内需型企業のグローバル化へ向けた挑戦 ―日本企業の ASEAN 市場

論 文 要 旨
所属ゼミ
小林喜一郎研究会
学籍番号
81330576
氏名
斉藤 直弥
(論文題名)
内需型企業のグローバル化へ向けた挑戦
―日本企業の ASEAN 市場攻略への提言―
(内容の要旨)
本研究は、内需型の日本企業が ASEAN 市場で成功するための要因を、様々な先行研究から仮説
を導出し事例研究を通じて分析、検証したものである。
先進国の成長が鈍化する一方で多くの新興国が台頭してきている時代、日本企業が世界をリード
していくためには、今後ビジネスの中心になりうる新興国市場でいかにして成功を勝ち取るかがカ
ギであると言える。とりわけ、食料品や日用品といった内需中心型の製造業やサービス業はその他
製造業と比べても海外展開が遅れている。これらの分野に属する企業を「内需型企業」と定義し、
新興国(ASEAN)の MOP/BOP 市場に進出し成功を収めるための要因を探る。
ASEAN 市場で事業を成功させている代表的な日本企業 5 社を取り上げて仮説を検証したところ、
当初設定した仮説とは異なる結果を得ることとなった。以下が本研究から得られた結果である。
【仮説】
 日本企業が新興国市場で成功を収めるためには、MOP/BOP 市場をターゲットとし、
 現地ニーズを反映してローカライズされた製品・サービスを、
 現地の消費者にとって購入可能な低価格で提供する必要がある。
【結果】
 日本企業が新興国市場で成功を収めるためには、MOP 市場をターゲットとし、
 文化的な距離を生かし「日本らしさ」を打ち出した高品質な製品・サービスを、
 現地の消費者にも受け入れられる「支払可能」な価格で投入する必要がある。
一般的に、新興国市場で成功するための成功要因は、現地ニーズに即してローカライズした製品
を低価格で投入することと捉えられている。しかしこの戦略は、特に B to C ビジネスにおいて、ロ
ーカルニーズに合わせすぎることで自社の特色が消えてしまうおそれがある。さらに価格を下げる
ために付加価値を削ることで、ブランドイメージを毀損してしまうおそれもある。そのため、日本
企業の強みである「高品質かつリーズナブルな価格」を生かし、価格及び製品のクオリティを下げ
ず、
「1 回あたりの支払額」を下げる方法で対応することも 1 つの選択肢であると考えられる。
本研究から得られた示唆は以下の通りである。
① ASEAN 域内では、依然として日本の文化に対する親しみや日本企業の品質に対する信頼感が
存在していると考えられる。
「日本」のイメージから連想される文化的な距離を生かし、日本の
強みを生かした製品・サービスを市場に投入する差別化戦略を取り、独自のポジショニングを
築き上げるべきである。
② 製品・サービスの品質を相当程度落としてまで低価格を追求すべきでない。重要なのは「支払
えるかどうか」であり、絶対的な低価格を達成する必要はない。
③ 一貫したマーケティング戦略のもと、自社の製品・サービスコンセプトをターゲットに対して
適切に伝えるためのプロモーション活動、チャネル選定が必要不可欠である。