Weingarten calculus と 対称群の調和解析 1 松本 詔 (Matsumoto, Sho) (鹿児島大学)∗ 1. 序章 N × N のランダム行列 X = (xij )1≤i,j≤N が与えられたとき, 行列成分の混合モーメント [ N ] ∏ m E xij ij i,j=1 を計算するという問題を考えよう. ここで mij は非負整数である. 別の言い方をすれば, ∫ ∏N 行列の集合 Ω の確率空間 (Ω, Borel, P X ) が与えられたときに, 積分 Ω i,j=1 xij (ω)mij P X (dω) を計算するということである(ここでは xij : Ω → C は座標関数). 例を挙げよう. 2 次特殊直交群 ) } { ( cos θ − sin θ SO(2) = g = (gij )1≤i,j≤2 = θ∈R sin θ cos θ dθ を考える. SO(2) は単位円 S 1 とリー群として同型であり, 自然な確率測度 dg = 2π (θ ∈ (−π, π], dθ はルベーグ測度) を考えることができる. これは SO(2) の正規化された ∫ a b c d ハール測度に他ならない. さて積分 SO(2) g11 g12 g21 g22 dg を計算したい (a, b, c, d は非負 整数). 行列 g ∈ SO(2) の成分は sin θ, cos θ で表すことができるので, 積分は初等的に計 算できて次のようになる. ∫ ∫ 2π dθ a b c d b g11 g12 g21 g22 dg = (−1) cosa+d θ sinb+c θ 2π SO(2) 0 { (b+c−1)!! (−1)b (a+d−1)!! (a + d と b + c がともに偶数のとき) (a+b+c+d)!! = 0 (それ以外). 本講演では, 主にコンパクトリー群やコンパクト対称空間から自然に定まるランダ ム行列について, 上のような問題を考える. そのような計算手法は今日 Weingarten calculus と呼ばれて定着しつつある. ∫ a b c d リー群 SO(2) の例では, 積分 SO(2) g11 g g g dg を a, b, c, d の関数としてうまく記述 [∏ 12 21 22 ] mij N できた. しかし, 一般にモーメント E を mij たちの関数として記述するこ i,j=1 xij ∏n とは困難なことが多い. そのかわり我々は E[ p=1 xip jp ] と書いて, これを ip , jp の関数 として記述することになる. 2. ユニタリ群の Weingarten calculus ユニタリ群 U(N ) = {g ∈ GL(N, C) | gg ∗ = IN } 上の, 正規化されたハール測度に関す る積分を考える (IN は単位行列). すなわち, ハール分布に従うランダム ユニタリ行列 U = (uij )1≤i,j≤N について, (2.1) ∗ ′ ] E[ui1 j1 ui2 j2 · · · uin jn ui′1 j1′ ui′2 j2′ · · · ui′m jm 〒 890-0065 鹿児島県鹿児島市郡元 1-21-35 鹿児島大学学術研究院理工学域理学系 e-mail: [email protected] 1 誤植修正版, 3 箇所訂正, ver 1.03 (2015/9/7) 本来の公開版からの訂正箇所が赤字で記されています. の形の平均を考えよう. ここで添え字 ip , jp , i′p , jp′ たちは [N ] = {1, 2, . . . , N } の中の数字 である. ハール測度の性質から, まず m ̸= n のとき積分 (2.1) が消えることが容易に分 かるので, m = n のときだけ考えればよい. ユニタリ群の Weingarten calculus について述べるために, 対称群 Sn 上の次の関数 WgU (·; N ) を準備する. WgU (σ; N ) = (2.2) 1 ∑ fλ χλ (σ) n! λ⊢n Cλ (N ) (σ ∈ Sn ). ここで和は n の分割 λ = (λ1 , λ2 , . . . , λl ) 全体を走る. 登場している記号の意味は, 次の 通り. • λ ⊢ n は n の分割である. すなわち正の整数の広義減少列 λ1 ≥ λ2 ≥ · · · ≥ λl > 0 である. l は λ の長さで, ℓ(λ) ともしばしば表す. 自然にヤング図形と同一視する. • f λ は λ に対応する Sn の既約表現の次元である. 同じことだが, f λ は型 λ の標準ヤ ング盤の個数である. ∏ • Cλ (N ) = (i,j)∈λ (N +j −i) と定める. 積は λ のヤング図形の箱の座標 (i, j) 全体を 走る. すなわち 1 ≤ i ≤ ℓ(λ), 1 ≤ j ≤ λi . 整数 j−i は箱の容量 (content) である. よ く知られているように, シューア多項式 sλ (x1 , . . . , xN ) において x1 = · · · = xN = 1 と特殊化すると, sλ (1N ) = fn!λ Cλ (N ) となる. • χλ は λ に対応する Sn の既約指標である. 特に χλ : Sn → Z で類関数である. この関数 WgU (·; N ) をユニタリ Weingarten 関数と呼ぶ. この関数は中心的, つまり類 関数である. すなわち WgU (τ στ −1 ; N ) = WgU (σ; N ) (σ, τ ∈ Sn ) が成り立つ. よってその値は Sn の共役類にのみ依存する. よく知られているように, Sn の共役類は σ のサイクルタイプで決まり, サイクルタイプは n の分割で与えられる. 例 えば恒等置換 idn のサイクルタイプは (1n ) で, サイクル (1 2 3 · · · n) のサイクルタイプ は (n) である. ユニタリ Weingarten 関数を用いて (2.1) を計算する公式を与えることができる. 定理 2.1 (Collins [2], Collins–Śniady [4]). U = (uij )1≤i,j≤N を U(N ) のハール測度に従 うランダム行列とする. このとき任意の添え字の列 i = (i1 , . . . , in ), j = (j1 , . . . , jn ), i′ = (i′1 , . . . , i′n ), j ′ = (j1′ , . . . , jn′ ) に対し, ∑ ∑ (2.3) E[ui1 j1 ui2 j2 · · · uin jn ui′1 j1′ ui′2 j2′ · · · ui′n jn′ ] = δσ (i, i′ )δτ (j, j ′ )WgU (σ −1 τ ; N ) σ∈Sn τ ∈Sn となる. ここで (2.4) である. δσ (i, i′ ) = { 1 ((iσ(1) , iσ(2) , . . . , iσ(n) ) = (i′1 , . . . , i′n ) のとき) 0 (それ以外のとき) 式 (2.3) の右辺は, 行の添え字を表す i と i′ に対し δσ (i, i′ ) = 1 となるような置換 σ を 選び, 一方で列の添え字を表す j と j ′ に対し δτ (j, j ′ ) = 1 となるような置換 τ を選び, 対応する Weingarnten 関数の値 WgU (σ −1 τ ; N ) を足し合わす, ということである. 計算 例を与えよう. 例 2.1. E[|u11 u12 |2 ] を計算しよう. |u11 u12 |2 = u11 u12 u11 u12 なので, 定理の記号で, n = 2, i = i′ = (1, 1), j = j ′ = (1, 2) となる. よって (2.3) の和は, σ が S2 内の任意, τ が恒等置 換のときのみ生き残り, E[|u11 u12 |2 ] =WgU (id2 ; N ) + WgU ((1 2); N ) 1 −1 1 = + = (N + 1)(N − 1) N (N + 1)(N − 1) N (N + 1) と計算される. 本講演では定理 2.1 を出発点とした Weingarnten calculus の話題を, 講演者の貢献を 中心に述べる. 次の二つの方向へ話が発展していく. • 様々なランダム行列に関する Weingarten calculus (3 章, 5 章). ユニタリ群 以外のコンパクトリー群, さらにコンパクト対称空間に付随するランダム行列の Weingarten calculus を述べる. 数理解析研究所講究録 [18, 19] も参考にしていた だきたい. • Weingarten 関数の性質 (4 章). ユニタリ群の Weingarten 関数 WgU は, 対称群 上の類関数であり, 既約指標による展開が与えられた. さらにこの関数は Jucys– Murphy 元と密接な関係があり, 組合せ論の言葉で記述することもできる. 他の種 類の Weingarnten 関数も類似した性質を持つ. 数理解析研究所講究録 [17] も参考 にしていただきたい. 証明に立ち寄る余裕が無いが, 定理 2.1 の証明は高度な理論を必要とするわけではな く, それほど長くもない. 実際, 不変式論の第一基本定理, または Schur–Weyl 双対性を 用いて, 簡単な線形代数的な議論により得られる(たとえば [3] を参照). 3. 直交群, 斜交群の Weingarten calculus 3.1. 直交群の Weingarten calculus. ユニタリ群のアナロジーとして, 実直交群 O(N ) = {g ∈ GL(N, R) | gg T = IN } を考え よう. ここで g T は g の転置行列である. O(N ) の正規化されたハール測度に従う, ラン ダム直交行列 R = (rij )1≤i,j≤N を扱う. いくつか記号を準備する. M2n を, {1, 2, . . . , 2n} の perfect matching 全体とする. たとえば M4 は {{1, 2}, {3, 4}}, {{1, 3}, {2, 4}}, {{1, 4}, {2, 3}} の 3 つの元からなる. M2n の元 σ は, {{σ(1), σ(2)}, . . . , {σ(2n − 1), σ(2n)}} の形で, σ(2j − 1) < σ(2j) (j = 1, . . . , n) かつ 1 = σ(1) < σ(3) < · · · < σ(2n − 1) となるように 一意的に表すことができる. このとき σ は自然に S2n の元と見なせる: M2n ⊂ S2n . 超八面体部分群 Hn は, 互換 (2i−1 2i) (i = 1, 2, . . . , n) と2重互換 (2i−1 2j −1)(2i 2j) (1 ≤ i < j ≤ n) で生成される S2n の部分群である. 環積 (Z/2Z) ≀ Sn と同型である. こ のとき集合 M2n は剰余類 S2n /Hn の完全代表系となっている. 直交群の Weingarnten calculus では, ユニタリ群とは別種の関数が必要になる. S2n 上の関数 WgO (·; N ) を次で定義する([3]). WgO (σ; N ) = (3.1) 2n n! ∑ f 2λ ω λ (σ) (2n)! λ⊢n Dλ (N ) (σ ∈ S2n ). ここで記号は以下の通り. • 2λ は 2n の分割 (2λ1 , 2λ2 , . . . ) のことである. ∏ • Dλ (N ) = (i,j)∈λ (N + 2j − i − 1) と定める. よく知られているように ([12, VII.2]), 帯多項式 Zλ (x1 , . . . , xN ) において x1 = · · · = xN = 1 と特殊化すると, Zλ (1N ) = (α) Dλ (N ) となる. Zλ はジャック多項式 Jλ の α = 2 の場合である. • ω λ はゲルファント ペア (S2n , Hn ) の帯球関数であり, 次で定義される ([12, VII.2]): ω λ (σ) = 1 ∑ 2λ χ (σζ) 2n n! ζ∈H (σ ∈ S2n ). n この関数 WgO (·; N ) を直交 Weingarten 関数と呼ぶ. これは Hn -両側不変である, すな わち WgO (ζσζ ′ ; N ) = WgO (σ; N ) (σ ∈ S2n , ζ, ζ ′ ∈ Hn ) が成り立つ. よって両側剰余類 Hn σHn 上で定数となる. これら両側剰余類は n の分割 でパラメトライズされ, 分割 µ ⊢ n に対応する両側剰余類に σ ∈ S2n が属するとき, σ の コセットタイプは µ であるという ([12, VII.2]). 直交群の Weingarten calculus は次のように述べられる. 定理 3.1 (Collins–Śniady [4], Collins–M [3]). R = (rij )1≤i,j≤N を O(N ) のハール測度に 従うランダム行列とする. このとき任意の添え字の列 i = (i1 , . . . , i2n ), j = (j1 , . . . , j2n ) に対し, ∑ ∑ (3.2) E[ri1 j1 ri2 j2 · · · ri2n j2n ] = ∆σ (i)∆τ (j)WgO (σ −1 τ ; N ) σ∈M2n τ ∈M2n となる. ここで (3.3) ∆σ (i) = { 1 (すべての {a, b} ∈ σ に対し, ia = ib のとき) 0 (それ以外のとき) である. また奇数次のモーメント E[ri1 j1 ri2 j2 · · · ri2n+1 j2n+1 ] はいつでも 0 である. 2 2 r21 ] を計算してみよう. 定理の記号で, n = 2, i = (1, 1, 2, 2), j = (1, 1, 1, 1) 例 3.1. E[r11 となる. よって (3.2) の和は, σ が恒等置換, τ が任意ときのみ生き残り, 2 2 r12 ] =WgO (( 11 22 33 44 ) ; N ) + WgO (( 11 23 32 44 ) ; N ) + WgO (( 11 24 32 43 ) ; N ) E[r11 N +1 −1 −1 1 = + + = N (N + 2)(N − 1) N (N + 2)(N − 1) N (N + 2)(N − 1) N (N + 2) と計算される. 3.2. 斜交群の Weingarten calculus. 次に斜交群 (シンプレクティック群) を考えよう: Sp(N ) = {g ∈ U(2N ) | gg D = I2N }. ここで g D は ( ) O I N N g D = Jg T J T , J = JN = −IN ON と定める. 斜交群の Weingarten calculus は直交群のそれとほぼ同じであるが, 反対称形式 (v, w)J = T v Jw に由来する符号の取り扱いに注意する必要がある. S2n 上の関数 WgSp (·; N ) を次 で定義する([16]). (3.4) 2n n! ∑ f λ∪λ λ π (σ) Wg (σ; N ) = (2n)! λ⊢n Dλ′ (N ) (σ ∈ S2n ). Sp ここで記号は以下の通り. • λ ∪ λ は 2n の分割 (λ1 , λ1 , λ2 , λ2 , . . . ) のことである. ∏ • Dλ′ (N ) = (i,j)∈λ (2N − 2i + j + 1) と定める. 斜交帯多項式 Zλ′ (x1 , . . . , xN ) にお いて x1 = · · · = xN = 1 と特殊化すると, Zλ′ (1N ) = Dλ′ (N ) となる ([12, VII.2, (α) Example 7]). ジャック多項式 Jλ の α = 1/2 のときを 2n 倍したのが Zλ′ である. • π λ は twisted ゲルファント ペア (S2n , Hn , sgn|Hn ) の twisted 帯球関数であり, 次 で定義される ([12, VII.2, Example 6]): π λ (σ) = 1 ∑ sgn(ζ)χλ∪λ (σζ) 2n n! ζ∈H (σ ∈ S2n ). n この関数 WgSp (·; N ) を斜交 Weingarten 関数と呼ぶ. これは Hn -両側 twisted である, す なわち WgSp (ζσζ ′ ; N ) = sgn(ζ)sgn(ζ ′ )WgSp (σ; N ) (σ ∈ S2n , ζ, ζ ′ ∈ Hn ) が成り立つ. よって符号を除いて両側剰余類 Hn σHn 上で定数となる. WgSp (σ; N ) の値 は, 符号を除いて σ のコセットタイプにのみ依存する. 定理 3.2 (Collins–Śniady [4], M [16]). S = (sij )1≤i,j≤2N を Sp(N ) のハール測度に従う ランダム行列とする. このとき任意の添え字の列 i = (i1 , . . . , i2n ), j = (j1 , . . . , j2n ) に 対し, ∑ ∑ (3.5) E[si1 j1 si2 j2 · · · si2n j2n ] = ∆′σ (i)∆′τ (j)WgSp (σ −1 τ ; N ) σ∈M2n τ ∈M2n となる. ここで ∆′σ (i) は, 0, +1, −1 のいずれかの値をとり, ∏ (3.6) eT ∆′σ (i) = a JN eb {a,b}∈σ で定まる. ここで, e1 , . . . , e2N は C2N の標準基底(列ベクトル)である. また奇数次の モーメント E[si1 j1 si2 j2 · · · si2n+1 j2n+1 ] はいつでも 0 である. なお, 斜交行列 S の複素共役は S̄ = JSJ T と書けるので, 公式 (3.5) は行列成分の複 素共役を含む積分もカバーしている. 以上, コンパクトリー群 U(N ), O(N ), Sp(N ) の Weingarten calculus を述べた. 登場 する Weingarten 関数は, それぞれ中心的, Hn -両側不変, Hn -両側 twisted と, 異なる不 変性を持っていることに注目していただきたい. 4. Jucys–Murphy 元と Weingarten 関数 4.1. ユニタリ群の場合. ランダム行列理論において, 行列のサイズ N を N → ∞ とするときの挙動を調べるこ とは重要な問題の一つである. Weingarten calculus によれば, そのような挙動を調べる 際, 当然 Weingarten 関数 Wg(σ; N ) の N → ∞ の挙動を調べる必要がある. ユニタリ Weingarten 関数の定義式 (2.2) を思い出そう. A(λ) を分割 λ ⊢ n の容量 全体のなす multi-set とする. たとえば A((3, 2, 1)) = {2, 1, 0, 0, −1, −2} である. 完全 ∑ ∏n 1 対称多項式 hk (x1 , . . . , xn ) の母関数 k≥0 hk (x1 , . . . , xn )z k = i=1 1−x において, 変 iz ∑ ∏ k −1 数 x1 , . . . , xn を A(λ) でおきかえれば, = k≥0 hk (A(λ))z = (i,j)∈λ (1 − (j − i)z) ∏ −n −1 −1 −n −1 −1 −1 (−z) + j − i) = (−z) Cλ (−z ) となる. z = −N として, (i,j)∈λ ((−z) (2.2) と比較し次を得る: N ≥ n, σ ∈ Sn のとき, (4.1) U Wg (σ; N ) = ∞ ∑ (−1)k ak (σ)N −n−k , ak (σ) := ∑ hk (A(λ)) λ⊢n k=0 fλ λ χ (σ). n! WgU (σ; N ) は類関数だから, ak (σ) は σ のサイクルタイプにのみ依存する. さてここで対称群の Jucys–Murphy 元を考える. 群環 C[Sn ] の元 J1 , . . . , Jn を, J1 = 0, Jk = k−1 ∑ (i k) (k = 2, 3, . . . , n) i=1 で定める. ここで (i k) は i と k の互換を表す. これらは Jucys–Murphy 元と呼ばれ, 近 年表現論における重要性が増している(たとえば [1] 参照). 互いに可換であることは 容易に確かめられる. さらに, J2 , . . . , Jn は C[Sn ] の極大可換部分代数を生成することが 知られている. Jucys–Murphy 元は C[Sn ] に積で自然に作用するが, 固有値として容量 A(λ) が登場する. そこで次の表示を得る. ∑ 命題 4.1 (Novak [22]). 群環 C[Sn ] の元として hk (J2 , . . . , Jn ) = σ∈Sn ak (σ)σ が成り立 つ. すなわち (4.1) の ak (σ) は, hk (J2 , . . . , Jn ) における σ の係数である. さらに完全対称多項式が hk (J2 , . . . , Jn ) = ∑ Jt1 Jt2 · · · Jtk 2≤t1 ≤t2 ≤···≤tk ≤n = ∑ t∑ 1 −1 t∑ 2 −1 2≤t1 ≤t2 ≤···≤tk ≤n s1 =1 s2 =1 ··· t∑ k −1 (s1 t1 )(s2 t2 ) · · · (sk tk ) sk =1 と書けることから, 次のように組合せ論的な言い換えができる. 系 4.2. ak (σ) は, 置換 σ ∈ Sn の長さ k の単調分解の個数である. すなわち, k 個の互換 の列 (s1 t1 ), . . . , (sk tk ) で次の条件を満たすものの個数が ak (σ) である. si < ti ; 2 ≤ t1 ≤ · · · ≤ tk ≤ n; σ = (s1 t1 ) · · · (sk tk ). さらにこの事実から容易に以下が分かる. (1) ak (σ) は非負整数である. (2) k ≥ n − ℓ(σ) でなければ, ak (σ) = 0 である. ここで, ℓ(σ) は σ のサイクルの個数 (すなわちサイクルタイプの長さ)である. (3) k ≡ n − ℓ(σ) (mod 2) でなければ ak (σ) = 0 である. 系の (1) は (4.1) の表示からは明らかでないことに注意しよう. ak (σ) が非負整数であ ることは, 組合せ的解釈により従う. 系の (2) は, 置換 σ を互換の積で表すとき, 少なく とも n − ℓ(σ) 個必要であることから従う. 系の (3) は, 置換の偶奇を考えれば明らかで ある. ak (σ) はフルビッツ数とも関連が深い ([9]). 例 4.1. σ を恒等置換 idn とし, k = 2 としよう. 系 4.2 によれば, a2 (idn ) は, idn = (s1 t1 )(s2 t2 ) かつ t1 ≤ t2 ≤ n を満たす互換の組 (s1 t1 ), (s2 t2 ) の個数である. 明らかに (s1 t1 ) = (s2 t2 ) でなければならず, またそうであれば十分である. したがって, a2 (idn ) ( ) ( ) は Sn の互換の個数 n2 に等しい: a2 (idn ) = n2 = 12 n(n − 1). さて系 4.2 より, l = ℓ(σ) ならば (−1)n−l WgU (σ; N ) = an−l (σ) an−l+2 (σ) an−l+4 (σ) + + + ··· N 2n−l N 2n−l+2 N 2n−l+4 が分かる. よって k = n − ℓ(σ) のときが主要項の係数を与えるが, この場合は次のよう (2r)! にカタラン数 Cat(r) = (r+1)! で与えられる. 特に [20] では, 系 4.2 に基づいた組合せ論 r! 的証明を与えた. 深入りしないが, もっと一般的にモノミアル対称多項式 mλ (J2 , . . . , Jn ) における σ の係数について, 詳しい結果を得ている. 定理 4.3 (Collins [2], M–Novak [20]). 置換 σ ∈ Sn のサイクルタイプが µ = (µ1 , . . . , µl ) のとき, l ∏ an−l (σ) = Cat(µj − 1). j=1 その他の係数 ak (σ) の具体的な値もいくらか知られている. また後に Féray [8] によ り ak (σ) たちの漸化式が得られおり, ak (σ) の値を原理的には帰納的に求めることがで きる. 例 4.1 で a2 (idn ) は a2 (idn ) = 12 n(n − 1) のように n に関する多項式で書けた. 一般に ak (σ) について, n に関する次のような「多項式性」がある. 定理 4.4 (M–Novak [20]). σ ∈ Sn とする. このとき ak (σ) は n の多項式である. より一 ∑ 般に, 任意の対称多項式 f (x1 , . . . , xn ) に対し, a(f, σ) を σ∈Sn a(f, σ)σ = f (J1 , . . . , Jn ) で定めると, a(f, σ) は n の多項式である. なお, 特別な場合 a(f, idn ) が n の多項式であることは, Stanley [24] により初めて示さ れた. 定理 4.4 の証明のアイディアだけ述べよう. • a(f, σ) = ∑ λ λ⊢n f (A(λ)) fn! χλ (σ) と書ける. 式 (4.1) 参照. • 関数 (λ1 , . . . , λl ) 7→ f (A(λ)) は, (Okounkov–Olshanski の) シフト対称関数である. シフト対称関数とは, 変数 xi := λi − i に関して対称な多項式をいう. • シフト Schur 関数 s∗ν は, シフト対称関数全体のなす代数の Q-基底をなす. そこで ∑ λ 分割 ν と置換 σ ∈ Sn を固定し, λ⊢n s∗ν (λ) fn! χλ (σ) が n の多項式であることを示 せば十分であるが, この値は明示的に計算可能で, 次のように確かに n の多項式 となる: ( n−|µ̃| )χν λ ∑ (|ν| ≥ |µ̃| のとき) f |ν|−|µ̃| µ̃∪(1|ν|−|µ̃| ) s∗ν (λ) χλ (σ) = 0 n! (それ以外). λ⊢n ここで, σ の固定点を除いたもののサイクルタイプを µ̃ とした. 4.2. 直交群. いまユニタリ群の場合に述べたことは, 直交群への類似を考えることができる. 結果だ け述べよう. N ≥ 2n − 1, σ ∈ S2n とし, l = κ(σ) を σ のコセットタイプの長さとすると, WgO (σ; N ) = ∞ ∑ (−1)k bk (σ)N −n−k , bk (σ) = ∑ hk (A(2) (λ)) λ⊢n k=0 f 2λ ω λ (σ) (2n − 1)!! となる. ここで A(2) (λ) は multiset {2j − i − 1 | (i, j) ∈ λ} のことである. 定理 4.5 (M [13]). 係数 bk (σ) について, 次が成り立つ. (1) 群環 C[S2n ] の元として hk (J1 , J3 , . . . , J2n−1 )Pn = ∑ こで Pn = ζ∈Hn ζ. ∑ σ∈S2n bk (σ)σ が成り立つ. こ (2) bk (σ) は, 次を満たす互換の列 (s1 t1 ), . . . , (sk tk ) の個数に等しい(単調分解の 類似): si < ti ; 3 ≤ t1 ≤ · · · ≤ tk ≤ 2n − 1; 各 ti は奇数; (s1 t1 ) · · · (sk tk ) ∈ σHn . (3) bk (σ) は非負整数であり, k ≥ n − l でなければ bk (σ) = 0. ただし, l は σ のコセッ トタイプの長さ κ(σ). (4) π ∈ Sn のサイクルタイプと σ ∈ S2n のコセットタイプが一致するとき, bk (σ) ≥ ak (π). ∏ (5) σ のコセットタイプが µ = (µ1 , . . . , µl ) となるとき, bn−l (σ) = lj=1 Cat(µj − 1). (6) σ ∈ S2n に対し bk (σ) は n の多項式である. Class C AI A II A III BD I C II D III CI 対称空間 U(N )/O(N ) U(2N )/Sp(N ) U(N )/U(p) × U(q) O(N )/O(p) × O(q) Sp(N )/Sp(p) × Sp(q) (N = p + q) O(2N )/U(N ) Sp(N )/U(N ) ランダム行列 circular orthogonal ensemble (COE) circular symplectic ensemble (CSE) chiral ensemble Bogoliubov-de Gennes (BdG) ensemble 図 1: 古典型コンパクト対称空間 定理 4.5(3) から, N → ∞ で WgO (σ; N ) = (−1)n−l bn−l (σ)N −(2n−l) + (−1)n−l+1 bn−l+1 (σ)N −(2n−l+1) + O(N −(2n−l+2) ) となる. 定理 4.5(5) より主要係数 bn−l (σ) はカタラン数の積で与えられる. 第 2 係 数 bn−l+1 (σ) も別の組合せ論的解釈が可能である. たとえば次の式は [13] で予想され, Féray [8] により証明された: σ ∈ S2n のコセットタイプが µ = (k + 1, 1n−k−1 ) のとき, ( ) 2k + 1 k bn−ℓ(µ)+1 (σ) = bk+1 (σ) = 4 − . k 4.3. 斜交群. 斜交 Weingarten 関数は, 定義から直交 Weingarten 関数と WgSp (σ; N ) = (−1)n sgn(σ)WgO (σ; −2N ) (σ ∈ S2n ) という関係にある. よって符号を無視すれば N → ∞ における漸近挙動は直交群の場 合に帰着される. 5. コンパクト対称空間の Weingarten calculus 第 2 章と第 3 章で, 3 つのコンパクトリー群 U(N ), O(N ), Sp(N ) の Weingarten calculus を述べた. この章では, コンパクト対称空間 G/K に付随するランダム行列の Weingarten calculus について述べる. 古典リー群がそのルート系により A,B,C,D と分類されるように, 古典型対称空間も 分類される. 図 1 で与えられるコンパクト対称空間 G/K の例を考える. 最も基本的な ものは A I 型の対称空間 U(N )/O(N ) である. これに付随するランダム行列は, ランダ ム行列理論で円直交アンサンブル (COE) と呼ばれ, 固有値分布を中心によく研究され ている (例えば [7, Ch.2] 参照). コンパクト対称空間 G/K に付随するランダム行列とは何かを説明しよう. G/K は図 の対称空間のどれかであるとする. G/K のカルタン対合 Ω : G → G を考える. K は G における Ω の固定点全体である. G の部分集合 S = {s = g0 Ω(g0 )−1 | g0 ∈ G} に, G が g.s = gsΩ(g)−1 (g ∈ G, s ∈ S) と推移的に作用し, G/K と S は G の作用も込みで微分多様体として同型になる. また G/K には G の作用で不変な確率測度が一意的に存在するが, この同型を通じて S に確 率測度 ds が導出される. S の元を確率 ds で取り出したランダム行列 V を, G/K に付随 するランダム行列と呼ぶ. たとえば U(N )/O(N ) のとき, Ω(g) = (g T )−1 であって, S は N 次の対称ユニタリ行列 全体となる. COE 行列とは対称ユニタリなランダム行列 V であって, 任意の(固定さ れた)ユニタリ行列 g ∈ U(N ) に対し gV g T と V が同分布となるようなものである. さて, 図 1 で挙げた 7 種の対称空間それぞれに対し, 別々の Weingarten calculus が構 築される. すなわち, 異なる公式と異なる Weingarten 関数が登場するわけである. それ らをすべて紹介することは論文 [16] や数理解析研究所講究録 [19] にまわすとして, いく つかの結果をピックアップをしよう. 5.1. A I 型, A II 型. 定理 5.1 (M [15]). V = (vij )1≤i,j≤N を U(N )/O(N ) に付随するランダム行列(COE 行 列)とする. 添え字の列 i = (i1 , i2 , . . . , i2n ), j = (j1 , j2 , . . . , j2m ) に対し, ∑ δσ (i, j)WgO (σ; N + 1) E[vi1 i2 vi3 i4 · · · vi2n−1 i2n vj1 j2 vj3 j4 · · · vj2m−1 j2m ] = δnm σ∈S2n となる. ここで δσ (i, j) は (2.4) で与えられるもので, WgO は直交 Weingarten 関数で ある. リー群の場合, 公式は二重和で与えられていた(定理 2.1, 3.1, 3.2)が, COE 行列の ∑ 場合は和は一つ σ∈S2n だけであることに注意しよう. これは他の対称空間の場合でも 同様である. そして, 驚くべきことだが, U(N )/O(N ) に対応する Weingarten 関数は, 直交 Weingarten 関数の N を N + 1 に置き換えただけのものと一致する. なお, A II 型 U(2N )/Sp(N ) の Weingarnten 関数は, WgSp (σ; N − 21 )(定義 (3.4) において N を形式 的に N − 12 に置き換えたもの)である. なぜこのように少しパラメータをずらした直 交/斜交 Weingarten 関数が登場するのか, という疑問には, 今でもはっきりとは答えら れない. 系 5.2 (M [15]). COE 行列 V = (vij )1≤i,j≤N の対角成分 vii と非対角成分 vij の, 絶対値 の偶数次モーメントが次のように明示的に計算される. 2n n! , r=1 (N + 2r − 1) E[|vii | ] = ∏n 2n E[|vij |2n ] = n! . ∏n−2 (N + 2n − 1) r=0 (N + r) 5.2. A III 型, BD I 型, C II 型. A III 型, BD I 型, C II 型の対称空間は, G(N )/(G(p)×G(q)), ただし G(N ) = U(N ), O(N ), or Sp(N ), N = p + q, の形をしている. 登場する Weingarten 関数は, N だけではな く p, q に依存することになる. ここでは A III 型の Weingarten 関数の具体的表示だけ 記そう. シューア多項式 sλ (x1 , . . . , xN ) の変数を x1 = · · · = xN = 1 と特殊化すると, fλ sλ (1N ) = |λ|! Cλ (N ) となることを思い出そう(第 2 章). A III 型の Weingarten 関数は 次で与えられる: p q z }| { z }| { 1 ∑ λ sλ (1, . . . , 1, −1, . . . , −1) λ A III Wg (σ; p, q) = χ (σ) f n! λ⊢n sλ (1, . . . , 1) | {z } p+q (σ ∈ Sn ). 特にこれは Sn の類関数である. なお, BD I 型, C II 型の Weingarten 関数は, それぞれ Hn -不変, Hn -twisted となり, シューア多項式の代わりに帯多項式 Zλ , 斜交帯多項式 Zλ′ が登場する. 5.3. D III 型, C I 型. D III 型と C I 型はややマイナーなランダム行列が対応する. D III 型の Weingarten 関数 WgD III (σ; N ) (σ ∈ S2n ) は, これまで登場したものとは異なり, 次のような性質をもつ. WgD III (ζσζ ′ ; N ) = sgn(ζ)WgD III (σ; N ) (σ ∈ S2n , ζ, ζ ′ ∈ Hn ). すなわち, 片側 Hn -不変かつ反対側 Hn -twisted となる. このような性質をもつ関数は Ivanov [10] により研究されており, Hn -bispherical function でフーリエ展開することが 可能である. WgD III (σ; N ) は, n が偶数 n = 2m でなければ 0 になる. さらに, σ ∈ S4m のコセット タイプが 2ν (ν は m の分割) という形をしているときだけ生き残り, そのときの値は ) ( 1 1 D III U Wg (σ; N ) = ± 2m−ℓ(ν) Wg ν; N − 2 2 となる. ここで, WgU (ν; N − 12 ) はユニタリ Weingarten 関数のサイクルタイプ ν となる 置換での値である. 驚くべきことに, D III 型(そして C I 型の)Weingarten 関数は, 大 雑把に言うとユニタリ Weingarten 関数に一致するという現象が見られる. 6. Remarks, applications, and future research 最後に Weingarten calculus の他の発展や応用, 今後の課題について述べる. 6.1. 特殊ユニタリ群. 特殊ユニタリ群 SU(N ) = {g ∈ U(N ) | det g = 1} や特殊直交群 SO(N ) = {g ∈ O(N ) | det g = 1} の Weingarten calculus について述べられていないことを不審に思わ れたことであろう. 実はこれらは U(N ) や O(N ) よりも難しく, 未完成である. 難しい理 由は, 不変式の記述がより複雑になるためである. 僅かな結果の例として, 次を挙げよう. U = (uij )1≤i,j≤N を SU(N ) のハール測度に従うランダム行列とするとき, N 次のモーメン ト E[ui1 j1 · · · uiN jN ] は, (i1 , . . . , iN ) および (j1 , . . . , jN ) がともに (1, 2, . . . , N ) の順列にな るときのみ消えない. さらにこのとき σ ∈ SN に対し, E[u1σ(1) u2σ(2) · · · uN σ(N ) ] = sgn(σ) N! が成り立つ. 6.2. 例外型コンパクト群. 例外型コンパクトリー群も, 適当に行列群と見なせば Weingarten calculus を考えるこ とができる. たとえば, コンパクト群 G2 は八元数体 O の自己同型群として与えられる が, O の単位元を固定することから SO(7) の部分群として実現される. G2 の Weingarten calculus は現在進展中であるが, 低次のモーメントは完全に計算されている. 6.3. ウィッシャート行列. 統計学で重要な実ウィッシャート行列を考えてみよう. Σ を N 次正定値実対称行列と し, X1 , . . . , Xp を独立同分布なランダム列ベクトルで, 平均 0, 分散行列 Σ の N 次元実 正規分布に従うとする. このとき N × N ランダム対称行列 W = X1 X1T + · · · + Xp XpT を実(中心)ウィッシャート行列という. W の逆行列 W −1 = (wij )1≤i,j≤N について, 次 の公式が得られている(M [14]). q = p − N − 1 とおき, n は 2n − 1 ≤ q を満たすとす る. このとき任意の添え字の列 (i1 , . . . , i2n ) に対し ∑ ∏ E[wi1 i2 wi3 i4 · · · wi2n−1 i2n ] = WgO (σ; −q) (Σ−1 )ia ib σ∈M2n {a,b}∈σ が成り立つ. ここで, また驚くべきことであるが, 直交 Weingarten 関数が登場している. このように, 異なるランダム行列に対しパラメータを変化させた Weingarten 関数が 登場する現象が見られることは興味深い. 6.4. ユニタリ群上のブラウン運動. ユニタリ群 U(N) 上のブラウン運動とは, 確率微分方程式 1 dUN (t) = UN (t)dKN (t) − UN (t)dt, 2 UN (0) = IN 2 の強い解 UN (t) のことである. ここで KN (t) はリー環 u(N ) ∼ = RN 上のブラウン運 動である. t → ∞ のとき UN (t) の振る舞いはハール分布に近づいていく. UN (t) の Weingarten calculus が, Dahlqvist [5] により最近得られた. 6.5. 応用. Weingarten calculus はランダム行列の多項式関数の積分を計算するための基本的な道 具である. 数理物理を含め, ランダム行列を用いる様々な分野で応用され発展している. 最後に講演者が把握している応用分野を挙げ, 文献を一つずつ挙げよう. • Harish-Chandra–Itzykson–Zuber 積分の漸近挙動 ([9]). • ランダム解析関数 [11] • デザインとコード [23] • 量子チャンネル [21] • 共形場理論 [6] 参考文献 [1] T. Ceccherini-Silberstein, F. Scarabotti, F. Tolli, Representation theory of the symmetric groups. The Okounkov-Vershik approach, character formulas, and partition algebras, Cambridge Studies in Advanced Mathematics, 121. Cambridge University Press, 2010. [2] B. Collins, Moments and cumulants of polynomial random variables on unitary groups, the Itzykson-Zuber integral and free probability, Int. Math. Res. Not. 2003 (17) (2003) 953–982. [3] B. Collins and S. Matsumoto, On some properties of orthogonal Weingarten functions, J. Math. Phys. 50 (2009), no. 11, 113516, 14 pp. [4] B. Collins and P. Śniady, Integration with respect to the Haar measure on unitary, orthogonal and symplectic group, Comm. Math. Phys. 264 (3) (2006) 773–795. [5] A. Dahlqvist, Integration formula for Brownian motion on classical compact Lie groups, arXiv:1212.5107v2, 25 pages. [6] P. Diaz, Novel charges in CFT’s, Journal of High Energy Physics, 09 (2014) 031, 53 pages. [7] P. J. Forrester, Log-gases and random matrices, London Mathematical Society Monographs Series 34, Princeton University Press, 2010. [8] V. Féray, On complete functions in Jucys-Murphy elements, Ann. Comb. 16 (2012), 677–707. [9] I. P. Goulden, M. Guay-Paquet, and J. Novak, Monotone Hurwitz numbers and the HCIZ integral, Annales Mathématiques Blaise Pascal 21, (2014), 71–89. [10] V. N. Ivanov, Bispherical functions on a symmetric group that are associated with the hyperoctahedral subgroup. Zap. Nauchn. Sem. S.-Peterburg. Otdel. Mat. Inst. Steklov. (POMI) 240 (1997), Teor. Predst. Din. Sist. Komb. i Algoritm. Metody. 2, 96–114, 292; translation in J. Math. Sci. (New York) 96 (1999), no. 5, 3505–3516. [11] M. Krishnapur, From random matrices to random analytic functions, Ann. Probab. 37 (2009), 314–346. [12] I. G. Macdonald, Symmetric Functions and Hall Polynomials, second ed., Oxford University Press, Oxford, 1995. [13] S. Matsumoto, Jucys-Murphy elements, orthogonal matrix integrals, and Jack measures, Ramanujan J. 26 (2011), no. 1, 69–107. [14] S. Matsumoto, General moments of the inverse real Wishart distribution and orthogonal Weingarten functions, J. Theoret. Probab. 25 (2012), no. 3, 798–822. [15] S. Matsumoto, General moments of matrix elements from circular orthogonal ensembles, Random Matrices: Theory and Applications 1 (2012), no. 3, 1250005, 18 pages. [16] S. Matsumoto, Weingarten calculus for matrix ensembles associated with compact symmetric spaces, Random Matrices: Theory and Applications 2 (2013), no. 2, 1350001, 26 pages. [17] 松本詔, Jucys-Murphy 元を変数とする対称関数 (Japanese), 数理解析研究所講究録 no. 1770 (2011), 35–51. [18] 松本詔, 直交群の Weingarten 関数と帯多項式 (Japanese), 数理解析研究所講究録別冊 B36 (2012), 113–129. [19] 松本詔, コンパクト対称空間に付随する行列空間上の多項式積分について (Japanese), 数 理解析研究所講究録, no. 1945 (2015), 1–20. [20] S. Matsumoto and J. Novak, Jucys-Murphy elements and unitary matrix integrals, Int. Math. Res. Not. (2013), no. 2, 362–397. [21] A. Montanaro, Weak multiplicativity for random quantum channels, Commun. Math. Phys. 319 (2013), 535–555. [22] J. Novak, Jucys–Murphy elements and the unitary Weingarten function, Banach Center Publication 89 (2010), 231–5. [23] A.J. Scott, Optimizing quantum process tomography with unitary 2-designs, J. Phys. A: Math. Theor. 41 (2008), 055308, 26 pages. [24] R.P. Stanley, Some combinatorial properties of hook lengths, contents, and parts of partitions, Ramanujan J. 23 (2010), 91–105.
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