基礎マクロ経済学(小塚) 8.総需要:IS-LM分析 8.1 財市場と 曲線 財市場とIS曲線 IS=Investment and Saving ⇒ケインジアン・クロス(Keynesian Cross)で説明 <Keynesian Cross> 計画支出(PE):支出したい額(在庫を除く) 現実支出(Y) :在庫も含めた支出総額・GDP(産 出・所得)に等しい ⇒在庫により、両者は一致しない 1 PE = C + I + G = C (Y − T ) + I + G PE = A0 + MPC × (Y − T ) + I + G PE = (A0 + I + G − MPC × T ) + MPC × Y • • • • ここでA0は基礎消費(定数) MPCは限界消費性向で 0<MPC<1 の値 右辺のカッコ内 (A0 +I+G-MPC×T) は定数 MPC×Y より、Y-PE平面において、PEは傾き がMPC(0<MPC<1)の直線になる。 2 PE(計画支出), Y(所得=生産) <Keynesian Cross> 現実支出 計画支出( ) 計画支出(PE) 在庫取り崩し A 在庫積み増し 45度 Y2 Y0 Y1 Y(所得 =生産)3 • Y=PEとなる点A(Y0)が均衡点 • 点Aより右(Y1)⇒在庫増加(生産>計画支出) • 点Aより左(Y2)⇒在庫減少(生産<計画支出) <財政政策と乗数> ※いま、点A(Y=PE)の状態にあるとする 政府購入GがΔGだけ増加すると・・・ ⇒所得もΔYだけ増える ⇒その増分は、ΔY>ΔG ∆Y を政府購入(政府支出)乗数とよぶ ∆G 4 PE = (A0 + I + G − MPC × T ) + MPC × Y 政府支出がΔG増加し、計画支出=所得がΔG増加 →MPC×ΔG だけ消費増加(MPC:限界消費性向) →計画支出=所得がMPC×ΔG だけ増加 →MPC×MPC×ΔG だけ消費増加 →計画支出=所得がMPC×MPC×ΔG だけ増加 →・・・(以下延々) これらをまとめると、 2 ∆Y = ∆G + MPC × ∆G + MPC × ∆G + L 5 ( 2 ∆Y = ∆G 1 + MPC + MPC + L ∆Y 2 = 1 + MPC + MPC + L ∆G ) L (1) ここで両辺にMPCをかけると ∆Y 2 3 MPC × = MPC + MPC + MPC + L ( 2) ∆G (1)から(2)を引くと、 ∆Y 1 = ∆G 1 − MPC 6 <財政政策の効果> 現実支出 PE,Y B PE2 ΔG PE1 ΔY A ΔY> >ΔG 45度 Y 7 では、租税TがΔTだけ変化すると・・・ →可処分所得は-ΔT変化 →MPC×(-ΔT) だけ消費が変化 →計画支出=所得がMPC×(-ΔT) 変化 →MPC×MPC×ΔT だけ消費が変化 →計画支出=所得がMPC×MPC×(-ΔT)変化 →(以下延々) 所得の変化分を足し合わせると、 ∆Y MPC 2 = − ( MPC + MPC + L) = − ∆T 1 − MPC 8 ここで、 ∆Y MPC 2 = − ( MPC + MPC + L) = − ∆T 1 − MPC を租税乗数 租税乗数とよぶ 租税乗数 • ΔTは租税額の変化分 • ΔYとΔTは逆方向に動くので、右辺にマイナス がつく このように、政府支出や減税により国民所得が 増える効果を乗数効果 乗数効果と呼ぶ 乗数効果 9 <利子率と投資とIS> I = I (r ) であるので、 利子率r(↑) ⇒ 投資I(↓) ⇒ 産出・所得Y(↓) r IS Y 政府支出G(↑)⇒Y(↑) ⇒rが一定ならばISは右にシフトする 10 8.2 貨幣市場と 貨幣市場とLM曲線 LM曲線 <流動性選好仮説> 貨幣供給Ms(一定)と貨幣需要Lを考える r Ms L(r) M/P ここでrが上昇すると、L(M/P)は減少 ⇒運用するほうがトクだから 11 所得Yが増加⇒貨幣需要増加 ⇒L1からL2にシフトし、利子率rも上昇(左図) ⇒よって、Yが増加するとrが上昇する(LM) ※Ms=L であらわされるモデルを 貨幣需要関数とよぶ r Ms r LM r2 L2 r1 L1 M/P Y1 Y2 Y 12 貨幣供給Msが減少 ⇒利子率がr1からr2に上昇(左図) ⇒所得Yは変わらない ⇒LMがLM1からLM2にシフトする LM2 r Ms2 Ms1 r LM1 r2 r1 L M/P Y* Y 13 8.3 短期均衡 ISとLMを同じ平面上に描くと・・・ r LM r* IS Y* Y 14 ISとLMの交点がIS-LMモデルの均衡 ⇒財市場と貨幣市場の、双方の均衡条件を満 たす利子率rと所得水準Yが得られる。 ※すなわちこの均衡点において、 現実支出=計画支出 実質貨幣供給=実質貨幣需要 また教科書の図8-14にあるように、IS-LMモデ ルは、総需要曲線の形状を知るために重要 ※なおここでは、利子率(金利)は、実質と名目を 区別していない。短期の分析であるため、価格 は硬直的、すなわちインフレ率は0となっている からである。 15 補足:IS-LMモデルの数式による展開 • 方程式体系 Y = C + I + GL(1) (1)は所得(産出)は消費 と投資からなる。 C = A0 + MPC× (Y − T )L(2) (2)はケインズ型消費関数 A0 > 0, 0 < MPC < 1 (可処分所得により消 費は決まる) I = I0 − I1rL(3) (3)投資は金利水準で決 I0 > 0, I1 > 0 まる(金利が高いとき、 企業は投資を控える) • • • • • • • • • Y:所得(現実支出) C:消費 I:投資 r:利子率 G:政府支出 T:租税 A0 :基礎消費 MPC :限界消費性向 :独立投資 I0 <IS曲線> (2)(3)を(1)に代入し、(4)式を得る。⇒ これはYとrからなる平面上にグラフとして描ける (次スライド参照) ※Gが上昇すると、定数項が増加し、右にシフトすること がわかる 1 − MPC A0 + I0 + G + MPC× T r=− Y+ L(4) I1 I1 <IS曲線の図> r IS IS’ Y <LM曲線> また、Msを名目貨幣供給、Lを貨幣需要とすると、 MS = L L (5), L = l0 + l1Y − l2 r L (6) P l0 > 0, l1 > 0, l2 > 0 が成り立つ。 (P:物価水準) <LM曲線> これらを解くと、 l1 ( M / p ) − l0 r= Y − L (7) l2 l2 が得られる。これをYとrからなる平面上に書き (次スライド)、IS曲線と併記すると、次のよう になる。(次次スライド) <LM曲線の図> r LM LM’ Mの増加 ⇒切片減少 Y <IS-LM曲線の図> r IS LM r* Y* Y
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