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爽やかな中学校区を構築するための「小中連携西中プラン」
善通寺市立西中学校
1
校長
香川
雅之
主題設定の理由
最近、
「中一ギャップ」という言葉をよく耳にする。この言葉が流布すると共に「小中連携」の必
要性が強く叫ばれるようになった。「中一ギャップ」とは、「小学校6年生の一部の児童が中学1年
生に進級した際に被る心理的・学問的・文化的なギャップとそれによるショック」(フリー百科事
典ウィキペディア)のことである。確かに、文部科学省が毎年実施している児童生徒の問題行動等
生徒指導上の諸問題に関する調査を見ると、不登校児童生徒数、暴力行為の加害児童生徒数、いじ
めの認知件数は、いずれも中学校1年生段階で急増している。このことを背景とした「中一ギャッ
プ」という言葉は、あたかも小中間に大きな壁が横たっているような印象を与えている。
ところで、「中一ギャップ」の原因として指摘されるのは、次の4点である。
⑴
先輩・後輩という関係の出現
小学校6年生は、学校の柱として期待され、低学年の児童の指導を任されるなど活躍してきた。
ところが、中学校に入学すると最年少となり、特に部活動でその傾向が顕著となるが、先輩・後
輩の縦の関係の中で自由度が狭められた生活を余儀なくされる。
⑵
パワーアップするいじめ
強者から弱者への暴力行為に象徴されるように、同級生間のいじめも小学校時代より激しくな
る傾向が見られる。
⑶ 新たな人間関係の構築に伴うストレス
新しい環境の中で、異なる小学校の児童との人間関係、教科担任制による多様な教員との人間
関係を構築しなければならないため、ストレスを強く感じるようになる。
⑷
学習面での負担増大
学習内容の増加、定期試験の実施とその結果によるランク付け等により、小学校時代よりも学
習面での負担が大きくなる。
しかし、小中両方の学校での勤務経験から言うならば、中学校1年生で多発するかのような印象
が強い不登校生徒の多くは、小学校時代にその傾向が見られるなど、「中一ギャップ」を象徴する
問題行動の芽は、小学校時代に確実に育っている。「中一ギャップ」という言葉に惑わされること
なく、足下をしっかりと見つめた「小中連携」の在り方を模索する必要があると考える。
言うまでもなく、中学校3年間は、将来の夢や目標を実現するための土台作りとなる貴重な3年
間である。本校では、入学してきた全児童が、中学校での学習や部活動、生徒会活動等を通して、
さらにたくましく成長し、困難等を克服しながら自らの力で進路を切り拓いてほしいと願っている。
このことを強く意識し平成25年度から取り組んでいる「小中連携西中プラン」は、義務教育9
年間を通して中学校区の児童生徒の健全育成を図ろうとするものであり、各小・中学校が独自に取
り組んできた教育活動を「小中連携」の視点から見つめ直し、爽やかな中学校区を構築しようとす
るものである。
2 実践の概要
「小中連携西中プラン」の具体的な取組は、次の通りである。
⑴ 共通目標を意識した自治活動の推進と小中連携だよりの作成
西中学校と中央小学校・西部小学校・筆岡小学校・吉原小学校では、迅速かつ効率的に小中連
携を進め、校区の一体感を高めた活動にするため、校長間で協議を深め、小中連携スクールプロ
グラム及び年間活動計画を策定し、小中連携を進める際の共通目標として「時を守り、場を清め、
礼を尽くす児童生徒の育成」を掲げた。「時を守り、場を清め、礼を尽くす」は、哲学者・教育
学者の森信三先生が提唱された言葉で、様々な場面で守るべき基本姿勢として不易なものである。
西中校区の各学校では、
「時を守り、場を清め、礼を尽くす児童生徒の育成」という共通目標の
下で、校区内に爽やかな挨拶運動の輪を広めこと、各学校が特色のある自治活動を推進する中で
児童生徒の自治力・自浄力を高めことの2点を特に重視した。
まず、校区内に爽やかな挨拶運動の輪を広めるために、児童会と生徒会役員が複数回話し合い
の場を持ち、英知を出し合いながら「挨拶運動啓発ポスター」を作成した。この「挨拶運動啓発
ポスター」は、校区内各学校のみならず、校区内の公共施設等に掲示し、各学校での挨拶運動推
進の旗印としている。また、毎年10月と12月の2回、朝7:20~7:50の30分間、中
学生がお世話になった母校の小学校を訪問し、挨拶ボランティアをしながら小学校の恩師や後輩
と心の交流を深めている。
一方、特色ある自治活動の推進については、1学期は「時を守る」、2学期は「礼を尽くす」、
3学期は「場を清める」を重点目標にし、各学校の児童会・生徒会活動の中で重点目標をより具
体化した実行しやすい目標を設定し、調査・点検・評価等を行い、児童生徒の自治力・自浄力の
向上を促している。(※取組の具体的な内容については、資料「小中連携だより」参照)
なお、これらの取組を保護者や地域住民に知らせ、学校教育への一層の理解と協力を得るため
に、中学校長自ら事務局長となり、各小学校と情報連携を図りながら年間4回「小中連携だより」
を作成し、西中校区内の全児童生徒・保護者に足並みを揃えて印刷・配布している。
⑵
「大切にしたい西中五訓」の作成・配布
近年の社会風潮を見ると、規範意識や連帯感、他者を思いやる気持ち等が希薄となっているこ
とが、大人や子どもの言動から強く感じられる。このことは、児童生徒の健全育成の観点から憂
慮すべき状況である。
そこで、様々な場面で守るべき基本姿勢として不易なものである「時を守り、場を清め、礼を
尽くす」ことを全生徒に意識させるために作成したのが「大切にしたい西中五訓」である。
また、小中連携を踏まえ、校区の小学校6年生に中学校生活を意識した小学校生活を過ごして
もらいたいと願い、2月の保護者を対象とした入学周知会の際に保護者を介して入学予定の全児
童に周知・配布した。
西中校区の全児童生徒が、学校や自宅に掲示された「大切にしたい西中五訓」を肝に銘じ、常
に前向きな学校生活を送ることに心がければ、豊かな心を持ち、周囲から信頼される人間として
さらに成長できるのではないかと考えている。
⑶ 西中2大行事への小学生の招待
毎年9月下旬に実施される秋季運動会と10月下旬に実施される合唱コンクールは、西中2大
行事として定着し、保護者や地域住民からも高い評価を得ている。中学校生活に関する意識調査
を見ると、この2大行事は、西中生の大部分が「切磋琢磨」の合言葉を実感できる行事だと認識
しており、学級の団結力や生徒の課題解決能力等を高める上で重要な教育活動となっている。
西中学校では、中学校生活への動機付けや先輩へのあこがれの気持ちの高揚を図るため、毎年
この2大行事に校区内の小学6年生を招待している。
⑷ 中学校体験入学(英語・情報教育)
毎年11月に本校では、中学校体験入学を実施している。校区内の4小学校の児童は、情報と
英語の2教科の学習を各1時間西中に出向いて学習している。
情報教育では、情報教育主任がワードやエクセル等の基本的な使い方や危機管理について指導
している。また、英語では、英語教員とALTがティームティーチングで英語を使ったコミュニ
ケーション能力の育成に視点を置いた指導を行い、中学校の学習の一端を実感してもらっている。
⑸ 中学校教員の出前授業
2月には西中学校の教員が各小学校に出向いての出前授業を実施している。平成25年度は、
中央小学校で数学と理科、西部小学校で体育、吉原小学校で社会、筆岡小学校で国語と英語の授
業を行った。
授業を実施する際、中学校の授業者が各小学校教員と事前に打ち合わせを行い、小学6年生の
実態や小学校教員の要望等を踏まえて学習指導計画を立案し授業を実施している。
なお、この出前授業では、本校の若手教員が大いに活躍している。本校では、出前授業を若年
教員の資質・指導力の向上を図るための貴重な機会の一つと位置づけている。
⑹ 新入生のための「中学生 学習の手引き」の作成・配布
中学校入学前に中学校の教科の学習仕方等を知ってもらい、スムーズに中学校生活のスタート
を切ってもらうために作成したのが、新入生のための「中学生 学習の手引き」である。この手
引きは、新しい学習指導要領の趣旨を踏まえ、中学校での学習の仕方等を具体的に分かりやすく
理解してもらえるように、各教科の教員が英知を絞って作成したものである。
新入生のための「中学生 学習の手引き」は、①中学校での基本的な学習の仕方、②定期試験
や成績のつけ方、③各教科の学習の進め方、④参考資料(優れたノートの書き方、定期試験に向
けた学習計画の仕方、ショートテスト)で構成され、6年児童の中学校での学習に対する不安を
和らげようという意図を持って作成している。
中学校の学習は、将来の夢や目標を実現するための出発点ともなる高校入試に直接つながるも
のである。6年の児童が、新入生のための「中学生
学習の手引き」を常に傍らに置いて、3年
間地道に学習に取り組んでほしいと願っている。
成果と課題
3
実践を通しての成果と課題を次のように考えている。
⑴ 平成23年度から毎年実施している「学校生活に関する調査」の過去3年間の結果を見ると、
本実践に何らかの形で通じると思われる複数の項目で望ましい結果が表れている。
① 委員会活動等への積極的な取組に関する肯定的な意見の割合 81%→87%→90%
②
③
⑵
規範意識(交通ルール等)の向上に関する肯定的意見の割合
西中に誇りを持って活動することへの肯定的な意見の割合
57%→69%→72%
74%→79%→80%
「西中2大行事への小学生の招待」については、中学生のダイナミックな演技や競技、迫力の
ある歌声等に感動し、2大行事を成功させたいという思いや先輩に対するあこがれの気持ちが高
まっていることが事後の感想文から感じられた。演技や競技、合唱等に取り組む中学生の真剣な
姿は、児童を大いに感動させ、自分も先輩たちのように頑張りたいという気持ちを育てることに
つながっている。
⑶ 初めて西中学校の教室に入り、初対面の中学校教員から学習指導を受けるという「中学校体験
入学」は、進学する中学校の雰囲気や学習に直接触れるという貴重な経験となっている。
⑷ 中学校教員から直接学習指導を受ける「出前授業」は、ほとんどの授業を学級担任から受けて
いる小学校の児童にとっては新鮮であり、中学校を理解する貴重な機会となっている。
⑸
「挨拶運動啓発ポスターの作成と掲示」や母校の小学校での挨拶ボランティア、各学校の特色
のある自治活動と「小中連携だより」による保護者・地域住民への情報提供等により、校区内各
学校の教育活動の様子やねらいが保護者・地域住民に一層理解され支持されるようになってきた。
特に、これまで一部の中学生の問題行動ばかりに目を奪われていた地域住民が、前向きに努力し
ている多くの西中生に温かい眼差しを向けるようになったことの意義は大きい。
⑹ 小中連携スクールプログラム、西中五訓の作成等は、学校経営の根幹の一つを成すものと考え、
各学校の校長間で協議を重ね具現化するといったトップダウンの形で活動を進めた。このことに
より、校区内各学校が同一歩調で迅速かつ効率的に活動を進め、その成果を「小中連携だより」
にまとめ、保護者や地域住民に一斉に情報発信することが可能となった。
⑺ 新入生のための「中学生 学習の手引き」を中学校3年間有効に活用し、学力の向上や進路選
択に等に反映させることができるようにするための具体的な支援方法の立案・実施や現在行われ
ている小中連携活動の形骸化を防ぐための工夫や改善策の積極的な実施等が今後の課題である。