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光学
担当: 谷川
実験室: 第3暗室および17実験室 (2号館2階)
基礎理論と英語の勉強をざっ とやっ た後、「 光エレクトロニクス」、「 ホログラフィ ー」、
「 偏光の性質」 の 3 つの実験をすべて行う。 物理学実験 C と同じ部分は適宜省略を行
う。 報告書には、 必要な理論、 実験日誌、 実験装置、 データ、 解析結果、 まとめを書き、
実験終了後2週間以内に提出。 用紙サイズは A4。 TEX またはワープロを使用しなけれ
ばならない。 ただし、 写真や図や式を貼り込みや手書きで入れることはさしつかえな
い。 表紙は用意してあるテンプレートをダウンロードして使用する。
実験の細かい手順は自ら考える。 与えられた試料や機器以外にも簡単に用意できる材
料を工夫して使っ てもよい。 白い紙一枚でも役立つかもしれない。 光の実験では多く
の場合直接目で見たりスクリーン に映して見たりすることができる。 よく見てどうい
うことになっ ているかを考えながら進めると能率が良い。
重大な注意
汚れや傷はデータの質を非常に落とすことがある。 光学器具の光が当たる表面には何
も触れさせてもいけない。 特に、 手で触っ たり、 つばを含んだ息を吹きかけたりしな
いこと。 使用後カバーをかぶせる。 汚れがあっ てデータが悪化していると思われる場
合でも、 決して紙などでふいたりせず、 まず報告すること。
禁煙・ 飲食禁止・ 関係ない器具に触れない、
実験の前に手を洗う。 必要ならマスクを着用。 実験台に荷物などをのせないこと。 適
切な後かたづけ (違反は減点! )。 コンピュ ーターの電源を野性的に切断しないこと。
ホログラフィー
光の平面波や球面波の干渉縞を写真で捉えて観察し、 さらにこれらの干渉縞によっ て起こる光の
回折を調べる。 透過型ホログラムを作り、 反射型ホログラムにもチャ レンジする。
注意
レーザー、 シャッ ター、 可変ビームスプリッ ター、 2個の空間フィ ルターは原則として移動しな
い。 さもなければ地獄の調節が...
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マイケルソン干渉計を組み立て、 光学系の配置と調整の練習をする。
ミラーでレーザービームを打ち返して元の光路を逆行させるには穴の開いた紙が役に立つ。 台や
床の振動の影響を観察し、 ミラーのホルダーをヘアドライヤーで暖めたりして温度変化の影響も見
る。 (この実験は 1 年生でやっ ていない場合だけやればよい。 )
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2 つの平面波 (平行光線) の干渉パターンを撮影し顕微鏡で観察する。
各光線のフィルム面への入射角 α および β と光の波長 λ (ヘリウムネオンレーザーでは λ ∼
= 633nm)
によっ て、 フィ ルム上の干渉縞の間隔 d は
d=
λ
sin α + sin β
(
≈
λ
α+β
( θ = α + β とすると、 空間の干渉縞の波長は D =
)
( |α|, |β| ≪ 1 )
λ
2 sin(θ/2) .
)
シャッ ター、 可変ビームスプリッ ター、 空間フィ ルターを通っ たレーザービームを凸レンズに通
して均一に広がっ た平行光線にする。 それをハーフミラーで分けてミラーを使っ て交差させる。 交
差した位置に「 ミニコピーフィ ルム」 を置いて撮影。 現像剤は「 コピナール」。 フィ ルムの感光剤
粒子の大きさが数ミクロンあるので、 α + β は 0.1 ラジアンかそれ以下とする。
レンズは中心を光が通るようにして使う。 それには、 レンズを入れる前と後で光ビームの中心が
ずれないようにすればよい。 絞りを小さくすれば中心がわかりやすい。
ミラー面などに触らないで角度の測定を行う。 絞りやグラフ用紙や何かその辺にあるものをうま
く使う。 顕微鏡での長さの測定誤差が数パーセントあることを考慮する。
露出はシャッ ターと可変ビームスプリッ ターと必要なら吸収フィ ルター (ND フィ ルター) を使っ
て調節。 シャッ ターコントローラによる設定の最小単位は 0.01 秒。 フィ ルムに当たる光の量は光
パワーメーターで測る。 フィ ルムの感度は 0.5µJ/cm2 程度だが、 最適な露出条件は試行錯誤で決
める。 露光時間を 1/2 倍, 2 倍, 4 倍と変えるとよい。
撮影の際に振動を防ぐため、 窒素ガスボンベの元栓を開けて実験テーブルの足の空気バネを作動
させる。 風の影響も大きいので、 エアコンが動いていたら撮影時には止める。 フィ ルムを切っ てホ
ルダーにセッ トし、 レーザー光を当てる。 すべてのフィ ルムをまとめてバッ トで現像する。 フィ ル
ムに余分な光が少しもあたらないように注意すること。
現像後フィ ルムを透かして蛍光灯や白熱ランプを見れば、 干渉縞がうまく撮れている場合には、
虹のような色が付いた像が見える。 それで出来上がりを判断するよい。
2 通りの異なる角度で撮影したフィ ルムを顕微鏡で観察し干渉稿の間隔を測る。 肉眼だけを使っ
て測ることもできるし、 デジタルカメラで撮影し、 画像を使っ て後でじっ くりと測定することもで
きる。 波長と角度から得た値と比較する。
レーザー光をフィ ルムに通して回折させ、 回折角の大小を見る。 回折角を測っ てもよい。
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球面波による干渉縞を作る
前の実験で用意した平行光線の一方をレンズに通して点光源を得る。 この点光源の光を直接見て
見え方を確かめる。
点光源からの光と平行光線とを交差させて干渉縞を撮影する。 点光源からの光がフィ ルム上であ
まり弱くならないように気をつける。 最適露出条件で一度だけ撮影する。 交差角度も1種類のみで
よい。
顕微鏡で観察し。 干渉縞の間隔が場所によっ て異なるのを確認する。
フィ ルムを通して電球を見て、 左右の像を観察する。 また、 フィ ルムを元の位置に戻して平行光
線をあて、 点光源の再生像を目視観察する。 フィ ルムからは収束する回折光も生じていることを紙
切れなどに映して確認する。 こちらは「 共役像」。
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レンズをすりガラスに置き換えて撮影し像再生を行う。
平行光線の一方を何か模様が描かれたすりガラスに通して拡散光線を作っ てフィ ルムに当て、 も
う一方の平行光線 (参照光) との干渉パターンを撮影する。 すりガラスを通っ た方の光はフィ ルム
上で元の 0.05 倍程度までなら弱くなっ てもよい。 現像後、 フィ ルムを撮影時の位置に戻し、 参照
光のみを当てて拡散光が再生されるのを観察する。 すりガラスに描いた模様が元の位置に再生され
るかどうかを確認。 再生の時には、 参照光を強くすると良い。
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ホログラフィ ー専用の乾板と現像剤を使っ て、 ダブルビームの透過型フレネル
ホログラムを作る
可変ビームスプリッ ターで分けられたもう一方のビームも空間フィ ルターとレンズで平行光線に
する。 一方の平行光線を 3cm 程度の大きさの適当な物体で散乱させ、 その散乱光 (物体光) ともう
一方の平行光線 (参照光) とが混ざっ た場所に乾板を置く。 乾板の中央付近で物体光の強さが参照
光の 1/10 程度になるようにする。
乾板用の現像液はフィ ルムの切れ端を現像してテストを行なう必要がある。 夏期は現像液が痛み
やすい。 不注意で現像液をダメにすることもある。 乾板は解像度が高いが長い露出時間を必要とす
るので振動や温度変化に細心の注意を払う必要がある。 乾板の感度は正確にわかっ ているので試
し撮りは行なわない。 撮影の時、 ガスボンベの栓を開けて実験テーブルの足の空気バネを作動さ
せることを忘れないように。
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シングルビーム反射型ホログラム (デニシュ クホログラム) を作る。
レーザーをよく散乱する白っ ぽい物体を用意する。 乾板は反射型体積ホログラム用のものに変え
る。 乾板を通っ た平行光線で物体を照らすように配置する。 物体からの散乱光が乾板によく当たる
ように、 物体と乾板を配置する。
現像は低温で行い、 PBQ 漂白剤などで漂白して位相ホログラムにする。
再生は太陽光のような白色平行光線を参照光として行う。
偏光の性質
偏光とは何かを理解する。 光学素子や偏光現象について必要な説明を書いたテキストが別にある
ので参考にすること。
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偏光板と自分の目を使っ て自然の中の偏光した光を観察する。
水面や窓ガラスに写る景色やライトの光の偏光の度合いと向きを観察する。 反射角度や光線面の
向きによる偏光の度合や向きの違いを調べる。
青空の光( 空気中の微粒子による太陽光の散乱光) の偏光の度合いと向きを調べる。 散乱角度や
光線面の向きによる偏光の度合や向きの違いに注意。
2
直線偏光を検光子に通して、 検光子の回転角と透過光強度との関係を測る。
光源として半導体レーザー、 光検出器としてシリコンフォ トダイオードを使う。 偏光したレー
ザー光を検光子に通し、 検光子の回転角度による透過光強度の変化を測る。 検光子の偏光軸方向と
レーザー光の偏光の方向との相対角度が 90 度のとき透過光強度は最小になる。 GNUPlot でグラ
フにし、 式のフィッ ティ ングを行う。 簡単な式で非常に正確にあらわせることがわかるはず。
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蔗糖溶液と果糖溶液の旋光性を測り濃度との関係を調べる。
直線偏光が蔗糖溶液などを通過すると直線偏光のままで出て来るが、 偏光の向きが変わる (旋光
性)。 前の実験と同様に検光子を使っ て測っ た結果から式のパラメータを求め、 偏光の向きの変化
を決定する。 このとき、 容器に純水を入れた場合を基準にする。
あらかじめ理科年表を見て向きが 2 度∼10 度変わるような濃度を見積もり、 2 種類の濃度の違う
蔗糖溶液と純水を用意する。 果糖溶液は1種類のみでよい。
溶液の旋光性は溶液を作っ た後しばらくは変化する。 30分程度かきまぜた後で測る。 測定ごと
に容器の位置や向きが異なると誤差になるので注意する。
フィッ ティ ングを行ない、 濃度と通過距離にほぼ比例した変化を確認する。
簡易なやりかたとして、 センサーの周りを暗くして外光による誤差を小さくし、 検出回路の抵抗
を抵抗値が50倍程度のものに取り替えて感度を高くし、 透過光強度が最小になる点を直接見つけ
るという方法もある。 時間が無い場合はこの方法をとっ てもよい。
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直線偏光をガラス板で反射し、 ブリュ ースター角と反射光の偏光特性を調べる。
偏光の向きと入射角の二つを調節してガラス板からの反射がゼロになるようにし入射角を測る。
このときの入射角はブリュ ースター角と言っ てガラスの屈折率と関係がある。 反射光をスクリーン
に映して目視してゼロ点を見つければよい。 まわりを暗くすると正確になる。
その後入射光の偏光の向きだけをいろいろ変えて反射光の偏光特性 (直線偏光かどうかと偏光の
向き) を検光子で調べる。 入射面、 入射角などの概念を正確に理解する必要がある。 ブリュ ースター
角についてはあらかじめ調べておく方が良い。
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いろいろな媒質による偏光の乱れを観察する。
検光子の向きを調整して直線偏光が通っ て来ないようにしておき、 検光子の前に歪みのあるガラ
ス板やプラスチッ ク板などを入れて検光子を通っ てくる光を観察する。 スクリーンに映して目視す
ればよい。 歪みのあるガラス板などを通っ てきた光がもはや直線偏光ではないことを検光子を回し
て確かめる。 白色光源での観察も行う。 これは、 直交させた偏光板の間に試料を入れ、 電灯の光を
通して目で見るだけ。
さらに、 直線偏光を直角プリズムの中を通し斜辺で全反射させる。 入射角は45度。 入射光の偏
光の向きによっ ては反射光は直線偏光になっ たりならなかっ たりする。 検光子でこれを確かめる。
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直線偏光を 1/4 波長板に通して円偏光を作る。
最初に直線偏光の向きと 1/4 波長板の軸の向きを一致させる。 波長板は直交する2つの軸を持っ
ていて、 どちらかの軸が入射光の偏光の向きに一致するときに限っ て偏光が変化しない。 そこで、
波長板を入れない状態で検光子を直線偏光に直交させてから、 波長板を間に入れて波長板の向きを
調節して検光子を光が通らないようにすればよい。 次に波長板を右か左に 45 度回すと円偏光が得
られる。
検光子を回してどれぐらい正しい円偏光になっ ているかを調べる。 楕円偏光は右回りと左回りの
成分が混ざっ ているものとみなすことができる。 測定データからそれらの成分の強さの比を計算
する。
波長板を右に回すか左に回すかで円偏光の向き( 右回りか左回りか) が違っ てくるが、 検光子だ
けではその違いはわからない。 水晶製の波長板には光学軸が書き示してあるので、 円偏光の向きは
わかる人にはわかる。
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別の波長板を使っ て円偏光を直線偏光に変換する。
円偏光を第 2 の 1/4 波長板に通すと直線偏光になる。 その向きは第 2 の 1/4 波長板の向きとと
もに変わり円偏光の向きによっ ても変わる。 これを検光子で調べる。 円偏光の不完全さや第 2 の波
長板の狂いによっ て、 出てくる直線偏光は一般には不完全になる。 たとえば最も不完全な場合につ
いて、 その不完全さを計算する。
光エレクトロニクス
光エレクトロニクスのキーデバイスである半導体レーザー (LD) の性質を学ぶため、 簡単な駆動
装置と光学系を作成しレーザーを発振させる。
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パワーコントロール回路の製作
レーザー出力を駆動電流にフィ ードバッ クしてレーザーをコントロールする APC 回路のトラン
ジスターの特性を測り、 回路定数の計算を行う。 同時に、 プリント基板を CAD か何かで設計し、
フォ トエッ チングと半田付けで製作する。
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回路のテストと仮調整
LED と フォ トダイオードを LD のかわりに取付けて回路をテストする。 正常に動いていること
と出力調整が可能であることを確認する。
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LD の発振と出力調整
出力最小に設定してから、 LED と フォ トダイオードをはずし、 LD を取付けて発振動作を確認
する。 光パワーメーターで測りながら、 徐々 に出力を上げていっ て規定出力が出るように調整す
る。 出力が足りない場合は、 パラメータを見直す。
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組み立て
レンズ光学系や電源スイッ チなどを取り付け、 箱などに組み込む。
各種資料、 レポート作成用テンプレートは以下からアクセスできる。
http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~tanigawa/materials/opt-exp/