7月の技術対策

7月の技術対策
平成 27 年6月 26 日
新潟県農林水産部
7月の技術対策のポイント
【水稲】
1 中干しは田面に小ひびが入る程度で終了し、終了後は田面が強く乾くこ
とのないよう浅水の間断かん水を行い、徐々に飽水管理へ移行して、土壌
水分を適切に保ちましょう。
2 幼穂形成期及び出穂期が早まることも予想されるので、穂肥の施用が遅
れないよう、幼穂長、草丈、葉色等による生育診断を必ず行い、適期に適
量を施用しましょう。
3か月予報によると降水量が多い見込みなので、穂肥は慎重に施用しま
しょう。過剰な穂肥施用は籾数過多による品質低下を招く心配があります
ので、特に、こしいぶきは注意しましょう。
3 わたぼうし等いもち病に弱い品種や、いもち病多発生地域のコシヒカリ
BL、新潟次郎等の多収性専用品種は、穂いもち防除を徹底しましょう。
飼料用米の斑点米カメムシ防除についても、地域の防除指針に基づき徹
底しましょう。
【大豆】
1 中耕・培土作業は、開花始めまでに終了し、雑草害が懸念される場合は、
除草剤を併用しましょう。
2 突発的な豪雨に備え、明きょ、排水口の点検・補修を行い排水経路を確
保しましょう。
3 梅雨明けは土壌水分管理の転換点です。梅雨明け後は暗きょ栓の操作な
どによる干ばつ防止対策を徹底しましょう。
4 ウコンノメイガなど突発的に発生する害虫に対応するため、適宜ほ場を
観察し、被害の拡大が見られたら速やかに薬剤防除を実施しましょう。
【そば】
1 そばは湿害に極めて弱いため、排水対策を徹底し、苗立ち数、生育量を
確保しましょう。
2 品種、標高、地力を考慮して、適期は種並びに適正施肥を行いましょう。
Ⅰ 気象予報(新潟地方気象台)
1 3か月予報 7月から9月までの天候見通し(6月 24 日発表)
この期間の降水量は、平年並または多い確率ともに 40 %である。
7月 平年に比べ曇りや雨の日が多い見込みである。気温は、低い確率が 40 %、降水
量は、平年並または多い確率ともに 40 %である。
8月 平年に比べ晴れの日が少ない見込みである。気温は、低い確率が 40 %、降水量
は、平年並または多い確率がともに 40 %である。
9月 天気は数日の周期で変わる見込みである。気温は、平年並の確率が 40 %、降水
量は、少ない確率が 40 %である。
2 1か月予報 6月 27 日から7月 26 日までの天候見通し(6月 25 日発表)
平年に比べ曇りや雨の日が多い見込みである。降水量は、平年並または多い確率とも
に 40%、日照時間は、平年並または少ない確率ともに 40 %である。
週別の気温は、1週目は、平年並または高い確率ともに 40 %、2週目は、平年並ま
たは低い確率ともに 40 %、3~4週目は、平年並の確率 40 %である。
Ⅱ 水稲
1 幼穂形成期から出穂期の水管理
(1)中干しは田面に小さなひびが入り、軽く足跡がつくまで行い、遅くとも出穂の1か月
前までに終了する。茎数が多いほ場ではやや強めに乾かす。ただし、乾かしすぎて田面
に大ひびを入れると根を傷めるので、大ひびが入る前に終了する。
(2)中干し終了直後は浅水の間断かん水を実施し、徐々に飽水管理へ移行して、土壌水分
を適切に保つ。特に、出穂期の 15 日前頃から出穂期にかけては最も水を必要とする時
期なので、水分不足にならないよう適切な水管理を徹底する。
(3)穂肥施用時は、施肥効果を高めるため湛水する。
(4)フェーン現象による高温が予想される場合は速やかにかん水して、稲体からの急激な
蒸散による光合成能力の低下や白穂の発生を防止する。
2 穂肥
(1)穂肥施用のめやすと留意点
ア 施用量、施用時期のめやすは表1のとおりである。
イ 施用に当たっては、幼穂形成期の生育状況、病害虫の発生状況、土壌条件、気象予
報等から施用量と施用時期を総合的に判断する。
ウ 施用については2回の分施が基本である。1回目の施用時期が早すぎると節間が伸
長し、コシヒカリ等の長稈品種は倒伏が助長され、2回目の施用時期が遅すぎると玄
米タンパク質含有率が高まるので、施用時期、施用量に留意する。
新潟次郎等の非主食用向け品種は、特に1回目の穂肥が遅れないように注意する。
エ 本年は生育が進んでいるため、施用時期については幼穂長等を早めに調査し、出穂
前日数を把握して判断する(表2のコシヒカリの例を参考にする)
。地域毎の出穂期
予想を参考にする場合においても、田植え時期の早晩や生育状況により、ほ場間差が
生じることから、ほ場毎に必ず幼穂長を確認する。
オ 施用量については草丈や葉色を調査し、生育めやすと比較して判断する。標準的な
生育めやすを表3に示す。地域ごとに生育めやすを設定している場合には、地域の技
術情報を確認して判断する。
カ 登熟後期に栄養凋落が起きると背白粒や基部未熟粒が発生しやすくなるので、生育
過剰の場合を除き、2回目の穂肥を出穂期の 10 日前までに確実に施用する。
キ 有機質肥料や緩効性肥料を施用する場合は、施用時期が遅くなると玄米タンパク質
含有率が高まるので遅れずに施用する。
ク 異常高温時等には、急激な葉色低下などの生育変動に対応した緊急対応が必要にな
る場合がある。県や地域の指導機関が発信する情報に十分留意して対応する。
表1
主要品種の穂肥施用のめやす(平坦地、化学肥料)
品 種 名
施用量(合計)
施用時期(出穂前日数)
(Nkg/10a)
1回目
2回目
ゆきん子舞
4
25 ~ 23
14
こしいぶき
2(※)
23
14
コシヒカリ
1~3
18 ~ 15
10
五百万石
1~2
20
12
越淡麗
2
18
10
わたぼうし
2~3
22 ~ 20
12 ~ 10
こがねもち
1~3
18 ~ 15
10
新潟次郎、あきだわら
6
25 ~ 23
14
いただき
※ 砂壌土などの地力の低いほ場では、1kg程度多めに施用する。
表2 出穂前日数と幼穂長
出穂前
幼穂長
日数(日)
(cm)
30
0.02
24
0.1
20
0.2
18
0.5 ~ 1.0
12
4.0 ~ 6.0
品種:コシヒカリ
表3 主要品種の幼穂形成期における標準的な生育めやす
品 種 名
草丈
茎数
葉色
(cm)
(本/㎡)
(SPAD)
ゆきん子舞
63 ~ 67
540 ~ 560
37 ~ 39
こしいぶき
55 ~ 60
520 ~ 540
35 ~ 37
コシヒカリ(※)
65 ~ 70
480 ~ 520
32 ~ 35
68 ~ 72
420 ~ 440
34 ~ 36
五百万石
60
400
38
越淡麗
71 ~ 77
400 ~ 430
35
わたぼうし
65
430
38
こがねもち
68
480
32
※ コシヒカリの上段は慣行の栽植密度(平坦地で 60 ~ 70
株/坪)で品質が確保できる地域、下段は生育過剰になり
やすい地域(50 株/坪)。
(2)コシヒカリの穂肥について
ア 表4に示すように、1回目の穂肥施用については、幼穂形成期の草丈と葉色の積値
や幼穂伸長期間の気象予報から判断する。
イ 出穂期にかけて低温・少照・多雨が見込まれる場合には、草丈(cm)×SPAD値の積値
が 2,500 未満であっても、葉色が濃くなり、草丈が伸長して倒伏が大きくなることが
あるため、気象予報に留意しながら1回目穂肥を施用する。
ウ 一方、高温・多照・少雨が見込まれる場合には、積値が 2,500 以上でも倒伏が小さ
くなる傾向があるので、高温登熟対応の観点から1回目穂肥を施用する。
エ コシヒカリは総籾数 28 千粒/㎡を超えると乳白粒が多くなる。1回目の穂肥は籾数
に影響することから、図1を参考に幼穂形成期頃の生育が適正籾数の範囲にあるかど
うかどうかを推定し、明らかに過剰籾数の範囲と考えられる場合は1回目穂肥の施用
を控える。
オ 2回目の穂肥は、出穂期の葉色(SPAD 値)を 32 ~ 33 をめやすに後期栄養を維
持するため確実に施用する。
カ 分施体系では、出穂期 10 日前以降の穂肥は原則施用しないが、高温が予測される
場合は、出穂期3日前に葉色(SPAD 値)が 31 以下のときに、窒素成分で 1kg/10a
を施用する。
なお、
「出穂期3日前」とは、速効性の化学肥料を用いた場合であり、有機質肥料
を施用する場合には、化学肥料に比べ肥効が遅れるため、肥料の特性を十分把握し慎
重に施用する。
キ 基肥一発肥料においても出穂期までの葉色値(SPAD 値)が 32 ~ 33 を下回ると
予想される場合には、肥料の特性を十分把握し慎重に穂肥を施用する。
ク 異常高温時等の急激な葉色低下など、生育変動に対応した緊急対応が必要になる場
合があるので、県や地域の指導機関が発信する情報に十分留意して対応する。
(3)こしいぶきの穂肥について
ア 近年、こしいぶきで多肥栽培の傾向が見られ、昨年は1等級比率を大きく低下させ
る要因となった。表1を参考に、極端な穂肥量の施用は慎む。
イ 1 回目の穂肥時の葉色がかなり濃い場合は、通常時よりも3~5日程度遅らせて 1
回目の穂肥を施用する。
※ 葉色めやす(SPAD 値)
幼穂形成期(1回目穂肥)36
表4 コシヒカリ1回目穂肥施用のめやす
幼穂形成期の生育量
幼穂伸長期間の気象予報別の穂肥対応
(草丈㎝×SPAD値)
低温・少照・多雨
平年並
高温・多照・少雨
2,500 未満
○△
◎
◎
2,500 以上 2,800 未満
×
×
○
2,800 以上
×
×
×△
注)◎:出穂 18 日前に基準量を施用。
×:施用しない。
○:出穂 15 日前に基準量を施用。
○△:直近の気象予報や葉色の推移を考慮し、倒伏が懸念される場合は施用時期を遅ら
せ、施用量を控えめにする等の対応をとる。
×△:施用しない。ただし、梅雨が明け、異常高温に遭遇した場合は早急に基準量を施
用する。
3 湛水直播(コシヒカリ)のポイント
(1)穂肥時期、穂肥量は移植栽培に準じるが、1回目の施用が早すぎないよう必ず幼穂長
を確認して施用する。
(2)幼穂長の確認は、ほ場内の数か所から数株を選び行う。苗立ち数 50 本/㎡程度のほ場
では1株内の上位3長茎(3番目まで長い茎)を、100 本/㎡程度のほ場では1株内の
上位1~2長茎を調査する。幼穂形成期の判断は移植栽培に準ずる。
(3)幼穂形成期の生育が表5よりも過剰な場合は倒伏の恐れがあるため、1回目の穂肥を
施用せず、その後の葉色の推移を観察し、出穂期の葉色が表5のめやすとなるよう、出
穂前 15 ~ 10 日に穂肥を施用する。その際の窒素施用量は 10 a当たり1kg以内とする。
(4)生育ステージが異なることなどから、移植したコシヒカリに比べて葉色が濃くなり、
害虫の発生が多くなる場合があるのでこまめに観察する。
表5 成熟期の倒伏程度を「中」程度に抑えられる生育めやす
苗立ち数
幼 穂 形 成 期
出穂期
(本/㎡)
葉 数
草丈
茎数
葉色
葉色
(cm) (本/㎡) (SPAD)
(SPAD)
25
10.5 ~ 11.0
72
350
35
32
50
10.5 ~ 11.0
71
450
32
31
75
10.0 ~ 10.5
68
500
31
31
100
10.0 ~ 10.5
67
550
30
30
※ 苗立ち数に応じて生育めやすが異なることに留意する。
4 病害虫防除
「農作物病害虫雑草防除指針」および「病害虫発生予察情報」に基づき、発生実態に見
合った防除要否の判断と適期防除に努める。農薬の使用に当たっては、登録内容を確認の
上、適正に使用する。
(1)いもち病
ア 本田における葉いもちの初発は6月 23 日で平年よりやや早い(平年:6月 26 日、
前年6月 24 日)。
イ 上越、魚沼地域を中心に6月 20 ~ 22 日に感染に好適な気象条件が出現しており、
今後本田発病が確認されると推察されるので、必ずほ場毎に発病の有無を確認する。
ウ 新潟次郎等の多収性専用品種及びいもち病多発生地のコシヒカリで、予防粒剤を施
用していないほ場で葉いもち発病が認められた場合は、直ちに葉いもち防除を行う。
また、予防粒剤を施用したほ場においても発病が多い場合は、病害虫防除所又は農業
普及指導センターへ連絡して対応を相談する。
エ いもち病少発生地のコシヒカリでは、発病が認められても直ちに防除の必要はない
が、発病が多い場合は、病害虫防除所又は農業普及指導センターへ連絡して防除対応
を検討する。その他の品種では、発病が認められたら直ちに粉剤又は液剤を散布する。
オ 穂いもち予防粒剤を施用する場合は、薬剤毎の散布適期に施用する。特に、わたぼ
うしは、葉だけでなく穂でも発病しやすいため、穂いもち防除を必ず実施する。
(2)稲こうじ病
ア 多肥栽培で発生が助長されると考えられるため、穂肥の過剰施用を避ける。
イ 常発地や前年に多発して規格外が発生したほ場では、薬剤防除を実施する。昨年度
に規格外とならなくても本田発生の多かったほ場では、幼穂形成期頃から出穂 10 日
前頃までが低温で降雨日が多く推移している場合には、薬剤防除を実施する。
(3)墨黒穂病
ア 多肥栽培で発生が助長されるため、穂肥の過剰施用を避ける。
イ 過去に規格外となるなど発生の多かったほ場(特にわたぼうし)では、薬剤防除を
実施する。
(4)ごま葉枯病
ア 登熟期間中の高温多照条件及び後期栄養不足による根の活力低下や葉の枯れ上がり
で発生が助長されることから、後期栄養を確保し稲体の活力を維持するよう管理する。
イ 常発地など、多発生が懸念される場合は薬剤防除を行う。
(5)着色米
ア 着色米のうち多くを占める「褐色米」は、イネや畦畔・農道雑草の枯死葉が伝染源
となる。また、夏季の高温条件やフェーン現象遭遇によりイネ体が老化し抵抗力が低
下することで発生が増加するので、イネの体質を健全に維持するため、上記1~3を
参考に、適正な施肥管理・水管理を行う。
イ 畦畔・農道雑草の枯死葉が出穂期頃に多い条件で発生が増加するため、斑点米カメ
ムシ類対策を兼ねてこまめに草刈し、出穂期までに刈った草は持ち出し処分等を行う。
ウ 常発地や前年度に被害の多かった地域など、多発生が懸念される場合は薬剤防除を
行う。
(6)斑点米カメムシ類
ア 近年は、雑草管理が徹底されていないほ場において、カメムシ類の生息密度が高ま
り、種類が多くなる傾向がある。
イ カメムシ類の増殖を抑えるため雑草種子が結実しない間隔(およそ3週間)での草
刈りを継続し、薬剤防除効果を上げるために、出穂期前までに畦畔・農道の草刈を徹
底する。特にオオトゲシラホシカメムシでは、薬剤散布時に雑草が繁茂していると防
除効果が劣る場合があるため、草刈りの徹底が重要となる。
ウ ヒエ類、ホタルイ等の水田内雑草が多いと、アカスジカスミカメ等のカメムシ類を
誘引し、その定着や増殖を助長するため、水田内雑草の防除を徹底する。
エ 品種およびカメムシの発生種に応じた薬剤防除を確実に実施する。
(ア)極早生・早生品種
割れ籾が発生しやすいことや、出穂が早いためカメムシ類の侵入量が多くなりや
すいことなどから、斑点米が多発しやすい。特にアカヒゲホソミドリカスミカメに
よる被害が多いため、本種を対象とした防除薬剤の適期・適正散布を徹底する。
(イ)中生品種(コシヒカリ)
従来の主要加害種であるオオトゲシラホシカメムシに加え、アカスジカスミカメ、
アカヒゲホソミドリカスミカメが主要加害種になり被害が増加している。そのため、
3 種カメムシの混発に対応した防除を基本とし、これらのカメムシに効果の高い薬
剤をアカヒゲホソミドリカスミカメ対象の散布時期に散布する。
(ウ)飼料用米
主食用米への影響を考慮し、草刈りを徹底するとともに、薬剤防除については地
域の防除指針に基づき徹底する。
Ⅲ 大豆
1 中耕・培土
(1)作業期間の限度
最終の中耕・培土は遅くとも開花始め(※)までに行う。これ以降に行うと断根に
伴う生育へのダメージや作業機との接触による落花、落莢の増加により、生育抑制や
成熟ムラを招く恐れがある。
※ 開花始め:ほ場で最初の花が見られた時期。開花期の3~4日前頃である。
(2)培土の高さ
最終培土の高さは初生葉節に届く程度(15cm程度)とし、できるだけ均一に仕上げ
る。培土が高いと土砂のかき込みによる汚粒の発生や刈り取り位置が高まり収穫ロス
が出やすくなる。
(3)晩播の場合
麦跡などの晩播でも、除草・排水対策として開花始めまでに最低1回は行う。培土
の高さは初生葉節までとする。
2 排水
(1)排水経路の確保
ア 大雨に備え、排水経路(明きょ→排水口→排水路)の点検・補修を適宜行う。
イ 中耕・培土後は、畦間に停滞水が生じないよう、確実に周囲明きょに接続する。
(2)暗きょ栓の操作
暗きょのあるほ場では湿害防止のため、梅雨明けまでは暗きょ栓は開放しておく。
梅雨明け後は、下記の「5 干害対策」に留意して暗きょ栓を開閉する。
3 追肥
(1)湿害による生育不良の場合
湿害による葉の黄化や生育不良の症状が見られたら、排水を促すとともに中耕・培
土時に、速効性肥料を窒素成分で 10 a当たり1~3kg追肥する。
(2)低地力ほ場での緩効性肥料利用
ア 地力の低いことが主要因で、収量が低い(目安として実収 200kg/10 a以下)ほ場
では、ちりめんじわ粒の発生軽減と増収を図るため、緩効性肥料(シグモイド型被覆
尿素 60 日タイプ)を追肥する。
イ 施用時期は2回目の中耕・培土時とし、培土により覆土を行う。施用量は、窒素成
分で 10a当たり6kg程度とする。ただし、基肥に既に緩効性肥料を施用している場合
は実施しない。
(3)開花期追肥の考え方
ア 開花期追肥は根粒活性を阻害し、費用対効果の面からメリットが得られないため原
則として行わない。
イ 但し、麦跡などの晩播や出芽の遅れなどから、主茎長が 30cm以下で葉色が淡く、
培土後の不定根の発生が少ない場合には、速効性肥料を窒素成分で 10a当たり3kg程
度追肥する。
4 除草剤による大豆生育期の雑草防除
(1)除草剤使用の考え方
中耕・培土が計画どおり実施できず、雑草が抑えられない場合は、
「農作物病害虫
雑草防除指針」に基づき、生育期処理除草剤を適正に使用する。
(2)除草剤使用上の留意点
ア ほ場に発生した草種に応じて最適な薬剤を選択する。なお、ベンタゾン液剤は品種
によって薬害の程度が大きくなり、また、殺虫剤のエチルチオメトン粒剤と使用時期
が近いと薬害を助長することから、
「農作物病害虫雑草防除指針」の留意事項を遵守
する。
イ 茎葉処理除草剤は雑草が大きくなると効果が劣るため、薬剤の散布適期を逃さず散
布する。土壌処理除草剤は中耕・培土後の雑草発生前に散布する。なお、除草剤を畦
間処理や畦間・株間処理する場合は、登録内容に応じて大豆にかからないよう飛散防
止カバーを用いて散布する。
5 干害対策
大豆は開花期以降の約1か月間、生育量が急増するとともに、多量の水分を必要とする。
したがって、この間に降水量が少なく、土壌が乾燥すると水分ストレスにより落花・落
莢が多くなり着莢数が低下する。また、生育量に比べて莢付きが少ない場合、成熟ムラや
莢先熟を招く恐れがある。このため、下記の土壌水分維持のための管理対策を実施する。
(1)地下水位の制御
ア 梅雨明け後、地下水位が 60 ~ 70 ㎝以下に低下する排水の良いほ場では、夏期の干
ばつを 軽 減 す る た め 、 土壌水分をできるだけ逃がさないよう暗きょ栓を閉める。た
だし、降雨等により地下水位が急激に上昇した時は、速やかに暗きょ栓を開放する。
排水不良で常に地下水位の高いほ場では、湿害軽減のため暗きょ栓は開放しておく。
イ 地下水位は市販のラセン式穴掘り器の柄を延長して、ほ場に約1mの深さの細い縦
穴を掘ることで常時観察できる。縦穴を維持するため、側面に穴を開けた塩化ビニル
管を埋設し、測定は縦穴に竹尺などを差し入れて行う。なお、ラセン式穴掘り器の改
造方法や設置方法等については、最寄りの農業普及指導センターへ問い合わせる。
(2)かん水
ア かん水を行うほ場は、営農排水対策として周囲明きょや弾丸暗きょ等が施工され、1日
以内に地表水を排水できるほ場に限る。
イ かん水は、地下水位が地表より 60 ~ 70 ㎝低下した場合に実施する。
ウ 暗きょ栓は、かん水時は閉じ、かん水終了後に開放し、地下水位が 40cm程度まで
下がったら再び閉める。
エ 区画の大きいほ場では、数日かけてかん水し、水口側の湿害を防止する。
オ かん水実施のため、必要に応じて、事前に大豆への用 水 利 用 に つ い て 地 域 で の
合意形成を図っておく。
6 病害虫防除
(1)アブラムシ類の防除・ウイルス病(褐斑粒)対策
ア アブラムシ類は吸汁害を起こすとともに、ウイルス病(褐斑粒)を媒介するので、
発生初期に薬剤で防除する。
イ 褐斑粒の発生防止のため、ウイルス病株(モザイク株)は見つけ次第抜き取る。抜
き取りは、ウイルス病株が分かり易い開花期頃に行う。
(2)ウコンノメイガ
ア ウコンノメイガの加害(葉巻の発生)は7月中旬から始まり、7月下旬から8月中
旬にかけて急増する。
イ 葉の巻き始める加害始めを見逃さないよう注意し、被害拡大が懸念される場合は薬
剤で直ちに防除する。発生予察調査を行っている地域では、発生予察情報を参考にす
る。特に前年の多発生地域やは種時期が早く生育が旺盛なほ場では観察を十分行い、
防除を徹底する。
(3)紫斑病
紫斑病の防除は、開花期(※)を基点とした一定期間後に実施する。適期防除により
防除効果を十分発揮させるためには、開花期を的確に捉えることが重要である。
※ 開花期とは1花でも開花した株が、ほ場全株の 40 ~ 50 %に達したときで、最初
の花は主茎中央部の節につくため、畦畔からは見つけにくいのでほ場に入って観
察する。
Ⅳ そば
1 排水対策
・そばは湿害に極めて弱いため、排水不良ほ場には作付けしない。
・転換畑で作付けする場合は、団地化に努めるとともに、明きょと弾丸暗きょを組み合わ
せるなどの営農排水対策を実施し、地下水位を 50 ㎝以下に、地表水が半日以内に排除
できるようにする。
2 品種の選定
(1)品種の種類
県内で栽培されている主な品種は、
「信濃1号」
、
「とよむすめ」
、「栃木在来」で、特
性は表6のとおりである。
表6 そばの生育・収量特性(新潟県農業総合研究所作物研究センター)
品
種
は種期
開花期
成熟期 生育日数 草丈
分枝数
収量
千粒重
(月・日) (月・日) (月・日)
(日)
(㎝)
(本) (kg/10a)
(g)
信濃1号
8.10
9.5
10. 8
59
84
2.3
109
31.8
とよむすめ
8.10
9.7
10.17
68
105
2.4
144
36.9
栃木在来
8.10
9.7
10.17
68
104
2.1
144
35.4
(2)品種の統一
そばは虫媒などにより容易に他品種と交雑するので、地域毎に品種を統一する。異な
る品種を作付けする場合は2 km 以上離す。
3 施肥
(1)土壌pH
土壌pHは 6.0 ~ 6.5 を目標とし、石灰散布は、は種の1週間前に行う。
(2)施肥量
ア 施肥量は、10a当たり成分量で窒素2~3㎏、リン酸4~8㎏、カリ5~ 10 ㎏とし、
条施又は全面施用する。条施の場合、窒素は控えめとし、肥料が種子に触れないよう
に施肥位置を調節する。
イ 窒素過多は過繁茂による倒伏を招きやすいので、肥沃なほ場では基肥を無窒素とし、
生育不足の場合にのみ、着蕾期から開花始め頃までに 10a当たり窒素成分で1kgを追
肥する。なお、追肥時期が遅れると茎葉の生長が過剰となり倒伏を助長するので、開
花始め以降は追肥しない。
4 耕うん・は種
(1)耕うん・は種の作業
砕土率 70 %以上、耕深 15cmを目標とし、は種当日に行う。は種直後に激しい降雨が
予想される場合は、は種作業を延期する。
(2)は種
ア は種期
そばの生育量と収量を確保するには、適期は種が極めて重要となる。品種・標高別
のは種期めやすは表7のとおりである。は種が早すぎると倒伏の危険性が高まり、遅
すぎると収穫前に初霜や雪害を受ける危険性が高まる。
表7 品種・標高別のは種期めやす
品
種
平坦地(標高200m以下)
とよむすめ
8月上旬
信濃1号等
8月中~下旬
中山間地(200 ~400m)
7月下~8月上旬
7月下~8月上旬
準高冷地(400 ~ 600m)
7月下旬
7月下旬
イ 種子
種子は前年産の種子を用いる。2年以上貯蔵した種子は保存状態により極端に発芽
率が低下することがあるのでは種前に発芽率の確認を行う。
ウ 苗立ち数
目標苗立ち数は、㎡当たり 100 ~ 120 本とする。
エ は種量
は種様式別のは種量および作業のポイントは表8のとおりである。
表8 は種様式別のは種量および作業のポイント
は 種
10 a当た
は種方法
作業のポイント
様 式
りは種量
・大豆は種ユニットを利用する場合、目皿やベ
ルトをそば用に交換する。
・条間 30 ~ 50cm程度、播き幅3~ 10cm程度、
条 播 ・ドリルシーダ
5kg
は種深2~3㎝とする。
・土壌が乾燥している場合は、覆土後に鎮圧を
行う。ただし、土壌が過湿の場合は、発芽不
良になるので鎮圧を行わない。
・手播き
・種子を均一に散布する。乾燥しやすいほ場で
散 播 ・動力散布機
7~8kg
はその後ロータリやレーキで深さ5㎝以内に
・ブロードキャスタ
浅く混和(覆土)する。
5 畝立ては種による収量・品質の向上
・畝立ては種では、は種位置を高めることで、出芽時および生育時の湿害の軽減が図られ、
水田転換畑など排水性が不良なほ場で有効である。
・耕うん同時畝立てが可能なロータリーでは、下図の様な平高畝が成型できるように爪配
列を変更する。
・周囲明きょ等の排水対策は、慣行と同様に実施し、は種後は畦間の溝を明きょに接続す
る。
畝立て
平畝
慣行区
実証区
5条 130cm
15cm
畦幅 140cm
畝
高
(散播)
作業幅 170cm
6 雑草、病害虫防除
・雑草防除は耕種的防除を基本とする。砕土率を高めて苗立ち数の確保と初期生育の促進
を図り、短期間に地上部を覆わせる。
なお、生育期にイネ科雑草が多発した場合は、登録薬剤を適正に使用する。
・立枯病は耕種的防除で対応する。排水対策の徹底、過繁茂防止とともに連作を避ける。
・ハスモンヨトウには、登録薬剤を適正に使用する。老齢になると防除効果が劣るので、
できるだけ発生初期に薬剤散布する。ただし、開花期間中の防除は、訪花昆虫に影響が
あるので避ける。
【照会先:経営普及課 農業革新支援担当 石山 誠一 TEL 025-280-5302】