科目名 多体系の量子物理

科目名
多体系の量子物理
英文科目名
担当教員
Quantum Physics of Many-Body Systems
教授 高野健一
メール
講義コード
B5006701
開講学期
6
単位数
2
takano
授業の目的・方針
電気伝導や磁性などの物質の様々な性質は,物質の構成要素である多数の原子や電子の振る舞いに帰着される.その原子や電子など
の微視的な粒子の運動は量子力学に従う.本講義の履修者は,1 個または少数個の粒子に対する波動関数による量子力学による扱い
をすでに学んできている.しかし,物質はきわめて多くの微視的な粒子から成る多体系であるため,多くの物質の性質を解明するに
は,量子力学を生成消滅する多粒子系に適用して,必要な情報を取り出すことができる理論である場の量子論をさらに学ぶ必要があ
る.本講義では,初等的な量子力学の知識を前提として,場の量子論の初歩を学ぶ.特に,ブラケットを用いた量子力学の形式に基
づき,場の演算子や生成消滅演算子を用いたボーズ粒子系やフェルミ粒子系の記述を理解する.このようにして,物質に対する様々
な理論を学んでいくための有力な手段である場の量子論の入り口まで受講者を案内する.
授業の達成目標(この授業科目終了時において達成すべき重要な目標)
① ブラケット形式に基づく場の量子論の基本的な定式化を理解する.
② フェルミ粒子とボーズ粒子を場の量子論によって記述できる.
ディプロマポリシーに基づく学習・教育目標〔対応する授業の達成目標〕
―
◎
(ⅰ)十分な工学基礎の知識を修得し、それを工学分野の学習、研究に適用する能力
(ⅱ)機械システム、電子情報および物質工学の各分野の基礎知識とこれらの内少なくとも1分野の専門
知識・技術ならびにそれらを応用する能力
〔
〕
〔①②〕
―
(ⅲ)目標を把握し、解決策を立て実行する問題解決能力
〔
〕
―
(ⅳ)物事に対して幅広い見方、考え方ができ、技術者の果たすべき役割と社会的責任を理解する能力
〔
〕
―
(ⅴ)日本語による的確なコミュニケーション能力および英語による基本的なコミュニケーション能力
〔
〕
成績評価の方法〔評価対象となる授業の達成目標〕
定期試験 60%〔①②〕
、レポート 40%〔①②〕
授業時間外の学習〔準備学習等〕および学習上の注意事項
教科書のうち,講義の各回の内容を,前後を含めて読んでおくことが望ましい.
※履修しておくことが望ましい科目
「力学 3(解析力学)
」
「量子力学 1」
「量子力学 2」
「統計力学」
教科書
西野友年著「今度こそわかる場の理論」
(講談社)2012 年 ISBN978-4061532823
参考書
(1)原康夫著「量子力学」
(岩波書店)1994 年 ISBN978-4000079259
(2)砂川重信著「量子力学」
(岩波書店)1991 年,ISBN978-4000061391
(3) J. J. Sakurai 著「現代の量子力学 上/下」
(吉岡書店)2014 年,ISBN978-4842703640/978-4842702254
(4)ランダウ,リフシッツ著「統計物理学 上/下」
(岩波書店)1980 年,ISBN978-4000057202/978-4000057219
(5)長岡洋介著「統計力学」
(岩波書店)1994 年,ISBN978-4000079273
授業計画
回
テーマ
内容
範囲
(章)
1
空間を格子に切って考える
場は変化の舞台,1 次元格子の状態,原子鎖の上の電子,ケットの導入
0,1 章
2
生成・消滅演算子への第 1 歩 1
消滅演算子の働き,重ね合わせ,観測と確率
2章
3
生成・消滅演算子への第 1 歩 2
量子的な干渉現象,平均値
2章
4
ブラの導入
共役,確率振幅と確率,位置を表す演算子,演算子の固有値と固有状態
3章
5
状態の時間変化
6
飛び移る粒子
定常解は平面波,固有エネルギー状態,定常ではない状態
5章
7
境界条件と直交系
周期境界条件,変換と逆変換,演算子の 2 次形式
6章
8
連続な空間へ 1
運動量とエネルギーと質量,確率密度関数と規格化,波数空間の演算子
7章
9
連続な空間へ 2
連続空間のハミルトニアン,規格直交関数と演算子
7章
10
無限に広い連続空間
連続な実空間の生成消滅演算子,位置を表す演算子,運動量を表す演算子
8章
11
波束の運動
波束の時間発展,位相速度と群速度
9章
同じ種類の多粒子系 -- ボーズと
粒子を穴だと思う,ボーズ演算子,フェルミ演算子,波数空間から連続へ,
フェルミ
交換しない位置と運動量
13
波動関数の対称性
縮約,多粒子波動関数の規格化,3 次元空間へ
11 章
14
フェルミ・ディラック縮退
スレーター行列,フェルミの海,フェルミ球
12 章
15
ボーズ粒子の集まり
ボーズ分布関数,ボーズアインシュタイン凝縮,コヒーレント状態
13,14 章
16
定期試験
12
時間を進める演算子,ハミルトニアン,シュレディンガー描像とハイゼンベ
ルグ描像
授業オフィスアワー(曜日・時間帯・場所等)
授業時間後(休憩時間)
,研究室を訪ねたときは可能な限り対応する(予約なし)
4章
10 章