人 工 細 胞 による電子演 算 回路 の開発 村 岡 貴博 東北大 学 多元物 質科学研 究所 〒9 8 0 - 8 5 7 7 宮 城 県仙 台市青葉 区片平 2 - 1 - 1 Development of rnolecular computing system working at artincial cellular lYlembrane lnstitute of NIultidisciplinary Research for Advanced MIaterials,Tohoku University 2-1-l Katahira,Aoba―kLl,Sendai,A/1iyagi,980-8577 Japan 概要 細胞膜 は一 つの演算 システ ム と見なす ことがで きる。 イオ ンポ ンプは抵抗、絶 縁体 であ るリポソー ム膜 は コンデ ンサ ー として表 され る。膜間 にお けるイオ ン 濃度差 は電池、 リガ ン ド応答 に よってイオ ン透過性 を示 し、抵抗 が変わ るイオ ンチャネルは可変抵抗 であ り、応答性 の ないイオ ンチャネルは通常 の抵抗 であ る。 これ らの分子素子 を人工的に構築 し、 さらに細胞膜 の ようにそれ らを集合 化、組織化する ことに より、人工演算分子 システムを再構築す る ことがで きる。 その 中で も本研究では、可変性 を示す分子デバ イスで あるイオ ンチ ャネルの人 工合成 を行 った。生体のイオ ンチャネル タ ンパ ク質 と同様 に、刺激 に応 じてイ オ ン透過性 を切 り替 える分子デバ イスの開発 に成功 した。 lBは じめ に が加 わ る と、ナ トリウ ム イオ ン ポ ン プ 情報 伝達 と処理 を行 う細胞 膜 は、生 が 開 き、その結果 ナ トリウ ム イオ ンは 体 演算素 子 とみ なす こ とがで きる。例 濃 度 勾 配 お よび電 気 的 勾 配 が 推 進 力 えば神経 細胞 で の情報 伝達 は、細胞 膜 とな り、細胞 内 へ 流 入 す る (脱分極 )。 を介 した イ オ ン濃 度 勾 配 に よ る電 位 こ こで ナ トリウ ム イ オ ン に よ る電 流 差 を利用 して行 われ て い る。通 常 、細 は カ リウ ム イ オ ン放 出 に よ る電 流 に 胞 膜 上 に あ るカ リウ ム イ オ ン ポ ン プ 打 ち勝 ち、膜 電位 が逆 転 し内側 が プ ラ に よ り、カ リウ ム イオ ンが 能動 的 に細 ス とな る。 これが 活 動電位 、 イ ンパ ル 胞 外 に放 出 され て お り、細胞 内部 は負 スで あ る。 こ うして局所 的 に生 じた電 電位 で あ る。 こ こに何 らか の興 奮刺激 位 は細 胞 膜 を通 して 素 早 く伝 搬 され 、 他 の 神 経 細 胞 と接 す る点 に お い て そ どの 芳 香族 ア ミン類 を リガ ン ドとし、 の 細胞 へ と伝 わ る こ とで 、情報 が 回路 イ オ ン透 過 性 を可 逆 的 に 制 御 し得 る を巡 る。 イ オ ン チ ャネ ル 分 子 の 開 発 を 目指 し 以 上 が 神 経 細 胞 の情 報 伝 播 機 構 で フ あ り、 こ こか ら分 か る とお り、 情報 伝 た。 達 で は イ オ ン透 過 を制 御 す るイ オ ン 2.実 験 。結果 チ ャネ ル と、 それ を固定 、 さ らには活 天 然 の ア ド レ ナ リ ン レセ プ タ ー で 動 電 位 を 伝 え る細 胞 膜 が 必 要 構 成 要 は、リガ ン ド受容部分 に酸性 の ア ミノ 素 で あ る。 こ こで 、 これ らの分子 素子 酸 残 基 と芳 香 族 ア ミノ酸 残 基 が 多 く を人工 的 に構 築 し、さ らに細胞 膜 の よ 配 置 され て い る こ とが 知 られ て い る うにそれ らを集 合化 、組織 化 す る こ と 従 って 、静電相互 作用 と芳香族 [4-61。 に よ り、人 工 演算分子 シス テ ム を再 構 相互 作用 に よって 、芳 香族 ア ミン類 で 築 す る こ とが で き る と考 え られ る。 こ あ る ア ド レ ナ リ ン を捕 捉 して い る こ こで 、細胞 膜 その もの を人工 的 に再構 築 す る技術 は、 リポ ソー ムの分野 で 開 とが 推察 され る。さ らに ア ドレナ リン レセ プタ ー は、複数 回膜買通 型構 造 を さ らに我 々 は これ ま 発 され て きた 111。 膜 内 で形 成 して お り、そ の上 台構 造 に で に、有機 合成 化学 的手法 を駆使 す る よ り情報 伝達 が 行 われ て い る。 これ ら こ とに よ り、イ オ ンチ ャネ ル タ ンパ ク の 点 を模倣 す る こ とで 、芳香族 ア ミン 質 を模 倣 した イ オ ン チ ャネ ル 分 子 の 類 に 応 答 す る人 エ イ オ ン チ ャネ ル 分 プ ロ トタ イ プ 開 発 に 成 功 して い る 子 を設計 した 。複数 回膜貫通 型 構 造 を この 人 エ イ オ ンチ ャネ ル分子 は、 形 成 す る膜 タ ンパ ク質 は、親水 的 な ア [2,31。 ミノ酸 残 基 を多 く合 む ペ プチ ド ドメ リポ ソー ム膜 上 に安 定 に存在 し、 リチ ウ ム イ オ ンや ナ トリウ ム イ オ ン な ど イ ン と、疎水 的 な ア ミノ酸 残基 を多 く の 金属 イオ ン を、サ イズ選 択 的 に透 過 す る。 さ ら に熱 的平 衡 状 態 にお い て 、 含 む ペ プチ ド ドメ イ ン とが 交 互 に連 一 結 され た 特 徴 的 な 次 構 造 を有 す る 開 閉 状 態 を繰 り返 して い る こ とも明 [710]。 表 面 が 親水 的、 内部 が 疎水 的 らか と成 って い る。 しか し演算分子 シ な空 間 を有 す る脂 質 三 分 子 膜 に 挿 入 ス テ ム を構 築 す るにあた り、天然 の膜 され る こ とで 、親水 的 な ペ プチ ドドメ タ ンパ ク質 同様 、 リガ ン ド脱 着 な どの イ ンが 膜 外 に、疎水 的 な ペ プチ ドドメ 外 部 刺 激 に 応 答 した 開 閉 待J御機 構 の イ ンが 膜 内 に配置 され 、複数 回膜貫通 実現 が重 要 で あ る。そ こで 本研究 で は、 型構 造 が形 成 され る。従 って 人 エ イオ 興 奮 刺 激 と して働 くア ドレ ナ リ ン な ンチ ャネ ル分 子 の設 計 にお い て 、同様 に親水部 と疎水部 とを交互 に連結 し 水 の添加 に伴 い、芳香族 ユニ ッ トに由 た分子構造 とした。疎水部 として、岡J 来 す る シ グナ ル が全 て 高 磁 場 シ フ ト 直 かつ棒状 で、賞光性 を有する芳香族 ユニ ッ トを用 いた。カチオンーパ イ相 した 。 これ らの こ とか ら、高極 性 溶媒 互 作用 に よるカチオ ン との親和性 に 中 で は、膜 挿入分子 は分 子 内 の 2 つ の 芳 香 族 ユ ニ ッ トを近 づ け た フ ォ ー ル よ り、金属イオ ン透過性 を導入できる デ ィ ン グ構 造 を形 成 して い る こ とが 可能性 と、蛍光顕微鏡観察や分光測定 に よる局 在情報や コ ンホ メ ー シ ョン 明 らか とな った 。 情報 の取得 が 可能 で あ る点 に注 目 し た。また疎水部中央 にキラルユニ ッ ト 入 は、蛍光顕微鏡観 察 に よ り検 討 した 。 二色性 スペ ク トル を を導入 し、円Ts 光 ア ン トベ シ クル を作成 した。得 られ た 用 い た構 造追跡 を可能 にす る分子設 分 散液 を位 相差 顕微 鏡 で 観 察 した所 、 計 とした。親水部 としては、非 イオ ン 性 で 柔軟性 を有す るオ リゴエ チ レン グリコール を用 い る こととした。さら 直径 1 0 ぃ m 程 度 の ベ シ クルの形 成 を 確 認 す る こ とがで きた。賞光 顕微 鏡下 に リガ ン ド認識部位 として、酸性 の リ らの 蛍 光 像 を 得 る こ とが で きた こ と ン酸 エ ス テ ル部位 を芳香族 ユニ ッ ト か ら、脂 質 二 分子 膜 中へ の 膜挿 入分 子 の近傍 に導入 した。これ らを基 に設計 の 導 入 を確 認 す る こ とがで きた 。脂 質 された膜挿 入分子 を、有機合成化学 に 三 分 子膜 中 で の膜挿 入分子 は、水 中 と 膜 挿 入分 子 の脂 質 二 分 子 膜 へ の導 膜挿入分 子 を リン脂 質 と混ぜ 、ジ ャイ m 程 度 の ベ シ クルか で も、直径 1 0 μ よ り合成 した。得 られた膜挿入分子は、 同様 の 円l s 光二 色 性 ス ペ ク トル を示 した 。従 って 、脂 質 二 分子 膜 中 にお い 核磁気共鳴スペ ク トル、および質量分 析 に より確認 した。 得 られた膜挿入分子 の コンホメ ー シ ョンについて、核磁気共鳴スペ ク ト 二色性 スペ ク トル ル、な らびに円ls 光 を用 いて調 べ た。低極性溶媒 であるテ トラヒ ドロ フラン中の場合、膜挿入分 て も、分子 内 の 2 つ の 芳香族 ユニ ッ ト を近 づ け た フ ォ ー ル デ ィ ン グ構 造 を 形 成 して い る こ とが示 唆 され た 。 この フォー ル デ ィ ン グ形成 は、 ラ ン グ ミュ ア膜 を用 い た 分 子 占有面 積 測 定 か ら、 フ ォ ー ル デ ィ ン グ構 造 の 断 面 積 に 相 二 色性 を示 し 子 は非常 に弱 い 円Ts 光 当 す る値 が 得 られ た こ とか ら も確 認 た。そこに水 を添加 し、溶媒 の極性 を 上 げる と、芳香族 ユニ ッ トが吸収 を示 す る こ とがで きた 。 す波長領域 の 円偏光 二 色性が上昇 し た。核磁気共鳴 スペ ク トルにおいて、 す る リガ ン ド認識 を、芳香族 ア ミンで 脂 質 三 分 子 膜 中 の 膜 挿 入 分 子 に対 あ る フ ェ ネ チ ル ア ミン を用 い て 調 べ た 。膜 挿 入分 子 を有 す る リン脂質 か ら 合 、わずか な電流透 過 が 見 られ た もの 成 るベ シ クル に対 し、フ ェネ チ ル ア ミ の 、そ の 強度 は極 めて 弱 い もので あ っ ン を添加 した所 、円ls 光 二 色性 ス ペ ク た。続 い て 膜 の 両側 に フェネチ ル ア ミ トル に お け るシ グ ナ ル 強 度 の 連 続 的 ン を添加 した場合 、電流 透過 の 大 幅 は な減 少 が 観 察 され た 。 この こ とか ら、 増加 が 観 察 され た 。従 って 、膜 挿 入分 リガ ン ド認 識 に よ り、膜 挿入分子 中 の 子 は、両側 で の リガ ン ド認識 に応答 し 2つ の 芳 香 族 ユ ニ ッ トが よ り近 接 す る コ ンホ メ ー シ ョン変 化 を示 す こ と て イ オ ン透 過 性 を制 御 可 能 で あ る こ とが 示 され た 。ベ ー タ シ ク ロ デ キ ス ト が 推 測 され る。核磁 気 共 鳴 ス ペ ク トル リ ン を用 い て フ ェ ネ チ ル ア ミン を膜 にお い て 、フ ェ ネチ ル ア ミン添加 に伴 挿 入分 子 か ら外 す と、電流 強度 は大 き い 、膜 挿 入分子 中 の芳 香族 ユニ ッ ト由 く減 少 し、再 度 フ ェネ チ ル ア ミンを両 来 の シ グ ナ ル が 高 磁 場 シ フ トした こ 側 か ら添加 す る と、電流 強度 の 回復 が とか ら、 フ ェネチ ル ア ミン との 間 で 芳 見 られ た こ とか ら、可逆性 を有 す る こ 香 族 性 相 互 作 用 が 働 い て い る こ とが とも明 らか となった 。精 密 な定 量 的評 示 唆 され る。 ジ ョブズ プ ロ ッ トか ら、 価 の 結果 、膜挿 入分子 が 6分 子集合 化 これ らが 1:1で 相 互 作用 して い る こ す る こ とで 超 分 子 イ オ ン チ ャ ネ ル が M とも示 され た 。解離定 数 は、約 400 μ 形 成 され て い る こ と も明 らか と成 っ と算 出 され た 。 この リガ ン ド認識過 程 を蛍 光 ス ペ ク トル で モ ニ タ ー した と て い る。 1111 こ ろ、 2段 回 の 変化 が 示 され た 。発光 3日結論 波 長 の 長 波 長 シ フ トが 見 られ た こ と 細 胞 膜 に お け る膜 タ ンパ ク質 類 か か ら、リ ガ ン ドの添加 に よ り、複合 化 ら構 築 され て い る生 体 演 算 シ ス テ ム と と もに膜 挿 入 分 子 同 士 の 自己集 合 か ら着想 を得 て 、人 工 分 子 を用 い た分 も進 行 す る こ とが 考 え られ る。 子演算素子 開発 を行 った 。 リガ ン ド認 続 い て 、膜 挿 入分 子 の金 属 イオ ン透 識性 膜 タ ンパ ク質 の構 造 に倣 い 、人 工 過性 につ い て検 討 した。 リン脂質 か ら 膜挿 入分 子 を設計 し、有機 合成 化学 的 成 る平 面 膜 中 に膜 挿 入分 子 を導 入 し、 手法 に よ り合成 す る こ とに成 功 した 。 金 属 イ オ ン透 過 を電 流 観 測 に よ り測 分光学 的手法 に よ り、水 溶液 中、な ら 定 した 。 リガ ン ド添加 前 で は、電流 は ほ とん ど観預lされず 、イ オ ン透 過性 が び に脂 質 二 分 子 膜 中 で の 膜 挿 入 分 子 の コ ンホ メ ー シ ョン を解 析 した結 果 、 見 られ な い こ とが示 され た 。膜 の 片側 分 子 内 の 2つ の 芳 香 族 ユ ニ ッ トを近 か ら フ ェ ネ チ ル ア ミン を添 加 した場 接 した立 体 構 造 で あ る こ とが 示 唆 さ れ た 。さ らに脂 質 三 分子 膜 中 にお い て 、 K.V.Tabata, H.Ntti, K. フ ェ ネチ ル ア ミン を認識 し、それ に応 Kinbara, Ion Perrneation by a 答 して 可 逆 的 に イ オ ン透 過 性 を ス イ Folded WIultiblock AInphiphilic ッチす る こ とも明 らか とな った 。 これ Oligomer に よ り、 リガ ン ド脱 着 とい う化学 的 イ Hierarchical Construction of ン プ ッ トに よ り応 答 す る可 変 抵 抗 分 Sel←Assembled Nanopores, J. 子 素子 を開発 す る こ とが で きた 。 Arne Chemo Soc. 2012, 134, Achieved by 19788-19794. 4口 謝辞 [41 T. Schrader, Towards Adrenaline Synthetic 本研 究 の 遂 行 に あた り、公 益財 団法 人 高 柳 健 次 郎 財 団 の 助 成 を受 け ま し Receptors一 Strong Binding of た 。ここに記 し、感謝 の意 を表 します。 Amino by Alcohols Angeレッ 1 Bisphosphonates, 5.参 考 文献 Cttem,rr2と,どが,どngF.1996,J5, ぴ Bllayぱ 82妃 が [1l Lつ θSθtteS,二 つメ 2649-2651, 狙GぴeF Memわ 五2担esr From Basメ c [51 Research rθ Appガ c2″θ幻, G. Adrenaline Receptors: Strong, Pabst,N.Kuも erka,M.― P,Nieh, Selective, and 」, Katsaras Eds。 , CRC Press, Recognition of 2014. Active Amino Alcohols by Biorl■ Receptor 0宅 Hamada,Nl.単 lorita,A/1.Takagi, Molecules, ユ K. NIimicking 1998,σ 」,264-272. Kinbara, h/1ultipass Translnembrane [61 imetic Blologically Bisphosphonate [21 T. 単 luraoka, T. Shilna, T. 。 θケ em, M.Herm,0.A/1olt,T.Schrader, Proteinsi Synthesis, Assembly Towards Synthetic Adrenaline and Folding of Alternating Receptors 単lolecules in T. WIuraoka, Tc ShiII■ Hamada,単 [71 a, T. I.帥lorita,Nl.Takagi, Recognition in 1485-1499. r2. 阿 。6θttrIP♂ Z194-196. ― Shape―Selective 「 似iユ 2002,8, Wヽ ater,CtterPP,ど Liposomal NIembranes, Cttθ 2011,イ Adrenaline h/1ultiblock Amphiphilic [31 T.Schrader,Tox/vard Synthetic P. J. F. Henderson, 12-transIIlembrane The helix ■ t r a n s p o r t e r ts t, rσ■ の 肋, C e ■ 五打θF,1993,あ 708-721. [81 E. llVallin, G. von Hettne, Genome,vtride Analysis of lntegral A/1embrane Proteins from Eubacterial, Archaean, and Eukaryotic OrganisIIls, Proをein Sが ,1998,Z1029. [9] Do Oesterhelt, The Structure and帥 Iechanislll of the Farnily of Retinal Halophilic Proteins from Archaea. σ 朋比 F,1998, 8, の 加 ,S″ 口Cr.β Fθ 489-500. [101 S. Subramaniam, Structure rhodopsin: of An Consensus.働 The Bacterio― Emerging ェん Op拘 。S″ycrロ 近丁οブ ,1999,9,462-468. [11l T. Nluraoka, T. Endo, K. V. Tabata,H.N句 1,S,Nagatoishi, K.Tsumoto,R,Li,K.Kinbara, ユ 九回 。勧 θ畑。Sθc,in press.
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