理想的なユニークベニュー 札幌体験記 - Sapporo Convention Bureau

理想的なユニークベニュー 札幌体験記
©JRA
日本コンベンションサービス(株) MICE都市研究所 所長
さっぽろMICEリーダーズサミットの歓迎レセプション
(参加者100名:うち海外31ヵ国と地域、31名)が、日本で初
めてとなる札幌市内のユニークベニューで開催されました。
会場に入る前からワクワク
廣江 真
このユニークベニューでのレセプションはすばらしく、
いままで私が体験した中でも最高でした。
その一部をご紹介いたします。
今回のユニークベニューの照明の使
考えられことがあります。しかし実は
い方は、海外の実績あるユニークベニ
このアトラクションが、都市の MICE
ューとまったく遜色なく、それ以上か
ブランドイメージに貢献し、重要な役
もしれません。このレベルの高さに驚
割を果たします。今回の主要アトラク
3月5日の寒い 夕方、音もなくホテル
かされました。ユニークベニューでは
ションは、市内の大学生による時計台
から走り出した大型バスが、まだ雪が
会場となる内部だけが考えられます
模型へのプロジェクションマッピング、
残る札幌市内を走ること20分、歓迎レ
が、移動のバスを降りた瞬間からユニ
YOSAKOI ソーランの舞、氷の花(ICE
セプション会場に到着です。バスを降り
ークベニューの体験は始まります。会
FLOWER)によるショーがありました。
て建物の大きな窓から漏れてくる暖か
場の外にも照明が施され、無機質なエ
プロジェクションマッピングはハイテ
い照明は、これから会場に入るわくわ
ントランスも照明により昼間とは全く
クなイメージを、若い踊り子達による
く感を高めます。幻想的に照明された
違う空間になっていました。レセプシ
躍動感ある YOSAKOI そーらんは、情
ウエルカムスペースでは、氷の花(ICE
ョン会場となる「ファンファーレホー
熱とパワーを、
「氷の花」に見る高度な
FLOWER)という今まで見たことのな
ル」は天井が高く、窓が大きいため照
技と優れた芸術性はクリエイティブな
い氷彫刻のパフォーマンスで飽きさせ
明が難しい中、ステージ中央の時計台
イメージを表現し、これにより札幌の
ません。特に外国からのお客さまには
模型や会場中央の氷のオブジェへの照
持つ都市ブランドを伝えています。
人気で、写真スポットになっていました。
明など随所に工夫がありました。各テ
このウエルカムスペースの後方に、
ーブルのカラーライトの色が、レセプ
突然のファンファーレと共に現れた大き
ションの進行に合わせて赤、青、ピン
なパーティ会場。指定席に着席し、レ
クに変わっていました。この照明の演
セプションが始まります。ここは一見ホ
出は、北海道共立によります。施設側
テルのパンケットルームのようにも見え
の照明は一切使わず、すべて持ち込み
MICE のロゴとリーダーズサミットの
ますが、天井が高く、開放感ある広々
でした。
ロゴは、このレセプションが何のため
ロゴ露出の重要性
ステージ両側のパネルにある札幌
とした大空間であり、ホテルとはまった
に行われているのかを強く主張してい
違う驚きの会場でした。
ました。このようにユニークベニュー
照明のすばらしさ
8 MICE Japan 2015・4月号
アトラクション
では、ロゴの使い方が重要です。特に
インセンティブツアーにおける主催企
ユニークベニューにおけるアトラク
業ロゴの露出力は、誘致において重要
ションは、パーティのおまけのように
な差別化ポイントになります。今回の
「札幌 MICE」のロゴの露出の多さには、
れるのですが、当然、ホテルのサービ
話が弾むようによく考えられたテーブ
このようなロゴの扱いに非常に手慣れ
スレベルを維持することが大前提とな
ルごとの人選と席決め、アトラクション
ていることを感じました。司会者のバ
ります。そのために「ケータリングをホ
と歓談の時間をバランスよく組み合わ
ックにある大きなロゴのインパクトは
テルに依頼する」ことは、理にかなって
せた進行、英語によるプロの司会など、
絶大で、大きなこのロゴが会場中央の
おり、今回のケータリングおよび氷彫
レセプション本来の目的を見据えた上
氷柱の中に、またエントランスで写真
刻は、京王プラザホテル札幌からです。
での、全体設計と運営方法など、まさ
スポットとなっていた3頭のポニーの
ホテルレベルの雰囲気作りと、ここ
にユニークベニューのノウハウが十分
に発揮されていました。
オリジナルゼッケンに、
「氷の花」のア
が競馬場であることを認識させる、こ
トラクション会場に、もちろん各テー
の難しい二律背反の問題をみごと解決
ブルの上にもありました。みなさんも、
し、競馬場ならではのコンテンツを楽
完成度の高いユニークベニューとは
写真の中のどこでロゴの存在が強調さ
しませてくれました。プログラムの最
そこにおけるレセプションをしっかり
れているか探しみてください。
後はレセプション会場に隣接する観覧
記憶に留める工夫がなされます。1)複
席に移動し、参加者全員で仮想ダービ
数の撮影スポットをしっかりと用意す
ーの結果を予測し、屋外の大型配ハイ
る、2)レセプションの式次を、各自の
ビジョンに映されるレースを観戦しま
席に予め置いておく、3)指定席の名札
競馬場コンテンツの見せ方
す。Compact MICE、Go Hokkaido、
がはっきり見えるようにする、 4)地元
今回の、競馬場(JRA 札幌競馬場)
Snow Festival など、競走馬の名前も
の特徴、それぞれの背景にある物語や
をユニークベニューとして利用するの
ふるっています。ここでの開会と閉会
意図を司会者がはっきりと説明するな
は日本初であり、実際の交渉はかなり
の挨拶が違う場所で行われるというの
ど、なかなかできない心理的な工夫を
大変だったことが予想されます。この
も新鮮でした。
感じました。最後に「札幌 MICE」が表
ような大きな施設の運営で難しいのは、
広い空間をパーティ会場として作り上
げるノウハウです。その中でも演出が
重要ですが、この照明による高度な演
記された JRA 札幌競馬場の投票券(馬
歓談の重要性、
ネットワーキングの機会づくり
券)を参加者全員がお土産にいただき
ました。施設もさることながら、ソフ
ト面の高度な企画力との相乗効果が最
出力によりここが競馬場であることを
ユニークベニューで派手なアトラク
大に発揮された、関係者のグローバル
忘れて、あたかもホテルのバンケット
ションを途切れることなく連続させ、
な運営レベルに感心いたしました。
ルームにいるような雰囲気が創造され
結局、何も印象に残らず、歓談するに
今回の企画は、札幌国際プラザ、制
ていました。
は騒々しく、時間も無く、ネットワーキ
作および運営はプランニング・ホッコ
ーと聞いています。
多くの海外からの参加者は、都市ホ
ングのタイミングが取れず、参加者に
テルでのレセプションに飽きています。
ストレスが溜まる。実は、このような失
だからこそユニークベニューが求めら
敗パターンがよくあります。今回は会
MICE Japan 2015・4月号 9