レポート
することができ、会場一番手前の入口
である東 4 ホール出入口を入ってすぐ
の通路に面して設営しました。
アンケートの結果、ほとんどの出展
企業がポイントを置いていたのが、
『自
社の PR』『取引の新規開拓』
『情報収
集』あり、これらに関して「新規見込
顧客が獲得できた」「知らない高度な
技術が見られて見聞が広がった」
「関
東方面の大手企業とのつながりが出来
た」など、有効に活用していただけた
のではないかと思います。
徳島県ブースの様子
機械要素、加工技術を一堂
に集めた専門技術展
関する加工技術を一堂に集めた専門技
術展であり、毎年、設計・開発、製造・
生産技術部門を中心とした製造業ユー
ザーが多数来場し、出展企業との商談
第 19 回機械要素技術展が、平成27
が行われています。
年6月24日(水)~26日(金)の 3 日 間 に
わたり、東京ビッグサイト(東京国際
展示場)において開催されました。
機械要素技術展は、世界有数の「も
(表 1)
県内企業の出展支援
のづくりの専門展」として知られて
いる「日本ものづくりワールド 2015」
旺盛な海外からの出展
当機構では、ものづくり中小企業
の一環として開催されており、「第 26
支援プロジェクトの一環として、小間
今回は、海外から国・地域単位でま
回設計・製造ソリューション展」「第
料金の一部や装飾費を負担し「徳島県
とまって出展している所が多く、
中国、
23 回 3D& バーチャルリアリティ展」
ブース」を設けることで、本展示会へ
韓国、台湾といった東アジア地域だけ
「第 6 回医療機器開発・製造展」が併
の出展支援を行っています。今回は、
でなく、タイ、マレーシアなど東南ア
せて開催されました。今回も、東京ビッ
初参加の 2 社を含む 10 社(表 1)が出
ジア地域からの出展も例年に比べて増
グサイト東ホール全体と西 3 ホール・
展し、部品・完成品等の展示や自社の
加していました。また、単独で出展し
4 ホール(総面積 62,900㎡)を利用し
PR、情報の収集を行うなどしました。
ている企業も多く、欧米企業まで含め
て開催され、国内企業はもとより世
本展示会では、製品カテゴリーごと
て世界中からたくさんの企業が出展し
界 18 カ国・地域から過去最多の 2,253
に専門フェアが特設されており、機構
ていました。「日本語 OK」という札
社が出展し、3 日間の来場登録者数は
部品・関連製品フェア、微細・超精密
とともに通訳を置いているブースがほ
81,469 名に上り、各所で製品の比較検
加工フェア、ねじ・締結技術フェア、
とんどで、国内企業と熱心に商談して
討や課題の技術相談などが活発に行わ
接合・溶接・切断フェアなど、計 18
いる姿があちこちで見られました。
れました。
分野の出展がありました。今回、徳島
本展示会は、軸受、ベアリング、ねじ、
ばねなどの機械要素や、金属、樹脂に
14
出展企業名
株式会社アスカ
阿波スピンドル株式会社
有限会社クールテクノス
株式会社齋藤鉄工所
株式会社シンテック
徳島カム株式会社
徳真電機工業株式会社
中道鉄工株式会社
西精工株式会社
森田技研工業株式会社
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
企 業 情 報 とくしま 2015.8
No.385
また、来場者にも外国人が多く見られ、
県ブースは最も面積の広い機械材料・
取引・競争ともにグローバル化が進んで
加工技術フェアのエリアの一角に出展
いるということが実感されました。
レポート
術を徐々に文書化したりといった今す
ぐ出来るような取組については、実行
してみてもいいかもしれません。
展示会出展・参加の
おすすめ
広範囲な販売チャネルや大規模な営
業組織を持っていない中小企業にとっ
て、広い範囲から数千人、数万人とい
うお客が集まる展示会はまたとない
海外ブースの増加が目立った
チャンスです。
当展示会に限らず、日本各地で様々
3D技術の進化
り企業の課題の一つとしてあげられる
な展示会が開催されています。内容を
のが技術承継問題です。
この問題には、
よく検討し、自社の方針に合致するも
豊富な経験に基づく高度な技術力を持
のがあれば、販路拡大や情報収集など
つ団塊の世代の退職、失われた 20 年
明確な目的を持って、積極的に活用し
本 展 示 会 や 併 催 さ れ て い た 3D&
の影響を受けた中堅技術者の不足、技
てみてはいかがでしょうか。また、出
バーチャルリアリティ展では、3D 技
術を伝達するシステムの不在など様々
展には至らなくとも、一度参加してみ
術を活用した製品・サービスが数多く
な要因があります。
るだけでも大いに刺激を受けられるの
見られ、その技術も年々進化してきて
これに対する解決策の一つとして、
ではと考えています。
います。3D プリンターでは、小型
ICT 技術を活用した展示が多く見ら
新商品を展示会に出展をされる場合
でも高性能なものから大型のものまで
れました。文書作成管理システムを利
には、出展にかかる費用の 1/2 を助成
様々な種類が出そろい、従来より高速
用して、技術マニュアルの作成・更新
するとくしま経済飛躍ファンドの展示
に造形できる技術も出てきています。
を確実に行うソリューションは以前か
会等出展支援事業を利用していただく
造形材料としては樹脂系のものだけで
らもありましたが、この分野でも今年
ことも出来ます。ご相談は随時受け付
なく、金属系の材料が使える製品も登
は特に「技術の伝承」という部分に重
けておりますので、お気軽にご相談く
場するなど、応用の幅が広がってきて
点が置かれていました。また、特に面
ださい(電話:088-654-0102)
。
います。また、物体をスキャンしてモ
白いと思ったのは、ベテラン技術者の
デリングデータのベースを作る3D ス
視点で撮影した映像データを元に、3
キャナーも小型化・自動化が進み、様々
D 映像を見られるゴーグルをつけての
な製品がデモを行っていました。3D
研修が行えるシステムで、ベテラン技
設計では、部品設計はもとより、工場
術者がどういう視線の動きをしている
の全体ラインを容易に作画するシステ
のか、手元でどのようなことをしてい
ムも紹介されていました。
るのかが、技術者の視点からリアルに
3D 技術はこのように日進月歩で進
体験できるというものでした。実際に
化して来ています。実際に企業として
作業している目線での映像は非常に良
使用するには問題があると考えている
いマニュアルとなり研修に使用するこ
方も多いとは思いますが、こういった
とができ、さらに、そのデータは「技
新しい技術の可能性に直に触れられる
術の伝承」という点で、企業の資産と
のも展示会に出展・参加する意義の一
なっていきます。
つではないでしょうか。
出展者と来場者の熱気があふれる
もちろん、これらのシステムを導入
するにはコストがかかり、すぐに採用
ICT技術による技術承継
できる企業は限られます。しかし、3
D 映像とまでは行かなくても、例えば
通常のビデオカメラで技術者の作業を
撮影して随所にベテランのコメントを
企業規模の大小を問わず、ものづく
残し簡易的なマニュアルにしたり、技
会期中途切れることなく来場者が訪れた
企 業 情 報 とくしま 2015.8
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15
レ ポ ー ト
創業事業者ステップアップセミナー
及び交流会を開催しました
徳島県と公益財団法人とくしま産業振興機構は、去る7月6日(月)、ホテルサンシャイン徳島において、
「創業事業者
ステップアップセミナー及び交流会」を開催しました。
これは、
「創業間もない事業者間の交流の機会を設けてほしい」との多くの声にお応えするため、徳島県信用保証協
会の共催、
AWAおこし隊※による後援を得て、初めて企画・実現したものです。
当日は、
100名を超える参加者があり、マスメディアによる講演やお互いのPRなどが行われ、事業者間のみならず、
事業者と支援機関との間においても交流が深められました。
以下、概要を報告します。
※AWAおこし隊
創業に関するワンストップ支援を目指して、徳島経済産業会館に入居している5機関
が連携し、平成26年7月に発足。
徳島県信用保証協会、徳島商工会議所、徳島県商工会連合会、徳島県中小企業団体中
央会及びとくしま産業振興機構の創業担当者で構成。
互いの連携を強化するため、定期的な情報交換や支援事業の相互協力を行っている。
ねらいは
①創業された方や創業を予定されている方に対し、事業活動に役立つスキルを紹介し、
事業のさらなるステップアップにつなげてもらう
②事業者間の懇親を通じて、異業種とのコラボレーションや共同事業などの促進を後押しする
今回集まっていただいた方は
①業者や第二創業者を支援するために国の予算を原資として平成25年3月から募集開始された、
いわゆる「創業補助金」の採択者の方(徳島県内で事業所を開設)
②徳島県特有の資源や個人のユニークな能力・経験等を活かした優れた創業計画として
県や関係機関が支援する「あったかビジネス」に認定された方
③創業予定者や創業者とのマッチングを図りたい方
④創業を支援する金融機関や公的機関の関係者
なお、①については、これまで161件の方が採択され、②については、
155件の方が認定されています。
第1部
ステップアップセミナー
今回テーマとなったスキルは「マスメ
ディアの活用術」
。講師として、徳島新
聞社、四国放送、エフエム徳島、エフ
エムびざん、あわわ、メディコムの各社
にお願いしました。
それぞれ、マスメディアとしての特性
に違いがあり、有料広告掲載の手続き、
取材として掲載されるためのアプローチ
など、事例をまじえながら、各媒体の活
第1部 ステップアップセミナー
16
企 業 情 報 とくしま 2015.8
No.385
レポート
用術について講演いただきました。
概要としては、次のとおりです。
①徳島新聞社の板東貴之氏からは、各
紙面での取扱内容の特徴や、行事等
をプレスリリースしたいときの様式につ
いて
②四国放送の筒井義典氏からは、テレ
ビCMの作成例や、ローカルワイド番
組「ゴジカル!」への出演事例につい
て
③エフエム徳島の平野芳朗氏からは、
ラジオ広告を戦略的に使う時の具体
的な方法について
④エフエムびざんのそわゆうじ氏から
第2部 交流会
は、事業者がアピールすべきポイント
について
た事業者の特徴を元に、各テーブルを
⑤このような交流会の開催について、回
飛び越えて多くの事業者が活発に交流
答者の全員が、
「今後も、このような
⑤あわわの小山亜紀氏からは、自社の
する様子が見られました。第1部で講師
交流会の開催を希望する」との回答
発行する各冊子の特徴と、事例をも
をしていただいたマスメディアの方々に
でした。
とに掲載記事の内容について
も参加いただいておりましたので、中に
はその興味を引く事業者も見受けられま
⑥メディコムの亀城尚史氏からは、販売
エリアや販売店舗、販売部数を明確
にしている自社の特徴をアピールしな
がら、発行している各冊子の紹介
その後の質疑応答でも、
「今までの取
した。
最後に、今回の事業に関してアンケー
トを記入いただきました。
その結果として、
①第1部のセミナーについては、回答者
以上のように、今回の事業について、
概ね好意的にとらえていただきました。
また、個別のご意見として、今後へ
の期待も含め、次のような回答もいただ
いています。
①第 1 部のセミナーについては、マスメ
材経験の中でどのような取材が一番心
の 91%の方が
「期待したより良かった」
ディア 1 社当たりの時間が 10 分程度
に残っているか」など、興味深いお話を
または「期待どおりだった」との回答
と短かったこともあり、もっと深い内
いただきました。
でした。
容を聞きたかった。
②また、回答者の 82%の方が、
「今後
第2部
交流会
も、このようなセミナーの開催を希望
する」との回答でした。
②第 2 部の交流会については、異業種
との交流ができて良かった。
との回答をいただきました。
③第 2 部の交流会については、回答者
最後になりましたが、初めての開催に
交流会では、マッチングのヒントとな
全員が「期待したより良かった」また
もかかわらず、多くの皆様のご参加をい
るように、事業説明の「30秒アピール」
は「期待どおりだった」との回答でし
ただきありがとうございました。
を皆さんの前でしていただき、特徴を喧
た。
今後も、関係支援機関の皆様のご協
力をいただき、機会を捉えて、このよう
伝していただきました。
今回の参加者には、事前に自分の行っ
④交流会により、期待したマッチングを
ている事業内容と、どのようなマッチン
図ることができたかについては、回答
グを図りたいかを記入していただいてお
者の 95%の方が
「期待したより良かっ
り、配布した名簿にもその内容を記して
た」または
「期待どおりだった」との回
いました。その名簿とアピールいただい
答でした。
な事業を実施できればと考えております
のでよろしくお願いします。
企 業 情 報 とくしま 2015.8
No.385
17
徳島県
8
月号
中小、零細企業者のあらゆる経営上の悩みに対応するため、(公財)とくし
ま産業振興機構内に「徳島県よろず支援拠点」が開設されています。
皆様のお役に立ちそうな相談内容を「徳島県よろず支援拠点」のサブコーディ
ネーターが交代で紹介していきます。
井上 秀二
中小企業診断士
今月は井上サブコーディネーターが紹介します。
相談内容について
「徳島県よろず支援拠点」SCD の
中小企業診断士井上秀二です。
毎日、いろんな相談を受け、一緒に
考えながら皆様のお役にたてるよう、
してくれるところを紹介して欲しい。
・店舗前に屋台を出したいがどんなも
のを販売すればよいか?
づくり・商業・サービス革新補助金)
等々、今回もいろんなご相談がありま
が申請できる可能性がありますね」と
した。
言ったものの、相談日が 4 月の終わり
「徳島県よろず支援拠点」では前向
であり、ものづくり補助金 1 次公募の
きな相談も、切羽詰まった相談も親身
締め切りが 5 月 8 日であったため、休
になって対応させていただきます。
みを除くとほとんど時間がありません
そして笑顔で帰っていただけるように
また、この間に徳島県中小企業家同
でした。
「今から 1 次公募の締め切り
日々努めています。さて 5 月から 6 月
友会で「金融機関から見た経営指針書」
は間に合いませんよ」とお話ししたの
に受けた相談事例を挙げてみますと、
という講演をさせていただいたり、徳
ですが、「ものづくり補助金を初めて
島市創業促進事業補助金交付決定審査
知ったので、ぜひとも今回チャレンジ
・原価が上昇し、収益を圧迫している。
会の審査員をさせていただいたりして
したい。採択にならなくても、次回の
・FC 店で創業したが FC 契約時の売
自分自身も勉強になりました。
ためにも今回申請したい」との話でし
上高まで達していない。
・カラオケ店を出したいと計画してい
それでは事例の説明をさせていただ
きます。
る。資金はどの程度必要か?
・昔ネット販売をおこなっていたが復
活させたい。
・新たな惣菜、弁当を考えて欲しい。
教えて欲しい。
・コーポーレート・マークを考えて欲
しい。
・開業後 1 年半が過ぎ、顧客が減って
しまった。
・店舗社員の教育についてアドバイス
して欲しい。
・ドローンを使って写真や動画を作成
企 業 情 報 とくしま 2015.8
No.385
た。
担当者の方は今までにも「小規模事
業者持続化補助金」などを申請した経
事例1 ものづくり補助金
のブラッシュアップ
・店舗を確認して当社の強み・弱みを
18
「製造工程の見直し等であればもの
づくり補助金(平成 26 年度補正もの
験もあり、どのようなことを書けばい
いかについてはある程度理解されてい
ましたので、「それでは書いてみます
か」ということになりました。
食品関係製造業のお客様から、「時
そこからメールで何度も補助金申請
代の流れに沿った新商品を開発し、関
書のブラッシュアップをおこなったの
西地区の百貨店でも好評を得ている。
ですが、新商品は革新的ではあるもの
今回大量に発注を受けたが、ほぼ手作
の、製造工程については革新的とは言
りであるため対応できない。製造工程
えないものでした。このままではだめ
を見直して大量発注に対応できるよう
だと思い、企業にお邪魔し、社長さん
にしたいがなにか補助金はないか?」
や担当者の方と膝をつめて今回の案件
という相談を受けました。
についてヒアリングをおこないました。
その中で、新商品の問題点は、日持
ちがしないことと大量生産が不可能な
ことであり、それを解消することによ
り、海外展開等の新たな展開ができる
様々なところで講演や研修の講師をし
明できないとやはりだめですね。
」と
ています。
(もちろん無料です。
)
いうお言葉をいただきました。それか
研修を受けて、興味をお持ちになっ
た方が相談に来ていただきました。
ら雇用や営業の話になり、経営者はい
ろんなことで悩んでいるんだなあと、
ことがわかりました。つまり新商品は
「資金の必要がない業種であり、今
完成品ではなかったのです。補助金申
まで銀行で借入をしたことがなく、資
請書の論旨を「時代の流れに沿った新
金繰り上、借入が必要な場合は個人か
今回は「ものづくり補助金」や「小
商品を開発し店頭に並べたけれども、
ら会社に貸すことで対応してきた。し
規模事業者持続化補助金」の締め切り
問題点が出てきたので再度製造工程を
かし、経営者保証等の問題もあり、で
があり、そのブラッシュアップの相談
見直すことで完成させる」ということ
きるだけ個人と会社の資金を分けたい
が非常に多くありました。今回の事例
に変更しました。すると様々な要素が
と考えている。資金繰り上の資金を会
1は特別な例であり、補助金を採択さ
スムーズに繋がり、一貫した補助金申
社で借りるにはどうすればよいか?」
れるレベルまで内容をブラッシュアッ
請書を作ることができました。その間、
というご相談でした。
プしようと思えば、通常はある程度の
「よろず支援拠点」の重要性について
再認識させていただきました。
担当者の方には海外出張もあったにも
私が元銀行員であり、「銀行でお金
時間がかかります。「ものづくり補助
かかわらず何回も推敲していただきた
を借りるために必要なことはこんなこ
金」の 2 次公募や、とくしま産業振興
いへんなご苦労をおかけしました。
とですよ」と研修の中で説明したのが
機構が年 2 回募集している「とくしま
気になったみたいです。
経済飛躍ファンド」についても早くか
おかげで無事、採択され、企業にも
喜んでいただきました。
まず運転資金はなぜ必要かという話
をおこない、資金使途、返済財源につ
事例2
運転資金枠について
いてもお話させていただきました。ま
ら取りかからないとなかなか採択され
ません。
早めのご相談をお勧めします。
た銀行とのつきあい方や金利の相場等
もアドバイスし、納得をいただいたご
様子でした。最後に「今まで経理担当
先にも述べたとおり徳島県よろず支
者に会社のことを任せっきりだったけ
援拠点のサブコーディネーターとして
ど社長や役員が自分の会社を数値で説
よろ ず 支 援 拠 点 の 連 絡 先 は 以 下 のとおりで す 。
電話番号 :(088)
-654-0103(公益財団法人とくしま産業振興機構内)
徳島県よろず支援拠点 担当:大塩、日出、井上、尾崎、有田
住 所 : 徳島県徳島市南末広町5番8-8 徳島経済産業会館2階
企 業 情 報 とくしま 2015.8
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アジア展望 〜上海事務所だより〜
中国・上海における
日本の食品の需要
徳島県は、平成22年から四国の他県との連携により食品の中国への輸出を支援しています。具体的に
は、上海の貿易会社に委託し、四国4県で中国バイヤーを招待しての商談会の開催をしているほか、商談
会出品商品の中国での営業活動や、小売店等における四国物産展等を実施しています。今回はこの事業
を軸に、中国・上海におけるマーケットの変遷、上海事務所の活動についてご紹介をしたいと思います。
富裕化の進む中国都市部
今年 5 月に、アメリカを本拠地と
するコンサルティング会社ベイン
アンドカンパニーと中国の招商銀
行が共同で発表した ‘China Private
Wealth Report’ に よ る と、2014 年
末時点で 1000 万元(約 2 億円)以
上の資産を持つ中国人は 100 万人
を超えており、2010 年から2倍に
増加したとされています。このこと
からも分かるように中国は今急速
に富裕化しています。もちろん富裕
化の進展度には、地域により違い
があり、まだまだ貧しい地域や人々
も存在しますが、特に上海やその
周辺地域では、生活レベルの向上
が目覚ましく進んでいると言って
いいでしょう。
高級スーパーの様子
上海を例にとっても、ここ 5 年ほ
ど、あるいはここ 3 年の間でも小
2004年
久光百貨店オープン※
店舗ずつ開店、2014 年に入ると一
売店の状況は大きく変わりました。
2010年
シティスーパー上海1号店オープン※※
気に天津、蘇州、武漢と 3 店舗をオー
つい数年前まで、中国のスーパー
2012年
上海高島屋オープン
プンさせ、今年に入っても北京や
2013年
久光百貨店2号店
(食品スーパー)
オー
プン
と言えば、「聯華超市」や「華聯超
市」など地元資本の一般的なスー
パーがメインで、その他にフラン
ス資本のカルフールなどもありま
したが、外国資本のスーパーは非
常に少なく、輸入食品は限られた
場所でしか購入できませんでした。
20
2014年
2015年
蘇州など 4 店舗をオープンさせる
シティスーパー 2号店オープン
予定となっており、上海における
シティスーパー 3号店オープン
高級スーパーの立地と、軌を一に
アピタ
(ユニー)
オープン
していることが分かります。
大丸オープン(食品スーパーは地元資本)
※久光百貨店は香港そごうと中国資本の合弁
※※シティスーパーは香港資本の高級スーパー
日本の食品に対する需要増
こうした高級スーパーや日系
現在では市内の中心部では、日本
こ の 表 か ら も、 こ こ 5 年( も し
スーパーの立地は、当然日本食品の
資本など多くの高級スーパーが誕
くはここ 3 年)の高級スーパーの
輸出のチャンスととらえることが
生し、争うように輸入食品を販売
進出ラッシュが分かると思います。
出来ます。四国 4 県の事業でもま
しています。上海におけるこれま
また上海ではないですが、イオンも
さにこのチャンスを逃すことなく、
での主な高級スーパーの出店状況
2008 年の北京国際商城開店を皮切
輸出食品の掘り起こしと、現地に
を振り返ってみましょう。
りに、2010 年と 2012 年に天津に 1
おけるプロモーションに取り組ん
企 業 情 報 とくしま 2015.8
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(公財)とくしま産業振興機構上海事務所 所長 大岡 士郎
でいるところです。
また、現地におけるプロモーショ
ンにおいても、明らかにここ2、3
年で変化が出ています。2013 年度
には、上海で初めて四国物産展をシ
ティスーパーで開催しましたが、こ
催条件の良い今の状況は、食品メー
始と同時に多くの社員が詰めかけ、
カーにとって、まさに輸出のチャ
一時現場は大混乱となるほどの混
ンスと言えると思います。
みようでした。また郊外にある同
多様なプロモーション活動
また、この四国 4 県連携事業では、
じ会社の工場でも出張販売を行い
ましたが、ここでも多くの工員に
四国の食品を買っていただきまし
の年に開催した四国物産展はこの 1
単なる物産展とは違う、様々なプロ
た。こうした取り組みを通しても、
回のみでした。2014 年度は上海高
モーション活動も実施しています。
やはり日本食品の人気の高さを感
島屋など 2 社4店舗での開催とな
まずは昨年在上海日本国総領事公
じます。
り、今年度は飲食店と小売店を合わ
邸で実施したプロモーションイベ
せてすでに 2 社 2 店舗で実施済み
ントをご紹介します。外務省では在
で、さらに 2 社2店舗での開催が決
外公館を開放して、自治体等と日本
まっており、このほかに交渉中の
の商品や観光を売り込むイベント
ものがやはり 2 社 2 店舗あります。
の共同開催を推進しています。四
これだけ物産展の開催が増加して
国 4 県では昨年、この事業を活用し、
きている理由は、フェアを行うだ
総領事の公邸に四国の食品を集め
けの品物がそろうようになってき
て、展示・試食を交えた B to B の
たことと、それに伴って店側の需
プロモーションイベントを開催ま
要が高まっていることがあります。
した。
B to B ですので、
プロモーショ
小売店や飲食店においても、他店
ンの相手方は、上海周辺の食品バ
との競争や、最近ではインターネッ
イヤー(小売店や飲食店)などです。
もちろんだからと言って、日本食
トショッピングとの競争が激しく
上海総領事館と協力をすることで、
品であれば何でも売れるわけはあ
なっており、店舗のプロモーション
より多くのバイヤーを招くことが
りません。現状四国あるいは徳島の
をどんどんやりたいという状況が
出来、商談も多く行うことが出来
商品でも、売り上げにはかなりの
あります。もちろんその背景には、
ました。その結果、その場で発注
かたよりがあります。またプロモー
日本産食品の安心・安全や質の高
を入れるバイヤーもあるなど、現
ションを行うかどうかによっても
さ、日本料理の人気の高さがある
場は大変盛り上がりました。
売り上げはかなり左右されます。日
ことは言うまでもありません。
商品数については、例えば昨年
総領事公邸での BtoB プロモーション
できるだけ実際の市場を
見ながら挑戦を
また、日系大手企業のオフィス
本産食品はそもそも高価なうえに、
における出張販売も行っています。
輸出となると関税や運送費が上乗
末の高島屋フェアには四国 4 県で
ある日系大手企業は上海市の中心
せされます。中国での価格は日本の
27社、95アイテムが出品され、
部にオフィスを構えており、そこで
小売価格の2〜 3 倍程度になりま
徳島県からの出品は6社、30アイ
は約 300 名もの社員が勤務してい
すので、基本的に棚に並べるだけ
テムでした。そして基本的にこれ
ます。もちろん大半は中国人です。
で売れるということはありません。
ら物産展では、商品はすべて店舗側
この企業の会議室に四国食品を並
と言ってもプロモーションの実施
の買い取りとなっています。このよ
べ、昼休みの時間限定で、展示即
は、渡航費など経費もかさむので、
うに店舗側の需要が高く、物産展開
売会を開催しました。昼休みの開
どの会社でも出来るわけではあり
ませんが、出来るだけ多くの企業
に来ていただき、実際の中国市場
を見ながら、プロモーションに参加
していただきたいと思います。も
ちろん、渡航出来ない企業の商品
については、当事務所の方でも出
来る限りのプロモーション支援を
実施しています。これからより多
くの企業に中国市場に挑戦してい
ただきたいと思っています。
アピタ(ユニー)四国フェア
高島屋四国フェアにおける阿波踊り
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本コーナーは、徳島経済産業会館入居団体相互の絆を深めるとともに、中小企業
徳島
館
会
業
の皆さんに信頼され、親しみのある会館を目指して、ホットな情報をタイムリー
経済産
り
に発信しています。
だよ
徳島経済産業会館入居団体に所属している専門家 ・ コーディネーターを紹介しています。
徳島県商工会連合会
当会では、県内23商工会の運営指導をはじめ、地域内における中小企業者の経営戦略等に関するさまざまな相談や悩みに
お応えするなど、商工会全般の健全な発展と地域商工業の振興に寄与するための各種事業を実施しています。ここでは、経営
安定に関する相談にお応えする専門家をご紹介します。
経営安定特別相談室
嘱託専門指導員
岡田 理
現在の経営安定特別相談室に勤務して、2
年余りを経過いたしましたが、この間、県内
の倒産防止対策ということで数々の相談が
今回ご紹介した専門家は、出勤日が決まって
おりますので、相談をされる際は事前にお電
話で相談可能な日時をご確認ください。
ありました。指導致しました内容につきま
しては借入債務超過に係る返済計画の作成
及び再建策の指導、金融機関からの融資が困難になった企業への融資
斡旋や返済計画の作成、企業を生産するための破産手続きの相談指導
等、弁護士・商工調停士・中小企業診断士等の専門家に協力頂きなが
ら少しでも問題解決に結びつけられる様従事しておりますが、最近に
本コーナーでご紹介した相談業務
【経営安定・倒産防止対策に関する相談】
☎電話番号
088-623-2014
ついては相談案件が非常に多くなっている状況です。当室にて抱えて
いる専門家に相談をご希望の方は早めにご連絡をお願い致します。
( 独 )日 本 貿 易 振 興 機 構 ( ジ ェ ト ロ )徳 島 貿 易 情 報 セ ン タ ー
中小企業の海外ビジネスを支援するジェトロ徳島では、海外販路開拓や貿易、海外直接投資などに関する企業からのご相
談・ご質問をお受けしています。ここでは、こうしたお問い合わせに対してアドバイスをする専門家(アドバイザー)をご紹
介します。
アドバイザー(貿易投資)
大西 紀之
アドバイザーへのご相談をされる際は、お電
話または E メールでお気軽にご連絡ください。
県内企業の輸出や輸入、【起業・創業・創業促進あったかビジネス支援事業に関する相談】
外国への拠点
本コーナーでご紹介した相談業務
☎電話番号
088-654-0103
設立、現地企業との合弁・技術提携な
どを支援する貿易・投資アドバイザー
【下請かけこみ寺への相談】
です。製品・技術を海外に売り込む時、
【海外販路開拓、輸出・輸入、海外拠点設立
徳島県事業引継ぎ支援センター統括
海外への拠点設立を検討する時、
海外
など海外ビジネスに関する相談】
電話番号
☎
責任者補佐
との取引をしている際に疑問が生まれ
電話番号
中野 利夫
た時など、お気軽にご相談ください。きめ細かいアドバイスで御
社をサポートします。
お知らせ
来月号では、県内産業の発展を担
うインフラ整備の現状と将来につ
いて特集します。
企業情報とくしま
8 月号 No.385 平成 27 年 8 月 1 日
編 集 後 記
088-654-0101
☎
088-657-6130
Eメール [email protected]
いよいよ夏本番となり、暑がりで汗かきの私にとってはタオルの手放せ
ない季節となってきました。空調が効いている場所も多く、外気温と
の差が激しいので、体調を崩さないように注意したいと思います。
(ふ)
●発行所:公益財団法人とくしま産業振興機構 総合支援部
〒 770-0865 徳島市南末広町 5 番 8 - 8 徳島経済産業会館 2 階
TEL.(088)654-0101 ㈹ FAX.(088)653-7910
●印刷所:株式会社松下印刷
〒 771-1156 徳島市応神町応神産業団地 5-1
TEL.(088)641-4611 ㈹ FAX.(088)641-3540