存在定理の構成的証明可能性について 藤原 誠 数学専攻博士課程後期 3 年 (日本学術振興会特別研究員 DC2) ラムダ計算と論理の早春セミナー 2015 2015 年 3 月 17 日 1 / 21 数学基礎論 数学を形式化し,数学的に解析する! 2 / 21 数学基礎論 数学を形式化し,数学的に解析する! 数学における定理 ≈ (算術的) 公理体系における論理式. 2 / 21 記法 論理式 (e.g. ¬A → ¬B) は論理結合子 (∧, ∨, →, ¬, ∃, ∀) を用いて記述される. 公理体系は公理と推論規則から成る. 公理体系 Γ と論理式 S に対し,Γ + S は Γ に S を公理と して加えて得られる公理体系を表す. Γ ⊢ S (Γ で S が証明できる): Γ の公理から Γ の推論規則 によって S を導出する証明図が存在する. 例. Γ(standard) + (A → B) ⊢ (¬B → ¬A). A ⋄ A→B B →⊥ B ⊥ ⋄ A →⊥ ⋆ ¬B → ¬A ⋆ 3 / 21 主題. 存在定理の構成 (≈ 計算) 的証明可能性. 4 / 21 主題. 存在定理の構成 (≈ 計算) 的証明可能性. 存在定理の例.(中間値の定理) 全ての f (0) < 0 < f (1) なる連続関数 f : [0, 1] → R に対し, f (m) = 0 なる m ∈ (0, 1) が存在する. f 0 m 1 4 / 21 主結果の概要 多くの存在定理 T に対し,以下は同値である. 1 2 T が構成的数学 EL で証明可能. T が計算可能数学 RCA で一様存在証明可能. 5 / 21 構成的数学 (Constructive Mathematics) と 直観主義論理 (Intuitionistic Logic) 構成的数学 (ブラウアー,マルコフ,ビショップ) は, その全ての議論において「∼が存在する」を「∼が構 成できる」と解釈する数学. 6 / 21 構成的数学 (Constructive Mathematics) と 直観主義論理 (Intuitionistic Logic) 構成的数学 (ブラウアー,マルコフ,ビショップ) は, その全ての議論において「∼が存在する」を「∼が構 成できる」と解釈する数学. 構成的数学の始まりはブラウアー (20 世紀初頭) の直観 主義数学 (数学は人間の精神の産物...). 6 / 21 構成的数学 (Constructive Mathematics) と 直観主義論理 (Intuitionistic Logic) 構成的数学 (ブラウアー,マルコフ,ビショップ) は, その全ての議論において「∼が存在する」を「∼が構 成できる」と解釈する数学. 構成的数学の始まりはブラウアー (20 世紀初頭) の直観 主義数学 (数学は人間の精神の産物...). 1930 年代にハイティングとコルモゴロフはブラウアー の直観主義数学の公理化を試みた. 6 / 21 構成的数学 (Constructive Mathematics) と 直観主義論理 (Intuitionistic Logic) 構成的数学 (ブラウアー,マルコフ,ビショップ) は, その全ての議論において「∼が存在する」を「∼が構 成できる」と解釈する数学. 構成的数学の始まりはブラウアー (20 世紀初頭) の直観 主義数学 (数学は人間の精神の産物...). 1930 年代にハイティングとコルモゴロフはブラウアー の直観主義数学の公理化を試みた. ⇒ 直観主義論理! 6 / 21 BHK(Brouwer-Heyting-Kolmogorov) 解釈 ハイティングやコルモゴロフ,クライゼルらによって提唱 された論理結合子 (∧, ∨, →, ¬, ∃, ∀) の (非形式的) 解釈. 7 / 21 BHK(Brouwer-Heyting-Kolmogorov) 解釈 ハイティングやコルモゴロフ,クライゼルらによって提唱 された論理結合子 (∧, ∨, →, ¬, ∃, ∀) の (非形式的) 解釈. ⊥ の証明はない. A ∧ B の証明は A の証明 p と B の証明 q のペア (p, q) である. A ∨ B の証明は自然数 n と証明 p のペア (n, p) であり,n = 0 かつ p は A の証明,または n ̸= 0 かつ p は B の証明である. A → B の証明は任意の A の証明を B の証明に変換する手続 きである. ∀xA(x) の証明は任意の元 d を A(d) の証明に変換する手続き である. ∃xA(x) の証明は元 d と証明 p のペア (d, p) であり,p は A(d) の証明である. 7 / 21 BHK(Brouwer-Heyting-Kolmogorov) 解釈 ハイティングやコルモゴロフ,クライゼルらによって提唱 された論理結合子 (∧, ∨, →, ¬, ∃, ∀) の (非形式的) 解釈. ⊥ の証明はない. A ∧ B の証明は A の証明 p と B の証明 q のペア (p, q) である. A ∨ B の証明は自然数 n と証明 p のペア (n, p) であり,n = 0 かつ p は A の証明,または n ̸= 0 かつ p は B の証明である. A → B の証明は任意の A の証明を B の証明に変換する手続 き p とそれの証明 q のペア (p, q) である. ∀xA(x) の証明は任意の元 d を A(d) の証明に変換する手続き p とそれの証明 q のペア (p, q) である. ∃xA(x) の証明は元 d と証明 p のペア (d, p) であり,p は A(d) の証明である. 7 / 21 BHK(Brouwer-Heyting-Kolmogorov) 解釈 ハイティングやコルモゴロフ,クライゼルらによって提唱 された論理結合子 (∧, ∨, →, ¬, ∃, ∀) の (非形式的) 解釈. ⊥ の証明はない. A ∧ B の証明は A の証明 p と B の証明 q のペア (p, q) である. A ∨ B の証明は自然数 n と証明 p のペア (n, p) であり,n = 0 かつ p は A の証明,または n ̸= 0 かつ p は B の証明である. A → B の証明は任意の A の証明を B の証明に変換する手続 き p とそれの証明 q のペア (p, q) である. ∀xA(x) の証明は任意の元 d を A(d) の証明に変換する手続き p とそれの証明 q のペア (p, q) である. ∃xA(x) の証明は元 d と証明 p のペア (d, p) であり,p は A(d) の証明である. (論理式として表される) 命題 T が真 :=T が BHK 証明可能. 7 / 21 直観主義論理 古典論理 = 直観主義論理 + 排中律公理 A ∨ ¬A. 8 / 21 直観主義論理 古典論理 = 直観主義論理 + 排中律公理 A ∨ ¬A. ¬¬A → A (∀xA(x) → B) → ∃x(A(x) → B) (A → ∃xB(x)) → ∃x(A → B(x)) 直観主義論理 × × × 古典論理 ◦ ◦ ◦ 8 / 21 直観主義論理 古典論理 = 直観主義論理 + 排中律公理 A ∨ ¬A. ¬¬A → A (∀xA(x) → B) → ∃x(A(x) → B) (A → ∃xB(x)) → ∃x(A → B(x)) 直観主義論理 × × × 古典論理 ◦ ◦ ◦ 直観主義二階 (自然数と自然数上の関数を扱える) 算術 EL · · · (選択公理を認めない) 構成的数学の公理体系. 8 / 21 直観主義論理 古典論理 = 直観主義論理 + 排中律公理 A ∨ ¬A. ¬¬A → A (∀xA(x) → B) → ∃x(A(x) → B) (A → ∃xB(x)) → ∃x(A → B(x)) 直観主義論理 × × × 古典論理 ◦ ◦ ◦ 直観主義二階 (自然数と自然数上の関数を扱える) 算術 EL · · · (選択公理を認めない) 構成的数学の公理体系. マルコフ原理 MP : ¬¬∃xAqf (x) → ∃xAqf (x). · · · プログラム Φ が「停止しないことはない」ならば Φ は「停止する」. 8 / 21 直観主義論理 古典論理 = 直観主義論理 + 排中律公理 A ∨ ¬A. ¬¬A → A (∀xA(x) → B) → ∃x(A(x) → B) (A → ∃xB(x)) → ∃x(A → B(x)) 直観主義論理 × × × 古典論理 ◦ ◦ ◦ 直観主義二階 (自然数と自然数上の関数を扱える) 算術 EL · · · (選択公理を認めない) 構成的数学の公理体系. マルコフ原理 MP : ¬¬∃xAqf (x) → ∃xAqf (x). · · · プログラム Φ が「停止しないことはない」ならば Φ は「停止する」. 事実. EL ⊊ EL + MP ⊊ EL + (A ∨ ¬A). 8 / 21 (形式化された)Realizability 翻訳 (クリーネ, 1960’s): 存在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) が EL で証明可能 ⇔ f から g を構成するプログラムがあり,その正当性 が EL で証明できる. 存在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) が EL + MP で証明可能 ⇔ f から g を構成するプログラムがあり,その正当性 が EL + MP で証明できる. 9 / 21 (形式化された)Realizability 翻訳 (クリーネ, 1960’s): 存在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) が EL で証明可能 ⇔ f から g を構成するプログラムがあり,その正当性 が EL で証明できる. 存在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) が EL + MP で証明可能 ⇔ f から g を構成するプログラムがあり,その正当性 が EL + MP で証明できる. 存在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) が EL(+MP) で証明可能 ≈ f から g を構成するプログラムがあり,かつそのプログラム の正当性を証明するプログラムがある. 9 / 21 逆数学 (Reverse Mathematics) 目的は「数学の諸定理を論理的複雑さの観点から分類 する」こと. 10 / 21 逆数学 (Reverse Mathematics) 目的は「数学の諸定理を論理的複雑さの観点から分類 する」こと. 数学の諸定理を二階算術の弱い部分公理体系 RCA0 の 上で形式化し,それらと集合存在公理 (e.g. WKL, ACA) の同値性を調べる. 10 / 21 逆数学現象 (1970 年代∼) 多くの古典的な数学の定理は RCA0 で証明できるか,RCA0 上,弱ケーニヒの補題 WKL または算術的集合存在公理 ACA と同値になる. RCA0 ⊂ RCA ⊬ WKL. WKL0 :≡ RCA0 + WKL ⊬ ACA. ACA0 :≡ RCA0 + ACA ⊢ WKL. Mathematial Theorems ACA0 WKL0 RCA0 11 / 21 逆数学の例 (フリードマン,シンプソン,田中 etc.) ACA WKL RCA0 ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理. 任意の可算可換環は極大イデアルを持つ. 可算体上の可算ベクトル空間は基底を持つ. ケーニヒの補題. 可算無限グラフに対する結婚定理. ブラウアーの不動点定理. 可算個の開集合によって被覆されるコンパクト距 離空間は有限部分被服を持つ. 任意の可算可換環は素イデアルを持つ. 中間値の定理. ベールの範疇定理. 任意の可算体は代数閉体を持つ. 可算体上の有限生成ベクトル空間は基底を持つ. 可算無限グラフに対する実効的結婚定理. 有限な対象に関する定理. 12 / 21 RCA0 : 算術の基本公理 +∆01 (計算可能) 集合存在公理 +Σ01 数学的帰納法公理. 13 / 21 RCA0 : 算術の基本公理 +∆01 (計算可能) 集合存在公理 +Σ01 数学的帰納法公理. RCA: 算術の基本公理 +∆01 (計算可能) 集合存在公理 + 数学的帰納法公理. RCA ≈ 計算可能数学. 13 / 21 RCA0 : 算術の基本公理 +∆01 (計算可能) 集合存在公理 +Σ01 数学的帰納法公理. RCA: 算術の基本公理 +∆01 (計算可能) 集合存在公理 + 数学的帰納法公理. RCA ≈ 計算可能数学. 事実. 構成的数学 EL ⊊ EL + MP ⊊ EL + (A ∨ ¬A) = RCA. 13 / 21 存在定理の計算可能性と RCA 証明可能性 計算可能数学 RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) ≈ Muchnik 還元可能性, i.e. φ(f ) を満たす f ごとにオラク ル付きチューリング機械のプログラム Φ が存在し, ψ(f , g ) を満たす g は f をオラクルとしてプログラム Φ で計算可能. Medvedev 還元可能性, i.e. オラクル付きチューリング機 械のプログラム Φ が一様に存在し,φ(f ) を満たす f に 対し ψ(f , g ) を満たす g は f をオラクルとしてプログラ ム Φ で計算可能. 14 / 21 存在定理の計算可能性と RCA 証明可能性 計算可能数学 RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) ≈ Muchnik 還元可能性, i.e. φ(f ) を満たす f ごとにオラク ル付きチューリング機械のプログラム Φ が存在し, ψ(f , g ) を満たす g は f をオラクルとしてプログラム Φ で計算可能. 数学 ⊢ ∀f (φ(f ) → Φ|f ↓ ∧ψ(f , Φ|f )) なる原始再帰的 関数項 (≈ プログラム)Φ が存在する. Medvedev 還元可能性, i.e. オラクル付きチューリング機 械のプログラム Φ が一様に存在し,φ(f ) を満たす f に 対し ψ(f , g ) を満たす g は f をオラクルとしてプログラ ム Φ で計算可能. 14 / 21 存在定理の計算可能性と RCA 証明可能性 計算可能数学 RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) ≈ Muchnik 還元可能性, i.e. φ(f ) を満たす f ごとにオラク ル付きチューリング機械のプログラム Φ が存在し, ψ(f , g ) を満たす g は f をオラクルとしてプログラム Φ で計算可能. 数学 ⊢ ∀f (φ(f ) → Φ|f ↓ ∧ψ(f , Φ|f )) なる原始再帰的 関数項 (≈ プログラム)Φ が存在する. Medvedev 還元可能性, i.e. オラクル付きチューリング機 械のプログラム Φ が一様に存在し,φ(f ) を満たす f に 対し ψ(f , g ) を満たす g は f をオラクルとしてプログラ ム Φ で計算可能. ⇒ 計算可能数学 RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → Φ|f ↓ ∧ψ(f , Φ|f )) な る原始再帰的関数項 (≈ プログラム)Φ が存在する. 14 / 21 定理 A. (藤原.) φ(f ) が ∀uφqf (f , u) という形,ψ(f , g ) が ∀w ∃sψqf (f , g , w , s) という形の論理式として形式化される存在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) に対し,以下は同値である. 1 構成的数学 EL ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )). 2 計算可能数学 RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → Φ|f ↓ ∧ψ(f , Φ|f )) な る原始再帰的関数項 (≈ プログラム)Φ が存在する. 15 / 21 定理 A. (藤原.) φ(f ) が ∀uφqf (f , u) という形,ψ(f , g ) が ∀w ∃sψqf (f , g , w , s) という形の論理式として形式化される存在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) に対し,以下は同値である. 1 構成的数学 EL ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )). 2 計算可能数学 RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → Φ|f ↓ ∧ψ(f , Φ|f )) な る原始再帰的関数項 (≈ プログラム)Φ が存在する. 適用例. 可算無限グラフに対する実効的結婚定理 EMT は 2 の意味で 構成的証明可能であり,上記の形の論理式として形式化さ れる.よって EMT は 1 の意味で構成的証明可能である. 15 / 21 定理 B. (藤原) φ(f ) が ∀u∃v φqf (f , u, v ) という形,ψ(f , g ) が ∀w ∃sψqf (f , g , w , s) という形の論理式として形式化される存 在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) に対し,以下は同値である. 1 EL + MP ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )). 2 計算可能数学 RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → Φ|f ↓ ∧ψ(f , Φ|f )) な る原始再帰的関数項 (≈ プログラム)Φ が存在する. 16 / 21 (1 → 2) の証明 [1] (形式化された)Realizability 翻訳 (クリーネ, 1960’s): φ(f ) が ∀uφqf (f , u) という形,ψ(f , g ) が ∀w ∃sψqf (f , g , w , s) という形の時, EL ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) ⇒ EL ⊢ ∀f (φ(f ) → Φ|f ↓ ∧ψ(f , Φ|f )) なる原始再帰的関数 項 (≈ プログラム)Φ が存在する. ⇒ RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → Φ|f ↓ ∧ψ(f , Φ|f )) なる原始再帰的関 数項 (≈ プログラム)Φ が存在する. [1] F. G. Dorais, Classical consequences of continuous choice principles from intuitionistic analysis, Notre Dame Journal of Formal Logic 55, pp. 25-39, 2014. 17 / 21 (2 → 1) の証明 Negative translation と呼ばれる証明論の手法を用いて以下が 示せる. 補題. (Conservation Result) φ(f ) が ∀u∃v φqf (f , u, v ) という形のとき, RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → t | f ↓ ∧ ∀w ∃sψqf (f , t | f , w , s)) ⇒ EL + MP ⊢ ∀f (φ(f ) → t | f ↓ ∧ ∀w ∃sψqf (f , t | f , w , s)) . 18 / 21 (2 → 1) の証明 Negative translation と呼ばれる証明論の手法を用いて以下が 示せる. 補題. (Conservation Result) φ(f ) が ∀u∃v φqf (f , u, v ) という形のとき, RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → t | f ↓ ∧ ∀w ∃sψqf (f , t | f , w , s)) ⇒ EL + MP ⊢ ∀f (φ(f ) → t | f ↓ ∧ ∀w ∃sψqf (f , t | f , w , s)) . ⇒ EL + MP ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ∀w ∃sψqf (f , g , w , s)). 18 / 21 (2 → 1) の証明 Negative translation と呼ばれる証明論の手法を用いて以下が 示せる. 補題. (Conservation Result) φ(f ) が ∀u∃v φqf (f , u, v ) という形のとき, RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → t | f ↓ ∧ ∀w ∃sψqf (f , t | f , w , s)) ⇒ EL + MP ⊢ ∀f (φ(f ) → t | f ↓ ∧ ∀w ∃sψqf (f , t | f , w , s)) . ⇒ EL + MP ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ∀w ∃sψqf (f , g , w , s)). さらに,φ(f ) が ∀uφqf (f , u) という形ならば,ダイアレク ティカ解釈と呼ばれる証明論の手法を用いて MP を取り除 くことができる,つまり, ⇒ EL ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ∀w ∃sψqf (f , g , w , s)). 定理 A. 18 / 21 定理 B. (藤原) φ(f ) が ∀u∃v φqf (f , u, v ) という形,ψ(f , g ) が ∀w ∃sψqf (f , g , w , s) という形の論理式として形式化される存 在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) に対し,以下は同値である. 1 EL + MP ⊢ ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )). 2 計算可能数学 RCA ⊢ ∀f (φ(f ) → Φ|f ↓ ∧ψ(f , Φ|f )) な る原始再帰的関数項 (≈ プログラム)Φ が存在する. 注意. (横山&藤原, 2013) φ(f ) が ∃u∀v φqf (f , u, v ) という形,ψ(f , g ) が ∀w ∃sψqf (f , g , w , s) という形のある論理式 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) に対し,(1 → 2) は成り立たない! 19 / 21 考察 (逆数学研究における形式化を踏まえると...) 多くの存在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) に対して,以下 の 2 つの構成的証明可能性は同値である. 1 2 f から g を構成するプログラムがあり,かつその正当性 を証明するプログラムがある (≈ 構成的数学において証 明可能). f から g を構成するプログラムがあり,その正当性が計 算可能数学 (≈ RCA) で証明できる. 20 / 21 考察 (逆数学研究における形式化を踏まえると...) 多くの存在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) に対して,以下 の 2 つの構成的証明可能性は同値である. 1 2 f から g を構成するプログラムがあり,かつその正当性 を証明するプログラムがある (≈ 構成的数学において証 明可能). f から g を構成するプログラムがあり,その正当性が計 算可能数学 (≈ RCA) で証明できる. 課題. 2 において RCA を (ACA 程度まで) 強めた構成的証明可能性 の EL + α による特徴付け. 20 / 21 考察 (逆数学研究における形式化を踏まえると...) 多くの存在定理 ∀f (φ(f ) → ∃g ψ(f , g )) に対して,以下 の 2 つの構成的証明可能性は構成的に同値である. 1 2 f から g を構成するプログラムがあり,かつその正当性 を証明するプログラムがある (≈ 構成的数学において証 明可能). f から g を構成するプログラムがあり,その正当性が計 算可能数学 (≈ RCA) で証明できる. 課題. 2 において RCA を (ACA 程度まで) 強めた構成的証明可能性 の EL + α による特徴付け. これらの結果の証明は全て (メタに) 構成的である,つ まり,これらの結果は構成的数学において成り立つ. 20 / 21 PA 及び HA における対応する結果 命題. φ(x) が ∀uφqf (x, u) という形,ψ(x, y ) が ∀w ∃sψqf (x, y , w , s) という形の PA の論理式として形式化される存在定理 ∀x (φ(x) → ∃y ψ(x, y )) に対し,以下は同値である. 1 PA ⊢ ∀x(φ(x) → ψ(x, f (x)) なる原始再帰的関数 f が存 在する. 2 HA ⊢ ∀x(φ(x) → ∃y ψ(x, y )). 21 / 21 PA 及び HA における対応する結果 命題. φ(x) が ∀uφqf (x, u) という形,ψ(x, y ) が ∀w ∃sψqf (x, y , w , s) という形の PA の論理式として形式化される存在定理 ∀x (φ(x) → ∃y ψ(x, y )) に対し,以下は同値である. 1 PA ⊢ ∀x(φ(x) → ψ(x, f (x)) なる原始再帰的関数 f が存 在する. 2 HA ⊢ ∀x(φ(x) → ∃y ψ(x, y )). 課題. 同様の証明論的手法を用いて,限定算術に対する同様の主 張が示せないか? 21 / 21
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