冠動脈不安定粥腫の同定とその効果的破綻予防、治療法の開発

冠動脈不安定粥腫の同定とその効果的破綻予防、治療法の開発に関する
多施設共同研究
主任研究者 山岸正和
金沢大学大学院医学系研究科・循環器内科
研究要旨:不安定狭心症、心筋梗塞などの急性冠症候群の発症基盤となる破綻する可能性の
高い粥腫を未然に診断可能となれば臨床的にも大変意義深い。本多施設共同研究では、各個
研究と共に、各施設において血管内超音波法により観察され、所定の基準に合致する冠動脈
局所を暫定的な不安定粥腫として 882 例の登録を完了し、
“前向き”追跡を開始した。また、
各個研究においては、診断精度の向上、治療効果の評価および非侵襲的診断法開発などにお
いての所定の成果を得た。
A. 研究目的
不安定狭心症、心筋梗塞などの急性冠症候
群は、冠動脈に内在する動脈硬化粥腫の破綻
とそれに続発する局所での血栓形成を基本病
態として発症する。この際、破綻する可能性
の高い粥腫を未然に診断可能となれば臨床的
にも大変意義深い。血管内超音波法は侵襲的
手技ではあるが、粥腫の比較的深部まで観察
可能であり、また粥腫安定性の指標となる、
粥腫線維性被膜厚、粥腫内部性状、粥腫弾性
特性などが評価可能であることから、不安定
粥腫診断法として注目されて来た。本共同研
究では一定の基準に基づいて診断された不安
定粥腫を“前向き”に経過観察することによ
り、粥腫不安定化の要因を探索し、不安定粥
腫診断の効果的予防、治療法の立案に寄与し
ようとするものである
B. 研究方法
各施設における診断的冠動脈造影、冠動脈形
成術施行に際して、冠動脈硬化病変部位を血
管内超音波法で観察し、以下の基準に合致す
る冠動脈局所を暫定的に登録した。
(1)血管造影法での狭窄率が50%未満の
病変。
(2)血管内超音波像の指標に加えて、形態
的特徴として、既存の粥腫破綻、血栓の局在、
石灰化の局在などを明記した。
C.研究成果
前年度に引き続き、平成 17 年度は 882 例、女
性 56 例、平均年齢 66.2 才)が各施設から登
録された。登録病変の血管内超音波指標の平
均値は、全血管面積 16.0 mm2,粥腫面積 9.3
mm2
%
粥
腫
面
積
58.7%
3
病変長 9.0 mm,病変容積 65.1mm 平均粥腫面
積 8.3 mm 拡大リモデリング 37%偏心性病変
69%石灰化 29%であった。現在かかる病変の予
後を追跡調査中である。また、各個研究にお
いては、診断精度の向上、治療効果の評価お
よび非侵襲的診断法開発などにおいての所定
の成果を得た。
D. 考察
本年度は、各施設において血管内超音波法に
より観察され、所定の基準に合致する冠動脈
局所を暫定的な不安定粥腫として 882 例の登
録を完了し、
“前向き”追跡を開始し、一部の
症例の予後についての情報を収集しつつある。
次年度も登録を継続する一方、登録症例の経
時的観察を行い、最終的には登録症例数 1500
(3ヵ年)を目標として解析に供する。