社会とのつながりを取り戻すお手伝い

社会福祉協議会
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22 2014.mm.dd 渚の風 ○○号
22 2015.1.28 渚の風 3号
現場ルポ
「中間的就労」の支援 大阪府社協の取り組み
社会とのつながりを取り戻すお手伝い
生活保護を受給する手前の段階にいる生活困窮者を対象
にした「生活困窮者自立支援制度」。今年 4 月の開始を前に、
大阪府からモデル事業を受託した大阪府社会福祉協議会は
昨年 9 月から郡部 3 地域に相談支援員を配置し、生活に苦
しむ住民の相談に応じている。支援策のうち、仕事のブラ
○○○○さん
ンクがあるなど、直ちに普通に就労(一般就労)すること
が困難な人々に対して行う「中間的就労」の現場を追った。
(文 山田淳史 / 写真 陶器浩平)
Text by Atsushi YAMADA / Photo by Kouhei TOHKI
「希望の星」の就労体験
「簿記2級の資格を取り、次は税理士を目指そうと
しているすごく前向きな方です。我々にとっては中間
的就労の第 1 号なので、希望の星。これまできっか
けがなかっただけで、社会で活躍できる人です」
大阪府南河内府民センター(富田林市)の喫茶・軽
食店。営業を終えた1月9日午後、南河内郡3町村を
担当する相談支援員の小澤真一さん(43)は府や同
店の運営会社「お弁当の浜乃家」(松原市)などの関
係者らに、再来週から同店で働く 30 代の男性をアピー
中間的就労として、皿洗いにチャレンジする男性とにこやかに語る小澤さん(中央)
ルした。この日は事前面談だった。
「似合いますか?」
「似合うわあ」
店側から手洗いの厳守などを聞いた後、男性がバン
ダナ、長いエプロン、長靴-という仕事着を披露する
と、和やかなムードが一層深まった。
店を1人で切り盛りする親子ほど年の離れた女性か
ら皿洗いの仕方を教わり、洗い場にたまった湯の中で
コーヒーカップや皿を洗い、ゆすいでいく。
「最初はしんどいと思うけど、そのうち慣れてくる
からね」
女性が、励ました。
男性は「どんな内容か分かりましたし、1日でも早
と相談室」の存在を知り、訪問。そこで出会ったのが、
つ親や、母子家庭の場合は家計に関する相談が多い。
小澤さんだった。
利用者と一緒に役場やハローワーク、法テラスなどへ
「男性は、お会いした頃からとてもしっかりしてい
大学卒業後、大手人材サービス会社を経て、老人保
つながりさえ取り戻せば、元気になってくれると思い
健施設勤務から福祉の世界に入った小澤さん。社会福
ました」
祉士や精神保健福祉士などの資格を持ち、東大阪市の
小澤さんは、同じくモデル事業を受託した大阪地域
職業訓練センター「A′
(エーダッシュ)ワーク創造館」
とに、驚きました。これからも、当事者の感覚を大切
に支援していきたいですね」
た。
の制度はとてもいい。ここで訓練し、就職につなげた
くり。男性にはここで就労訓練をすることによって、
いです」と感想を述べた。
自信につなげてもらえれば」と直林さん。
男性はひとまず6日間働いて就労体験を積む。訓練
時間は午前 11 時半から午後1時まで。給与は支払わ
れないが、ランチ付。さらにこの店で訓練するか、小
せを受けて退職。ハローワークへも通ったが、就職活
澤さんらの支援を受けて就活に臨むかは、本人次第だ。
動での失敗が重なったショックで、社会から遠ざかる
当事者の感覚を大切に
ようになった。
「こんなに生き辛さを感じている人が地域にいるこ
(33)らとともに店側に協力を依頼し、この日を迎え
「私たちが行っているのは一般就労に向けた階段づ
男性は 2008(平成 20)年、派遣会社から嫌がら
救護施設で勤務し、昨年9月に出向した。
(大阪市)の就労訓練事業推進スタッフ、直林裕さん
く慣れたい。知らなくて不得意な仕事も経験できるこ
一般就労への階段づくり
行き、仲介役を務めることもある。
た。僕らが連携してネットワークをつくり、社会との
昨年 10 月、センター内の大阪府富田林子ども家庭
小澤さんが受けた1月9日時点の相談は 58 件。年
センターに設置された自立相談支援機関「はーと・ほっ
齢は 20 代~ 80 代と幅広く、引きこもりの息子を持
■生活困窮者自立支援制度
生活保護手前の段階にいる生活に苦しむ人を対
象に、自立の促進を目指した「生活困窮者自立支
援法」(2013 年 12 月成立、2015 年4月施行)に
基づいて開始する制度。全国の自治体が相談窓口
を設置し、居住確保や就労、家計再建などを支援
する。生活保護受給者数が 2011 年度に過去最高
を更新して以降、増加傾向であることが背景にあ
り、生活の困窮から脱却するための「セーフティー
ネット」として位置付けられる。
From なぎさ研究会
こどもたちが考える地域福祉の未来
Text by Kunihiro ARASAKI
いなぁ」と言うテーマで話し合った。
現在、吹田市地域福祉活動計画を作
校で、「子ども地域懇談会(すいこれ
成中である。「地域福祉活動計画」は,
カフェ in 小中学校)」を開催した。す
すいこれカフェには、地域の福祉委
地域福祉の推進に取り組むための実践
いこれカフェとは、「吹田市のこれか
員や民生委員も参加され、子どもたち
的な計画 ( アクションプラン ) として、
らを考えるカフェ」の略である。当日
の想いや斬新なアイデアに感心し熱心
社会福祉協議会が策定する計画である。
は、それぞれ子どもたちが4~6名の
に耳を傾けておられた。
地域住民の意見を計画に反映するた
グループに分かれて、「幸せな学校・幸
まちの未来は大人だけでなく、子ど
せなまち」を創るために「今すぐ出来
もたちも一緒に考えていくことの大切
子どもたちの想いや意見も計画に取
ること」「みんなが力を合わせてできる
さを実感した一日であった。
り入れようと、市内の小・中学校計3
こと」「○○な学校やまちになったらい
め住民懇談会を開催している。
大阪教育大学 准教授
新崎国広