ゴム鋼併用型耐震緩衝装置のエネルギー吸収性能 学生氏名 渡辺淳史 指導教員 皆川 勝 1. 研究背景 兵庫県南部地震以来、橋梁に免震設計が積極的に採用されているが、これにより、橋桁の変位が大きくなる. そこで、桁の橋台間あるいは桁同士の間の相対変位を吸収する大型の伸縮装置が必要となる.このような大型 の伸縮装置を設置することはコスト増を招き、メンテナンス費用も増す.したがって、免震橋であっても通常 の伸縮装置を設置し、中小の地震による変形は伸縮装置に吸収させ、大規模地震に対しては、構造の一部を破 損させることを許容した方が合理的といえる.そこで、緩衝装置を橋台部や桁間に設置し、大規模な地震の際 には、緩衝装置が塑性変形あるいは破壊することで衝突エネルギーを吸収し、同時に桁の応答変位を小さく抑 え構造物自体に過大な損傷を与えない様にする事は効率的な対処方法といえる.本研究では、鋼管の外側にゴ ムを巻いた形式の緩衝装置を対象とし、衝突力の低減効果、エネルギー吸収効果について実験により検討した. 2. 緩衝材の材質及び形状 実験に用いた緩衝材の寸法及び形状を図-1 に示す.鋼 管の材質はSTKM13A、ゴムの材質はクロロプレンゴ tr 39 ts ム(硬度 60±5)をである.なお、緩衝材の奥行きはす R べて 100mmである. 3. 実験方法 R tr 及び ts R=70 tr=10,20,30,40 ts=4,5,6,7 全組合せ R=80 tr=15,25,35,45 ts=4,5,6,7 全組合せ R=95 tr=15,25,35,45 ts=8,10 全組合せ R=110 tr=15,25,35,45 ts=8,10 全組合せ 実験はサーボジャッキの両端をピンで固定した載荷 試験機を用い、剛体とみなせる型鋼の上に置いた試験体 単位(mm) 図-1 緩衝材の寸法及び形状 に静的に荷重を載荷し、荷重計及びレーザー変位計によ り荷重と変位を測定した.載荷可能な最大荷重(250kN)で実験を中断し、鋼管圧壊後のゴムによる衝撃力の吸 収を調査するために除荷、再載荷を行った.また、ゴム鋼併用タイプとの比較のため鋼管のみの実験も行った. 4. 実験結果 10000 ゴム70 95×8 ゴム70 95×10 荷重(kN) 200 150 100 50 0 0 50 100 変位(mm) 300 250 8000 ゴム70 95×8 ゴム70 95×10 6000 150 4000 100 2000 50 0 0 0 150 図-2 荷重-変位関係 50 100 変位(mm) 150 荷重(kN) 150 100 50 0 50 100 変位(mm) 図-3 荷重-変位関係 150 40 60 変位(mm) 80 100 図-6 荷重-変位関係 8000 エネルギー吸収量(kN・mm) エネルギー吸収量(kN・mm) ゴム70 95×8 ゴム70 110×8 0 20 10000 10000 200 0 図-4 エネルギー吸収量-変位関係 300 250 鋼管110×8 鋼管95×10 鋼管95×8 200 荷重(kN) 250 エネルギー吸収量(kN・mm) 300 ゴム70 95×8 ゴム70 110×8 6000 4000 2000 0 0 50 100 変位(mm) 150 図-5 エネルギー吸収量-変位関係 8000 鋼管110×8 鋼管95×10 鋼管95×8 6000 4000 2000 0 0 20 40 60 変位(mm) 80 100 図-5 エネルギー吸収量-変位関係 本論文では代表例として、鋼管の外径が 95mm,110mm でゴム厚が 70mm(ts=35mm)の緩衝材に着目(ゴム厚を 70mm に統一)して得られた荷重-変位関係を図-2,3 に示し、図-4,5 には横軸に変位、縦軸にエネルギー吸収 量をとったエネルギー吸収-変位関係を示した.図-6 には荷重の立ち上がりを比較するために、鋼管のみの荷 重-変位関係を示し、図-7 にも同様に鋼管のみのエネルギー吸収-変位関係を示した. 5. エネルギー吸収性能の比較 10 に示す.これらの図より以下のことが分かる. ①ゴム厚を厚くする程、エネルギー吸収量は大き くなるが、単位体積当りのエネルギー吸収値で比 較すると必ずしも効率の良い方法とはいえない. (図-8) 0.21 0.2 10000 0.19 0.18 9000 0.17 8000 7000 10 ②鋼管の外径が大きいほど、エネルギー吸収量は 大きくなるが、単位体積当りのエネルギー吸収値 ③鋼管厚を厚くする程、単位体積辺りエネルギー 吸収量は大きくなるが、同時に降伏荷重が大きく なり衝突力の増大を招く.(図-10) 6. 結論 鋼管のみの試験体に比べて外側にゴムを巻いたゴ 0.17 0.16 9100 <参考文献> 1) 藤谷健:ゴム鋼併用型耐震緩衝装置の開発に関す る研究、武蔵工業大学平成 12 年度修士論文、 pp.5-26,2001.3. 0.15 0.14 9000 エネルギー吸収量 0.13 単位体積当りエネルギー吸収量 8900 90 95 100 105 鋼管の外径(mm) 110 0.12 115 図-9 鋼管の外径の影響(鋼管厚 8mm,ゴム厚 70mm) 100 0.19 0.185 降伏荷重 降伏荷重(kN) 90 単位体積当りエネルギー吸収量 0.18 80 0.175 0.17 70 0.165 60 単位体積当りエネルギー吸収量 (kN/mm 2) することが必要である. 0.18 9200 らも理解できる.また、諸寸法がエネルギー吸収量に は、設計を念頭に、各寸法の具体的な決定方法を確立 0.15 110 図-8 ゴム厚の影響(φ95×8mm) らげる効果があることが図-2,3 と図-6 の比較から分 及ぼす影響も定性的には把握することができた.今後 90 9300 ム鋼併用タイプの方が荷重の急激な立ち上がりを和 かった.同様の事は、エネルギー吸収と変位の関係か 50 70 ゴム厚(mm) 単位体積当りエネルギー吸収量 (klN/mm 2) ない.(図-9) 30 エネルギー吸収量(kN・mm) で比較すると必ずしも効率の良い方法とはいえ 0.16 エネルギー吸収量 単位体積当りエネルギー吸収量 単位体積当りエネルギー吸収量 (kN/mm 2) で除した単位体積当りのエネルギー吸収量を図-8~ 11000 エネルギー吸収量(kN・mm) エネルギー吸収量及び、体積(鋼管内の空洞を含む) 0.16 7 8 9 鋼管厚(mm) 10 11 図-10 鋼管厚の影響(φ95mm,ゴム厚 70mm) 2) 皆川勝、藤谷健、長島文雄:ゴムまたは鋼管製緩 衝装置を有する免震橋の地震時挙動の関する研究、鋼構造年次論文報告集、第 8 巻、pp.163-170、2000.11. 3) 皆川勝、藤谷健:ゴム鋼併用型耐震緩衝装置の開発に関する研究、土木学会論文集 NO.689/1-57,pp.343-353, 2001.10 4)土木学会:構造力学公式集、pp.407-411,1986.4. 謝辞:実験実施にあたり、武蔵工業大学の仲宗根茂技師、佐藤安雄技師、高嵜太一、並びに土井雄司氏にご協 力頂きました.本論文は、以上の皆様方の絶大なるご支援、ご協力なくしては、成り立つ事は出来ませ んでした.ここに深く感謝の意を表します.
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