DEA による 合併を考慮した事業体の効率性評価 1. 広島大学工学部第二類 システム・経営工学課程 0882068E 四方 良平 指導教官:坂和 正敏,西崎 一郎,加藤 浩介 所 属:知的システム工学 はじめに DEA(Data Envelopment Analysis) は、ある入 出力データを持つ複数の事業体間の効率性を比較、 判定するための手法である。本研究ではこの DEA の手法をもとに、事業体が合併を行う際の各々の 事業体の能力を測る方法を考察する。 モデル DEA の最も基本的なモデルである CCR モデル は以下のように定式化される。 2. CCR maxmize subject to ho = Xs u y 領域限定法 入力の i 番目のウエイト vi と k 番目のウエイト vk の間に 3.1. r ro m r X vi xio = 1 is m Xu y X vx =1 =1 r=1 r rj i=1 i ij + dj = 0 j = 1; ; n ur > = 0; r = 1; ; s vi > = 0; i = 1; ; m dj > = 0; j = 1; ; n ここで xij と yrj はそれぞれ事業体 j の入力 i と出力 r である。また 、vi と ur はそれぞれ入力 i と出力 r に掛けるウエイトである。また 、n は 事業体の数、s は出力の数、m は入力の数である。 この線形計画問題を解くことにより、事業体 o の CCR 効率値 ho を求める。この値は、すべての事 業体において入力に対する出力の割合を 1 以下に 抑える制約のもとで、当該の事業体 o の入力に対 する出力の割合の値を最大化した値で、その値が 最大 1 の場合その事業体は効率的であるという。 3. (1) 入出力のウエイトの関係に 、ある制約を設 けたいときの合併。 (2) 任意の合併した事業体間の 、詳しい効率値 の差異を考えたいときの合併。 よってここでは CCR モデルの欠点を改善し 、 (1) を実現するために 3-1(領域限定法) を、(2) を 実現するために 3-2(minmax 効率性,minsum 効 率性) の二つの事業体の評価モデルを採用し 、効 率値を求める。 事業体の合併 CCR モデルには以下のような欠点がある。 vk lik < uik = v < i = なる制約を CCR モデルに付加し問題を解く (出力 にも同様の制約を付加する)。ウエイトに一定の制 約を設けたことで通常の CCR モデルよりも一般 に効率値は下がる。さらに 0 に設定されるウエイ トもなくなる。また、上下限の lik と uik は例えば ある M > 1 である M をもとに、 1 x i xi lik = ; uik = M M xk xk Xn x で設定する。ここで xi = j=1 ij =n; xk = Xn x j=1 kj =n である。これは入出力の値の大きさを考慮した上 下限の設定を行うためである。 この方法によりウエイトに制約を設けた合併を 考えることができる。 効率性、minsum 効率性 CCR モデルの目的関数に次の 2 つの目的関数 を加え第 2 目的関数、第 3 目的関数とする。 3.2. minmax minmize max dj 設定されるウエイトに 0 が多く出現する。 効率的と判定される事業体が全事業体のうち 多数を占めてしまうことがある。 よって、以下の (1) 、(2) のような合併を考えたい 場合、これらの欠点を持つ CCR モデルで考える のは妥当ではない。 -41- j n X minmize d j=1 j このモデルにおいて、当該の事業体 o の minmax 効率値と minsum 効率値を以下のように定義する。 minmax 効率値:1− (第二目的関数を最小化 したときの do ) minsum 効率値:1− (第三目的関数を最小化 したときの do ) また、これらの効率値において、do = 0 の場合を それぞれ minmax 効率的、minsum 効率的である n という。maxj dj と j =1 dj は制約に関係あるそ れぞれの差異変数とすべての差異変数に関する関 n 数であるので、maxj dj と j =1 dj を最小化する ということはウエイトについてより厳しい制約を 設けていることを意味する。よってこれらの効率 値は一般に通常の CCR モデルの効率値よりも低 くなる。この方法により一般の CCR モデルに比 べ効率的と判定される事業体の数が減少する。そ れにより任意の合併した事業体の効率値に対し 、 通常の CCR モデルで効率的と判定された事業体 間でも特徴的な効率値を導き出せる。 P P シャプレ イ値 これまでの方法で任意の合併に対する効率値を 求めることができる。しかしそれらの値から直接 各々の事業体の合併に関する能力を判断すること はできない。よって、各々の事業体の合併の能力 を測るために、その尺度としてシャプレ イ値を用 いる。シャプレ イ値は以下のように定義される。 4. j (v ) = X (jSj)(v(S) SN n (jS j) = n (jN j j j jS j)!(jS j jN j! v (S fj g)) 8j 2 N 1)! j j ここで N は合併前の事業体の総数、 S は合併 を行った事業体の総数である。また、v (S ) v (S j ) は合併 S に事業体 j が参加したことによる効 率値の増分で、事業体 j の合併 S への貢献度を示 している。よってシャプレ イ値は事業体 j のすべ ての合併への貢献度の加重平均と考えられる。 fg 効率値とシャプレ イ値との関係 事業体 j のシャプレ イ値 j と効率値 j との間 には次の命題1のような関係がある。ここで jl は 事業体 j と l が合併してできた事業体の効率値で ある。 命題1 任意の事業体 c について、a > = b なる事 > 業体 a と b に対し ac = bc が成り立てば 、a > = b が成り立つ。 これまでに述べたモデルを用いて求められる入 出力に対するウエイトを用いれば 、多入力多出力 の場合でも 1 入力 1 出力に変換できる。よって命 題1の条件が成り立つ入出力の条件を 1 入力 1 出 力の場合で考える。 5. -42- 図 1 において、事業体 b を固定した状態で a > = b が満たされるならば 、事業体 a の存在するべき 領域は直線 t の上方になる。事業体 a と b がこの ような領域にあるとき、図 1 の直線 s より下方に 事業体 c が存在する場合に ac > = bc が成り立つ。 よって、事業体 a と b について a > = b が成り立っ ている場合、他のすべての事業体が直線 s の下方 に存在すれば a > = b が成り立つ。 数値実験 3 入力 3 出力の 5 つの事業体のデータを用いて、 CCR 効率値、領域限定法を用いた効率値、minsum 効率値、minmax 効率値の 4 つの効率値を各々の 事業体について求め、それらの値を用いて 4 種類 のシャプレイ値を求めた。その結果、CCR 効率値 を用いたシャプレ イ値は、事業体の効率値が 1 で 効率的と判定された事業体間に殆ど 差が見られな かったが 、minsum 効率値、minmax 効率値を用 いたシャプレイ値は、CCR モデルで効率的と判定 された事業体間でもある程度の差が見られた。領 域限定法で求めたシャプレイ値は、CCR モデルの シャプレ イ値よりも事業体間の差が大きかった。 6. おわりに 本研究では事業体の合併を考える際に、ウエイ トに制約を設けた場合と、目的関数を 3 目的に拡 張した場合のモデルを用いて任意の合併を考え 、 シャプレ イ値を用いて各々のモデルについて合併 に関する各々の事業体の能力を考えた。さらに求め た効率値とシャプレイ値の関係について考察した。 7. 参考文献 [1] 刀根 薫 ‘ 経営効率性の測定と改善‘ 日科技連 1993 ‘ ゲーム理論入門‘ [2] 鈴木 光男 共立出版 1981 [3] X.-B. Li and G.R.Reeves,‘ A multiple cri- teria approach to data envelopment analysis‘ European Journal of Operational Research vol. 115 pp. 507-517,1999
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