第 37 回勉強会「英語の教え方教室」簡易報告

第 37 回勉強会「英語の教え方教室」簡易報告
2015(平成 27)年6月 20 日(土)
14:00 17:00
報告:中井弘一
「スクラップブック・プロジェクト−英語嫌いの高校生を支援する取り組み−」
実践報告:四條畷学園高校
村田
良一
本日は本年度本学で行う勉強会の第 1 回目、通算は第 37 回目を行った。参加者は発表者を含め 11
名とやや少なかったが、whole language の考え方を知ったり、中学校校長を退職後、非常勤として現
役を続けられる教師が生徒の英語への学習意欲を引き出すために自分が変わろうとして新たな取り組み
をされる姿を垣間見たりして心に残る勉強会であった。
最初にこれまでの職歴を紹介され、神戸市外国語大学のリカレント教育大学院で英語教育の理論を学
ぼうとしたことについて話された。強い意志がないとなかなか続かないものである。
現在非常勤教員として勤務されている学校の生徒にアンケートをされると、
「英語が好きですか」には
87%近くがそうであると回答するが、
「学校英語は好きですか」には嫌いもしくは好きではないに 73%
が回答する状況に、どうすれば意欲的に学ぶであろうかと考えられた。
こうした生徒に見られる傾向として、
・英語学習に興味がない
・地道な努力を要する学習習慣が身についていない
・目標意識がない
・学習者の自尊感情が希薄である
があると思われる。こういう状況に対応し学習意欲を高めるには、
・学習者の英語学習への価値観と好ましい態度を育成する
・学習の成功期待感を高める
・学習者の目標志向を高める
・教材を学習者に関連深いものにする
・動機付けを高めるタスクを取り入れた授業
・学習者の自尊感情を守り自信を持たせる
ことが必要であると思われる。
村田先生は、そこで大学院で学ばれた whole language の理念を実践することを考えられた。最初に
Goodman(1986)の What makes language very easy or very hard to learn? を紹介された。
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It’s easy when:
It’s hard when:
• It’s real and natural.
• It’s artificial.
• It’s whole.
• It’s broken into bits and pieces.
• It’s sensible.
• It’s nonsense.
• It’s interesting.
• It’s dull and uninteresting.
• It’s relevant.
• It’s irrelevant to the learner.
• It belongs to the learner.
• It belongs to somebody else.
• It’s part of a real event.
• It’s out of context.
• It has social utility.
• It has no social value.
• It has purpose for the learner.
• It has no discernible purpose.
• The learner chooses to use it.
• It’s imposed by someone else.
• It’s accessible to the learner.
• It’s inaccessible.
• The learner has power to use it.
• The learner is powerless.
特に、赤字の項目を念頭に置かれたということである。ただ、real や relevant の持つ意味合いがどこ
までのことを指すのかはわからないということであった。どこからが real でどのようなことを relevant
というのかは曖昧である。
また、why whole language is important for all learners として、Yvonne S. Freeman & David E.
Freeman ( 1992 ) の
Whole Language for Second Language Learners の Commonsense
assumptions versus whole language principles を提示された。常識とホールランゲージの原理とを
比較した表である。その中に、常識: Lessons should be teacher centered because learning is the
transfer of knowledge from the teacher to the student. に対し、ホールランゲージ: Lessons
should be learner centered because learning is the active construction of knowledge by the
student. と あ る 。 student-centered が 大 切 と い う こ と は 理 解 で き る が 、 ど こ ま で の 同 心 円 を
student-centered の活動というのだろうかという疑義も話された。西洋のこうした二律背反的なロジ
ックで対立的に見るのではなく、eclectic(折衷的)に判断することが望ましいのではないかとフロア
ーの意見もあった。
これらを踏まえて実践された「スクラップブック・プロジェクト」を Kember and Kelly(1992)の Plan,
Action, Observation, Reflection のフェーズで検証された。
選択 15 人の「英会話」というクラス、検定教科書の使用の制限がない環境での実践である。最初の
スクラップブック作成は「音楽」についてであった。 Cullen & Mulvey (2008) Scraps
Perceptia Press の例に倣って、準備したとのことであった。
Scraps のサンプル見本は、
http://perceptiapress.com/downloads/Perceptia_Press_Scraps_Sample.pdf
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Nagoya:
でダウンロードできる。
Brainstorm, Sample Scraps の提示(写真の鑑賞・リスニング活動),
Interview
(モデル会話リ
スニングと音読の後インタビュー活動)、Preparing Your Presentation(スクラップづくり、プレゼン
ノートづくり)Presentation と一連の流れの活動形態である。これに基づくワークシートを自身で作成
し実施された。
この活動は自宅課題としてスクラップを作成してくるようにという指示であった。結果は 15 人の生
徒のうち、一人しか作成してこなかった。家族の協力を得て作成されたものであったが、作品も十分と
は思えないものであったということだ。
この事態に少しへこまれたそうだが、大学院での指導教授から、カメラ
という道具を使いなさいというアドバイスをもらって、生徒にカメラを渡
し、自由に写真を撮って School life についてスクラップをまとめる活動を
次に実施された。当初、生徒が校内をうろついたり、様々な先生の写真を
許可なく撮ったりするのはないかと心配されたそうであるが、結果は全員
が参加し懸命にスクラップを作り、拙いながらもスクラップ紹介というプ
レゼンをこなしたということであった。発表を含め 4 時間という時間をか
け、授業の場での活動、カメラという小道具が生徒を動かしたようである。
次に、スクラップ活動として生徒に何をやりたいかと問われたところ、クリスマス・パーティという
要望がありそうすることにしたということであった。これにも、遊びになってしまわないかと、相当心
配されたとのことである。そこで、
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1. The students plan the party.
2. The party should be a part of English lessons, not just for fun.
3. The students are encouraged to use English.
を厳命されて臨まれたとのことであった。
パーティの内容の企画、部屋の装飾を生徒が行った。当日は ALT の先生から tongue twisters が紹
介され、 My mommy makes me muffins on Mondays.
He threw free throws.
Seven slick
slimy snakes slowly sliding southward. などを生徒が ALT に倣って音読練習した。パーティ中の会
話は英語で行うということであった。プレゼント交換も行い、生徒は非常に楽しんだということであっ
た。Students choice で決まった活動である。
フロアーの教員に英語の授業中にクリスマス・パーティを皆さんなら行いますかと問いかけた。8 割
の先生が行うということであった。180 転回するような授業展開の刺激は生徒の心に残り、英語の授業
に取り組む姿勢が増大するのではないかがクリスマス・パーティを支持する理由であった。成果・結果
重視でこうでなければならないという考え方では、生徒も窒息するのではないかと思われる。
まとめとして、
1. Learning through experience
2. Learner-centeredness
3. The role of teacher
4. Teacher-student relationship
の大切を痛感したとのこと、またベテランの教師ほど固まっている考え方で授業を行うが、Change 先
生が変われば生徒も変わることを多いに気付かされたと報告を閉じられた。
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*私からは、 Whole Language Strategies for Secondary Students のサンプル strategies、
Chenfeld M.B (1987) Teaching Language Arts Creatively, Harcourt Brace Javanovich
Publishers からのサンプルとして、How Many Ways Do We Listen?
How Good a Motivator Are
You?、
Richards J.C., Lockheart C. (1994) Reflective Teaching in Second Language Classrooms,
Cambridge Univ.から Lesson-report form for structuring of lessons などの資料提供を行った。
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