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「スローライフ・フォーラム in 南牧村」
実績報告書
特定非営利活動法人
スローライフ・ジャパン
2015 年 3 月 13 日
〒160-0002
東京都新宿区坂町 21 リカビル 301
特定非営利活動法人 スローライフ・ジャパン
理事長 川島正英
実績報告書
みんなで語り合うスローライフ・フォーラム「南牧村をちびっ子の遊ぶ里」へ
の実績について、下記の通り報告いたします。
記
1、概要
Ⅰ、事業の施行日時・場所
日時:2014 年 9 月 13 日(土) 13:30~17:00
会場:群馬県甘楽郡南牧村「南牧村活性化センター」
Ⅱ、事業の実施方法
主催:南牧村、商工会新事業開発検討実行委員会
NPO スローライフ・ジャパン、スローライフ学会
桜美林大学早野研究室
参加費:無料
内容:〇基調講演「むら・まちの未来を考える」
増田寛也(野村総合研究所顧問・スローライフ学会会長)
〇テーブルトーク
5つのテーブルテーマに分かれ、村民、村外からの人、大学生、各
分野の専門家など様々な立場の人たちが、輪になって話し合う。
各テーマは、
① ちびっ子万歳②さきがけ政策③仕事おこし④空き家活用
⑤東京とスクラム
〇まとめトーク
2、ごあいさつ
川島正英(NPO スローライフ・ジャパン理事長)
オープニングの南牧村のちびっ子たちの元気な太鼓感動ものでした。
いま全国歩いてみて、このようなちびっ子たちの姿がだんだん里から消えていく。
街角あるいは畦道から、ちびっ子の元気な姿が消えていく。これが昭和と平成を隔
てる大きな特色ではないか、という声すらある。ちびっ子の姿が消えていくという
変化。これが日本の将来にとってたいへんな問題である。私ども NPO スローライフ・
ジャパンもそのあたりに目をつけて、活動してまいりました。
「安産の里」あるいは
「ちびっ子の遊ぶ里」、そういったものを取戻したい、よみがえらせたい、というの
が私たちのこれまでの活動でした。
ヨーロッパでもこのスローライフの活動を、
“ルネッサンス”という言葉で表現し
ているところがあります。呼び戻す、取戻す。美しい自然の風景あるいは文化、暮ら
し、そういったものをもう一度取り戻す。この里にちびっ子の遊ぶ姿を取戻す、そう
いうルネッサンス活動をずっと続けてまいりました。
今日のこの会も“南牧村ルネッサンス”と呼んでみてもいいのかな、つまりかつて
栄えた、素晴らしい気風の南牧村をもう一度取り戻す、よみがえらせたい、そういう
ことをみんなで語り合いたい、というところからスタートしてこのフォーラムに至
ったとお考えいただきたい。この、呼び戻す、取戻す、ということの難しさ、そこが
我々がこれから考えていかなくてはいけない問題である。
今日の基調講演の増田先生は、人口がだんだん減っていく、これは日本の未来
にとって大変なことだ、といういわば“増田警告”を発しまして、日本国内がそこに
注目して、何らかの形で、自分たちの町や村を取戻したい、かつての昔に戻したい、
とがんばっているところです。
南牧村でも、村長はじめみなさん頑張って、
「南牧の明日を考える会」とか「山
暮らし南牧を支援する協議会」とか、あるいは商工会、みなさん一生懸命頑張ってや
っている。そういったところを、我々東京、あるいは全国からのスローライフの仲
間、あるいはここ 5 年間桜美林大学の夏の合宿にやってきている学生さんたちで語
ってみよう、というのが今日の趣旨です。
この南牧の村びとの人たち、そして東京から月一回「さんか・さろん」という形
の勉強会に参加している方たちが、
「お出かけさんか・さろん」ということで全国か
ら 40 人が集まっております。桜美林の若い学生さんたちも一緒に語りあって実り多
い“南牧ルネッサンス”の道筋がつけられればと願っております。南牧の村の方々が
一緒になって、このような素晴らしいフォーラムに仕立てていただいたことに感謝
いたします。
3、基調講演
「むら・まちの未来を考える」
増田寛也
さん
(野村総合研究所顧問)
「人口急減社会」をなんとか防ぎたいということで、
「人口減少問題の処方箋」
「再
生豊かな地方が支える国土をめざして」のお話をします。
人口減少が起こるメカニズムと大きく二つに分けた対策の方向は、
「東京一極集中
に歯止めをかける」と「国民の希望を叶える」、となります。調査の対象にしたのは
全国で1799の自治体、市区町村。実は人口減少が生じる理由はひとつひとつ全
部違う。この群馬県のなかでも、南牧村も前橋市も高崎市も、人口がこれから減って
いくわけですが、その理由が全部異なる。対策を講じようとすると、それぞれきめ細
かく対応していかなくてはならない。このあと5つのグループに分かれてディスカ
ッションがおこなわれるわけです。
人口減少問題を私が意識したのは、岩手県知事をしていた時(1995 年~2007 年)。
実に多くの小中学校が統廃合せざるを得ない、コミュニティがなくなっていく。で
きるだけ統廃合はしたくない、できるだけ維持しようとするのですが、生徒数はさ
らに少なくなっていく。例えば成人式。式典の周りの大人の方が人数が多い。参加の
成人の人たちのなかでも 2~3 割はその時のために東京から戻ってきた青年たち。実
際に村に生活する青年の人たちは少ない。これが 20 年 30 年たつといったいこの村
はどうなるか、という思いにかられた。
将来の人口減少の国のデータは、26 年間に 2000 万人位国全体では減る。どうして
も人口減少は避けられない。また回復は実は大変難しいと思う。それが 2060 年にな
ると 8674 万、4000 万人位減ります。じゃあ地域でどうしようか。あまりにも地域、
市町村毎に異なった要素があるのでなかなか議論の仕様がない。地域の活性化は必
要です。出産、子育しやすい環境をつくるには必要ですけれど、しかしその切迫感と
いうものがなく、なかなかそれを背景にした議論ができない。一番欲しいのは、実は
市町村ごとに、将来人口が減るにしてもどういうスピードで、どのようなメカニズ
ムで減っていくのか。
知事在任中そういうデータがないかと思っていました。2000 年の国勢調査から社
会保障人口問題研究所が、市町村ごとの将来人口を公表するようになった。5 年ごと
の公表で、今 3 回目のデータが昨年の 3 月にでたところ。全国の市町村でもいろい
ろな議論がされたと思うが、まだそれほど切迫感というのがないようだ。非常にリ
アルなデータは出ているのだが、十分な危機感が国民の皆さまに伝わったのかどう
か、という気がした。それが一つ。
昨年から特に東京への集中がまたはげしくなっている。震災で少しストップして
いた、その傾向が続いてほしいと願っていたのだが、2013 年は 2010 年よりももっと
多くなっている。今年上半期はゆうに 10 万人を超す勢いで東京に集まっている。そ
の 9 割は若者たち。東京オリンピックで時給が高くなっていて、その傾向が続いて
いる。その部分を少し修正して推定しなおしたものが私どもの推定。我々の発表の
全国の数字は 2040 年にちょうど半分、896 の市区町村が消滅する可能性がある。そ
のうちの 523 の市区町村は特にその可能性が高いということ。人口減少のメカニズ
ムは二つに分かれている。若年女性の減少と、東京への若者の流失と。したがって基
本的な対策は少子化対策と、東京一極集中対策。これは全国マクロでざっくといっ
た話で、市町村ごとにきめ細かくデータに基づいて分析していく必要がある。
特に日本の人口減少問題の悪さは二つに分解される。ひとつは年齢構成が非常に
アンバランスになっている。よく「少子高齢化」といわれるが、基本的には少子化と
高齢化は全く別の現象。こどもがなかなか生まれなくなったということと、人間が
長生きをしてその知識とか経験が社会に還元できる年齢がさらにひろがる、という
ことは全く別の現象であり、本当の高齢化には我々は感謝しなければいけないと思
っている。高齢化というのは高齢者の数がしばらくは増えるということ、そのこと
が本来の人口の減少、少子化によって人口が減るということをある部分まで覆い隠
していた部分がある。しかし 794 の市町村では、高齢化つまり高齢者が増えるのが
横ばいになって減り始める。
その第二段階、高齢者さえ減り始める段階にきている。さらにもっと進み、急激に
減る第三段階にきているのがすでに 44%の市町村。事態はそこまで進んでいる。い
ずれにしても、高齢者の数が多くなっていて、社会を支える若い人たちの数が極め
て少なくなってきている、このバランスの悪さ、これが一番現れるのは社会保障だ
と思う。若い人たちの負担を大きくするだけでは間に合わない、完全に人口ピラミ
ッドが逆三角形になってきている。
もうひとつは、われわれが強調したところ。東京に人口が集まり過ぎて、この南牧
村もですが、周辺の地域、市町村が皆消滅の危機に瀕する、という国土利用の中での
バランスの悪さ。やや結論めいていうと、人口の減少は避けられない。しかしその二
つのバランスの悪さによる歪みをできるだけゆるやかにしていくしかない。バラン
スの悪さによるマイナス面をできるだけ抑えながら、やがてバランスを回復して、
どこかで人口の安定化をできるような、そういう社会にもっていきたいというのが
私どものグループの考え方。そのために地域でできること、そして中央でできるこ
とをはっきりさせる。残念ながら中央での危機感も足りない、地域での議論も材料
がなかなかない、という状況におかれていたので、何とかその材料を提供したい。
県知事の時にも県の人口減少のデータはあったが、それに基づいての地域での議
論はなかなかできづらい。やっと 2003 年~2004 年位から市町村ごとのその数字が
出た。最初は粗かったが 2008 年くらいのデータから大分使えるようになった。是非
そういうデータを皆さん方で使っていただきたい。この南牧村でいえば、2010 年の
国勢調査のデータを手にすると、20 代~30 代の女性がここに 99 人暮らしている。
東京への人口移動が将来収束しないという前提だと、我々のデータでは 2040 年には
10 名になってしまう。極めて減少率が高い数字で、人口減少が日本一だということ
に。これを前提に地域の資源等を見つめなおすということを是非やっていただきた
い。
20 歳から 39 歳の女性、この年代からほとんどの子供が誕生するのだが、南牧村は
実は 9 割くらい減る。このようなところが消滅の可能性をもっている。人口の鎌倉
時代から明治の動きは、この 100 年で一挙に1億増やした。1億2800万に。頂
上が 2008 年。26 年間で 2000 万減る。そして 15 年先からは毎年 100 万単位で人口が
減っていく。2040 年 1 億 728 万。とにかく欲しいのはこれの市町村ごとの数字。そ
れがやっと最近かなり精度が高く出てきている。
全国では 65 歳以上の高齢者がしばらくの間は増える、そして 2040 年から 60 年の
間に高齢者すら横ばいになって 60 年から急激に減る。これは何から起きてくるのか。
基本的には自然増減と社会増減のふたつの要素で変わってくる。平たく言えば、出
生率が低い。2005 年には 2 人の大人から 1.26 人しか生まれない超低出生率に。これ
はいかんということで 2005 年に少子化担当大臣を置いて、少しずつ改善されて、昨
年 1.43 まで上がった。ある程度少子化対策は成果がみえてるともいえるが…でも実
は出生率は上がっても生まれてくる子どもの数は減っている。出生率を見ているだ
けでは現実の数字は見えてこない。
一番大事なのは生まれてくる子の数。100 万人近くまで減っている。要は母親たる
べき女性の数が毎年激減しているので、出生率がこの程度上がっても生まれてくる
子の数は増えない。2013 年 102 万 9800 人。20 年後にはこの子たちが成人式に。半
分が女性だとしてもその数はわずか 50 万しかいないという国になった。今年の上半
期、生まれてくる子どもの数はついに 50 万を割ってしまった。このままだと今年は
100 万を切るかもしれない。
都道府県別、
(市町村別も出ているが)でみると、群馬県は 1.41 でほぼ全国平均、
ちょっと低いくらい。群馬県はもっと高くてもいいはず、自然環境もいいし子育て
環境も悪いはずがない、本来であればもっと良くても然るべきだが、このあたりい
ろんな分析が必要だ。極端に低いのが東京。東京は 1.13。なぜなかなか上がらない
かというと晩婚晩産。35 歳以上の母親から生まれているのが 3 割。第 2 子3子まで
届かない。第一子を生んでいる 5 人に一人が 35 歳以上。いかに晩産化がすすんでい
るか。成功したのはフランスとか北欧。出生率が 1.6 くらいまで下がった時にいろ
んな方策を考え、莫大の予算をかけて上げた。GDP の3~4%を投入して。日本はい
ま1%ぐらい。それだけでなくフランスは移民、婚姻制度を変えるなど、相当議論が
必要なことをやった。
日本は、特に出生率が低い東京に戦後一貫して人が流入している。バブル期、そし
て最近は一貫して。震災での影響を期待していたが、2010 年 9 万人、2011 年 6 万人
まで減った、2013 年は完全に震災の影響がなくなっている。今年 2014 年は間違いな
く 10 万は超える。この東京には入っている人たちの年齢層は、20-24 が一番多い、
次は 15-19、そして 25-29、入ってくる人たちの 9 割は若い人。この理由は就職。10
代は大学進学。こういった要素で若い人たちが東京に。結婚出産、子育てが厳しい東
京に集まる。若い人たちは長時間労働、長い通勤時間などゆとりのない生活をして
いる。そこを改めないと解決しない。いずれにしても東京の合計特殊出生率の低さ
は、多分住宅が狭い、保育所も少ない、働く環境が過酷、そして出産、子育て、教育
費が大変コストがかかる地域でもある。そこでのゆとりもった生活は望めない。そ
の東京になぜか、常に、これからさらに若い人たち中心に移っていこうとしている。
ここで真剣に東京一極集中対策というのをきちんと考えていく必要があるだろうと
思う。
パリ、ロンドン、ニューヨーク、ローマ、ベルリンなど先進国の中心は、戦後一貫
して人口の比重は下げているか横ばい、決してそこに行かないと仕事ができない、
大学でいい成績がとれない、ということはない。日本だけが何故か戦後一貫して東
京に人が集めるような形になっている。効率性を追求してその効率性による富を国
家の富として受けとってきたのではないか。これを何とか変えなくてはいけない。
東京が幸せか、考える必要がある。
2040 年にかけて 75 歳以上の後期高齢者がどれだけ増えるか、2 倍以上になる。若
い人たちは 40%以上減って 6 割くらいになる。社会保障関係の方は将来東京の介護
どうするつもりか、と思うかもしれない。舛添知事にお聞きすると今現在、東京は待
機介護老人が 43000 人。施設の数が大変足りない。増やそうとしているが地価が高
い、なかなか増えない、人数は爆発的に増えていく。出生率に関しては、子どもがい
っぱい生まれてほしい。出生動向調査を見ると既婚者も「子供は二人以上は欲しい」、
未婚者も結婚願望は 90%ある、その人たちも二人以上の子供を望んでいる。こうい
った若い人たちの希望がかなうような社会に年配者の責任で配慮する必要がある。
20 歳代後半の結婚率が現在 40%、これが 60%になると出生率が 1.8 になる。人口が
維持されるためには合計特殊出生率が 2.07 といわれてる。二人の大人から 2 人生ま
れると大体人口は横ばい。出生率2は何とか実現しないといけない。このあと 10 年
で出生率を 1,8 まで上げる、次の 10 年間で 2.1 まで上げる…というようなことに
なったとしても、どこで人口が安定するかというと、80 年かかる。
人口減少は大きく分けて自然減と社会減がある。社会減は人が外に出ていく。
群馬県の場合、南牧村、下仁田町、片品村。社会減の手当ての優先度が高い。出てい
く人を抑える。空き家をどんどん開放してよそから入ってくる人たちをできるだけ
多く獲得する:UIJ ターン。外からの移住者がここで魅力ある生活を楽しむ環境を整
備すると改善効果が大変高い。何とか地域に雇用の場を作って流失を押さえようと
いうところが多いが、効果として、外から入ってくる人を増やすのも同じ。村内を歩
いたが、空き家が多い、それを入ってくる人たちにきちんと提供できるような体制
にすると、かなり効果があるのではないか。
国民の数、住民の数を考えるのが大前提だ。ここにいろんな方が入ってきて村民
とも交流することで地域が豊かになってほしいが、数ということだと、とにかく若
い人たちにできるだけ入ってきてほしい。そしてここでしっかりと生活をする、出
産子育てにもつながることが大事。できるだけ I ターンで若い人たちが来るように
環境を考える。全国でも多くの自治体が努力をして、入ってくる人が増えてきてい
る。ただ県単位でみると過疎地域を抱えている県はすべて出ていく人が多い。市町
村毎の努力は貴重だが、その努力だけでは抗えないだけの大きな国土構造の危機に。
もう一段大きな政策変更をしないともっと大きな数にはつながっていかない。
群馬県のデータ、南牧村のデータをきちんと分析する必要がある。県のデータで
は住民移動表で計算すると、トータルで昨年は 2500 人くらいの人が出て行っている。
前年、前前年は 1200 人、一挙に倍になっている。今年のデータを見ると今の時点で
さらに増えそう。どこに出て行っているか、圧倒的に東京と埼玉。市町村で必ず出入
りの数字は持っている。そういうデータを市町村ごとに全部きちんと分析して、ど
ういう理由でどの年齢層の人たちがどこに出ていくか、あるいはそういう年齢層の
人たちがどこから入ってきているか、その理由は何なのか、どのくらい居てからま
た出ていくのか、というのを 20 年 30 年さかのぼって徹底的に分析をして、そのう
ちこの村で解決がつくもの、村では解決がつかないものは近隣と含めて解決を図る
もの。それを分析する。
いままで地方政策は、過去の勘とか経験とか、せめて県単位のデータでやってき
た。ここは過疎地だから企業誘致をしようとかぐらいだったが、今回の人口減少は
すべての市町村の処方箋が違う。住民移動を南牧村では特に優先度高く分析をしな
ければいけない、そこを解消しなければいけないというデータが出ているので、ま
ずそこから処方箋を考えていくことが大事ではないか。隣りの上野村は南牧村の住
民の数の半分くらい。ただ 20 代 30 代の女性の数が 2010 年段階で南牧村 99 人、上
野村は 89 人。ところが 2040 年になると 19 人(われわれのデータ 12 人)。上野村の
住民は南牧村の半分だが、2040 年でもその年代の女性の数が 56 人(我々のデータで
も 35 人)。南牧村よりかなり多くの方がその時点で残る。いろいろな理由があるか
と思うが、隣同士でその違いがどういうことで出てくるのか、南牧村で同じような
数字にできないのかどうか。この問題を考えるヒントになるのではないか。
中山間地域の集落がその機能をきちんと維持すると、周辺の集落も含めて強くし
ていけるとか、移住で毎年 5 名ぐらい入ってくれば 1000 人規模の集落でも、小中学
校を廃校にせずに維持可能とか…冒頭の問題提起は以上です。
4、テーブルトーク
1 「ちびっ子万歳」
座 長
アドバイサー
神戸
斉藤
広さん(前南牧中PTA会長)
睦さん(地域総合研究所所長)
この分科会には、村民 12 人、長野県、長崎
県、 横浜市など村外参加者 5 人、桜美林大
生 4 人が参加しました。テーマは、消滅自治
体トップに挙げられた南牧村で、どうすれば
子どもが増え、元気に育つのかですが、村か
らは次の悩みが語られました。
◎1 学年 8 人いれば学校活動ができるといわ
れるが、小学校全体で 28 名。1 学年平均
4~5名。クラブ活動はよその学校と一緒に
やらなくてはできない。心配だ。
◎小中学校は掃除など上級生と下級生が一緒
にやり、上の子が下の子の面倒を見る関係が
できて良い。高校は村にないから、車で毎日
下仁田まで送り迎えし、終電が早いなど親は大
変。
◎1次産業が廃れ仕事が少ない。起業する人がい
ると良いと思う。
村外からは・・
◎村の良さは、来てもらわないとわからない。まず、来てもらうしかけを作ろう。
もっと村をアピールしよう。
◎村の独身男女が結婚しないと子どもが増えない。最近は新しい婚活が工夫されて
いる。チャレンジしてはどうか。
議論の結論は出ませんでしたが、もっと話し
合えばきっと成果につながるだろうと誰もが
感じたテーブルトークでした。(斉藤睦)
2 「さきがけ政策」
座 長
アドバイサー
石井裕幸さん(南牧村商工会青年部長)
坪井ゆづるさん
(朝日新聞仙台総局長・東北復興支援センター長)
「さきがけ政策」のテーブルでは、空き家の
活用やご当地の逸品づくりなどが話題になった。
地元の人々の積極的な発言に呼応して、外から
の参加者からも「自然のすばらしさに驚いた」
「こんにゃくで女性を惹き付けよう」
「大学生の合宿誘致の可能性もありそう」と
いった指摘が相次ぎ、定住人口と観光客を増やす
ための両輪の議論が飛び交った。
この会場に、山向こうの長野県南牧村(みなみまきむら)の村長さんがみえてい
た。同じ漢字で違う読み方をする村同士が、こんなに近くにあるのはここだけだろ
う。だからいろんな連携をすれば面白いに違いない。
たとえば、両村の商店が共通スタンプをつくって、訪
れた観光客に特典を与えるような仕組みをつくると
か。「なんもく vs みなみまき」の(野球でもサッカー
でも、騎馬戦でもいい)や、両村合同の「お見合い集
会」をするとか。わいわいやれば、メディアが取り上
げるのではないか。
こんなアイデアを頭に浮かべていたら、時間切れになっ
てしまった。どなたか、両村の村長さんに、この話、伝
えてもらえませんか。 (坪井ゆづる)
3 「仕事おこし」
座 長
アドバイサー
石井浩二さん(さわやかホーム施設長)
田嶋義介さん(島根県立大学名誉教授)
南牧村は初めてだった。村民、スローライフ
学会員、学生ら約20名で議論した。
率直な印象をいえば、この種の場がすくなかった
のか、村民の方々が場慣れしていない、と感じた。
村では、空き家対策や特産品生産グループなど
「地域づくり」活動があるが、こうしたことが
村全体で共有されるまでには至っていないという
ことだろう。
村民の方々からは「村が企業を誘致してくれるのが一番だ」、「かつてはこんにゃ
くで当時の県知事の収入並みの稼ぎがあった」、「林業振興といっても、ここは斜面
が多くむずかしい」などの発言が出て、高齢化率日本一の現実をどうしていこうか
との発想は余り聞かれなかった。学生の「自然は最高だが、ここに住むには厳し
い。自然だけがウリでは、食いつかない。村の人たちが新しい何かを作らないとい
けない」との声が村外の参加者の気持ちを代表していたと思う。
「うまいまつたけが取れる」(長谷川村長)とか
訪問後に「村特産のシソ巻きと斜面での農作業や
歩きが長寿の秘訣」というテレビ健康番組を見た。
村には「お宝」がある。
地域問題に取り組んでいる学会員とも顔つなぎ
ができたわけだから、今後、議論の場を重ねて
「地域づくり」意識が村内に根付いていくことを
期待します。 (田嶋義介)
4 「空き家活用」
座 長
アドバイサー
石井 悟さん(明日の南牧を創る会会長)
野口智子(ゆとり研究所所)
空き家対策を南牧村では 2010 年から進め、
役場と村民でつくる「なんもく山村ぐらし
支援協議会」が調査や紹介もし、14 世帯 26 人
が移住。試し暮らし用の空き家も整備、それで
もまだ 352 軒の空き家がある。養蚕をしていた
時代の大きな屋敷が、美しい石積みの上に建っ
ている。空き家=大きな古民家のため、立派す
ぎて大木すぎてという問題も抱える。
ある村民は「都市からあまり強い思いを持
って来られても、指導されるみたいで地元
は「引いてしまう」と本音が。実際の住民
から「10 年以上居て、ようやく仲間に入れ
てもらえた」とも。移住者と村民との間の
意思の疎通は、今や全国的な課題だ。「山の
暮らしを好きだから、ふわっと住んじゃだ
めですか」と若い人、「骨を埋めると思われ
ちゃ困る。あちこち2~3年ずつ住みた
い」と他所の男性、そんな意見も。
村として定住者を求めがちだが、軽やかな空き家のちょっと利用から、2~3年
だけの暮らし、行ったり来たり利用、定住、などと、空き家との付き合い方の濃淡
をコーディネートする必要があると思った。
村長の長谷川最定さんは「移住者は新築の村営住宅よりも古民家の方を好む。し
かし改修費が結構かかるので、村が古民家を買い、直して貸し出すということを考
えている」と提案された。期待したい。 (野口智子)
5 「東京とスクラム」
座 長
アドバイサー
石井輝雄さん(南牧村議会議長)
川島英樹さん(公益財団法人せたがや文化財団)
12 帖の和室に 23 人。大きな机を囲んで、
まさに“肩を寄せあって”の状態。座長を
務める村議会の石井議長が、冒頭テーマに
ついての説明文を読み上げたが、場のふん
いきは重たい。少々心配になって、「基調講
演の感想から始めましょうか」と水を向ける
と、座長は「いや、私はぜひこのテーマを話
し合いたい」ときっぱり。強い関心と意欲が
感じられる。そして、実際に熱気のある議論だった。
ベテラン村民たちは、川や森が、昔のような環境でなくなってしまったことが気
にかかっている。早く対策を打たなければ、都会の人に
来てもらえなくなると。また、人を迎える意識がないと
いう指摘もあった。
一方、東京側からは自然やもてなしを称える声が
多々。南牧村の空き家バンクに移住したいという青年
は、この村には「知恵やノウハウを持っている人が多
く、協力してやってくれる印象がある」という。では、
東京から見て、南牧村が特別であるにはどうしたらよいのか。それは、やはり「顔
の見えるコミュニケーション」だろう。地域に関心を持つ若い人は増えている。彼
らに向かって発信する。そのためには、アイデアを持っている若者と一緒になって
やる。住んでいるとかえって気が付かない面もある。村民自体が現実を見て、何を
するか確認して、スピードを持って実現する…。
もし、この熱気が続いていくなら、きっと村も続いていくはず。南牧村は永久に
不滅であってほしい。
(川島英樹)
◇ テーブルトークの進行
早野
透さん(桜美林大学教授)
わたしたちは桜美林大学の早野ゼミとしてこんどのフォーラムに参加した。教員
である早野透と学生諸君19人である。
早野ゼミは、ここ5年間、毎夏、南牧村でゼミ合宿をしてきた。増田リストが出る
前から、南牧村は全国一の高齢化率の村として知られていた。その村で暮らすとい
うことはどういうことか、スローライフという思想との接点はないかということで
2泊3日を民宿「月形園」ですごした。
今回も、神戸とみ子さんの案内で、やぎを使った自然農法の農家を訪ねたり、ある
いは軒先で野菜のてんぷらを食べさせていただいたりした。廃校の校舎を利用した
「ちょっとしたカフェ」で山菜のお弁当を食べたのも楽しかった。
かつてのゼミ合宿では、石材店を見学したり、小中学校で子どもたちと給食を食
べたりした。村役場の人たちと討論会を開いたこともある。そんな触れあいのなか
で、都会出身の学生たちが農村の暮らし、生活の多様性を実感することができた。
そのうえでの今回の南牧村フォーラムへの参加である。5つの分科会に学生も別
れて参加、発言の機会を得た。また全体会では、早野が司会して各分科会の座長、ア
ドバイザーのご意見を開陳していただいた。空家利用や若者の結婚機会の増進とか
いろいろ意見がでたが、集約したところ、これから村にどんな産業と雇用の場をつ
くるかということ、やはりそこがアルファでありオメガであることのようだった。
(早野 透)
6、まとめトーク
会場内5つのテーブルに分かれておこなわれたテーブルトークの後、それぞれの座
長、アドバイサーとともに増田さん、長谷川村長も加わり、各テーブルで語り合われ
た内容の報告。
村内を見て、この地域は集落同志がかなり連坦しているという感想をもった。そこ
に空き家があれだけあるので、共同生活していくうえでのかつての絆、助け合いの
精神をそのまま続けていくのが難しくなってきている地域だろう。そこに新しく外
の人たちが入ってくる可否はいろいろあっても、こういう場で議論することが必要
であり、地域を考えることにつながるはず。 (増田寛也)
村内告知のみにも関わらず、近隣村外からの首長さんはじめ、各方面の方々のご参
加いただいた。村外の若者から、村の美しさを称賛する声はあっても実際に住むか、
というと難しいといわれるのが村の現実。ではどうしていくか…。
何としても働く場を作る。国民年金で入れる高齢者施設をつくる。これらは国の一
律の基準ではなかなかできない。この村独自の政策で 30 名の雇用は必ず見出す、と
いう公約をして、いま行政に携わっているので、夢でなく実現できることとして邁
進していく。(長谷川村長)
7、南牧村から
南牧村を「ちびっ子の遊ぶ里」へを終えて
南牧村長
長谷川最定
NPO スローライフ・ジャパンから突然のお話があり、人口減少問題が俄かに浮上し
てきた中、急なスケジュールではあったが、チャンスと捉え、村と共催によるフォー
ラムを開催することを決めました。
「増田寛也氏」を迎えての事業であったが、あえて近隣の市町村にも案内はせず、
村民と増田氏、村民とスローライフ関係者との真剣な語り合いの場として開催しま
したが、県内外の村長、議会議員等行政関係者も20名ほど参加をいただき、自由参
加の村民も200名と人口減少問題の関心の高さがうかがえ、熱心な内容の濃い語
り合いとなりました。
参加した村民からも他地域、多世代の中で話せてよかったとの声も多く、一方通
行の講演会や画一的なフォーラムよりも、肩書のない、自由に発言できる場こそが
必要だと実感しました。
「消滅可能性自治体」第1位に挙げられ、
「高齢化率」第1位の本村であるが、ワ
ーストではない、村民も悲観的に受け止める必要もない、みんな真剣に考えている
し、元気に生活をしている。いわば「ご長寿村」でもある。
今後も人口減少は止められないが、子育て世代を中心とした働き場の確保を最重
要課題として、人口構造は必ず変えられるとの信念のもと、地域住民と一緒に人口
減少問題に正面から、そしてどこまでも明るく取り組んでまいります。
茂木毅恒
(群馬県 南牧村役場 村づくり・雇用推進課)
「みんなで語り合うフォーラム」開催の村担当者として、まず感じたことは、人口減
少問題に関して非常に関心が高いということだ。国会議員・県会議員の先生方をは
じめ、近隣だけでなく他県の首長さんや市町村職員の方々、群馬県庁職員、スローラ
イフ関係者、村内外からの多くの参加を頂いた。この様なことはかつてないことで
ある。南牧村の現状を知って頂く良い機会になったと思う。
参加者の中には、
「私は南牧村に初めて来ましたが自然豊かで良いとこですね。高
齢化率、消滅可能性1位に挙げられたのが不思議なくらいだ。この南牧村が旨く行
けば、日本全国の見本ともなるし、なんとかしたいものですね。」という言葉を頂い
た。他力本願では良くないが、よそものの協力なくして南牧村の発展はないと常々
感じている私には大変嬉しい言葉であった。
人口減少は、たしかに重要問題ではあるが、人が増えれば、それで良いとは限らな
い。100人の人口増より、南牧村に思いを持った方が10人増えたほうが良い。
とにかく、交流人口を増やすことが重要である。
南牧村を知ってもらい、南牧村を好きになってもらい、南牧村でこういうことが
したいと思ってもらえる様な仕組みができれば良いと思う。それには、様々な仕掛
けが必要となってくるが、こういう時こそよそもののアイデアが必要である。しか
し何といっても重要なのが、村民の意識の持ち方である。高齢化・少子化率日本一、
更には消滅可能性自治体1位とされ、村民の一部には諦め感が漂っている。
そのような中で、今回、
「みんなで語り合うフォーラム」が村内外から240名の
参加を頂き開催できたことは、大変良い機会であったと思う。特に、テーブルトーク
で、アドバイザーさんの助けを借りて村民が座長を行ったことは非常に大きいと思
う。これをきっかけに村内でもあちらこちらで村づくり談義が始まれば・・・
スローライフ・ジャパンの皆様には心より感謝申し上げます