は し が き

は し が き
ますます人気が高まる公務員
近年,公務員試験の受験者が増えています。平成不況の中,就職先として
民間企業と併願する方もいますが,積極的に国民や住民の役に立ちたいと考
えている方が増えているのです。このように受験者が集中する中,受験生の
レベルと本試験問題の難易度が上昇しています。
公務員試験における過去問の重要性
難しくなった公務員試験をクリアするためには,過去問を徹底的に研究す
ることが重要です。公務員試験は出題分野が限定されており,同一論点の問
題が繰り返し出題される傾向があります。つまり,公務員試験は,本試験の
出題傾向を十分に把握し重要な論点を中心に学習すれば,効率的に合格でき
る試験なのです。
〈本書の特長〉
★本書は多くの公務員受験生に講義をし,公務員試験を徹底的に分析している
LEC講師陣が執筆しており,受験生の知りたい情報を解説しています。
★項目別に問題を掲載しているので,学習進度に合わせて問題演習をすること
ができます。
★表側に問題,裏側に解説を記載しているので,問題を解いたあとにすぐに検
証をすることができます。
★問題文中「出る順公務員 必修基本テキスト」に記載されている事項につい
ては,解説ページに参照ページを掲載しています。これにより,疑問点をす
ぐに解決でき,問題集と参考書を一体とした効果的な学習が可能です。
本書を利用された皆さんが,難関を突破され輝かしい第一歩を踏み出され
ることを心より祈念いたします。
2004年11月吉日
株式会社 東京リーガルマインド
LEC総合研究所 公務員試験部
ウォーク問
1
5
大特長
見やすく,やる気が出るレイアウト!
オモテに問題文,ウラに解説文が載っている1枚完結型です。解説を探す手間
が省ける構成で,やる気がぐんぐん出ます。問題集は途中であきてしまうのが普
通ですが,これなら最後まで完全にこなせます。実力アップが確実です!
4
正解チェック欄で,
間違えた問題を繰り返し解く
各問題に,正解チェック欄を設けて,
1回問題を解くたびに,その結果を記入
できるようにしました。この正解チェッ
2
ク欄を使うことで,どの問題を自分が間
全問に出題可能性(重要度)ランクを表示!
違えたのかが記録に残り,弱点がはっき
りわかるので,復習の目安になります。
各問題の見出しに,出題可能性のランク
たとえば,試験前日には「2回以上間
をA・B・Cと表示して,特に重要な問題
違えた問題だけを解く」というような使
がひと目でわかるようにしました。出題可
い方もできます。
能性ランクを見ることで,どの問題から手
をつけるべきかがわかり,直前期には確実
に点数アップの対策がとれます。
A:合格レベルに達するために解けなければいけない問題
B:合格の可能性を高める問題
C:トップ合格を目指すためには解けたほうがよい問題
5
わかりやすく詳しい解説
どんな問題が出てもこわくない
問題集の命は解説です。ただ答えが書
いてあるだけとか,何を言っているのか
わからない解説ならまったく意味があり
3
重要項目・頻出過去問
を網羅! これで過去
問演習はパーフェクト
ません。本書の解説は,LECで長年公務
員講座を開講し,受講生の質問事項など
を知りぬいた専任講師自らが執筆したも
のです。ですから,本書の解説は知りたい
公務員試験において重要な地位を占め
る各科目の中で試験によく出る項目,学
習上重要な項目から問題を選択しました。
掲載している問題はすべて過去の本試験で出題された問題です。本書の問題を
解ききれば,過去問対策は万全です。今すぐ過去問ローラー作戦を始めましょう。
ところが,よくわかるものになっていま
す。
憲法の学習にあたって
1
学習の指針
憲法は,大きく分けて人権分野と統治分野によって構成される。この両者の
出題比率はほぼ同じであるにもかかわらず,受験生は人権分野の勉強により多
くの時間を割く傾向がある。統治分野もしっかり勉強すべきであるが,その際
には統治構造の大きな視点を忘れないよう注意してほしい。
2
最近の出題傾向 (H10年∼H16年の過去問データ等に基づく)
国
地上
Ⅱ
全
国
型
法
律
職
国
税
・
労
基
人権総論(外国人・法人・私人間効力など)
◎
◎
◎
◎
憲法13条(幸福追求権),憲法14条(平等)
○
○
◎
○
精神的自由権(思想良心,信教,表現,学問)
◎
◎
◎
◎
経済的自由権(職業選択・住居移転,財産)
○
○
○
○
人身の自由(法定手続,刑事手続上の諸権利)
○
○
◎
◎
△
△
△
△
社会権(生存権,教育を受ける権利,労働基本権)
○
△
△
○
天皇
△
△
△
△
国会(立法権)
◎
◎
◎
○
内閣(行政権)
○
◎
◎
◎
裁判所(司法権)
◎
◎
◎
◎
財政・予算
○
△
○
○
地方自治
○
△
○
○
項 目
国務請求権(請願権,裁判を受ける権利,国家賠償請
求権,刑事補償請求権)と参政権(選挙権,被選挙権)
◎非常に重要 ○重要 △あまり出題されない
その他の試験種
地上関東型:地上全国型に類似。ただ,国会・内閣からの出題が意外に少な
い。
地上中北型:地上法律職に類似。
裁判所事務官:あらゆる分野から均等に出題され,難易度の高いものもある。
●× ○×
●× ○×
●×
正 解 ○×
チェック欄 □□
■■ □□
■■ □□
■■
No.1
重要度
前文
B
国Ⅱ2004
その理由としては,通常,①前文の内容が一般条項的な
I
的なもので
あること,②法規性を有するからといって,憲法には,統治の組織規範のよう
な必ずしも
H
規範でないものも相当あること,③前文の内容は各条文に
具体化されているので,前文は各条文の解釈の基準にはなるが,裁判所におい
て判断の基準となるのは具体性を持った各条文であること,④憲法条文に欠缺
次の文章は,日本国憲法の前文及びその解説である。空欄A∼Iに入る言葉
がある場合には前文が直接適用されるかという問題があるが,具体的に欠缺が
を語群ア∼シから選んで入れた場合に,一度も使用されない言葉のみをすべて
あるとは考えられないから,実際にはその問題の起こる余地はないこと,など
挙げているのはどれか。
が挙げられる。
【前文】
【語群】
「日本国民は,正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し,われ
ア 生存 イ 権力 ウ 政治 エ 対等 オ 具体 カ 抽象
らとわれらの子孫のために,諸国民との協和による成果と,わが国全土にわた
キ 裁判 ク 信託 ケ 倫理 コ 権威 サ 同盟 シ 戦争
つて自由のもたらす恵沢を確保し,政府の行為によつて再び
A
の惨禍が
1
ア,エ,ク
によるも
2
イ,オ,ケ
は国民の代表者がこ
3
ウ,カ,ク
れを行使し,その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり,
4
エ,キ,コ
この憲法は,かかる原理に基くものである。われらは,これに反する一切の憲
5
オ,ケ,サ
起ることのないやうにすることを決意し,ここに主権が国民に存することを宣
言し,この憲法を確定する。そもそも国政は,国民の厳粛な
C
のであつて,その
は国民に由来し,その
D
B
法,法令及び詔勅を排除する。
日本国民は,恒久の平和を念願し,人間相互の関係を支配する崇高な理想を
深く自覚するのであつて,平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して,われ
らの安全と
E
を保持しようと決意した。われらは,平和を維持し,専制
と隷従,圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会におい
て,名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは,全世界の国民が,ひとしく恐
怖と欠乏から免かれ,平和のうちに
E
する権利を有することを確認する。
われらは,いづれの国家も,自国のことのみに専念して他国を無視してはな
らないのであつて,
F
道徳の法則は,普遍的なものであり,この法則に
従ふことは,自国の主権を維持し,他国と
G
関係に立たうとする各国の
責務であると信ずる。
日本国民は,国家の名誉にかけ,全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成
することを誓ふ。」
【解説】
我が国では,前文は全くの
F
的宣言ではないが,本文の条項のように
具体的な法規範を定めたものではなく,その点で規範的意味は薄く,それ自身
H
規範として違憲審査の準則とはなり得ないと解する見解が有力である。
2 第1編 憲法総論
第1章 日本国憲法の基本原理 3
第
1
章
日
本
国
憲
法
の
基
本
原
理
No.2
正解
5
●× ○×
●× ○×
●×
正 解 ○×
チェック欄 □□
■■ □□
■■ □□
■■
重要度
前文
必修 基本テキスト
参照ページ êP14∼15
B
憲法前文に関する次の記述のうち,正しいのはどれか。
か,また憲法前文が裁判規範性を有するのかを理解していることが不可欠とな
る。
1
が,そして第2段では永久平和主義が宣言されている。さらに第3段では,国
民」には含まれない。
2 「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうに……」の「政
際協調主義が強調されている。最後に第4段では,前文に示された理想と目的
を達成すべきことが全世界に向けて誓約されている。
府」には,行政府のみならず立法府や司法府も含まれる。
3
4
前文は,国民主権を実現する方法として,間接民主制のみならず,直接民
主制も明示的に採用している。
ことがわかる。
つぎに,
【解説】は憲法前文の裁判規範性の有無に関するものであるが,その
前文には法規範性が認められないから,その改正には憲法第96条の手続は
必要ではない。
これを前提に空欄を補充すると,A=戦争(シ)
,B=信託(ク)
,C=権威
(コ)
,D=権力(イ)
,E=生存(ア)
,F=政治(ウ)
,G=対等(エ)が入る
前文における「日本国民」とは,日本国籍を有する者すべてを含むが,天
皇は特別の地位にあり,住民台帳にも登録されていないので,この「日本国
まず,憲法前文第1段では,憲法の制定趣旨が平和と自由を確保することに
あること,日本国憲法は人類普遍の原理である国民主権主義を基調とすること
5
前文の規定は抽象的であるから,具体的事件において憲法各条の意味内容
前提として憲法前文に法規範性が認められるかが問題となる。この点について,
が争われた場合でも,前文がその解釈基準として機能するということはあり
通説は,憲法前文には憲法の根本規範がうたわれており,また憲法制定権力の
えない。
所在が示されていることから,憲法の他の規定と同様に法規範性が認められる
としている(法規範性肯定説)
。
そして,法規範性が肯定されるとしたうえで,憲法前文に裁判規範性が認め
られるかについて争いがある。この点については,憲法前文の内容の抽象性を
理由に裁判規範性を否定する見解と,憲法のほかの規定よりも前文の抽象性が
高いということは単に相対的なものにすぎないとして裁判規範性を肯定する見
解がある。本問の【解説】は裁判規範性否定説からのものである。
これを前提に空欄を補充すると,H=裁判(キ)
,I=抽象(カ)が入る。
よって,一度も使用されない言葉は,オ,ケ,サであり,正解は肢5である。
4 第1編 憲法総論
1
章
全国型1987
本問を解くにあたっては,憲法前文がどのような内容を記したものであるの
第
第1章 日本国憲法の基本原理 5
日
本
国
憲
法
の
基
本
原
理
No.3
正解
2
●× ○×
●× ○×
●×
正 解 ○×
チェック欄 □□
■■ □□
■■ □□
■■
重要度
平和主義
必修 基本テキスト
参照ページ êP14∼15
B
次のA∼Fのうち日本国憲法における平和主義に妥当する組合せはどれか。
誤 憲法の使用する「国民」は多義的な概念であり,①日本国の構成員と
しての国民という意味や,②主権の保持者としての国民(国民主権にお
ける国民)という意味,③人権享有主体としての国民という意味などに
A 憲法前文において,日本国民は政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こ
ることのないようにすることを決意している。
分かれる。憲法前文の「日本国民」は①の意味であり,日本の国籍を有
する者をすべて含む。天皇がこれに含まれることについては争いはない。
2
B 憲法前文において,日本国民は,国際連合において名誉ある地位を占める
正 本肢の「政府」とは,主権者たる国民の信託に基づいて国政の運営に
ため国際連合による平和維持活動を推進し,民族戦争による飢餓を地上から
永遠に除去しようと思うとしている。
あたる国家機関(統治機関)の全体を指しており,行政府だけでなく,
C 憲法前文において,日本国民は,全世界の国民に対して戦争の放棄を要求
立法府や司法府を含むと解するのが通説である。
3
誤 憲法前文は,国民が憲法制定権力の保持者であることを宣言し,近代
憲法に内在する価値・原理を確認しているなどの点で,きわめて重要な
し,日本国民は平和のうちに生存する権利を有することを確認している。
D 第9条において,日本国民は,国権の発動たる戦争は,国際紛争を解決す
る手段としては永遠にこれを放棄するとしている。
意義を有している。このことから,憲法前文は,憲法の一部をなし,憲
法改正権を法的に拘束する規範であると解するのが通説である。したが
E 第9条において,日本国民は,すべての侵略戦争を永久に放棄し,国際紛
って,前文には法規範性が認められ,その改正には憲法改正の手続を経
争を解決する手段としては集団的自衛の権利に基づく国の固有の交戦権を行
る必要がある。
使するとしている。
4 誤 前文第1段は,国民主権の原理(
「主権が国民に存することを宣言し」
)
,
けいたく
さんか
F 第9条において,陸海空軍その他の戦力はこれを保持しないとし,また国
)と平和(
「戦争の惨禍が起ること
人権(
「自由のもたらす恵沢を確保し」
の交戦権はこれを認めないとした。
のないやうにする」)の原理を表明するとともに,
「国政は,国民の厳粛
な信託によるものであつて,その権威は国民に由来し,その権力は国民
1
A,C,F
の代表者がこれを行使し,その福利は国民がこれを享受する」として,
2
A,D,F
代表民主制(間接民主制。国民によって選挙された国会議員を通じて,
3
B,C,D
間接的に国政に参与する制度)を採用することを明示しているが,直接
4
B,E,F
民主制(国民が直接に自ら国政に参与するという制度)は明示的に採用
5
C,D,F
していない。
5
誤 通説は,前文の規定は抽象的な原理の宣言にとどまることや,前文の
内容は本文の各条項に具体化されていることなどから,前文の裁判規範
性すなわち,当該規定を直接根拠として裁判所に救済を求めることので
きる法規範たる性質を否定している。しかし,前文の法規範性は肯定し
ており(肢3の解説参照)
,前文が本文の各条項の解釈基準となりうると
解している。
6 第1編 憲法総論
1
章
東京都1993
1
第
第1章 日本国憲法の基本原理 7
日
本
国
憲
法
の
基
本
原
理
正解
2
必修 基本テキスト
参照ページ êP9
憲法は,前文で国民主権主義・人権尊重主義と並んで平和主義を宣言し,憲
法9条で戦争の放棄を定め,平和主義を具体化している。
A 妥当である。 前文第1段は,
「日本国民は,……政府の行為によつて再び
戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」としているので,
Aは妥当である。
B 妥当でない。 前文第2段は,
「われらは,平和を維持し,専制と隷従,圧
迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において,
名誉ある地位を占めたいと思ふ」としている。Bのような具体的な記述
はないので,Bは妥当でない。
C 妥当でない。 前文第2段は,
「われらは,全世界の国民が,ひとしく恐怖
と欠乏から免かれ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
としている。戦争の放棄は,前文の平和主義の理念を具体化するために
憲法9条で定められたものであり,前文には戦争の放棄に関する記述は
ないので,Cは妥当でない。
D 妥当である。
憲法9条1項は,「日本国民は,……国権の発動たる戦争
と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段として
は,永久にこれを放棄する」としているので,Dは妥当である。
E 妥当でない。 憲法9条1項は,Dのように定めているが,
「国際紛争を解
決する手段としては,……放棄する」というのは,侵略戦争の放棄を意
味すると解するのが通説である。しかし,憲法9条2項後段は,
「国の交
戦権は,これを認めない」としているが,集団的自衛権についての具体
的な記述はない。したがって,Eの後半の記述は妥当でない。
F 妥当である。 憲法9条2項は,
「前項の目的を達するため,陸海空軍その
他の戦力は,これを保持しない」
(戦力の不保持)とし,また,「国の交
戦権は,これを認めない」
(交戦権の否認)としているので,Fは妥当で
ある。
よって,A,D,Fが妥当であり,正解は肢2である。
8 第1編 憲法総論